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【2025年最新】育児・介護休業法の改正ポイントや企業が取るべき対応を解説

監修 羽場康高(はば やすたか)

【2025年最新】育児・介護休業法の改正ポイントや企業が取るべき対応を解説

2024年に改正された育児・介護休業法が、2025年4月1日から段階的に施行されます。

労働者が仕事と家庭を両立できるよう、仕事をしながら育児・介護を行っている当事者や、雇用する側の企業担当者は内容を把握しておくことが求められるでしょう。特に企業側は、今回の法改正に伴い、就労規則の改定や従業員への周知など、事前に対応を考えておく必要があります。

本記事では、2025年4月1日から施行される育児・介護休業法の改正ポイントや、改正に伴い企業が取るべき対応などを解説します。

目次

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育児・介護休業法とは?

育児・介護休業法とは、育児や介護を行うために休業する労働者への支援措置によって、労働者が退職せずに済むようにし、雇用の継続を図ることを目的とした法律です。

労働者が仕事と家庭を両立できるように、育児休業や介護休業を取得できる人の条件や取得期間、残業の制限などが定められています。

育児・介護休業法は、時代の変化にあわせて何度も改正されており、休業の取得条件や休暇の取得単位の緩和などが行われてきました。

そして、労働者がこれらの制度をより利用しやすい環境を整備するため、2024年にも関連法が改正され、2025年から施行されることになりました。

育児・介護休業法改正の背景

育児・介護休業法改正の背景には、男性の育児休業の取得率の低さがあります。

厚生労働省の調査結果によれば、育児休業取得率は男女で大きな差があり、2021年度の取得率は女性が85.1%に対して男性は13.97%でした。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」

また、同調査によると男性労働者のうち、育児休業制度の利用を希望していたものの利用できなかった割合は約4割にもなります。

労働者の休業取得の希望が十分にかなっていない現状があり、特に出生直後の時期に休業の取得ニーズが高い状況です。より柔軟に育児休業を取得しやすい枠組みを設ける必要があるとして、一連の法改正が2022年度から段階的に行われています。

2025年施行の育児・介護休業法改正のポイント

2024年度の育児・介護休業法改正では以下の内容が盛り込まれており、2025年4月1日から段階的に施行されます。

2024年度育児・介護休業法改正の概要

  • 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  • 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
  • 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

上記は、2025年4月1日から施行される内容と、2025年10月1日から施行される内容に分かれています。以下で、施行される主な内容を紹介します。

子の看護休暇の内容拡大

子の看護休暇とは、負傷や疾病にかかった子どもの世話、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇です。

2025年4月1日から施行される育児・介護休業法では、子の看護休暇の内容が拡充されます。


改正内容施行前施行後
対象となる子どもの範囲小学校就学の始期に達するまで小学校3年生修了まで
取得事由・病気・ケガ
・予防接種・健康診断
・病気・ケガ
・予防接種・健康診断
・感染症に伴う学級閉鎖等
・入園(入学)式・卒園式
労使協定により除外できる労働者・週の所定労働日数が2日以下
・継続雇用期間6ヶ月未満
・週の所定労働日数が2日以下
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

上記のように、改正後は、対象となる子どもの範囲、取得できる事由が拡大し、対象となる労働者の範囲も広がるため、より多くの方が子の看護休暇を取得しやすくなります。

残業免除の範囲拡大

2025年4月1日以降は残業免除の対象が拡大されます。

残業免除の対象に関する変更点

  • 改正前:3歳未満の子どもを養育する労働者
  • 改正後:小学校就学前の子どもを養育する労働者

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

2025年4月1日以降、小学校就学前の子どもを養育する労働者に対して、当事者からの申し出があった場合には残業させることができなくなります。

テレワークを活用する代替措置・努力義務

改正前の育児・介護休業法では、労使協定の締結をすれば短時間勤務制度の代替措置として「育児休業に関する制度に準ずる措置」や「始業時刻の変更等」が可能でした。

施行後は、今までの内容にテレワークが追加されるため、企業側は従業員が了承すればテレワークで業務をしてもらうことが可能です。

また、3歳未満の子どもがいる労働者を対象に、企業側によるテレワークの導入が努力義務化されています。

テレワークの導入は努力義務となるため、必ずしも設備を整える必要はありませんが、労働者が選択できる環境を整えるように努めることが求められています。

育児休業取得状況の公表義務が拡大

2023年4月以降、常時雇用従業員1,000人超の企業に対して、男性労働者の育児休業取得率等(育児休業取得率、または育児休業と育児目的休暇の取得率)の公表が義務化されていました。

今回の改正では、常時雇用従業員300人超の企業も男性労働者の育児休業取得率等を公表することが義務となるため、該当する企業は事前に準備が必要です。

具体的な公表内容や算出方法は、厚生労働省の「男性の育児休業取得率等の公表について」から確認できます。

介護離職を防止するための雇用環境の整備

2025年4月1日以降は、子の看護休暇と同様に、介護休暇に関しても継続雇用期間6ヶ月未満の労使協定による除外規定が廃止されます。

また、労働者が介護休業や介護両立支援制度等の申し出を行いやすくするために、以下の4つのうちいずれかの措置を講じなければなりません。

介護休業や介護両立支援制度等に関する措置

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  • 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  • 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

そのほか、介護による離職を防ぐために個別の周知・意向確認も義務化されます。2025年4月1日からは、育児関連だけでなく、介護に関しても労働者が働きやすい環境を整える必要があります。

