会社設立の基礎知識

起業1年目で知っておくべき「経営者目線」の考え方 失敗しないためのビジネスモデル分析

最終更新日:2019/10/08

起業1年目で知っておくべき「経営者目線」の考え方 失敗しないためのビジネスモデル診断

毎年、10万社以上が新たに起業する一方で、休廃業・解散をする会社は、過去5年間で約40%増えている現実もあります(出典:2019年版「中小企業白書」*1)。廃業に至る理由はさまざまですが、創業直前・直後で知っていれば失敗せずに回避できるリスクもあります。

起業を成功させ、堅実に事業を伸ばすことのできる経営者は、どんな視点で物事を捉え、対応しているのか? その「経営者目線」を知る方法として「ビジネスモデル」の分析があります。

有名な「ビジネスモデル・キャンバス」のようなフレームワークのほかに、独立行政法人中小企業基盤整備機構が公開している「ビジネスモデル診断」が利用できます。本記事では、ビジネスモデルを評価する方法を解説します。

*1:2011年版の資料には「起業した後、10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が退出しており、起業後の淘汰もまた厳しい」という記述もあります(出典:2011年版「中小企業白書」 第3-1-11図)。

集計対象の範囲などによって数値の変動はありますが、いずれにせよ創業から数年のうちに休廃業・解散に至る企業が少なくないことがうかがえます。

目次

ビジネスモデルとは

創業にまつわる相談で、話題の中心となるのは「商品やサービスをリリースして1人でも多くの人に利用していただくこと」や、「目の前のお引き合いに全力を傾け、リピートを獲得すること」です。一方、5年後・10年後の姿や、競合や仕入先にまで思いを馳せている方は多くありません。

しかしながら、中長期的に利益を出してビジネスを継続するには「仕組み化」──すなわち、誰が、いつ、何度やっても、同じ結果が出せるよう、活動を整理する必要があります

このビジネスの仕組みを「ビジネスモデル」と言います。会社全体を俯瞰できる立場である経営者にとって、ビジネスモデルの設計と実践は最も重要な仕事のひとつです。また、融資や補助金を獲得する際も、事業計画書に適切なビジネスモデルが記載されていることが審査で重視されます。

ビジネスモデルの考え方〜検討で利用できる雛形・フレームワーク

ひとりでビジネスモデルを検討していると視点が偏りがちです。雛形やフレームワークを利用すると、バランスよくビジネスを見渡すことができるでしょう。状況を分析し、大枠で事業領域を決めたあと、抜け漏れがないようにビジネスモデルの要素を検討していきます。

ステップに分けて、代表的なフレームワークを説明します。

現状分析:SWOT分析

会社を取り巻く状況を内部要因と外部要因に分けて、良い点・悪い点を洗い出します。創業相談の現場でも、バランスよく「強み」「弱み」「機会」「脅威」をあげられる方は少ないものです。

まずは、各要素を埋めていく意識で周囲の人にヒアリングをしたり、ニュースサイトや関係省庁のWebサイトで業界動向を検索するなどして、いくつか挙げてみましょう。

会社を取り巻く状況を内部要因と外部要因に分け、「強み(strength)」「弱み(weakness)」「機会(opportunity)」「脅威(threat)」の4視点から考察するSWOT分析の表

方向性の決定:事業ドメイン

ビジネスの方向性を定め、範囲を決めるのが「事業ドメイン」です。まず、方向性を定義します。起業する際は主に、先ほどのSWOT分析をもとに、「強み」が活かせる「機会」を探していくと定義しやすいでしょう。

たとえば、Apple Musicを考えてみましょう。Apple社は、iPod、iPhone、iTunesなどの音楽プレイヤーを持ち、音楽好きな利用者を抱えています。このことを「強み」に、Wi-Fiなどブロードバンド環境が普及したことを「機会」として、定額聴き放題のサブスクリプションモデルを成功させました。

アイデア出しの方法として仮に3項目ずつ「強み」「機会」が洗い出された場合、各項目をかけ合わせて計9項目について検討し、実現性の高いものを採用する、といったやり方もあります。

方向性が見えたら、次に事業ドメインを定義します。「誰に(標的顧客)」「何を(提供するコト・モノ)」「どのように(実現する方法、ヒト、モノ、カネ等)」の観点から整理します。

たとえば、先ほどのApple Musicの例であれば、

  • 誰に:音楽を日常的に聞いている若者に
  • 何を:定額聴き放題サービスで、音楽のある生活を提供する
  • どのように:学生は480円/月〜という利用しやすい料金、Apple製品と連動した使いやすいUI(ユーザーインターフェイス)、業界で有名な音楽プロデューサーによるストリーミングの番組編成等

などのように、3つの観点で、ビジネスの範囲を明確にします。

ビジネスプランの検討:ビジネスモデル・キャンバス

ビジネスの方向性や事業ドメインを決めたあとは、視点に偏りのないよう、ビジネスに必要な要素を掘り下げて検討していきます。ここで利用できるフレームワークに、ビジネスモデル・キャンバスがあります。

