会計の基礎知識

損益分岐点とは?計算方法や活用法、グラフ作成についてわかりやすく解説

損益分岐点とは?計算方法や活用法、グラフ作成についてわかりやすく解説

損益分岐点とは、事業の収支がプラスマイナスゼロになる分岐点のことです。損益分岐点には、経営を安定化させるための損益分岐点となる販売量と、損益分岐点を超えるために必要となる売上高という2つの考え方があります。

損益分岐点は、資金繰りの見直しや価格設定の最適化などに活用できるため、しっかりと把握しておくのが重要です。

本記事では、損益分岐点の計算方法や計算例、損益分岐点グラフなどについて詳しく解説していきます。

目次

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損益分岐点とは

損益分岐点とは、管理会計上の概念のひとつで、事業における売上高と費用がちょうど同じ額になる分岐点のことです。損益分岐点が0であるということは、事業や経営は黒字でも赤字でもなく、事業を運営して会社を維持できる経営状態であるといえます。

そのため、損益分岐点を超えていれば黒字状態、反対に損益分岐点を下回っていれば会社は赤字状態です。会社を良い状態で継続させていくためにも、常に損益分岐点がどのポイントになるのか理解し、事業を進めていきましょう。

損益分岐点の計算方法

損益分岐点の考え方は、収支がゼロになる売上高で見る方法と、販売数量で見る方法の2種類があります。それぞれの計算方法を覚えておくことでより効果的な損益分岐点の分析ができるので、以下で計算例とともに確認しましょう。

損益分岐点販売量

損益分岐点販売量とは、損益分岐点に到達するまでに必要な販売数量のことです。損益分岐点販売量は、以下の計算式で求められます。

損益分岐点販売量の計算式

損益分岐点販売量 = 固定費 ÷ 1個あたり限界利益

なお、限界利益とは「売上高 - 変動費」で求められる値のことです。そのため、損益分岐点販売量を求めるには固定費・売上高・変動費が必要だと覚えておきましょう。

損益分岐点販売量の計算例

損益分岐点販売量の計算例について、具体的なケースを用いて解説します。

【ケース①:固定費250万円、1個当たりの売上高1000円、1個当たりの変動費500円の場合】

損益分岐点販売量 = 2,500,000 ÷(1000-500)
損益分岐点販売量 = 2,500,000 ÷ 500
損益分岐点販売量 = 2,500,000 ÷ 500
損益分岐点販売量 = 5,000

この場合、損益分岐点販売量は5000個です。よって、5,000個以上販売することができれば、事業は黒字であるといえます。

損益分岐点売上高

損益分岐点売上高とは、損益分岐点に到達するまでに必要な売上高のことです。損益分岐点売上高は、以下の計算式で求められます。

損益分岐点売上高の計算式

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

なお、限界利益率とは「限界利益 ÷ 売上高」または「1 - 変動費率」で求められる値のことです。また、変動費率は「変動費 ÷ 売上高」で求められます。

損益分岐点売上高の計算例

損益分岐点売上高の計算例について、2つのケースを用いて解説します。

【ケース①:売上高1,000万円、固定費250万円、変動費500万円の場合】

損益分岐点売上高 = 250 ÷{1 -(500 ÷ 1,000)}
損益分岐点売上高 = 250 ÷(1 - 0.5)
損益分岐点売上高 = 250 ÷ 0.5
損益分岐点売上高 = 500

この場合、損益分岐点売上高は500万円です。よって、1,000万円の売上を出している現状は黒字であることが分かります。

【ケース②:売上高400万円、固定費250万円、変動費200万円の場合】

損益分岐点売上高 = 250 ÷{1 -(200 ÷ 400)}
損益分岐点売上高 = 250 ÷(1 - 0.5)
損益分岐点売上高 = 250 ÷ 0.5
損益分岐点売上高 = 500

