会計の基礎知識

総勘定元帳とは?書き方や仕訳帳との違いについても解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

総勘定元帳とは?書き方や仕訳帳との違いについても解説

総勘定元帳とは、企業が行ったすべての取引を勘定科目ごとに記録した帳簿のことです。会社の会計業務を適切に行うために必要な主要簿のひとつに該当し、法律でも作成や保管が義務付けられています。

本記事では、総勘定元帳の役割や使用するメリット、作成方法、保存期間などを解説します。

目次

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総勘定元帳は企業の取引を勘定科目ごとに分類・記載した帳簿

総勘定元帳とは、企業が行ったすべての取引を勘定科目ごとに分類し記載した帳簿です。会社の会計業務を適切に行うために必要な主要簿のひとつであり、財務諸表(決算書)の作成にも使用されます。

総勘定元帳は、日付順に会社の取引を記録した「仕訳帳」から転記して作成します。

具体的には、取引が発生すると、まずは取引の詳細を日付順に「仕訳帳」へ記載します。記載された「仕訳帳」をもとに、勘定科目ごとに「総勘定元帳」へ転記していくのが主な流れです。

実際の転記方法は、記事内「仕訳帳から総勘定元帳への転記例」をご覧ください。

「総勘定元帳」と「仕訳帳」は、下表のとおり、会計帳簿の主要簿に分類され、作成・保存が法律で義務化されています。


帳簿主要簿総勘定元帳
仕訳帳
補助簿補助記入表現金出納帳
預金出納帳
固定資産台帳
売掛帳
買掛帳
補助元帳商品有高帳
仕入先元帳
得意先元帳
出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

総勘定元帳と仕訳帳との違い

先述のとおり、総勘定元帳と仕訳帳は会計帳簿における主要簿で、どちらも必ず作成しなくてはならない帳簿です。それぞれに役割が異なり、特徴は以下のとおりです。


名称役割特徴
総勘定元帳勘定科目ごとに日々の取引を記録勘定科目ごとの取引内容を確認できる。一方で、特定の取引に対し、勘定科目が複数にわたる場合や、複雑な取引の場合は、取引の詳細までは把握しきれない。
仕訳帳日付ごとに順序立てて、取引を記録日付ごとの取引を詳細に確認できる。

勘定科目と仕訳帳について詳しく知りたい方は、別記事「勘定科目とは?仕訳方法や設定のポイントについてわかりやすく解説」と「仕訳帳とは?書き方や仕訳例、基礎知識を解説」も合わせてご確認ください。

総勘定元帳を作成する目的

総勘定元帳は各勘定科目の取引をすべて網羅しているため、科目ごとの動きや残高を把握しやすくなります。

たとえば、「現在どれくらい現金があるのか」を知りたい場合、仕訳帳であれば、さまざまな勘定科目の中から「現金」の勘定科目だけを抜粋して、膨大な時間をかけて集計しなければなりません。

一方で、「現金」の総勘定元帳を見ると、すぐに「現金」の発生原因や取引日、残高などがわかります。「現金」以外の勘定科目も同様に総勘定元帳があれば、勘定科目ごとの情報がすぐに確認できます。

また、総勘定元帳は決算にも欠かせない帳簿であり、貸借対照表や損益計算書、試算表などの決算書は総勘定元帳をベースに作成されます。

このように、会社の経営状況を確認、把握するための情報源としても、総勘定元帳は必要不可欠な帳簿といえます。

総勘定元帳を作成する4つのメリット

総勘定元帳は前述のとおり、勘定科目ごとに分けて記載する帳簿です。そのため、以下のようなメリットがあります。

総勘定元帳を使用するメリット

  • 勘定科目ごとの動きが分析しやすい
  • 決算書の残高ミスの原因を見つけやすい
  • 経営方針を見直す際に役立つ
  • 決算書の作成がスムーズになる

勘定科目ごとの動きが分析しやすい

勘定科目ごとに記帳をする総勘定元帳は、勘定科目ごとの動きや残高を確認するのに最適です。

たとえば、現在の借入金残高を知りたい場合、総勘定元帳の「借入金の残高」部分を見れば、未返済の借入状況が簡単にわかります。

決算書の残高ミスの原因を見つけやすい

貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表の各勘定科目の残高が一致しない場合、誤りの原因を明らかにするためには、帳簿から紐解く必要があります。

勘定科目ごとに整理された総勘定元帳を使って残高の内訳や取引内容を確認することで、不一致の原因が見つけやすくなります。

経営方針を見直す際に役立つ

貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書だけでは、自社の経営状況や資金繰りを把握するのは難しいといえます。

しかし、総勘定元帳を見ればすべての取引の流れを把握でき、勘定科目ごとの残高もすぐに確認可能です。総勘定元帳は自社の経営方針を見直す際にも役立ちます。

決算書の作成がスムーズになる

決算書の中で特に重要とされる財務三表のうち貸借対照表や損益計算書は、総勘定元帳をもとに作成します。また、記帳の整合性を確認するのに必要な試算表も、総勘定元帳をもとに作成するため、総勘定元帳がないと決算の手続きができません。

決算書の作成をスムーズに行うためにも、正しく作成された総勘定元帳が必要不可欠といえます。

【関連記事】
決算書の作り方を解説!作成手順や必要書類とは?

