監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士
貸借対照表とは、企業のある時点での財政状態(資産・負債・純資産)を表す決算書類です。企業がどのような資産を持ち、それをどのように調達しているのかを示します。
貸借対照表で企業が保有する資産などの内訳を詳細に確認できるため、財務上の安定性や課題、経営リスクなどを知るうえで重要です。
本記事では、貸借対照表の読み方や作り方、損益計算書との違い、表を正確に作成するためのポイントを解説します。
目次
- 貸借対照表(B/S)とは
- 貸借対照表は財務三表のひとつ
- 貸借対照表と損益計算書の違い
- 貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書の違い
- 貸借対照表の基本的な構成
- 資産の部
- 負債の部
- 純資産の部
- 貸借対照表の見方・読み方のポイント
- 1. 左側の「資産」から資金の使い道を確認する
- 2. 右側の「負債・純資産」から資金の調達方法を確認する
- 3. 前期から大きく増減した項目を確認する
- 4. 損益計算書などとあわせて増減の理由を確認する
- 貸借対照表を使った財務分析の5つの指標
- 自己資本比率
- 自己資本利益率
- 流動比率・当座比率
- 固定比率
- 負債比率
- 貸借対照表の作り方
- 1. 仕訳帳への記入
- 2. 総勘定元帳への転記
- 3. 決算整理前試算表の作成
- 4. 決算整理仕訳
- 5. 決算整理後試算表の作成
- 6. 貸借対照表の作成
- 大変な法人決算と税務申告を効率的に行う方法
- まとめ
- よくある質問
貸借対照表(B/S)とは
貸借対照表とは、決算日など特定の時点における企業の財政状態(資産・負債・純資産)を表す決算書類です。英語で「Balance Sheet」と表記することから、「B/S」や「バランスシート」とも呼ばれます。
貸借対照表は決算時期に作成するのが一般的ですが、毎月の財産状況を正確に把握するために、月次で決算を行う企業もあります。
貸借対照表からは、会社がどれだけの資産を保有しているか、その資産を保有するためにどう資金調達したのか(株主から調達、借入など)、またその金額はいくらなのかなどを知ることができます。
貸借対照表からわかること
- 資産:現金や預金、売掛金、商品、建物など会社が保有する財産
- 負債:買掛金や借入金など将来返済が必要な債務
- 純資産:資本金や利益余剰金など原則として返済義務のない資金
貸借対照表に記載する具体的な項目については、記事内の「貸借対照表の基本的な構成」で詳しく説明しています。
貸借対照表は財務三表のひとつ
貸借対照表と損益計算書、キャッシュ・フロー計算書は、財務諸表のなかでも企業の財政状態や経営成績、資金の動きを把握するうえで中心となる書類であり、まとめて「財務三表」と呼ばれます。
| 名称 | 得られる情報 |
|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | ある時点での企業の財政状態 |
| 損益計算書(P/L) | 一定期間の企業の収益・費用・利益 |
| キャッシュ・フロー計算書(C/F) | 一定期間の企業の現金(キャッシュ)の流れや動き |
3つの書類は役割が異なるものの、下図のとおり、貸借対照表を軸に相互に関連しあっています。
具体的には、前期末に作成した貸借対照表と当期末に作成した貸借対照表を比較することで、利益および現金がどのように増減したかがわかります。
その増減した利益の明細書が「損益計算書」で、現金の増減を示すのが「キャッシュ・フロー計算書」です。
貸借対照表と損益計算書の違い
貸借対照表と損益計算書では、表している内容と対象となる時間の範囲が異なります。
貸借対照表は、決算日など特定の時点における資産・負債・純資産の残高を示し、会社の財政状態を明らかにする書類です。一方、損益計算書は、1年間など一定期間に発生した収益と費用から利益または損失を算出し、会社の経営成績を示します。
つまり、貸借対照表からは「会社がどのような財産や債務を保有しているか」、損益計算書からは「一定期間にどれだけの利益または損失が生じたか」を読み取れます。
【関連記事】
損益計算書(P/L)とは?構成や見方、重要な指標を解説
貸借対照表とキャッシュ・フロー計算書の違い
貸借対照表が特定時点の財政状態を表すのに対し、キャッシュ・フロー計算書は一定期間における現金および現金同等物の増減と、その要因を示す書類です。
