会社設立の基礎知識

事前確定届出給与とは?届出書の書き方や提出期限・社会保険料・税金との関係を解説

監修 鶏冠井 悠二

事前確定届出給与とは?届出書の書き方や提出期限・社会保険料・税金との関係を解説

事前確定届出給与とは、所定の時期に確定額を支給する旨を定め、事前に税務署に届出をした役員報酬のことです。事前確定届出給与は損金算入が認められるため、会社は税負担を軽減できます。

事前確定届出給与について定める届出書は、会計年度開始日から4ヶ月を経過する日、または株主総会などの決議日から1ヶ月を経過する日のうち、いずれか早い日までに提出が必要です。期限日を超えて提出した場合、その報酬は損金算入できず、法人税の軽減効果は得られません。

本記事では、事前確定届出給与の概要やメリット、定期同額給与・業績連動給与との違い、届出書の書き方や提出期限・社会保険料・税金との関係を解説します。

目次

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事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、所定の時期に確定額を支給する旨を定め、事前に税務署に届出をした役員報酬のことです。

取締役や監査役といった役員に対して支払う報酬のうち、一定の要件を満たして事前に税務署に届出をしたものが該当します。

【関連記事】
役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説

事前確定届出給与のメリット

事前確定届出給与の主なメリットは次の2つです。

事前確定届出給与のメリット

  • 損金に算入できる
  • 社会保険料負担を抑えられる

以下でそれぞれ詳しく解説します。

損金に算入できる

法人税を計算する際、役員に支払う報酬は通常損金に算入できません。しかし、役員報酬が事前確定届出給与・定期同額給与・業績連動給与のいずれかであれば、損金に算入できます。

損金算入できれば会社の課税所得が減り、法人税の負担を軽減できます。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

社会保険料負担を抑えられる

役員報酬であっても、年3回以下など「3ヶ月を超える期間ごとに支払うもの」は、社会保険の計算上、賞与として扱われます。

賞与に対する社会保険料には、通常の月額報酬とは別に上限が設定されています。そのため、一定の条件下では役員報酬を賞与扱いにすることで、社会保険料の負担を抑えられることがあります。


出典:日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」

損金算入できる役員報酬の種類と違い

通常、役員報酬は損金に算入できませんが、以下の3種類の役員報酬については損金算入が認められています。

損金算入できる役員報酬の種類

  • 事前確定届出給与
  • 定期同額給与
  • 業績連動給与

以下では、事前確定届出給与と定期同額給与・業績連動給与の違いについて解説します。

事前確定届出給与と定期同額給与の違い

定期同額給与とは、役員報酬のうち月ごとなど一定の間隔で支給され、金額が毎回同じであるものを指します。役員に対して決まった額の報酬を毎月支払うようなケースが該当します。

事前確定届出給与と定期同額給与は、法定の要件を満たせば損金に算入できる点は同じです。しかし、事前確定届出給与は事前の届出が義務付けられているのに対して、定期同額給与は事前の税務署への届出は必要ありません。

定期同額給与は原則として年に1度しか変更できず、損金算入可能な変更は決算後3ヶ月以内です。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

【関連記事】
定期同額給与とは?改定方法や損金算入できる役員報酬の条件も解説

事前確定届出給与と業績連動給与の違い

業績連動給与とは、会社の業績に連動して支払う役員報酬のことです。利益の状況を示す指標(営業利益・ROAなど)や、株式の市場価格の状況を示す指標(TOPIX・日経平均株価など)、売上の状況を示す指標をもとに報酬額を算定します。

事前確定届出給与は報酬額・支払日・支給方法などを事前に税務署に届け出る必要があります。一方、業績連動給与は報酬額が事前に決まっておらず、業績評価指標の数値が確定した時点で決まります。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
出典:経済産業省「~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~」

事前確定届出給与の手続き方法

事前確定届出給与として認められるためには、事前に税務署に届出書を提出して報酬額を確定させる必要があります。以下では届出書の書き方・提出先・提出期限を解説します。

届出書の書き方

税務署に提出する「事前確定届出給与に関する届出書」の用紙は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。


