最終更新日:2023/07/04
監修 税理士法人G&Sソリューションズ

貸借対照表とは、企業の資産、負債、純資産の状況を一覧できる決算書類です。 企業が保有する資産などの内訳を詳細に確認できるため、財務上の安定性や課題、経営リスクなどを知るうえで重要な役割を果たします。
本記事では、貸借対照表に関する基本的な知識や読み取れる内容、正確な表を作成するためのチェック方法について解説します。
貸借対照表など決算書の作成を行いたい方は、別記事「法人決算を自分1人で完結させるには?流れや必要書類について解説」をあわせて確認してください。
目次
- 貸借対照表(B/S)とは?
- 財務三表における貸借対照表の役割とは
- 貸借対照表の基本的な構造
- 貸借対照表の勘定科目リスト
- 貸借対照表の3つの部の見方
- 「資産の部」の見方
- 「負債の部」の見方
- 「純資産の部」の見方
- 貸借対照表で読み取れること
- 自己資本比率で企業財務の健全性がわかる
- 自己資本利益率で効率的に利益が出ているかわかる
- 流動資産で資金繰りの状況がわかる
- 流動比率・当座比率で支払い能力がわかる
- 固定比率で長期的な支払い能力がわかる
- 負債比率で財務の安定性がわかる
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
- 貸借対照表とは?
- 貸借対照表で何がわかる?
- 貸借対照表と損益計算書の違いは?
貸借対照表(B/S)とは?
貸借対照表は、別名「バランスシート(B/S)」と呼ばれ、企業が一定時点において、どのくらいの財産や権利、義務などがあるかを示す決算書です。
貸借対照表からは以下の情報を読み取り、会社の財政状況を把握できます。
- 会社が持っている「資産」
- 返済義務がある「負債」
- 返済義務のない「純資産」
勘定科目ごとに合計金額が一覧化されているため、一目で資産や負債、資本に該当する項目がどのくらいあるかわかります。
通常、貸借対照表の作成は、各決算時期で行なわれます。毎月の財産状況を正確に把握しておくために、月次決算を行う企業もあります。
貸借対照表に含まれる項目には、金融資産や売掛金、固定資産などがあります。さらに、借入金・支払手形などの負債も含まれます。これらの項目については、のちほど詳しく説明します。
財務三表における貸借対照表の役割とは
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書は、財務諸表の中でも特に重要な書類として「財務三表」と呼ばれ、それぞれ役割が以下のとおり異なります。
貸借対照表 | ある時点の会社の財政状態を確認できる |
損益計算書 | 一定期間の会社の利益を確認できる |
キャッシュ・フロー計算書 | 一定期間のお金の流れを確認できる |
貸借対照表の基本的な構造
貸借対照表は、左側(借方)、右側(貸方)上部、右側下部の3つのエリアに分かれており、それぞれ表す内容が異なります。
貸借対照表 | |
資産
|
負債
|
純資産
|
貸借対照表の左側は「資産の部」と呼ばれ、企業が所有する資産が一覧表示されているエリアです。通常は現金化しやすい順に上から並べ、流動資産(現金など)、固定資産(土地など)の順となります。
一方、貸借対照表の右側上部は「負債の部」と呼ばれます。企業に返済義務のある債務などが記載され、負債が一覧表示されるエリアです。資産の部と同様、各勘定科目は現金化しやすい順番に並びます。
貸借対照表の右側下部は「純資産の部」と呼ばれます。総資産は自己資本とも呼ばれ、資本金や利益剰余金などの勘定科目が並びます。
貸借対照表の勘定科目リスト
貸借対照表の勘定科目について、主な科目を一覧で紹介します。
「資産の部」と「負債の部」、「純資産の部」に属する代表的なものは、それぞれ以下のとおりです。
資産の部に属する勘定科目の例 | |
---|---|
流動資産 | 現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券、商品、仮払金など |
固定資産 | 建物、車両運搬具、土地、のれん(営業権)など |
繰延資産 | 開業費、開発費、社債発行費など |
負債の部に属する勘定科目の例 | |
---|---|
流動負債 | 買掛金、支払手形、未払金、短期借入金、預り金など |
固定負債 | 長期借入金、社債など |
純資産の部に属する勘定科目の例 | |
---|---|
株主資本 | 資本金、資本準備金、利益準備金、自己株式など |
評価損益および換算差額 | その他有価証券評価差額金など |
貸借対照表の勘定科目についてもっと知りたい方は、別記事「貸借対照表でよく使われる勘定科目」をあわせてご確認ください。
貸借対照表の3つの部の見方
資産の部、負債の部、純資産の部の3つの部について、具体的な項目を含めそれぞれ詳しく解説します。
「資産の部」の見方
流動資産
流動資産とは、正常な営業活動サイクルで発生する資産(正常営業循環基準)や、1年以内に現金化・費用化できる資産(ワン・イヤー・ルール)のことです。流動資産には、以下のような勘定科目を記載します。
流動資産(例) |
---|
現金・預金 受取手形 売掛金 有価証券 |
固定資産
固定資産とは、長期間利用したり保有したりする資産や、1年を超えて現金化・費用化する資産のことです。固定資産に該当するものとしては以下が挙げられます
固定資産(例) |
---|
土地 建物 自動車 機械 |
「負債の部」の見方
流動負債
流動負債とは、正常な営業活動サイクルで発生する負債(正常営業循環基準)や、1年以内に返済予定の負債(ワン・イヤー・ルール)のことです。以下のようなものが流動負債に該当します。
