会計の基礎知識

時価とは?主な使われ方や注意点についてわかりやすく解説

監修 橋爪 祐典 税理士

時価とは?主な使われ方や注意点についてわかりやすく解説

時価とは、ある時点における市場での取引価格、または公正な評価額のことです。 株式であれば「取引所での現在の価格」、不動産であれば「市場で売買できると見込まれる価格」が時価にあたります。

時価は、決算書の作成や資産の売買、相続・M&Aなど、ビジネスや会計のさまざまな場面で登場します。ただし、「簿価」や「取得価額」と混同されやすいため、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

本記事では、時価の基本的な意味から簿価・取得価額との違い、会計業務における重要性までわかりやすく解説します。

目次

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時価とは

時価とは

時価とは、ある資産や負債を、特定の時点における市場価格や合理的な評価額で表した価額のことを指します。

時価の例

  • 株式:株式市場での現在の取引価格
  • 不動産:現在の市場で売買できると見込まれる価格

たとえば、購入時は100万円だった株式が現在の市場価格で120万円であれば、時価は120万円です。現在の市場価格が80万円であれば、時価は80万円になります。

このように、時価は「今この瞬間にいくらで売買できるか」を示す価格であり、市場の需給や景気動向によって日々変動します。

時価の考え方は、企業が保有する資産の実態を把握するために重要です。とくに、決算時の資産評価や資産売却、投資判断などでは、帳簿上の金額だけでなく、現在の価値を確認することが求められる場合もあります。

時価と簿価の違い

時価と簿価の違いは、現在の価値を示すか、帳簿上の価額を示すかにあります。


時価簿価
意味市場での現在の取引価格・公正な評価額帳簿に記録されている資産の価額
特徴市場の状況によって変動する取得価額や減価償却、評価損などの会計処理を反映する
主な用途資産売却・投資判断・財務分析など決算書への記載・税務申告など

時価は、評価時点における市場価格や合理的に算定された価額です。一方、簿価とは、企業の帳簿に記録されている資産や負債の金額を指します。資産の場合、取得価額から減価償却累計額や評価損などを差し引いた金額が簿価になることがあります。

つまり、簿価は会計処理の結果として帳簿に残っている金額であり、時価は現時点での実勢価値を表す金額です。

たとえば、3年前に500万円で購入した機械設備を毎年100万円ずつ減価償却していれば、現在の簿価は200万円です。しかし、その機械を中古市場で売却すると300万円で取引されているのであれば、時価は300万円となります。

この場合、簿価(200万円)と時価(300万円)の間には100万円の差額が生じます。このように、両者は必ずしも一致するとは限りません。

とくに不動産や株式、機械設備などは、市場環境や資産の状態によって時価と簿価に差が生じることがあります。

時価と取得価額の違い

時価と取得価額の違いは、評価するタイミングにあります。


時価取得価額
意味市場での現在の取引価格・公正な評価額資産を取得した際にかかった金額
特徴時点によって変動する原則として取得時に決まる
主な用途資産売却・投資判断・財務分析など取得時の会計処理・税務申告の基礎など

取得価額とは、資産を購入・取得したときに実際に支払った金額のことです。減価償却資産の場合、原則として、購入代価に加えて、その資産を事業に使える状態にするために直接要した費用も含まれます。たとえば、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税などが対象です。

一方、時価は取得時ではなく評価時点における価値を指します。

つまり、取得価額は過去の取引に基づく金額であるのに対し、時価は現在の市場環境を反映した金額です。

なお、固定資産では、取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額が簿価となります。取得価額・簿価・時価は互いに関連しながらも異なる概念であるため、これら3つの違いを正しく理解することで、会計処理や財務分析を正確に行いやすくなります。


出典:国税庁「No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」

時価が使われる主な場面

時価は、購入時の価格や帳簿上の金額だけでは現在の実態とずれることがあるため、主に資産や負債の現在の価値を把握したい場面で使われます。

ここでは、時価が使われる主な場面を以下のケースに基づいて解説します。

  • 会計・決算で資産を評価するとき
  • 不動産や株式などを売買するとき
  • 相続・贈与・M&Aなどで財産や企業価値を評価するとき

会計・決算で資産を評価するとき

時価は、会計・決算で企業が保有する資産を評価するときに使われます。企業の財務状況を適切に示すには、帳簿上の金額だけでなく、現在の価値を反映した評価が必要になる場合があるためです。

たとえば、売買目的で保有している有価証券は、決算時に時価で評価されます。取得時の価格よりも時価が上がっていれば評価益、下がっていれば評価損が生じます。

また、販売目的で保有している商品や原材料などの棚卸資産は、正味売却価額が取得原価を下回る場合には、決算時に帳簿価額を切り下げる必要があります。たとえば、商品の劣化や型落ち、市場価格の下落などにより、通常販売によって回収見込金額が取得原価を下回る場合には、帳簿上の金額を切り下げ、その差額を費用として処理します。