総勘定元帳の保存の注意点

総勘定元帳は税法により、作成、保存が義務付けられています。税務調査が行われる際など、提出が必要になる場面もあるため、スムーズに提出できるよう適切な管理を心がけましょう。

出典:e-Gov法令検索「法人税法施行規則|第五十四条」

総勘定元帳の保存期間は7年

総勘定元帳の保存期間は、法人税法において、その事業年度の確定申告書提出期限の翌日を起算日とし、7年の保存が義務付けられています。

欠損金の繰越控除を受ける事業年度についても原則として10年間(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が必要なため、法人の場合、総勘定元帳の保存期間は10年見ておくと安心といえるでしょう。 なお、総勘定元帳とあわせて、取引に関する書類等の保存も必須です。

出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

総勘定元帳の作成・保存が適切でないと罰則が科される場合も

総勘定元帳や仕訳帳、売上帳といった帳簿の提出を求められた際、正当な理由なく拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類などを提出いた場合には、加算税(過少申告加算税・無申告加算税)が最大10%加重される場合があります。

提出を求められた場合にはスムーズに対応できるよう、総勘定元帳は適切に管理しましょう。

出典:国税庁「売上げに関する帳簿を作成・保存していない事業者の方は加算税が重くなります」
出典:e-GOV法令検索「会社法|第九百七十六条」

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総勘定元帳の書き方

ここからは、総勘定元帳を作成するにあたり、選ぶべき形式や作成方法、具体的な書き方について順を追って解説します。

STEP1:記載形式を選ぶ

総勘定元帳の記載形式には、「標準式」と「残高式」の2種類があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。


標準式残高式
・賃借(借方と貸方)が明確
・現在の残高は計算する必要がある
・残高が一目で確認できる
・会計業務の主流の記載形式である

記帳方法は異なりますが、「標準式」と「残高式」で導き出される結果は同じです。それぞれの形式について解説します。

標準式

「貸借」が明確に分かれている標準式には、取引の内容を把握しやすいというメリットがあります。ただし、残高を求めるには借方金額の合計と貸方金額の合計の差を計算する必要があります。

<標準式のサンプル>


日付:それぞれの取引が発生した日付
適用:ひとつの勘定科目から見た、相手の勘定科目
仕丁:その取引が記載されている仕訳帳のページ数(丁数)
借方:その取引で発生した借方の金額
貸方:その取引で発生した貸方の金額

残高式

残高を常に記載する残高式では、現金や売掛金など現在の金額をすぐに把握できるというメリットがあります。残高式は、会計業務での主流の記載形式です。

<残高式のサンプル>


日付:それぞれの取引が発生した日付
摘要:ひとつの勘定科目から見た、相手の勘定科目
仕丁:その取引が記載されている仕訳帳のページ数(丁数)
借方:その取引で発生した借方の金額
貸方:その取引で発生した貸方の金額
残高:残高金額

STEP2:作り方を選ぶ

総勘定元帳は、「手書き」「表計算ソフト」「会計ソフト」などの方法で作成できます。必要な事項が記載されていれば作成方法は問われませんが、それぞれの特性を理解し、事業規模や状況にあわせて選択しましょう。

また、手書きや表計算ソフトへの手入力などで総勘定元帳を作成する際には、転記のミスや抜け漏れがないよう細心の注意を払いましょう。

手書き

総勘定元帳は、ノートなどに手書きで記入しても問題ありません。しかしヒューマンエラーによる転記・集計ミスのおそれがあるうえに、誤りがあった場合の修正に手間がかかったり、経営状態などの全体を把握しづらかったりと、デメリットは多いといえます。

表計算ソフト

表計算ソフトを使用する場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートを用いることが一般的です。テンプレートを用意すれば、複雑な帳簿づけも簡単に行えます。

