監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

総勘定元帳とは、企業が行った全ての取引を勘定科目ごとに記録した帳簿のことです。会社の会計業務を適切に行うために必要な主要簿のひとつに該当し、会社法や法人税法で作成・保管が義務付けられています。
本記事では、総勘定元帳の役割や仕訳帳との違いのほか、総勘定元帳を使用するメリット、保存期間、書き方を解説します。
目次
総勘定元帳とは
総勘定元帳とは、企業が行った全ての取引を勘定科目ごとに分類し記載した帳簿です。会社の会計業務を適切に行うために必要な主要簿のひとつであり、財務諸表(決算書)の作成にも使用されます。
総勘定元帳は、日付順に会社の取引を記録した「仕訳帳」から転記して作成します。日次・月次・年次の経理業務のフローの中では、主に「日ごと・月ごとの経理作業」として行います(下図)。

総勘定元帳への転記を行うタイミングは、会社によってさまざまです。仕訳帳への記載と同時に総勘定元帳への転記を行うケースや、週次、月次、四半期ごとなど、取引の数に応じてまとめて実施するケースもあります。
いずれのケースであっても、年度末の決算のタイミングには、全ての取引の転記を終えた総勘定元帳が必要です。
総勘定元帳の記載項目
総勘定元帳には、以下のような項目を記載します。
総勘定元帳の記載項目
- 日付…取引が発生した日
- 相手勘定科目…取引の相手となる勘定科目
- 摘要…取引内容
- 仕丁…仕訳帳のページ番号
- 借方金額…借方に該当する金額
- 貸方金額…貸方に該当する金額
- 残高…各取引後の累積残高
仕訳帳に記入された取引内容を、上記の項目に当てはめて総勘定元帳に転記します。
たとえば、「10万円のパソコンが売れた」というケースでは、仕訳帳から「現金」の総勘定元帳へ以下のように転記を行います。
<仕訳帳>
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
4/15 | 現金 | 10万円 | 売上 | 10万円 | パソコン |
<総勘定元帳>
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
4/15 | 売上 | パソコン | 1 | 10万円 | 10万円 |
総勘定元帳を作成する目的
総勘定元帳を作成する目的は、大きく以下の3つです。
総勘定元帳を作成する目的
- 企業・事業の財務状況を正確に把握し経営判断に役立てる
- 試算表や決算書の作成のため
- 税務申告など法的な手続きで必要
総勘定元帳は、全ての取引を勘定科目ごとに整理した帳簿です。よって、科目ごとのお金の動きをつかむために有用であり、財務状況を正確に把握するだけでなく、その結果を元に経営判断に役立てることができます。
総勘定元帳は、会社法などによって作成が義務付けられている会計帳簿でもあります。税務申告などの手続きでも欠かせない帳簿書類のひとつです。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第四百三十二条」
【関連記事】
決算書の作り方を解説!作成手順や必要書類とは?
総勘定元帳と仕訳帳との違い
総勘定元帳は、仕訳帳を元に作成されます。両者はいずれも、下図の通り、会計帳簿のうち主要簿に分類されます。
【帳簿の種類と分類】
主要簿 | 総勘定元帳 | |
---|---|---|
仕訳帳 | ||
補助簿 | 補助記入表 | 現金出納帳 |
預金出納帳 | ||
固定資産台帳 | ||
売掛帳 | ||
買掛帳 | ||
補助元帳 | 商品有高帳 | |
仕入先元帳 | ||
得意先元帳 |
総勘定元帳と仕訳帳はいずれも作成・保存が義務付けられている主要簿であるという点では同じですが、以下のような違いがあります。
名称 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
総勘定元帳 | 勘定科目ごとに日々の取引を記録 | 勘定科目ごとの取引内容を網羅的に確認できる。特定の取引に対し、勘定科目が複数にわたる場合や、複雑な取引の場合は、取引の詳細までは把握しきれない |
仕訳帳 | 日付ごとに取引内容を詳細に記録 | 日付ごとの取引を詳細に確認できる |
【関連記事】
勘定科目とは?仕訳方法や設定のポイントについてわかりやすく解説
仕訳帳とは?書き方や仕訳例、基礎知識を解説
総勘定元帳を作成する2つのメリット
総勘定元帳を作成するメリットは、以下の2つです。
総勘定元帳を作成するメリット
- 勘定科目ごとの動きが分析しやすい
- 決算書の残高ミスの原因を見つけやすい
勘定科目ごとの動きが分析しやすい
