会計の基礎知識

貸倒引当金とは?計算方法や仕訳、貸倒引当金組入と戻入の処理方法

公開日:2019/12/11

貸倒引当金とは?計算方法や仕訳、貸倒引当金組入と戻入の処理方法

経営上のリスクをあらかじめ想定して備えておくのが「貸倒引当金」です。事業活動ではさまざまなリスクにさらされてしまうものです。取引先が突然倒産したり、思いがけない損失が発生してしまうこともあります。

安定的な経営を行うためには、事業を取り巻くリスクを理解して、必要な対策を講じておく必要があります。今回は、貸倒引当金の計算方法や仕訳のやり方など経理処理の方法について詳しく見ていきましょう。[監修:筧 智家至(公認会計士・税理士)]

目次

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貸倒引当金とは?

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)は取引先が倒産に陥り、支払い不能となった状態などに備えて、事前に損失額を予測して計上しておく引当金のことを指します。債権が回収不能となることを貸倒れといい、それによって生じる損失のことを貸倒損失と呼びます。

ただ、将来の損失に備えるといっても、必要以上に貸倒引当金を計上すると、利益操作にもつながってしまう恐れがあるため、あくまでも合理的に見積もることができる範囲に限られています。

貸倒引当金として認められる債権は、売掛金・受取手形・貸付金・未収金などです。前払金・仮払金・手付金などは対象とならない点に注意しておきましょう。

貸借対照表で負債として扱う理由

貸倒引当金は会計上、負債もしくは資産のマイナス勘定として取り扱われます。これは、将来的に発生する恐れのある費用として計上するからであり、負債とセットで考える必要があるのです。

また、会計ルールのなかには「費用収益対応の原則」というものがあり、収益に費用を対応させなければならないとなっています。売上計上した債権に対応させる形として、売上債権が発生した会計期間に、貸倒引当金を計上しておくことで会計上の整合性を保つことができるのです。

税務と会計上の扱いの違い

税務上の貸倒引当金は、売掛金などの債権が貸倒れとなる際に発生する損失の見込額として一定の限度額まで、損金として算入できます。貸倒引当金の繰入額は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分して計算します。個別評価金銭債権とは、倒産寸前状態の取引先など回収不能になる可能性が高い債権、一括評価金銭債権についてはそれ以外の普通の債権のことです。

貸倒引当金の計上が税務において認められているのは、原則として資本金が1億円以下の中小法人に限定されています。金融機関などを除いて、規模の大きな企業には認められていません。

その一方で、会計上の貸倒引当金は経営実態を適切に反映させるために、売上に対応する部分を貸倒引当金に計上する費用収益対応の原則によっています。事業活動を行っていくうえでは売掛金や貸付金が回収不能となることもめずらしくありません。

会計上では回収不能となったことが確定せずとも、一定の計算方法にもとづいて貸倒引当金の計上が可能です。回収不能の恐れがある債権は、事業年度の末日に取り立てることができないと見込まれる金額を控除するように定められています。

貸倒引当金の計算方法

貸倒引当金を計上するためには、将来的に発生する損失額がどの程度であるのかを正しく算出する必要があります。貸倒引当金の計算方法は「一括評価」と「個別評価」に分けられます。前述した通り、個別評価しなければならないものは回収不能になる可能性がとても高いものであり、一括評価できるものはそれ以外となります。

一括評価

一括評価での貸倒引当金の計上は、売掛金、貸付金などの金銭債権が対象で、個別評価の対象となる金銭債権を除いたものが対象となります。また個人事業主の場合、一括評価の対象は事業所得となっており、不動産所得や山林所得は対象ではありません。

個人事業主では青色申告者だけが一括評価を行うことができ、法定繰入率は5.5%(金融業は3.3%)となっています。

実績繰入率(貸倒実績率)

貸倒引当金は一括評価の場合では、「期末の債権額×繰入率」によって計算します。繰入率は「実績繰入率」と「法定繰入率」の2種類があり、繰入率が高いほど引当金の額が多くなるため、一般的には2つのうちで高いほうを採用することになります。

実績繰入率の計算は、過去3年間に生じた貸倒損失の額にもとづいて算出可能です。計算式としては以下のようになります。

{(a+b-c-d)×(12÷各事業年度の合計月数)}÷e=実績繰入率

a:過去3年間の貸倒損失合計額
b:過去3年間の個別評価分の引当金繰入額
c:過去3年間の個別評価分の引当金戻入額
d:適格組織再構成による引き継ぎを受けた貸倒引当金の金額
e:過去3年間の一括評価の合計額÷事業年度の数(一般的には3年)

法定繰入率

法定繰入率は期末資本金が1億円以下の中小法人のみに認められているものです。繰入限度額は、一括評価金銭債権の合計額から得意先への債務の合計額を控除した後に、国が定めている業種ごとの法定繰入率を掛け合わせて算出します。


業種判定

法定繰入率は、業種によって細かく定められています。業種別の法定繰入率は以下の通りです。

卸売業・小売業(飲食店等を含む):1000分の10
製造業・電気業・水道業:1000分の8
金融業・保険業:1000分の3
割賦販売小売業:1000分の13
サービス業などのその他の業種:1000分の6

