監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
監修 田中嘉浩 TOMAコンサルタンツグループ株式会社DX推進コンサル部 部長

生成AI(ジェネレーティブAI)は、事前に学習した多くのデータに基づいて、人が創造するような新たなコンテンツを生成するAIです。近年、生成AIの性能は飛躍的に向上しており、テキストや画像を生成するAIのほか、動画を生成するAIも登場しています。
生成AIを活用すると、たとえばメール文の作成や議事録の要約、カスタマーサポートの充実が可能です。国内でも生成AIの業務への活用や導入の検討を行う企業が増えています。
本記事では、生成AIの概要や仕組み、生成AIの種類を解説します。生成AIで採用されているモデルや業務での使い方の例もあわせて紹介しているので、参考にしてください。
目次
生成AIとは
生成AIは、「ジェネレーティブAI(Generative AI)」とも呼ばれるAI(人工知能)の一種です。あらかじめ学習した膨大な情報に基づき、テキスト・音声・画像・動画などの新しいコンテンツを自律的に生成します。
生成AIは使用する際に高度な技術や専門的な知識が必要なく、簡単な指示で使えます。質問の文脈を理解した回答や新しいアイデアの提案ができる点も特徴です。
出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」
出典:総務省「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」
生成AIの仕組み
生成AIを使用する際は、アプリケーションを通じてプロンプトと呼ばれる指示を出します。プロンプトが入力されると、生成AIはその内容を解析し、事前に学習された膨大な情報によって適切な回答が行われる仕組みです。
たとえば、「日本で一番高い山はどの山ですか」と入力した場合、生成AIは「富士山」という回答とともに、富士山に関連する情報を提示します。プロンプトを詳細に設定すると、より具体的な内容の回答を得ることも可能です。
生成AIには、「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術が取り入れられています。
ディープラーニングは脳の学習機能をモデルに、多層のニューラルネットワークを活用した技術です。大規模なニューラルネットワークでの学習により、複雑なデータ処理や高度な判断を可能としています。
出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」
出典:総務省「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」
これまでのAIと生成AIの違い
これまでのAIと生成AIの大きな違いは、生成AIは新たなコンテンツを生成する点に特化しているところです。
これまでのAIは、与えられたデータをもとに学習し、あらかじめ定められたルールや範囲内でプロセスを自動化することが主な役割でした。比較的少量のデータ学習に基づき、正確な判断を下す際に適しています。
一方生成AIは、ディープラーニングによりAIが自己学習パターンを用いることで出力精度を高めていきます。これまでのAIが事前に学習したデータの範囲内で出力するのに対し、生成AIは新たなコンテンツを生成できる点が違いです。
生成AIの種類
生成AIは、用途によりいくつかの種類に分けられます。主な生成AIの種類は以下の通りです。
生成AIの種類
- テキスト生成AI
- 画像生成AI
- 動画生成AI
- 音声生成AI
テキスト生成AI
テキスト生成AIは、プロンプトを入力すると、AIが内容を解析して自然な文章や内容を自動的に生成するAIです。単純な質問への回答のほか、言語の翻訳や文書の要約、プログラミング言語のコーディングなども可能です。
テキスト生成AIの回答は、大規模言語モデル(Large Language Model)を通じて行われます。OpenAI のChatGPT、Google のGemini、Anthropic のClaudeなどは、大規模言語モデルを使った代表的なテキスト生成AIです。
テキスト生成AIは、たとえばメールやプレゼン資料の作成などに役立ちます。議事録の作成にも使用でき、業務の効率化につながります。
画像生成AI
画像生成AIは、テキストで指示を入れると自動でプロンプトの内容に基づいた画像を生成するAIです。テキストでの簡単な指示により、画像を自身で制作する手間を省き、短時間で出力できます。
現在は、Stable DiffusionやRunway MLなどの画像生成AIサービスが提供されています。ご自身で絵を描いたり、デザイナーに依頼したりせずに画像を作成できるため、商品のデザインやコンテンツ作成に活用できるAIです。
ただし、生成された画像が既存の著作物と類似している場合、意図せず著作権を侵害する可能性があります。商用利用・公開の際には、ライセンスや利用規約をよく確認し、著作権に配慮してください。
動画生成AI
動画生成AIとは、テキストや画像の入力により、イメージに沿った動画の自動生成が可能なAIです。
映像や音声などの高度な処理が必要なため、高度な技術力が求められます。近年では、OpenAIのSoraを始め、Dream Machine、PixVerseなどの動画生成サービスが提供されています。
2025年時点では、作成できる動画は10秒前後と比較的短時間です。短い動画作品やプロモーション動画の作成などに活用されています。
音声生成AI
音声生成AIは、音声やテキストの入力により、内容に沿った新たな音声や音楽を生成するAIです。大量に学習した音声データに基づいて、リアルに近い抑揚や表現を行います。
音声生成AIの代表的なサービスは、MicrosoftのVALL-Eを始め、VOICEVOX、CeVIO AIなどです。たとえば、イメージ映像内のナレーションや自動応答業務などで実用化が進んでいます。
出典:文部科学省「生成系AIについて」
生成AIで採用されている主なモデル
生成AIでは、コンテンツを生成するためのモデルが複数存在しており、各モデルは異なる特徴をもっています。生成AIで採用されている主なモデルは以下の通りです。
生成AIで採用されているモデル
- VAE
- GPT
- GAN
- 拡散モデル
VAE
VAE(Variational Autoencoder)は、ディープラーニングに基づく生成モデルの一種です。変分オートエンコーダとも呼ばれています。
VAEは、多くのオートエンコーダと同様に、潜在変数を学習するエンコーダと、学習したデータを再構成するデコーダで構成されています。