キャッシュ・フロー計算書では、現金の動きを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分します。これにより、本業でどれだけ現金を得たのか、設備投資にいくら使用したのか、借入れや返済によって現金がどのように動いたのかを確認できます。
貸借対照表を前期末と当期末で比較すれば、現金・預金の残高がどれだけ増減したかは把握できます。ただし、その増減がどのような活動によって生じたのかまでは十分に読み取れません。現金の増減理由や資金繰りの実態を確認するには、キャッシュ・フロー計算書とあわせて分析する必要があります。
貸借対照表の基本的な構成
会計業務では取引について記帳する際、左側を「借方」、右側を「貸方」として、ひとつの取引を「原因」と「結果」という2つの側面から記載するのが基本です。
貸借対照表は、下図のように左側の「資産の部」と、右側の「負債の部」「純資産の部」で構成されます。左側は調達した資金をどのような形で保有・運用しているか、右側はその資金をどのような方法で調達したかを示す項目です。
なお実際に貸借対照表を作成する際は、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」のそれぞれに該当する主要な勘定科目の詳細を記載し、財政状態を可視化します。
このとき、以下の会計等式が成り立ちます。
資産合計 = 負債 + 純資産
これは、企業の保有する資産は、負債(借金など)と純資産(出資や利益の蓄積)で構成されるためです。
資産の部
資産の部は、現金や預金、売掛金、商品、建物、土地など企業が所有する資産を一覧で記載する欄です。通常は現金化しやすい順に上から並べ、流動資産(現金など)、固定資産(土地など)、繰延資産(開業費など)の順で記載します。
資産の部は、貸借対照表の左側に記載します。貸借対照表の左側を見るだけで、その会社がどのような資産をどれくらい持っているのかがわかり、資産全体の保有状況を知ることができます。
それぞれの資産に含まれる勘定科目は、以下のとおりです。
流動資産
流動資産とは、正常な営業活動サイクルで発生する資産(正常営業循環基準)や、決算日の翌日から1年以内に現金化または費用化される資産のことです。
流動資産には、以下のような勘定科目を記載します。
【流動資産の主な勘定科目】
- 現金
- 預金
- 売掛金
- 受取手形
- 有価証券
- 商品
- 前払費用 など
流動資産の金額や内訳を見ると、会社が当面の支払いに充てられる資産をどの程度保有しているかを確認できます。
固定資産
固定資産とは、長期間利用したり保有したりする資産や、1年を超えて現金化・費用化する資産のことです。固定資産は有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つの区分に分けて記載します。
固定資産に該当するものとしては以下が挙げられます。
【固定資産の例】
- 建物
- 車両運搬具
- 土地
- のれん(営業権)
- 投資有価証券 など
固定資産の割合が高い場合、多額の資金が設備などに固定されている可能性があります。そのため、固定資産の取得資金を自己資本や長期借入金で賄えているかも確認する必要があります。
繰延資産
繰延資産とは、すでに支出した費用のうち、その効果が将来にわたって続くため一時的に資産として計上するものです。本来は費用として扱われるべきものですが、効果が長く続くため、一時的に資産として計上したうえで数年かけて償却・費用化します。
繰延資産の具体例は以下のとおりです。
【繰延資産の例】
- 創立費
- 開業費
- 開発費
- 株式交付費
- 社債発行費 など
繰延資産は貸借対照表の資産の部に記載されますが、現金や土地のように換金できる財産ではありません。貸借対照表を分析する際は、ほかの資産とは性質が異なる点を踏まえて確認します。
負債の部
負債の部には、買掛金や借入金など、会社が将来返済または支払いを行う義務のある債務を記載します。資産の部と同様に、支払期限の到来が早い流動負債を上に、1年を超えて支払期限が到来する固定負債を下に記載します。
企業の資本は大きく分けて「自己資本」と「他人資本」の2つがあります。
自己資本は、企業が返済の義務を負わない資金であり、主に株主からの出資や会社の利益の蓄積によって形成されます。一方、負債の部に記載される項目は「他人資本」にあたり、未払金や社債など、外部から調達し、一定期間内に返済や支払いを求められる資金が該当します。
