会計の基礎知識

【会計の基礎知識】国際財務報告基準IFRSとは

国際財務報告基準IFRSとは

 世界各国には自国独自の会計基準を持つ国も多くありますが、近年、国際財務報告基準「IFRS」が世界中で急速に普及しています。
本記事では、日本企業の会計に大きな変化をもたらすIFRSの概要について、企業に与える影響も踏まえて解説していきます。

目次

IFRSとは

 IFRSとは世界共通の会計基準のことです。国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)を略した呼称です。

国際会計基準審議会(IASB)が策定する会計基準であり、IASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)の時代に作られた会計基準の一部が継承されています。

IFRSは、IFRS解釈指針委員会(IFRIC)およびIFRICの前身である解釈指針委員会(SIC)により発表された解釈指針(SICsおよびIFRICs)の総称ともなっています。

IFRSが導入された経緯および海外の動向

 これまでは、貿易など国を超えた取引でも、国ごとに異なった会計基準を運用するのが普通でしたが、経済活動のグローバル化に伴って一定の会計基準で統一する必要性が高まりました。

特に財務諸表などについては、会計基準がバラバラだと比較可能性を確保できない、という弊害が生まれました。これを受け、国を超えた会計基準の必要性が提起されたことからIFRSが導入されることとなりました。

昭和48年にIASCが国際会計基準(IAS)の作成に着手し、平成5年にはIASの改訂作業はすべて完了しました。平成13年には、IASCをより強固な組織とするためにIASBへ改組され、それ以降、IFRSの改訂が進められることとなります。


 平成17年には欧州連合(EU)域内の上場企業に転機が訪れ、連結財務諸表などを比較しやすくすることを目的に、IFRSが強制適用されることとなりました。そして域外上場企業にも「IFRSまたはこれと同等の会計基準」を適用することが義務付けられたことを機に、世界の多くの国々でIFRSを自国の会計基準として採用する動きが急速に広がりました。平成29年現在では世界130以上の国で採用されています。

IFRSは「強制適用」の他、「任意適用」や、自国の会計基準とIFRSの差異を無くす「コンバージェンス」などの採用スタイルがあります。


 多くの国でIFRSが採用される中で、経済および資本大国であるアメリカや中国ではいまだにIFRSを全面導入していません。

特に、世界最大の資本市場を擁するアメリカの動向は世界が注目するところですが、現在は国内の上場している外国登録企業(FPI)にのみIFRS採用が認められています。平成20年には米国証券取引委員会(SEC)がロードマップ案を公表し、平成21年から国内の上場企業での任意適用を認めること、および企業規模に応じて平成26年から段階的にIFRSの強制適用を進めるとしていました。

しかし平成22年、IFRSに対する方向性を再確認するための声明とワークプランが公表され、平成21年からの任意適用は見送られています。そしてこのワークプランでは、IFRSを米国の財務報告制度に取り入れるべきかどうかの判断材料として、特に懸念されている「IFRSの十分な開発および均質適用」「投資家の利益のための基準開発の独立性」「IFRSに関する投資家の理解と教育」「米国の規制環境」「企業への影響」「人的資源の準備状況」の6つの点について調査するようSECスタッフに指示がなされました。

平成24年にはすべての調査が終了し最終報告書が提出されていますが、それ以降SECはIFRSの導入に関しては明確な姿勢を見せていません。SEC委員の発言などからうかがう分には、今後数年のうちは米国企業への強制適用の可能性は低いと解釈できます。


 日本では平成22年3月期の年度財務諸表から、任意適用でのIFRS採用が認められています。上場しているグローバル企業や大企業を中心に、平成29年2月時点では135社に採用されています。
当初は平成24年には日本企業に強制適用される予定でしたが、東日本大震災その他の事情により現在まで強制適用は行われていません。

IFRSがもたらす会計への影響

 では、日本の企業会計へIFRSを導入した場合にどのような影響がおよぶのでしょうか? 代表的な点を4つ取り上げます。

1.細則主義から原則主義へ

 IFRSは原則主義です。

よって、解釈の仕方については非常に自由度が高く、他の会計基準にありがちな細かな規定や数値化された基準等はほとんど定められていません。そして解釈の根拠を外部に明確に示す必要性があるため、大量の注記がなされます。

対して日本の従来の会計基準は細則主義であり、会計基準や解釈指針、実務指針等々、細かく規定が定められています。IFRS導入による180度の変化点と言えるでしょう。

2.公正価値測定方法の新基準

 平成23年にIASBが公表した「公正価値測定」で、IFRSにおける公正価値の測定方法が新基準へ統一されています。これは公正価値測定の時点を変更するものではなく、IFRSが公正価値測定を要求または容認する場合における基準がポイントとなります。

具体的には、以下の公正価値の測定方法について定めています。

  • 金融資産および負債
  • 非金融資産および負債

金融商品や生物資産または農産物を保有する企業には、特に大きな影響をおよぼす点となります。

3.財務状態計算書(貸借対照表)重視へ

 IFRSでは、包括利益の算定が求められます。また投資家や債権者が必要としている資産価値を評価する情報として貸借対照表が用いられますが、この際、含み損益まで含めた貸借対照表を重視する考え方があります。

対して日本の会計基準では、期間損益を重視する損益計算書重視の考え方です。貸借対照表は損益計算書項目と比較して軽視される傾向にあり、貸借対照表項目が十分把握されていないことも多くありました。IFRS導入後は、貸借対照表の理解や正しい解釈がさらに求められることとなります。

4.会計方針の統一

 日本基準では、同一の環境下で行われた同一の取引等については原則として統一する方針が採られています。しかしIFRSでは、類似する状況における同様の取引および事象について統一することとなります。

会計以外のIFRSの影響

直接の会計以外にも、このような影響がおよびます。

1.人材

 前述のように、IFRSは原則主義での会計となります。業務の実態を考慮しながらIFRSを取り入れ、未知の事態に遭遇しても会計基準をみずから論理的に考え適切な会計処理を組み立てていけるような、柔軟かつ聡明な人材が求められることになります。
また、いまだ改訂され続けているIFRS改正へのフレキシブルな対応や、難解な会計基準への深い洞察と的確な理解も求められます。

2.業務プロセス

 IFRS導入によって、グループ会社における会計処理の統一が必須となります。
決算時の財務報告や固定資産の判定・評価、販売における収益認識基準の変更、有給休暇の消化率などのデータ収集や退職給付債務の計算など、様々な業務プロセスが影響を受けます。

3.経営管理

 IFRSでは経済実態が重視されます。つまり、経営者にとってより厳しい経営管理が求められることになります。売上の計上基準や減価償却費が変化するため、売上金額や収益が大きく変動する可能性があります。

4.情報システム

 収益認識や固定資産に関係する情報システムは、特に大きな影響を受けます。
会計システムでは複数会計基準への対応や過年度遡及修正への対応などが求められます。連結システムは未実現損益の税効果対応、マネジメントアプローチへの対応などが必要です。固定資産システムでは、固定資産台帳の複数会計基準への対応、資産除去債務への対応、投資不動産の公正価値対応などがあります。

まとめ

 日本においては一部の企業にIFRSが採用されていますが、今度はさらなる普及が見込まれており、いずれは強制適用の可能性もあります。
会計業務だけでなく企業全体の業務に少なからぬ影響を与えるため、導入は慎重に検討すべきです。

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