柔軟な働き方を実現するための措置等

2025年10月1日以降、事業者は3歳から小学校就学前の子どもを養育する労働者に対して、以下の5つの項目から2つ以上の措置を選択し、実施しなければなりません。

柔軟な働き方を実現するための措置

  • 始業時刻等の変更
  • 月間10日以上(時間単位取得可)のテレワークの導入
  • 保育施設の設置運営等
  • 年間10日以上(時間単位取得可)の養育両立支援休暇の付与
  • 短時間勤務制度

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

また、子どもが3歳になるまでの適切な時期に、選択した措置に関しての当該制度の周知・利用の意向確認を個別に行う必要があります。

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

2025年10月1日以降、企業側は、労働者の仕事と育児の両立に関する意向を個別に聴取しなければなりません。

聴取のタイミングは、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産などを申し出たとき、および労働者の子どもが3歳になる1ヶ月前までの1年間です。

労働者から勤務時間帯や勤務地、業務量などを聴取し、自社の状況を考慮したうえで、配慮する必要があります。

育児・介護休業法の改正に伴って企業が取るべき対応

企業が労働者に対して対応を怠ると、法令違反や労使間のトラブルの原因になります。以下では、法改正に伴って企業の経営者や人事担当者が取るべき対応を解説します。

就業規則や労使協定を改定する

法改正にあわせて就業規則や労使協定の改定が必要になる場合があるため、まずは改定が必要な項目を洗い出すようにしてください。

たとえば就業規則に育児休業・介護休業の取得対象者の要件を「引き続き雇用された期間が6ヶ月以上」と記載している場合は削除する必要があります。

法改正によって子の看護休暇・介護休暇の取得除外規定の継続雇用期間6ヶ月未満が撤廃されるため、問題が生じかねません。

就業規則や労使協定を改定する際には、以下のような手続きが必要です。

就業規則や労使協定の改定に必要な手続き

  • 改定項目の洗い出し
  • 就業規則への反映
  • 労働者の代表等への意見聴取
  • 労使協定の締結
  • 労働基準監督署への届出 など

時間がかかる場合があるため、早めに取り組むとよいでしょう。

改正後の育児・介護休業法の内容を従業員に周知する

改正が行われ、法律が変わった旨は従業員へ周知しなければなりません。

育児・介護休業法の内容を従業員が正しく認識しておかないと、トラブルにつながるおそれがあります。

また、育児・介護休業法の内容を従業員に説明する管理職・役員等が法律の内容を理解していないと、従業員に誤った説明をしてしまう可能性も生じます。

出産や育児等による従業員の離職を防ぎ、仕事と育児等を両立できる社会を実現するためにも、法律の内容は管理職・役員等も含めて周知が必要です。

法改正の内容を踏まえた適切な雇用管理・記録の保存を行う

従業員が育児休業や介護休業を取得するにあたり、企業は取得対象者や取得日数などを把握しなければなりません。

育児休業や介護休業をどの従業員がいつから取得するのか、現在何日取得していて何日残っているかを正確に管理するようにしてください。

また、2025年4月1日以降は、従業員数が300人を超える企業も育児休業取得率等を公表しなければなりません。取得率の計算の基礎となる取得日数等の適切な記録・管理が重要です。

2025年度税制改正の育児関連のポイント

2024年度に引き続き、2025年度も税制大綱により育児関連の変更が入ります。2025年度の税制大綱では、子育て世帯の住宅ローン控除に関する内容が明記されています。

住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、税額控除のひとつです。個人がローンなどを利用してマイホームの新築・リフォームなどを行い、一定の要件を満たす場合、住宅ローン控除を受けられます。

2024年の入居分から住宅ローン控除の減税対象となる借入限度額の上限が以下の通り引き下げられています。


住宅の種類借入限度額
認定住宅4,500万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円

しかし、2025年度税制改正では、18歳以下の扶養親族を有する子育て世帯や、夫婦のどちらかが39歳以下の世帯は、2024年に引き続き、上限の引き下げを見送ることになりました。

そのため、2024年・2025年の入居分は、2022年・2023年の水準で維持され、優遇されます。


住宅の種類借入限度額(子育て世帯・若者夫婦世帯)
認定住宅5,000万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円

認定住宅では500万円、ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅では1,000万円が上乗せされます。

また、床面積要件の緩和措置(通常は50㎡以上が、合計所得1,000万円以下の場合に限り40㎡以上に緩和)が2025年末まで延長されることになりました。

なお、住宅ローン控除を受ける初年度は確定申告が必要となるため、該当する人は忘れずに行いましょう。

まとめ

2022年以降、育児・介護休業法は時代にあわせて改正され、従業員にも企業にもさまざまな影響が生じています。2025年4月1日から新たに変更・施行される内容もあります。いつからどのように制度が変わるのか、改正内容を正しく理解しておきましょう。

就業規則・労使協定の改定や従業員への周知など、対応に漏れがあると法令違反や労使間トラブルの原因になる可能性があるため、法改正への対応は迅速かつ適切に行いましょう。

また、企業経営者や人事担当者は法改正が行われた背景も理解して、育児休業や介護休業の取得率向上に努めることが重要です。

休みを取りやすい雰囲気作りや、仕事と家庭を両立できる環境の整備が従業員の就労意欲の向上や企業の発展につながります。

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よくある質問

育児・介護休業法とは?

育児休業および介護休業に関する制度ならびに、子の看護休暇および介護休暇に関する制度を定めた法律です。

育児・介護休業法を知りたい方は「育児・介護休業法とは?」をご覧ください。

育児・介護休業法が改正された背景は?

男性の育児休業取得率が伸び悩み、より柔軟に育児休業を取得しやすい枠組みを設ける必要性が高まり、法改正が行われました。

育児・介護休業法が改正された背景を詳しく知りたい方は「育児・介護休業法改正の背景」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高