負債の部は、貸借対照表の右側上部にまとめて記載します。
流動負債
流動負債とは、正常な営業活動サイクルで発生する負債(正常営業循環基準)や、1年以内に返済予定の負債のことです。以下のようなものが流動負債に該当します。
【流動負債の例】
- 買掛金
- 支払手形
- 未払金
- 短期借入金
- 預り金 など
流動負債が流動資産に比べて多い場合は、短期的な支払能力や資金繰りを慎重に確認する必要があります。
固定負債
固定負債とは、決算日の翌日から1年を超えて返済・支払期限が到来する負債です。短期間で支払いが発生する流動負債とは異なり、長期的な返済計画に基づいて支払う債務が中心となります。
【固定負債の例】
- 長期借入金
- 退職給付引当金 など
固定負債が多い場合、直ちに資金繰りが悪化するとは限りません。ただし、将来の返済負担や支払利息が経営に及ぼす影響を考慮する必要があります。
純資産の部
純資産の部は、資産の総額から負債の総額を差し引いた部分です。貸借対照表の右側下部に記載され、主に株主から受けた出資や、会社が事業活動を通じて蓄積した「自己資本」が該当します。
この自己資本は、大きく「株主資本」と「株主資本以外」に区分されます。それぞれ、以下が該当します。
株主資本
株主資本とは、株主から払い込まれた資金や、会社がこれまでに蓄積した利益などで構成される項目です。具体的には、以下のような項目が株主資本に含まれます。
【株主資本の例】
- 資本金
- 資本剰余金
- 利益剰余金
- 自己株式 など
資本金と資本剰余金は主に株主からの出資に関係する項目です。利益剰余金には、会社が事業活動によって得た利益のうち、配当などで社外へ流出せず社内に蓄積された金額が反映されます。なお、自己株式は株主資本から差し引く項目として表示します。
株主資本以外
純資産の部には、株主資本のほかに「評価・換算差額等」や「新株予約権」なども記載されます。具体的な項目は以下のとおりです。
【株主資本以外の例】
- その他有価証券評価差額金
- 繰延ヘッジ損益
- 土地再評価差額金
- 新株予約権 など
その他有価証券評価差額金などは、保有資産を時価評価した際に生じた評価差額を表します。新株予約権は、あらかじめ定められた条件で会社の株式を取得できる権利です。
なお、純資産と自己資本は、厳密には同じものではありません。新株予約権などは純資産に含まれますが、一般的な自己資本比率の計算で用いる自己資本には含めないため、財務分析では区別して扱います。
貸借対照表の勘定科目について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご確認ください。
【関連記事】
貸借対照表でよく使われる勘定科目
貸借対照表の見方・読み方のポイント
貸借対照表を見る際は、資産・負債・純資産の金額だけでなく、それぞれの構成やバランスを確認します。まずは計算を伴わない基本的な見方を押さえ、そのうえで後述する自己資本比率や流動比率などの財務指標を用いると、会社の財政状態をより詳しく分析できます。
ここでは、貸借対照表を読む際に確認したいポイントを順番に解説します。
1. 左側の「資産」から資金の使い道を確認する
貸借対照表の左側には、会社が調達した資金をどのような形で保有・運用しているかが記載されています。
現金や預金が多ければ、当面の支払いに使用できる資金を一定程度確保していると考えられます。売掛金が多い場合は、商品やサービスの代金をまだ回収できていない状態です。
また、商品や原材料などの棚卸資産が増えているときは、過剰在庫や売れ残りが発生していないか確認する必要があります。建物や機械装置などの固定資産が多い会社は、設備に多くの資金を投じていると読み取れます。
ただし、適切な資産構成は業種や事業内容によって異なるため、自社の特性を踏まえた判断が必要です。
2. 右側の「負債・純資産」から資金の調達方法を確認する
一方、貸借対照表の右側を見ると、資産の取得に必要な資金をどのような方法で調達したかがわかります。
負債は、借入金や買掛金など、将来返済・支払いが必要な資金です。一方、純資産には、株主からの出資や会社が蓄積した利益などが含まれます。
借入金が多い場合でも、事業拡大や設備投資を目的とした計画的な調達であれば、一概に財務状況が悪いとは判断できません。金額だけを見るのではなく、借入れの目的や返済期限、事業によって得られる収益との関係も確認しましょう。
3. 前期から大きく増減した項目を確認する