1枚の紙に、ビジネスの核となる要素を9つに分けて書き出します。ビジネスモデル・キャンバスの良い点は、1枚の紙でビジネス全体を俯瞰できる点です。9つの要素は、以下の通りです。

ビジネスモデルの要素を1枚の紙で俯瞰的に理解し検証するためのフレームワーク、ビジネスモデルキャンバス(BMC)の図解

ビジネスモデル・キャンバスの作り方

まず、事業ドメインで検討した、「誰に」を「(1)顧客セグメント」に、「何を」を「(2)提供価値」に記載します。他の欄より大きくスペースを設けていますので、顧客像の特徴や、商品・サービスの特徴やどんな提供価値があるのか、考えを深めて記載します。

次に書き出すのは本来「(3)チャネル/販路」ですが、創業時にビジネスモデル・キャンバスを作成する場合は、その前に「どのように」を「(6)主要な資源」に記載すると検討が進みやすい傾向にあります。

なぜなら、顧客との関係やチャネル/販路、収益の流れが「これから築くもの」であるのに対し、主要な資源については「すでにあるもの」を書けばよいからです。ビジネスに関係しそうな主な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を挙げましょう。その上で、ほかの要素をどう実現するか、枠を埋める形で検討を進めていきます。

ひと通り書き出したら、細かく書けている項目と、そうでない項目があることに気がつくでしょう。細かく書けていない項目は、もう少し検討を進めるべき項目です。

また、ビジネスモデル・キャンバスの各項目の並び順は、「隣り合った項目が相互に関連している」という見方をします。すべて細かく書き出せていたとしても、論理的な矛盾がある場合は整合性がある手段を再度検討することが必要です。

たとえば、顧客セグメントを「大学生」としながら、チャネル/販路を「新聞広告をプロモーションとする電話通販」とした場合は、大学生にリーチできる手段として疑問が残ります。大学生と接点があるチャネル/販路を再検討するとよいでしょう。

ビジネスモデル・キャンバスを使う際の注意点

ビジネスモデル・キャンバスを利用する上で、気をつけたいことは2点あります。

「チャネル/販路」にはプロモーションについても記載

「チャネル/販路」は広義に解釈し、ぜひ広告宣伝などについても記載しましょう。事業開始以前に、販売促進の方法を十分に検討できていなかったために、起業した後に売上が停滞するケースが少なくありません。


「競合」の視点がない

ビジネスモデルを決める上では、本来、「自社・顧客・競合」の3つの視点が不可欠ですが、ビジネスモデル・キャンバスは内部環境に着目した手法であり、競合記載する欄がありません。SWOT分析における「脅威」や、以下に述べる「ビジネスモデル診断」の「ビジネスモデルの優位性・競争力」で、競合の視点を補完しましょう。

ビジネスモデル診断

ビジネスモデル診断は、雛形・フレームワークで検討したビジネスモデルの妥当性チェックや、起業後にその事業活動が継続的に利益を生む仕組みになっているかを確認する際に利用できます。

ビジネスモデル診断における7つの視点

起業する際には以下の7つの視点から診断をします。

ビジネスモデルの成立

ビジネスモデルの根幹となる事業コンセプトの視点です。「市場」「提供する価値」の視点、そして必要不可欠な「資金」の視点で、ビジネスモデルとして成立するかを診断します。


ビジネスモデルの新規性・独創性

起業したばかりはビジネスの規模が小さいため、大手のいる市場では戦いづらい面があります。ビジネスに新規性や独自性をもたせて、新しい市場を開拓して、興味を持ってもらう必要があります。ビジネス自体が持つストーリーや、商品・サービスに新規性・独自性を診断します。


ビジネスモデルの優位性・競争力

新たにビジネスを始める上では、競合に対して優れた点がないと、顧客はその商品・サービスを選ぶ理由がありません。競合企業や競合の商品・サービスを想定した計画がされているかを診断します。なお、「直接競合品」は、同じ商品・サービス、「間接競合品」は異なる商品・サービスながら、提供価値が同じものです。

たとえば、コンビニであれば、近所のコンビニが「直接競合品」、近所のスーパーやドラッグストア等が「間接競合品」となります。


ビジネスモデルの収益性

ビジネスを継続する上では、利益を継続的に獲得する必要があります。利益に関する、価格設定や、販売数量、仕入れ・製造原価などの要素や、仕組み化の度合いを診断します。


市場・顧客の認知

起業した直後は、何の施策も打たないと、誰もそのビジネスを知る手立てがありません。顧客獲得やその仕組み化の度合いを診断します。


品質の確保、品質管理

会社として商品・サービスを提供するにあたっては、安定した品質がないと、お客様の期待を裏切ることにつながりかねません。品質管理やクレーム対応の取り組みの度合いを診断します。


ビジネスパートナー、業務連携

起業した当初は、ヒト、モノ、カネが十分でなく、すべてが自社でまかなえるわけではありません。これらを補完するパートナー企業との関係性を構築する取り組みを診断します。