なお、2つ以上の事業を行っている場合には、それらのうちメインとなる事業にかかる法定繰入率を採用します。各事業の収入額や事業規模などによって総合的に判定される仕組みです。

個別評価

個別評価での貸倒引当金の計上は、会社更生法で定められている更生手続き開始の申立てや更生計画認可の決定などの理由に該当するものが対象となります。個人事業主の場合、事業所得・不動産所得・山林所得についての金銭債権などが、個別評価による貸倒引当金として認められています。

貸倒引当金の算出は貸金ごとに行う必要があり、回収の見込みがないと認められる金額や貸金の50%までなど理由によって認められる範囲も異なります。

貸倒引当金繰入と貸倒引当金戻入とは?

貸倒引当金繰入とは、将来の貸倒れとなる金額を見積ったうえで引当金として計上し、そのうち当期の費用として繰り入れたものであり、決算整理の際などに使用する勘定科目です。貸倒損失が実際の損失額であるのに対して、貸倒引当金繰入はあくまでも見積りであるのが特徴です。

貸倒引当金繰入は貸倒引当金繰入額といわれることもあり、売掛金などの金銭債権は販売費および一般管理費として計上し、その他の金銭債権に対する繰入額については、営業外費用として計上します。

また、貸倒引当金戻入とは債権の貸倒れは毎年発生するものとは限らないので、決算時において前期に設定した貸倒引当金が残っている場合もあります。この場合、「洗替法」と「差額補充法」のどちらかの方法で処理を行います。

洗替法

洗替法は前期分の貸倒引当金が残っている場合、全額を貸倒引当金戻入額として収益計上するものであり、改めて当期の貸倒見積額を全額繰り入れる方法です。たとえば、決算時に50万円の貸倒引当金を計上して、前期の貸倒引当金の勘定残高を40万円とすると洗替法による仕訳は以下のようになります。


《仕入時》
借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 400,000円 貸倒引当金戻入額 400,000円
貸倒引当金繰入額 500,000円 貸倒引当金 500,000円

差額補充法(実績法)

差額補充法では、前期との差額分を貸倒引当金として繰り入れたり、戻し入れたりする方法です。たとえば、決算時に50万円の貸倒引当金を計上して、前期の貸倒引当金の勘定残高を40万円とすると差額補充法による仕訳は以下のようになります。


《貸倒引当金の勘定残高よりも貸倒見積額が多いケース》
借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入額 100,000円 貸倒引当金 100,000円

貸倒引当金の勘定残高よりも、貸倒見積額が多いケースでは貸倒引当金が不足している状態といえます。そのため、貸倒引当金繰入額という勘定科目を用いて、不足分を補充することになります。繰入額は、貸倒見積額から貸倒引当金の勘定残高を差し引くことで算出可能です。

その一方で、貸倒引当金の勘定残高よりも貸倒見積額が少ないケースでは、貸倒引当金が余分にある状態を示しているのです。たとえば、決算時に40万円の貸倒引当金を計上して、前期の貸倒引当金の勘定残高が50万円だとすると、以下のような仕訳となります。


《貸倒引当金の勘定残高よりも貸倒見積額が少ないケース》
借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 100,000円 貸倒引当金戻入額 100,000円

貸倒引当金戻入額という勘定科目を用いて、貸倒引当金の余剰分を減少させます。戻入額は、前期の貸倒引当金の勘定残高から貸倒見積額を差し引くことによって算出可能です。

貸倒引当金は節税になる?

貸倒引当金を経費として計上するには、確定申告書の「貸倒引当金繰入額の計算」という項目に金額を明記することが条件となっています。青色申告決算書には記入欄があり、法人の場合では個別評価による貸倒引当金は、別表11(1)「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」も一緒に提出します。一括評価によるものは、別表11(1の2)「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」を提出しましょう。

貸倒引当金は事業年度ごとに計算するものであり、貸倒損失が発生しなかった場合には戻し入れなければなりません。そのため、当期分の繰入額よりも前期分の戻入額のほうが多いときには、所得を押し上げる要因にもなってしまいます。

貸倒引当金は将来発生する恐れのあるリスクに備えると同時に、正しく計上することで節税効果がもたらされるものでもあります。特に初年度は節税効果が高いので、税法上のルールを守って適切に処理を行ってみましょう。

まとめ

取引先の倒産などの理由で貸倒損失が発生してしまうと、経営にとって良くない影響を及ぼしてしまう恐れもあります。万が一に備えて、貸倒引当金を計上しておくことも大切です。

ただし、貸倒引当金には一定のルールがあり、適切に処理を行っていかなければなりません。また、貸倒引当金を計上していても実際に資金が戻ってくるわけではないので、日頃の債権管理が重要になります。クラウド型の会計ソフトを導入するなどして、経理処理を効率化し、債権の回収漏れがないように意識を向けておくことが肝心です。

監修:筧 智家至(公認会計士・税理士)

慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理士法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。

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