この場合も、ケース①と同様に損益分岐点売上高は500万円ですが、現状の売上高は400万円なので赤字であることが分かります。

損益分岐点の算出・分析に必要な費用と項目

損益分岐点を計算するには、以下の費用・項目が必要です。それぞれの内容について理解し、損益分岐点を効率よく活用できるようにしましょう。

損益分岐点の算出・分析に必要な数字

  • 売上高
  • 固定費
  • 変動費
  • 変動費率
  • 限界利益
  • 限界利益率

売上高

売上高とは、特定の期間内における事業活動によって得た収入の合計額のことです。損益分岐点の計算では、一般的に1会計期における収入の合計額を売上高として用います。

具体的には、損益計算書に記載されている「売上高」が損益分岐点の計算に必要な数字です。

損益計算書


なお、上記表における営業外収益や特別利益などは、売上高には含めません。売上高に該当するのは、「営業損益の部」に当てはまる売上高です。この表における売上高は、1,000,000円となります。

なお、損益計算書について詳しく知りたい方は、別記事「損益計算書とは? 項目別の見方やチェックポイント、活用法を解説」をあわせてご確認ください。

固定費

固定費とは、売上の増減にかかわらず毎月・毎年発生する費用のことです。固定費には、主に以下のような費用が該当します。

固定費に該当するもの

  • 事務所や店舗の毎月の賃料
  • 従業員の給与
  • 保険料
  • 固定資産の償却費 など

変動費

変動費とは、売り上げの増減に比例して変動する費用のことです。商品の仕入れや原材料などにかかる費用など、主に以下が該当します。

変動費に該当するもの

  • 原材料費
  • 商品仕入高
  • 外注費 など

また、変動費は業種によっても大きく違いが出ます。たとえば、小売業や卸売業は仕入れや原材料が他の業種よりも多くなるため変動費が高くなる傾向にありますが、宿泊業や不動産業などは比較的変動費が低いです。

変動費率

変動費率とは、売上高において変動費がどれくらいの割合を占めているのか示す数字です。変動費率は、以下の計算式で求められます。

変動費率の計算式

変動費率 = 変動費 ÷ 売上高

変動費率が大きければ変動費が多いことを示し、小さければ変動費が少ないことを示しているので、変動費を割合で確認したい場合に活用しましょう。

限界利益

限界利益とは、商品を販売した時に得られる利益のことで、売上に応じて増減することが特徴です。限界利益は、以下の計算式で求められます。

限界利益の計算式

限界利益 = 売上高 - 変動費

なお、限界利益が示す値は、すべての固定費を回収できるポイントということでもあります。

限界利益率

限界利益率とは、売上高にどれだけの限界利益が含まれているかを把握できる指標です。限界利益率は、以下の計算式で求められます。

限界利益率の計算式

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高
限界利益率 = 1 - 変動費率

なお、限界利益率は収益の効率性を示す指標でもあり、数値が高いほど事業が上手くいっていることがわかるでしょう。

損益分岐点グラフ

損益分岐点グラフとは、以下のように売上高と費用を当てはめて、損益分岐点ならびに損益分岐点売上高をグラフで示したものです。

損益分岐点グラフ


損益分岐点グラフでは、年間の売上高を横軸に、総費用を縦軸に置きます。また、右上に向かう点線が変動費で、青色の直線が変動費に固定費を加算したものです。そして、変動費が0円の時(固定費のみかかっている状態)を起点とし、変動費率に応じて右上に青の直線を伸ばしています。

このようなイメージでグラフを作成し、損益分岐点ができたところの売上高が、損益分岐点売上高です。上記表が示すように、損益分岐点を超えれば黒字であること、逆に下回れば赤字であることがわかります。

そのため、損益分岐点グラフを活用して実際の売上と費用のバランスを可視化することで、経営状況がイメージしやすくなるでしょう。

損益分岐点グラフの作り方

損益分岐点のグラフの具体的な作り方は、以下のとおりです。

損益分岐点グラフの作り方

  1. 縦軸をすべての費用、横軸を年間の売上高にしてグラフを作る
  2. 横軸と平行になるように固定費の線を引く
  3. 固定費が始まっているポイントから変動費の線を引く
  4. 原点から売上の線を引く
  5. 交点となる損益分岐点を確認する