このように、会計・決算における時価は、企業の資産価値や損益を適切に財務諸表へ反映するために重要な考え方です。


出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第9号 棚卸資産の評価に関する会計基準」

不動産や株式などを売買するとき

不動産や株式などを売買するときにも、時価は重要な判断材料になります。売買価格が妥当かどうかを判断するには、現在の市場価格や取引相場を把握する必要があるためです。

たとえば、株式であれば証券取引所での取引価格が時価の参考になります。上場株式は市場で日々取引されているため、比較的時価を把握しやすい資産です。

一方、不動産の場合は、立地・築年数・面積・周辺の取引事例・市場動向などによって価格が変わります。そのため、近隣の売買事例や不動産会社による査定、不動産鑑定評価などをもとに時価を確認するのが一般的です。

時価を把握せずに売買を行うと、相場にそぐわない価格で購入・売却してしまう可能性があります。そのため、不動産や株式などの売買では、時価を確認したうえで価格交渉や投資判断を行うことが大切です。

相続・贈与・M&Aなどで財産や企業価値を評価するとき

相続・贈与・M&Aの場面では、時価は財産や企業価値を評価する際の基準となります。これらの場面では、対象となる資産や企業の価値を客観的に把握する必要があるためです。

相続や贈与において、土地・建物・株式などの評価額は相続税や贈与税の計算に影響するため、評価方法を正しく理解しておく必要があります。

また、M&Aでは、買収対象企業の株式価値や事業価値を評価する際に時価の考え方が用いられます。企業が保有する資産や負債を現在の価値で評価し、必要に応じて将来の収益力なども踏まえて評価額を算定するためです。

このように、相続・贈与・M&Aはいずれも多額の資金が動く場面であることが多いため、時価の正確な把握が適正な課税・取引につながります。

時価が会計業務で重要になる理由

時価が会計業務で重要になる理由は、企業が保有する資産や負債の現在価値を把握することで、財政状態や損益をより実態に即して示し、適切な経営判断や決算対応につなげられるためです。

会計帳簿には、資産を取得したときの金額や、その後の減価償却などを反映した金額が記録されます。しかし、帳簿上の金額が現在の価値をそのまま表しているとは限りません。

たとえば、保有している株式の市場価格が大きく下落している場合、帳簿上は高い金額で記録されていても、実際の価値はそれより低くなっている可能性があります。

このように帳簿上の数字と実態の乖離が大きい場合に時価を確認することで、企業の財政状態や損益の正確な把握が可能です。決算書を利用する経営者や金融機関、投資家などにとっても重要な情報になります。

時価評価や決算対応の前提となる会計情報を整理し、経理業務をスムーズに進めたい場合は、freee会計などのクラウド会計ソフトを活用する方法も有効です。

時価を用いるメリット

時価を用いることには、資産の現状把握から経営判断まで、実務上の多くのメリットがあります。

ここでは、代表的な以下の2つを解説します。

  • 資産の売却や投資判断に役立つ
  • 取引価格や評価額の妥当性を判断しやすい

資産の売却や投資判断に役立つ

時価を把握することで、資産の売却や投資判断を行いやすくなります。現在の価値を基準にすることで、売却した場合の利益や損失、保有し続けるべきかどうかを判断しやすくなるためです。

たとえば、企業が保有している株式の時価が取得価額を大きく上回っている場合、売却によって利益を得られる可能性があります。一方、時価が取得価額を下回っている場合は、売却した場合の損失や、今後の保有方針を検討する材料になります。

不動産や設備などの固定資産でも同様です。市場価格や売却見込額を把握することで、遊休資産を売却して資金化する、収益性の低い資産を見直す、新たな投資に資金を振り向けるといった判断がしやすくなります。

このように、時価は単なる評価額ではなく、経営判断や資産運用の判断材料として活用できます。

取引価格や評価額の妥当性を判断しやすい

時価を用いると、取引価格や評価額が妥当かどうかを判断しやすくなります。

不動産の売買や株式の譲渡など、資産が動く取引では、売買価格が時価から大きく乖離していないかを確認することが重要です。時価と照らし合わせることで、取引条件の交渉や合意において根拠のある判断ができます。

また、相続・贈与・M&Aなどで財産や企業価値を評価する場面でも、時価の確認は重要です。評価額が実態とかけ離れていると、「低額譲渡」や「著しく高額な取引」などの税務上の問題や取引当事者間のトラブルにつながる可能性があります。

ただし、時価は必ず一定になるとは限りません。市場価格が明確な資産もあれば、評価方法・評価者によって金額に幅が出る資産もあります。そのため、時価を用いる際は、どの時点の価格か、どの評価方法を使ったかを確認することが大切です。