Excelを使用した総勘定元帳の作成方法は、「総勘定元帳をエクセルで作成するには?記帳方法や残高の計算方法も解説」で詳しく解説しています。

会計ソフト

総勘定元帳の作成だけでなく、経理業務全体の効率化を図るなら、会計ソフトの導入を検討してみましょう。

会計ソフトを使用することで、仕訳帳をもとに総勘定元帳の自動作成も可能です。手書きや表計算ソフトでの記帳にかかる手間や時間が軽減するだけでなく、ヒューマンエラーによるミスを減らすことにもつながります。

STEP3:総勘定元帳の書き方

総勘定元帳は、仕訳帳の内容を元に、勘定口座の借方・貸方に日付や金額を繰り返し転記して作成します。転記までの流れは、以下のとおりです。

総勘定元帳への転記の流れ

  1. 取引が発生
  2. 日付ごとに仕訳帳に記入
  3. 勘定科目ごとの勘定口座を作る
  4. 仕訳帳に記入した仕訳を総勘定元帳に転記する

「勘定口座」とは、勘定科目ごとの増減や発生の記録、計算などを行う帳簿上の場所を表します。

仕訳帳から総勘定元帳への転記例

具体的な取引を例に、仕訳帳から総勘定元帳への転記方法について解説します。ここでは「残高式」を使用した総勘定元帳への転記を想定しています。

<取引内容>
4月15日に、10万円のパソコンが現金で売れた。
取引が発生したので、仕訳帳に以下を記入します。この時、仕訳は以下のようになります。

<仕訳>

日付借方貸方摘要
4/15現金100,000円売上100,000円パソコン

ここで使用されている勘定科目は「現金」と「売上」なので、総勘定元帳の「現金」と「売上」の勘定口座を開き、記載します。そのうえで、総勘定元帳には以下の項目を転記します。

総勘定元帳への転記内容

  • 取引が発生した日付
  • 相手勘定科目
  • 摘要
  • 該当する仕訳帳のページ(仕丁)
  • 金額(借方/貸方)

相手勘定科目とは、仕訳における借方勘定科目と貸方勘定科目のうち、どちらかに着目した場合のもう一方の勘定科目を指します。「現金」の総勘定元帳では相手勘定科目となる貸方の「売上」の内容、「売上」の総勘定元帳では相手勘定科目となる借方の「現金」の内容を記載します。

<総勘定元帳:現金>

日付相手勘定科目摘要仕丁借方金額貸方金額残高
4/15売上パソコン1100,000円100,000円

<総勘定元帳:売上>

日付相手勘定科目摘要仕丁借方金額貸方金額残高
4/15現金パソコン1100,000円100,000円

相手勘定科目が複数ある場合の書き方

相手勘定が複数ある場合は、「諸口」という勘定項目を用いて記入します。以下の取引を例に確認していきましょう。

<取引内容>
4月30日に、パソコンの売掛金10万円が支払手数料550円を差し引いた金額で銀行口座に振り込まれた。
取引が発生したので、仕訳帳に以下を記入します。この時、仕訳は以下のようになります。

<仕訳>

日付借方貸方摘要
4/30普通預金99,450円売掛金100,000円売掛金回収
支払手数料550円

仕訳帳では、「売掛金」に対して「普通預金」と「支払手数料」という2つの勘定科目を用いて詳細に記載します。このように、借方や貸方において複数の勘定科目を使う仕訳を「複合仕訳」といいます。

複合仕訳を総勘定元帳に転記するときは、「諸口」を用い、以下のように1行にまとめましょう。

<総勘定元帳:売掛金>

日付相手勘定科目摘要仕丁借方金額貸方金額残高
繰越100,000円
4/15諸口売掛金回収1100,000円0円

総勘定元帳の「諸口」から具体的な内容を知りたい場合は、同日の仕訳帳に戻ることで確認できます。

まとめ

総勘定元帳は、会計業務を行う上で重要な主要簿のひとつであり、決算書の作成にも深く関連します。日常の経営状況を把握し、改善へと導くためにも重要な帳簿であるため、正確さや管理方法には細心の注意を払うようにしましょう。

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よくある質問

総勘定元帳とは?

総勘定元帳とは、すべての取引を勘定科目ごとに分類し、記載する帳簿です。仕訳帳とともに重要な帳簿として会計帳簿の主要簿に分類されており、複式簿記で作成しなければならないとして法律で義務化されています。

詳しくは記事内「総勘定元帳は企業の取引を勘定科目ごとに分類・記載した帳簿」をご覧ください。

総勘定元帳と仕訳帳との違いは?

総勘定元帳は、勘定科目ごとに日々の取引を記録し、勘定科目ごとの取引日や残高などが確認できる帳簿です。一方、仕訳帳は日付順に会社の取引が記録されているもので、過去の取引の金額や内容を確認できます。

詳しくは記事内「総勘定元帳と仕訳帳との違い」をご覧ください。

監修 宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

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