貸借対照表は、当期の数値だけでなく、前期以前の数値と比較すると変化を把握しやすくなります。
たとえば、売掛金が大幅に増えている場合は、売上の増加だけでなく、代金回収の遅れが生じている可能性もあります。棚卸資産が増加していれば、販売状況に対して在庫が過剰になっていないか確認が必要です。
借入金や現金・預金などについても、増減した金額だけで判断せず、その理由まで確認します。複数年度の貸借対照表を並べると、一時的な変化なのか、継続的な傾向なのかを見分けやすくなるでしょう。
4. 損益計算書などとあわせて増減の理由を確認する
貸借対照表からは決算日時点の財政状態を把握できますが、資産や負債が増減した理由までは十分に読み取れません。
たとえば、現金・預金が減少している場合、その原因は赤字とは限らず、設備投資や借入金の返済である可能性もあります。損益計算書から収益や費用、利益を確認し、キャッシュ・フロー計算書から現金の動きを確認すると、貸借対照表の変化をより正確に把握できます。
貸借対照表を使った財務分析の5つの指標
貸借対照表の数値を用いると、企業の財務的な安全性や資本の効率性、短期的な支払能力などを分析できます。貸借対照表を使って分析できる主な財務指標は以下の5つです。
貸借対照表から分析できる指標
- 自己資本比率
- 自己資本利益率(ROE)
- 流動比率・当座比率
- 固定比率
- 負債比率
これらの指標を用いた分析は企業の経営改善に役立つため、それぞれの分析方法を正しく理解しておきましょう。
貸借対照表を使った分析について詳しく知りたい方は、別記事「貸借対照表を使った財務分析のやり方」をご覧ください。
自己資本比率
自己資本比率とは、総資産に占める自己資本の割合を示す指標です。借入金など返済義務のある資金への依存度を確認し、中長期的な財務の安定性を分析する際に用います。
計算式は以下のとおりです。
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資産 × 100
※総資産は、負債の部と純資産の部の合計金額
自己資本比率が高いほど、返済義務のない資金によって多くの資産を賄っており、一般的には財務上の安定性が高い健全な企業だと判断できます。
ただし、業種によって自己資本比率の平均は異なります。業界平均に対し、平均値の+10%以上の自己資本比率であれば、財務的に安心できる状態であると判断できるでしょう。
自己資本利益率
自己資本利益率(ROE)とは、自己資本に占める当期純利益の割合を示す指標です。貸借対照表の自己資本と、損益計算書の当期純利益を用いて、以下の計算式で求められます。
自己資本利益率(%)= 当期純利益 ÷ 期首・期末の平均自己資本 × 100
期首・期末の平均自己資本 = (期首自己資本 + 期末自己資本)÷ 2
一般的に、ROEは10%以上であれば良好な状態であるといえます。ROEの数値が高いほど、自己資本を使って効率よく利益を生み出せていることを表します。
※10%の水準は主に上場企業で用いられる目安です。中小企業の場合は、同業種の平均や自社の過年度推移との比較で判断するとよいでしょう
流動比率・当座比率
流動比率と当座比率は、どちらも企業の短期的な支払能力を評価する指標です。流動比率は、1年以内に支払期限が到来する流動負債に対し、1年以内に現金化される流動資産をどの程度保有しているかを示します。
流動比率は以下の計算式で求められます。
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
一般的に120~150%以上であれば安心であり、流動比率の数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと判断できます。
ただし、流動比率の平均は業界によって大きく異なります。たとえば、宿泊・飲食業は現金取引が中心で売掛金や棚卸資産が積み上がりにくく、流動資産が薄くなる傾向があります。加えて、店舗や設備への投資を借入金で賄うことが多いため、 流動比率の平均は100%を下回ります。
また、流動資産には、すぐに現金化できるとは限らない商品や原材料などの棚卸資産も含まれます。流動比率が高くても、棚卸資産の割合が大きい場合は、短期的な支払いに十分対応できない可能性があります。
そこで、流動比率よりも換金性を重視して支払能力を分析する際に用いるのが、当座比率です。
当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