そのほかのオートエンコーダと異なり、VAEは潜在変数を確率分布としてモデル化し、新たなデータを生成する点が特徴です。
VAEは主に、画像生成・異常検知・データの次元圧縮といったタスクに活用されています。
たとえば、手書き文字や顔画像を生成したり、不自然なデータ(異常値)を検出する場面で利用されています。画像処理や医療データ分析など、多様な分野で応用が進んでいるモデルです。
GPT
GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIが開発した大規模言語モデルです。
GPTは、トランスフォーマーアーキテクチャを使用するディープラーニングモデルの
ひとつで、ChatGPTに代表されるように、高度な文章作成能力・言語理解能力をもっています。
2018年にGPT-1が開発されて以降、改良が重ねられ、2023年3月にはGPT-4の提供が開始されました。
GAN
GAN(Generative Adversarial Networks)は、敵対的生成ネットワークと呼ばれる生成モデルです。
GANでは、「ジェネレータ」と「ディスクリミネータ」の2つのネットワークを使用します。互いのネットワークが学習する際に生じる競争を利用し、リアルに近い新しいデータを生成する仕組みです。
GANの仕組みは2014年に開発され、現在では条件付きGANやCycleGANを始め、多くの派生モデルが存在します。
GANは、高精度な画像生成・画像の変換(例:白黒からカラーへ)・アート作品の自動生成・画像修復・ディープフェイクなど、クリエイティブな分野を中心に活用されています。
特に、画像や映像といった視覚的コンテンツの生成ができることが強みです。多くの商用AIツールの基盤技術にも採用されています。
拡散モデル
拡散モデル(Diffusion Model)は、VAEやGANをさらに発展させた生成モデルです。
拡散モデルでは、オリジナルのデータにノイズを段階的に追加して「拡散」させます。その後、逆拡散過程でノイズを除去していき、新たな画像を生成する仕組みです。拡散モデルは、主に画像生成AIで採用されています。
生成AIのメリット
現在は複数の生成AIが一般に公開され、多くの人に利用されるようになりました。生成AIを利用する主なメリットは、以下の通りです。
生成AIのメリット
- 作業時間の短縮による効率化
- 業務の精度・品質向上
- 企画力・発想力の強化
生成AIで文書作成やデータ整理などを自動化できれば、業務を効率化でき、生産性の向上につながります。
また、生成AIを搭載したバーチャルアシスタントやチャットボットを活用することで、アウトプットの質上げや顧客対応精度の改善も可能です。
アイデアのブレストや壁打ちに用いれば、案の深掘りや新たな発想の創出にもつながるでしょう。
生成AIの使い方の例
生成AIは、実際に業務に導入されるケースも増えています。生成AIを業務で使用する具体的な例は以下の通りです。
生成AIの使い方の例
- メール文の作成
- 会議の議事録や資料作成の補助
- 顧客のニーズの分析
- 採用面接
- 予実管理や決算書作成
生成AIの業務での使用例は、メール文の作成から予実管理や決算書の作成まで多様です。
近年では、採用基準が統一できることなどから、生成AIによる採用面接を取り入れる企業も出てきました。
総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、日本と比較してアメリカや中国で、業務での生成AI活用が進んでいます。
出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」
生成AIの注意点
生成AIは業務に役立つ複数のメリットがある一方、使用に際していくつかの注意点があります。主な注意点は以下の通りです。
生成AIの注意点
- 誤情報や偽情報が含まれる場合がある
- 情報流出のリスクがある
- 著作権侵害の可能性がある
- 学習や運用に伴うコストがかかる
生成AIが学習したデータには、誤情報や偽情報が含まれる場合があり、意図せず誤った情報を拡散してしまうリスクが存在します。情報源が不明な内容は安易に拡散しないようにしましょう。
そのほか、個人情報の入力に伴う情報流出のリスク、生成物が既存の著作物と類似してしまう著作権侵害のリスクなども存在します。
また、生成AIを企業で活用する場合は、ツールの利用料やクラウド環境の整備、従業員の研修・マニュアル作成など、導入・運用にかかるコストも考慮が必要です。
特に独自モデルの開発やチューニングを行う場合には、初期投資や継続的な運用費用が大きくなることもあります。
生成AIを導入する際は、ガイドライン作成やコストの試算を事前に行いましょう。
出典:総務省「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」
まとめ
ディープラーニングを始めとする技術の登場により、近年、さまざまな生成AIが一般に公開され、普及が進んでいます。
生成AIは、簡単な指示でテキストや画像などを生成できる点が特徴です。事前に学習された膨大な情報を通じて新たなコンテンツを作成でき、業務で使用する企業も増えてきました。
一方、生成AIには誤情報や偽情報の拡散、個人情報の流出などのリスクが存在します。生成AIを使用する際は、メリットと注意点の双方を把握したうえで利用しましょう。
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よくある質問
生成AIの特徴とは?
生成AIは、あらかじめ学習した膨大な情報に基づき、テキストや画像などの新しいコンテンツを自律的に生成します。簡単なプロンプトの入力のみで、新たなコンテンツを生成できる点が特徴です。
詳しくは「生成AIとは」をご覧ください。
生成AIで作成できるコンテンツの種類は?
生成AIはテキスト・画像・動画・音声などのコンテンツを生成できます。用途に応じた生成AIを使用してださい。
詳しくは「生成AIの種類」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修 田中嘉浩(たなか よしひろ) TOMAコンサルタンツグループ株式会社 DX推進コンサル部 部長
システム会社での開発から運用の経験を活かし、中小企業でのシステムリプレイスや業務の可視化を中心に活躍中。特に経営者から担当者まで全体を見渡したプロジェクトの管理と進行能力は評判で、「安心と信頼」をモットーに中小企業~大企業まで幅広くIT化を推進している。