総勘定元帳は、勘定科目ごとの動きや残高を確認するのに最適です。
自社の経営や資金繰りの全体的な状況は、貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書によって把握できますが、詳細な内容までは把握できません。総勘定元帳を見れば全ての取引の流れや、勘定科目ごとの残高もすぐに把握できます。
たとえば、現在の借入金残高を知りたい場合、総勘定元帳の「借入金」の残高部分を見れば、未返済の借入状況が簡単にわかります。このように、各勘定科目の状況を把握することで、自社の経営方針を見直す際にも役立ちます。
決算書の残高ミスの原因を見つけやすい
貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などの財務諸表の各勘定科目の残高が一致しない場合、誤りの原因を明らかにするためには、帳簿から紐解く必要があります。
勘定科目ごとに整理された総勘定元帳を使って残高の内訳や取引内容を確認することで、不一致の原因を見つけやすくなります。
総勘定元帳の保存期間
総勘定元帳を始めとした会計帳簿の保存期間は、会社法と税法で定められています。
会社法上の会計帳簿の保存期間は10年です。「決算に伴って会計帳簿を締めたとき(事業年度の最終日)」を起算日として、10年の保存が義務付けられています。
法人税法・所得税法での会計帳簿の保存期間は原則として7年です。保存期間の起算日は「確定申告書の提出期限の翌日」です。
ただし、法人の場合は、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度などは、7年間ではなく10年間(2018年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が義務付けられています。そのため、10年間保存しておくと安心です。
出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
出典:税務署「帳簿の記帳のしかた」
出典:e-Gov法令検索「会社法|第四百三十二条」
総勘定元帳の作成・保存が適切でないと罰則が科される場合も
総勘定元帳と仕訳帳を作成・保存する義務のある事業者であるにもかかわらず、帳簿の保存や記載が不十分であったことが税務調査で発覚すると、加算税(過少申告加算税・無申告加算税)が最大10%加重される場合があります。総勘定元帳は適切に作成・保存管理しましょう。
出典:国税庁「売上げに関する帳簿を作成・保存していない事業者の方は加算税が重くなります」
出典:e-Gov法令検索「会社法|第九百七十六条」
総勘定元帳の記載形式
総勘定元帳の記載形式には、「標準式」と「残高式」の2種類があり、一般的には「残高式」が用いられます。記載項目は以下のように異なります。
記載項目 | 標準式 | 残高式 |
---|---|---|
日付 | ○ | ○ |
相手勘定科目 | ○ | ○ |
摘要 | ○ | ○ |
仕丁 | ○ | ○ |
借方金額 | ○ | ○ |
貸方金額 | ○ | ○ |
残高 | × | ○(取引ごとに記載) |
最大の違いは、残高の記載の有無です。
標準式は取引ごとの残高を記載しないため、残高を把握するには全ての取引額を計算して導き出さなければなりません。一方の残高式は、取引ごとに残高を記載する方式であり、会計業務で一般的に用いられています。
総勘定元帳の書き方
総勘定元帳は、仕訳帳の内容を転記して作成します。
総勘定元帳の書き方
- 取引が発生する
- 日付ごとに仕訳帳に記入する
- 勘定科目ごとの勘定口座を作る
- 仕訳帳に記入した仕訳を総勘定元帳に転記する
「勘定口座」とは、会計上の取引を記録・管理するための口座(帳簿の単位)のことで、勘定科目ごとに作成します。あくまで帳簿上の概念であり、実際にお金を管理する銀行口座とは異なります。
仕訳帳から総勘定元帳への転記例
具体的な取引を例に、仕訳帳から総勘定元帳への転記方法について解説します。以下で紹介するのは、「残高式」を使用した総勘定元帳への転記例です。
- <取引内容>
4月15日に10万円のパソコンが現金で売れた
まずは、取引が発生したタイミングで、仕訳帳に以下のように記入します。
<仕訳>
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
4/15 | 現金 | 10万円 | 売上 | 10万円 | パソコン |
ここで使用されている勘定科目は「現金」と「売上」です。よって、総勘定元帳の現金口座と売上口座に、それぞれ以下のように転記します。
<総勘定元帳:現金>