当座資産には、現金・預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券など、比較的短期間で現金化しやすい資産が含まれます。棚卸資産などを除いて計算するため、当座比率は流動比率よりも厳しい基準で支払能力を確認できる指標です。
一般的に、当座比率が100%以上であれば、短期的な支払能力は問題ないと判断できます。ただし、現金取引が多い業種と掛取引が多い業種では必要な水準が異なるため、業界平均なども参考に判断しましょう。
固定比率
固定比率とは、返済義務のない純資産(自己資本)に対する固定資産の割合を示す指標です。以下の計算式で求められます。
固定比率(%)= 固定資産 ÷ 純資産(自己資本)× 100
固定比率が100%以下であれば、固定資産を自己資本の範囲内で賄っている状態です。一方、100%を上回っている場合は、固定資産の一部を借入金などで調達していると考えられます。
ただし、多額の設備投資が必要な業種では、長期借入金によって固定資産を取得するケースも少なくありません。固定比率だけでなく、自己資本と固定負債を分母に用いる「固定長期適合率」もあわせて確認すると、長期的な資金調達のバランスを判断しやすくなります。
負債比率
負債比率とは、自己資本に対して負債がどの程度あるかを示す指標です。会社が返済義務のある資金にどれだけ依存しているかを分析する際に用います。
負債比率(%)= 負債 ÷ 純資産(自己資本)× 100
負債比率が高いほど、企業は借入に依存しており、財務リスクが高い状態であるといえます。
負債比率は100%以下がひとつの目安とされますが、設備投資の必要性や事業の成長段階によって適正水準は異なります。また、負債には借入金だけでなく、買掛金や未払金なども含まれるため、数値が高い理由を負債の内訳から確認することも必要です。
なお、自己資本がマイナスの債務超過では、負債比率を通常どおり評価できません。この場合は比率の高低ではなく、債務超過の原因や解消に向けた収益・資金計画を確認してください。
貸借対照表の作り方
貸借対照表は、日々の取引を仕訳帳と総勘定元帳に記録し、決算時に各勘定科目の残高を集計して作成します。基本的な流れは以下のとおりです。
貸借対照表の作成手順
- 仕訳帳への記入
- 総勘定元帳への転記
- 決算整理前試算表の作成
- 決算整理仕訳
- 決算整理後試算表の作成
- 貸借対照表の作成
以下では、各工程についてそれぞれ解説します。
1. 仕訳帳への記入
発生した取引は、日常的に漏れなく仕訳帳に記入します。このとき、社内のルールとしてどの項目をどの勘定科目に分類するかを、あらかじめ決めておきましょう。
仕訳帳への記帳方法は、取引内容を「借方(左側)」と「貸方(右側)」に分け、勘定科目を使って記入する「複式簿記」という形式が一般的です。たとえば、現金で備品を購入した場合は、備品の増加を借方、現金の減少を貸方に記載します。
借方と貸方の合計金額が一致しない場合は、記入漏れや記入ミスなどが生じています。仕訳帳の段階でミスが起こると、そのあとの工程でも金額の誤差が生じてしまうため、正確に処理しましょう。
仕訳帳について詳しく知りたい方は、別記事「仕訳帳とは?書き方や仕訳例、基礎知識を解説」も参考にしてください。
2. 総勘定元帳への転記
仕訳帳への記入が済んだら、その内容を総勘定元帳へ転記します。総勘定元帳とは、取引内容を勘定科目ごとに借方・貸方で記録する帳簿のことです。総勘定元帳を見ると、各勘定科目について、いつ・どのような取引が発生し、残高がいくらになっているかを確認できます。
手作業で記帳する場合は、仕訳帳の借方と貸方の内容を、それぞれ該当する勘定口座へ転記します。会計ソフトを利用している場合は、入力した仕訳が総勘定元帳へ自動的に反映されるため、通常は個別の転記作業が発生しません。
総勘定元帳について詳しく知りたい方は、別記事「総勘定元帳とは?書き方や仕訳帳との違いについても解説」も参考にしてください。
3. 決算整理前試算表の作成
総勘定元帳の内容を勘定科目ごとに集計し、決算整理前試算表を作成します。決算整理前試算表は、決算整理仕訳を行う前の残高をまとめた書類です。
試算表には、主に以下の3種類があります。
- 合計試算表
- 残高試算表
- 合計残高試算表
借方と貸方の合計額が一致しない場合は、記入漏れや転記ミス、集計ミスなどが考えられます。仕訳帳と総勘定元帳を照合し、誤りのある箇所を確認します。