事前確定届出給与に関する届出書

事前確定届出給与に関する届出書
出典:国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」

No項目概要・記載内容
納税地納税地となる事業所の住所など
法人名等法人名およびフリガナ
法人番号15桁の法人番号
代表者氏名法人の代表者氏名およびフリガナ
代表者住所代表者の住所(法人住所)など
事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等決議をした日と、決議をした機関(株主総会 など)を記載
事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日役員となり職務の執行を開始する日
事前確定届出給与等の状況あわせて提出する付表の番号を記入
事前確定届出給与につき定期同額給与による支給としない理由および事前確定届出給与の支給時期を付表の支給時期とした理由なぜ定期同額給与(毎月同じ額を支給する方法)ではなく、事前確定届出給与(特定の時期に特定額を支給する方法)を選んだのかを記入。「資金繰りの関係上」や「株主総会や取締役会で決議した支給時期に従うため」など。
届出期限事前確定届出給与の届出書を税務署に提出すべき期限を記載。うち、採用となる期限日を「イ」「ロ」「ハ」から選択しチェックする
事前確定届出給与対象者の氏名事前確定届出給与対象者の氏名と、役職名
事前確定届出給与に係る職務の執行の開始の日職務開始日と職務執行期間を記入。上記の②と同様の日付
当該(連結)事業年度対象となる事業年度
当該(連結)事業年度開始の日の属する会計期間対象となる事業年度の会計期間
事前確定届出給与に関する事項実際に支給する予定の日付(支給時期)と、支給金額(支給額)を記入。2回以上支給する場合は、その都度日付と金額を以降の行に追加記載
事前確定届出給与以外の給与に関する事項当該役員に対して支給した、または支給予定の、事前確定届出給与以外の役員報酬や給与の内容を記載。定期同額給与や、業績連動給与などを支給時期と支給金額ともに記載

届出書には決議を行った日・機関等の名称・執行開始日など記載し、付表には氏名・役職名・支給時期・支給金額などを記載します。

詳しい書き方は国税庁のWebサイトに掲載されている届出書の記載要領を参照してください。


出典:国税庁「C1-23 事前確定届出給与に関する届出」

提出先・提出期限

「事前確定届出給与に関する届出書」は管轄の税務署に提出します。提出期限は、原則として以下のうち、いずれか早い日です。

届出書の提出期限

  • 株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日から1ヶ月を経過する日
  • その会計期間開始の日から4ヶ月を経過する日

ただし、新設法人がその役員が設立時に開始する職務について「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」をした際など、一定の要件に当てはまる場合は提出期限が異なるケースがあります。


出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」

事前確定届出給与による社会保険料削減スキームが見直される?

2024年11月21日に実施された厚生労働省の社会保障審議会では、社会保険料の「標準賞与額の上限」に関する問題点として、「代表取締役などの役員の報酬を極端に低く設定して高額な賞与を支給しているケース」があることが指摘されました。

社会保険料を計算する際の標準賞与額には上限があるため、事前確定届出給与などの賞与が高額な場合でも、社会保険料はその上限額までしかかかりません。このような社会保険料削減スキームの是非については、国で議論されている状況です。

社会保険料の負担の公平性の観点から、今後の議論の行方次第では標準賞与額の上限について見直しが行われる可能性があります。


出典:厚生労働省「被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について」

まとめ

事前確定届出給与として損金に算入できれば、課税所得が減って税負担を抑えられるなどのメリットがあります。

事前確定届出給与として損金に算入するためには、その給与が法定の要件に該当することに加えて、提出期限までに届出書を税務署に提出する必要があります。

株主総会等を経て事前確定届出給与の金額が確定したら、届出書の提出期限を過ぎないようにすみやかに手続きを行いましょう。

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事前確定届出給与とは?

事前確定届出給与とは、経営者や監査役といった役員に対して所定の時期に確定額を支給する旨を定め、事前に税務署に届出をした役員報酬のことです。

詳しくは記事内、「事前確定届出給与とは」をご覧ください。

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詳しくは記事内「提出先・提出期限」をご覧ください。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。

監修者 鶏冠井 悠二

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