時価を用いる際の注意点

時価は資産の実態把握や経営判断に役立つ一方で、実務で活用する際には以下のような注意点があります。

  • 時価は評価する時点によって変わる
  • 市場価格がない資産は評価が難しい
  • 会計上の評価と税務上の扱いが異なる場合がある

時価を確認する際は、いつの時点の価格か、どの評価方法を使ったか、何の目的で利用するのかを明確にしたうえで、必要に応じて税理士や公認会計士などの専門家への相談も検討しましょう。

時価は評価する時点によって変わる

時価は、評価する時点によって変わります。市場価格や資産価値は、景気・金利・需給・為替・業績・周辺環境などの影響を受けて変動するためです。

たとえば、上場株式の時価は日々の取引価格によって変わります。同じ株式でも、決算日時点の価格と売却日時点の価格が異なることは珍しくありません。不動産も、地域の開発状況や人口動向、金利の変化などによって評価額が変動します。

会計・決算で時価を用いる場合や、M&Aなどの取引では、基準にするタイミングによって評価額が異なるため、時価を確認する際は金額だけでなく「いつの時点の価格なのか」を明確にすることが重要です。

市場価格がない資産は評価が難しい

市場価格がない資産は、時価の評価が難しくなります。市場で日々取引されている資産であれば、取引価格を参考にしやすい一方、取引が少ない資産や個別性の高い資産は、客観的な価格を把握しにくいためです。

たとえば、非上場株式・不動産・特殊な機械設備・無形資産などは、同じ条件の取引事例が少なく、評価額の算定に専門的な判断が必要になることがあります。

市場価格がない資産を評価する場合は、類似資産の取引事例や収益力、再調達にかかる費用などをもとに時価を算定することがあります。ただし、どの方法を用いるかによって評価額が変わるため、算定根拠を明確にしておくことが大切です。

会計上の評価と税務上の扱いが異なる場合がある

時価を用いる場合、会計上の評価と税務上の扱いが異なる場合がある点にも注意が必要です。会計と税務では、目的や基準が異なるため、同じ資産でも評価方法や損益の扱いが一致しないことがあります。

たとえば、会計上は資産の価値が下がったことを反映して評価損を計上する場合があります。しかし、その評価損が税務上も同じように損金として認められるとは限りません。

会計と税務では目的やルールが異なるため、時価を用いる処理では、それぞれの扱いを確認することが大切です。とくに、決算処理や税額計算に影響する場合は、会計基準や税法に沿って判断し、必要に応じて税理士や公認会計士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

時価とは、ある資産や負債を特定の時点で評価した場合の価額を指します。取得価額や簿価とは異なり、評価時点の市場環境や資産の状態を反映するため、同じ資産でも時期によって金額が変わることがあります。

会計・決算では企業の財政状態をより実態に近い形で把握するために、時価の考え方を理解しておくことが重要です。

そのうえで、時価を適切に活用するには、取得価額や簿価など比較対象となる会計情報を日頃から正確に管理しておくことが大切です。

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よくある質問

時価とはどういう意味ですか?

時価とは、ある時点における市場での取引価格、または公正な評価額のことです。株式であれば「取引所での現在の価格」、不動産であれば「市場で売買できると見込まれる価格」が時価にあたります。

時価は市場の需給や経済状況、資産の状態などによって変動するため、評価する時点を明確にすることが大切です。

詳しくは、記事内「時価とは」をご覧ください。

時価はなぜ会計業務で重要なのですか?

時価が会計業務で重要なのは、企業が保有する資産や負債の価値を、より実態に即して把握できるためです。取得価額や簿価だけでは、現在の市場価値や資産の状態を十分に反映できない場合があります。

時価を確認すると帳簿上の金額と現在の価値との差を把握しやすくなり、企業の財政状態や損益をより適切に示せるようになります。これによって、経営判断や決算対応、金融機関・投資家への説明に役立てられます。

詳しくは、記事内「時価が会計業務で重要になる理由」をご覧ください。

時価評価とは何ですか?

時価評価とは、資産や負債を取得時の金額や帳簿上の金額ではなく、評価時点の時価に基づいて評価することです。

たとえば、企業が保有する有価証券について、決算日時点の市場価格をもとに評価額を見直す場合などが該当します。

時価評価を行うことで、財務諸表に現在の資産価値を反映しやすくなります。ただし、すべての資産が時価評価の対象になるわけではありません。

会計基準や資産の種類、保有目的によって扱いが異なるため、必要に応じて専門家に確認しましょう。

時価はどのように調べますか?

時価の調べ方は、資産の種類によって異なります。

上場株式であれば、証券取引所や証券会社のサイトなどで市場価格の確認が可能です。不動産の場合は、周辺の取引事例・公示価格・路線価・不動産会社の査定・不動産鑑定評価などが参考になります。

中古設備や車両などは、類似商品の取引価格や査定額を確認する方法があります。一方、非上場株式や特殊な資産など、市場価格が明確でないものは評価が難しく、専門的な判断が必要です。

会計・税務に関わる場合は、税理士や公認会計士などに相談すると安心です。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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