診断の方法

7つの視点ごとに、診断項目があり各診断項目について、「十分(2点)」「不十分(1点)」「未検討(0点)」で採点します。診断項目の合計が、8点以上であれば十分検討されていると評価できます。一方、7点以下は検討が不十分な視点です。

不十分と判断された視点について、再度、雛形やフレームワークを使ってビジネスモデルを見直す必要があります。では、視点ごとに診断を進めてみましょう。なお、各診断項目は、一部、考えやすいように、平易な言葉に書き換えています。原文を参照したい方は、中小機構の資料をご覧ください。


ビジネスモデル診断(チェックリスト)

1. ビジネスモデルの成立
  1. ビジネスに必要な機能や技術、設備、人材に不足はありませんか?
  2. ビジネスのカギとなる技術・ノウハウ・ネットワークを創業者自身がもっていますか?
  3. 想定する顧客や市場のニーズは実際に存在しますか? 商圏内の市場規模を把握していますか?
  4. 「顧客」「取引先(パートナー・仕入先)」への提供価値はそれぞれ明確ですか?
  5. 起業に必要な資金総額は適正な額であり、資金確保の見通しがついていますか?

ビジネスモデルの新規性・独創性
  1. 事業コンセプトやビジネスの特徴は、新規性や独創性がありますか?
  2. 事業コンセプトは、顧客の関心を引き、購入したいと思わせるものですか
  3. 商品やサービスは、他のメーカーや店舗で購入することは困難ですか?
  4. 商品やサービスの生産材料や、原材料に、競合と異なる差別化が施されていますか?
  5. 売り方やアフターフォローで、顧客の満足を高める方法や、リピート購入を促す方法が仕組み化されていますか?

ビジネスモデルの優位性・競争力
  1. 強みを生かし・弱みを対策した上で、直接競合品、間接競合品と比較評価ができていますか?
  2. 他社追随の障壁(商標登録、特許取得、独自の流通網の構築等)を作っていますか?
  3. 意匠・デザイン制作、ブランド構築面で、競合より一歩進んだ取組みが計画されていますか?
  4. 他社より優れた販売促進が実施もしくは計画されていますか?
  5. 商品・サービスの効用を引き出すソフト面での仕組み(情報、技術、人的サービス等)がありますか?

ビジネスモデルの収益性
  1. 高い収益率のために、コストを上回る価格が設定され、その妥当性が確認できていますか?
  2. ワンストップのサービス提供を実現する顧客対応の仕組みが確立されていますか?
  3. 非価格競争を意識し、競合品とは切り口の異なるサービス・価値提供を実施しますか?
  4. 事業を継続することで、収益が徐々に増える(またはコストが徐々に減る)仕組みはありますか?
  5. 年間を通し、生産や販売を平準化して、ロスを最小化する対策が施されていますか?

市場・顧客の認知
  1. ターゲット顧客は妥当ですか?また、ターゲット顧客の購入における特徴を理解していますか?
  2. 新規顧客⇒リピーター⇒固定客化につなげる、販売促進は計画されていますか?
  3. ターゲット顧客に過不足ない品質の商品・サービスが提供され、顧客の期待を裏切らない対応がなされますか?
  4. ホームページの開設、口コミ活用、チラシ配布等の市場・顧客認知策が実施されますか?
  5. 起業した直後に主な得意先となる顧客(群)を既に確保していますか?

品質の確保、品質管理
  1. 提供される商品・サービスの品質が確保される根拠、裏付けは客観的にありますか?
  2. 商品の機能・性能、効能(効果、満足度等)の改良・改善は、 定期的に実施されますか?
  3. 断続的な新商品・新サービスの開発とテスト販売、商品の改廃が実施されますか?
  4. 生産技術の向上(例:調理の腕前を上げる取組み)が、仕組み化 されていますか?
  5. 顧客からの不具合意見、クレーム等に対して、どのように管理し、対応するか計画されていますか?

ビジネスパートナー、業務連携
  1. 事業運営に必要な業務提携先とすでに合意ができており、「業務提携の覚書」等が締結されていますか?
  2. 事業運営に際し、アドバイス・指導・意見・議論をしてくれるビジネスパートナーがいますか?
  3. ビジネスパートナーとは、Win-Winの関係となるビジョンや計画が共有されていますか?
  4. ビジネスパートナーや顧客、有益な人脈とは、既にメールやSNS等で 連絡が取れるようになっていますか?
  5. 事業運営に際し、組合や協会などの共同事業体(コンソーシアム)への参画を検討していますか?

まとめ

起業は、自らの強い思いや目の前のお引き合いによって決断することが多いものです。しかしながら、一度ビジネスを始めたら、お客様や取引先の生活やビジネスの一部を担うようになり、簡単に失敗するわけにはいきません。ビジネスモデル診断で、起業した直前・直後の時期から網羅的な視点で事業性を確認して、仕組み化を早期に図っていきましょう。



執筆者:中小企業診断士 渡邉奈月
最前線でのWebマーケティングの知見を活かし、中小企業のマーケティング戦略から制作までワンストップで支援。創業セミナー講師、起業支援実績多数。

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