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
4/15 | 売上 | パソコン | 1 | 10万円 | 10万円 |
<総勘定元帳:売上>
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
4/15 | 現金 | パソコン | 1 | 10万円 | 10万円 |
相手勘定科目とは、仕訳帳上の借方/貸方勘定科目のうち、どちらかに着目した場合のもう一方の勘定科目のことです。たとえば「現金」の総勘定元帳では貸方の「売上」の内容、「売上」の総勘定元帳では借方の「現金」の内容が、それぞれ相手勘定科目に該当します。
相手勘定科目が複数ある場合の書き方
相手勘定科目が複数ある場合は、「諸口」という勘定項目を用いて記入します。以下の取引を例に確認していきましょう。
- <取引内容>
4月30日にパソコンの売掛金10万円が支払手数料550円を差し引いた金額で、銀行口座に振り込まれた。
仕訳帳には、以下のように記入します。
<仕訳>
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
4/30 | 普通預金 | 9万9,450円 | 売掛金 | 10万円 | 売掛金回収 |
支払手数料 | 550円 |
仕訳帳では、「売掛金」に対して「普通預金」と「支払手数料」という2つの勘定科目を用いて詳細に記載します。このように、借数の勘定科目を使う仕訳を「複合仕訳」といいます。
複合仕訳を総勘定元帳に転記するときは、「諸口」を用い、以下のように1行にまとめましょう。
<総勘定元帳:売掛金>
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
繰越 | 10万円 | |||||
4/15 | 諸口 | 売掛金回収 | 1 | 10万円 | 0円 |
総勘定元帳の「諸口」から具体的な内容を知りたい場合は、同日の仕訳帳に戻ることで確認できます。
総勘定元帳の作成方法
総勘定元帳の作成方法は以下の3つです。
- 手書き
- 表計算ソフト
- 会計ソフト
必要な事項が記載されていれば作成方法は問われませんが、それぞれの特性を理解し、事業規模や状況にあわせて選択しましょう。
手書き
総勘定元帳は、ノートなどに手書きで記入しても問題ありません。
しかし、ヒューマンエラーによる転記・集計ミスの恐れがあるうえに、誤りがあった場合の修正に手間がかかったり、経営状態などの全体を把握しづらかったりと、デメリットがあります。
表計算ソフト
表計算ソフトを使用する場合は、エクセルやGoogleスプレッドシートを用いることが一般的です。テンプレートを用意すれば、複雑な帳簿付けも手軽に行えます。
エクセルを使用した総勘定元帳の作成方法を知りたい方は、別記事「総勘定元帳をエクセルで作成するには?記帳方法や残高の計算方法も解説」をご覧ください。
会計ソフト
総勘定元帳の作成だけでなく、経理業務全体の効率化を図るなら、会計ソフトの導入を検討してみましょう。
会計ソフトを使用することで、仕訳帳をもとに総勘定元帳の自動作成も可能です。手書きや表計算ソフトに比べて記帳にかかる手間や時間を軽減できるだけでなく、ヒューマンエラーによるミスを減らすことにもつながります。
まとめ
総勘定元帳は、会計業務を行ううえで重要な主要簿のひとつであり、決算書の作成にも深く関係します。総勘定元帳などの会計帳簿は正確に作成することが重要であり、会社法や税法で定められた保存期間に渡って保管しなければいけません。
総勘定元帳をミスなく正しく作成して経営判断に活用するためには、書き方や読み方を理解しておく必要があります。
標準式と残高式の違いや相手勘定科目が複数ある場合の書き方など、総勘定元帳に関する基本的な事項を理解したうえで日々の会計業務を行いましょう。
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よくある質問
総勘定元帳とは?
総勘定元帳とは、全ての取引を勘定科目ごとに分類し、記載する帳簿です。仕訳帳とともに重要な帳簿として会計帳簿の主要簿に分類されており、作成が法律で義務付けられています。
詳しくは記事内「総勘定元帳とは」をご覧ください。
総勘定元帳と仕訳帳との違いは?
総勘定元帳は、勘定科目ごとに日々の取引を記録し、勘定科目ごとの取引日や残高などが確認できる帳簿です。一方、仕訳帳は日付順に会社の取引が記録されているもので、過去の取引の金額や内容を確認できます。
詳しくは記事内「総勘定元帳と仕訳帳との違い」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