ただし、借方と貸方が同額になるよう誤って記帳した場合や、取引自体を記帳し忘れた場合などは、試算表の合計額が一致していても誤りを発見できません。残高の不自然な増減や証憑との相違がないかも確認する必要があります。
試算表について詳しく知りたい方は、別記事「試算表とは?種類や見方、効果的な作り方などについて解説」をご覧ください。
4. 決算整理仕訳
決算整理仕訳とは、決算日時点の財政状態と当期の経営成績を正しく反映するために、帳簿上で未処理になっている取引を特定し、金額を修正・調整する作業です。
主な決算整理仕訳には、以下のようなものがあります。
- 実地棚卸に基づく売上原価の計算
- 固定資産の減価償却
- 貸倒引当金などの計上
- 未収収益や未払費用の計上
- 前払費用や前受収益の振替
- 現金過不足の処理 など
決算整理仕訳によって、決算日時点の資産・負債・純資産と、当期に帰属する収益・費用などが確定します。
決算整理仕訳について詳しく知りたい方は、別記事「決算整理仕訳とは?手順や仕訳の具体例などをわかりやすく解説」をご覧ください。
5. 決算整理後試算表の作成
決算整理仕訳を総勘定元帳へ反映し、決算整理後試算表を作成します。決算整理後試算表は、各勘定科目の決算日時点における最終的な残高を確認するための集計表です。
借方と貸方の合計額が一致しているか確認するとともに、現金・預金の帳簿残高と実際の残高が合っているか、売掛金や買掛金の残高に誤りがないかなども確認します。
この試算表に集計された残高をもとに、貸借対照表や損益計算書を作成します。
6. 貸借対照表の作成
決算整理後試算表に記載された勘定科目のうち、資産・負債・純資産に該当する項目を貸借対照表へ転記します。
記載する際には、本記事の「貸借対照表の基本的な構造」で解説した通り、「資産」は流動資産・固定資産・繰延資産に、「負債」は流動負債・固定負債に分類し転記します。
資産・負債・純資産・収益・費用という5つの勘定科目のうち、貸借対照表に記載されない「収益」と「費用」は損益計算書に記載します。最後に、貸借対照表の「資産合計」と「負債・純資産合計」が一致していることを確認して完成です。
貸借対照表の作り方についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「貸借対照表の作り方は?エクセルで簡単に作る方法や注意点を解説」も参考にしてください。
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<作成可能な書類例>
- 貸借対照表・損益計算書
- 仕訳帳・総勘定元帳
- 固定資産台帳
- 試算表
- 現金出納帳 など
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まとめ
貸借対照表とは、決算日など特定の時点における企業の資産・負債・純資産を示す決算書です。損益計算書、キャッシュ・フロー計算書と並ぶ財務三表のひとつで、会社が保有する財産や返済すべき債務、資金の調達方法などを把握できます。
また、貸借対照表の数値から自己資本比率や流動比率、当座比率などを算出すると、財務の安定性や短期的な支払能力を分析できます。単年度の数値だけで判断せず、自社の過年度や同業他社と比較し、損益計算書などもあわせて確認することで、経営上の課題の把握や今後の経営判断に活用できるでしょう。
よくある質問
貸借対照表の読み方は?
貸借対照表は「たいしゃくたいしょうひょう」と読みます。他にもバランスシートやB/Sと呼ばれることがあります。漢字が似ていることから、「ちんしゃくたいしょうひょう」と読み間違えてしまう人がいるので、注意しましょう。
貸借対照表で何がわかる?
貸借対照表から、「企業財務の健全性」がわかります。具体的には、自己資本比率・自己資本利益率(ROE)・流動比率・当座比率・固定比率・負債比率などの指標が算出でき、財政状態の把握に役立ちます。
詳しくは記事内「貸借対照表を使った財務分析の5つの指標」で解説しています。
貸借対照表と損益計算書の違いは?
貸借対照表と損益計算書はいずれも財務三表に含まれる会計上の重要な書類ですが、それぞれの役割は異なります。貸借対照表はある時点での資産・負債・純資産のそれぞれの状況やバランスを把握するもので、損益計算書は一定期間の収益から費用を差し引くことで企業の損益を計算します。
詳しくは、記事内「貸借対照表と損益計算書の違い」をご確認ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