流動負債(例) |
---|
支払手形 買掛金 契約負債 前受金 |
固定負債
固定負債とは、1年を超えて返済もしくは収益化する負債をいいます。固定負債に該当するものは以下のとおりです。
固定負債(例) |
---|
長期借入金 リース債務 繰延税金負債 長期前受金 |
「純資産の部」の見方
純資産とは、総資産から負債を差し引いた資産のことで、自己資本とも呼ばれます。
純資産に該当するものは、以下のとおりです。
純資産(例) |
---|
資本金 資本準備金 自己株式 |
貸借対照表で読み取れること
企業の資産状況を表す貸借対照表から読み取れる内容は以下のとおりです。
自己資本比率で企業財務の健全性がわかる
自己資本比率とは、資産全体に対して返済の必要がない純資産がどれくらいの割合を占めているかを表す指標です。以下の計算式で求めることができます。
自己資本比率の求め方
自己資本比率(%) = 純資産 ÷ 総資産
※総資産は、負債の部と純資産の部の合計金額
自己資産比率が高いほど、財務上の安定性が高い健全な企業だと判断されます。企業の業種によって、平均的な自己資本比率にはばらつきがあることには留意が必要です。
貸借対照表は、左側と右側の合計金額が一致するルールとなっています。つまり、「資産の部」の合計と、「負債の部」および「純資産の部」の合計である「負債及び純資産合計」は同額になります。
そのため「負債の部」の金額が少額になるほど、「純資産の部」は高額となり、「自己資本比率」も高くなります。
自己資本利益率で効率的に利益が出ているかわかる
自己資本利益率とは、自己資本に占める当期純利益の割合を示す指標です。以下の計算式で求められます。
自己資本利益率の求め方
自己資本利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100
自己資本利益率の数値が高いほど、利益が出ている企業だと判断できます。
流動資産で資金繰りの状況がわかる
流動資産と流動負債を比べた際に「流動資産>流動負債」という状態であれば、資金繰りに大きな問題はないことがわかります。
流動負債が大きい場合は、経営の悪化や最悪の場合は倒産のリスクを抱えていることになるため、早期の立て直しが必要です。
流動比率・当座比率で支払い能力がわかる
流動比率とは、流動負債に対して流動資産の占める割合を示す指標です。以下の計算式で求められます。
流動比率の求め方
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
流動比率の数値が高いほど、流動負債の支払いができている企業だと判断できます。当面の資金繰り、短期的な支払い能力を確認できます。
より企業の支払い能力を正確に判断できる指標として参考になるのが、当座比率です。当座資産とは、換金性が不確実なものを省き、換金性の高い資産のみを指します。
当座比率は、以下の計算式で求められます。
当座比率の求め方
当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
固定比率で長期的な安定性がわかる
固定比率とは、返済義務のない純資産(自己資本)に対する固定資産の割合を示す指標です。以下の計算式で求められます。
固定比率の求め方
固定比率(%)= 固定資産 ÷ 純資産(自己資本) × 100
固定比率が低ければ、長期的な安定性を保っていることが確認できます。
負債比率で財務の安定性がわかる
負債比率とは、返済義務のない純資産(自己資本)に対する負債の割合を示す指標です。以下の計算式で求められ、負債比率が低いほど財務の安定性を確認できます。
負債比率の求め方
負債比率(%)= 負債 ÷ 純資産(自己資本) × 100
まとめ
貸借対照表に関する主な特徴を理解したうえで、決算書の作成を行うことで、ケアレスミスを防ぎ、スムーズに作業を進めることができます。
また、自身の企業で使用する勘定科目の内容や分類についても理解を深めておくと、修正が発生した場合などで迅速な対応が可能です。事業戦略の策定や分析の際、貸借対照表を経営指標としてうまく活用しましょう。
さらに、貸借対照表を財務分析に活かしたい方は、「貸借対照表を使った財務分析のやり方」も参考にしてみましょう。
また、「損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)の違いとは?内容や関係性をわかりやすく解説!」もおさえておくと、貸借対照表の活用の幅が広がるでしょう。
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よくある質問
貸借対照表とは?
貸借対照表とは、別名「バランスシート(B/S)」と呼ばれ、企業が一定時点において、どのくらいの財産や権利、義務などがあるかを示す表です。
貸借対照表の構造や他の決算書との違いは記事内「
貸借対照表(B/S)とは」で解説しています。
貸借対照表で何がわかる?
企業財務の健全性が分かります。詳しくは記事内「貸借対照表から読み取れること」で解説しています。
貸借対照表と損益計算書の違いは?
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詳しくは記事内「損益計算書、キャッシュ・フロー計算書との違いは?」をご覧ください。
監修 税理士法人G&Sソリューションズ
税理士・会計士が中心となる税理士法人で、M&Aをはじめとする出口戦略(M&A・IPO・事業再生)に強みを持っています。税務申告をお手伝いするのみならず、会社の成長戦略に関するアドバイスを提供することが可能です。上場会社・上場準備会社・ベンチャー企業への対応、非上場会社に対しても高品質なサービスをご提供致します。