なお、縦軸・横軸に記載する金額は、事業の規模にあわせて設定してください。また、Excelを活用して損益分岐点グラフを作成することもできるため、詳しく知りたい方は、別記事「損益分岐点とは? エクセルで損益分岐点を計算する方法」をあわせてご確認ください。

損益分岐点の活用方法

損益分岐点は、単に損失が出ないトントンの状態を把握するだけではなく、以下のような活用ができます。

損益分岐点の活用方法

  • 損益分岐点比率を求めて利益の状態を確認
  • 安全余裕率を求めて事業のリスクを評価
  • 目標利益達成売上高を求めて目標達成に必要な売上高を把握

損益分岐点がわかればこれら3つの数値を算出できるため、より具体的かつ詳しい経営状態の把握ができるでしょう。

損益分岐点比率を求めて利益の状態を確認する

損益分岐点比率とは、売上高にどれくらいの余裕があるのかを測る財務分析の指標です。損益分岐点比率が低いということは、売上高と損益分岐点の差分が大きく、利益が多い状態となっています。

この場合は、売上高が多少減少しても、赤字になりにくい収益構造であるといえるでしょう。なお、損益分岐点比率は、以下の計算式で求められます。

損益分岐点比率の計算式

損益分岐点比率 = 損益分岐点 ÷ 売上高 × 100

また、損益分岐点比率の計算例は以下のとおりです。例として、売上高1,000万円で損益分岐点700万円の場合の損益分岐点比率は、以下のとおりです。

【売上高1,000万円、損益分岐点700万円の場合】

損益分岐点比率 = 700 ÷ 1,000 × 100
損益分岐点比率 = 70%

上記の例における状況では、売上が現状の70%まで減少したとしても、赤字にはならずプラマイゼロの状態を維持できると考えられます。

安全余裕率を求めて事業のリスクを評価する

安全余裕率とは、売上にどれほどの余裕があるかわかる財務指標で、「経営余裕率」とも呼ばれるものです。安全余裕率では損益分岐点比率に到達するまでの余裕を測ることができ、事業の安定性や経営のリスクに対する耐性を評価できます。

安全余裕率の算出は、以下2つの式で行うことが可能です。

安全余裕率の計算式

安全余裕率 = 100 - 損益分岐点比率
安全余裕率 =(売上高 - 損益分岐点の売上高)÷ 売上高 × 100

また、安全余裕率の計算例は、以下のようになります。

【売上高1,000万円、損益分岐点売上高700万円の場合】

安全余裕率 =(1,000 - 700)÷ 1,000 × 100
安全余裕率 = 30%

なお、安全余裕率は数値が高いほど経営に余裕があるといえる指標であり、目安は以下のとおりです。


安全余裕率事業の状態
0%以下赤字
10%未満危険
10%~19%平均的
20%~30%安全
31%~49%かなり優良
50%以上極めて優良

上記目安より、紹介した例での安全余裕率30%は、安全な数値であることがわかります。

目標利益達成売上高を求めて目標達成に必要な売上高を把握する

目標利益達成売上高とは、損益分岐点の考え方を応用して目標利益を達成するために売上高がいくら必要なのかを示す指標です。目標利益達成売上高は、以下の計算式で求められます。

目標利益達成売上高の計算式

目標利益達成売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率

また、目標利益達成売上高の計算例は以下のとおりです。

【固定費300万円、目標利益100万円、限界利益率70%の場合】

目標利益達成売上高 =(300 + 100)÷ 0.7
目標利益達成売上高 = 約571万円

また、目標利益達成売上高に変動費率をかけることで、目標利益に到達するために上限とすべきおおよその変動費も算出できます。上述した例を活用すると、上限として目指すべき変動費は以下のとおりです。

【固定費300万円、目標利益100万円、限界利益率70%の場合】

変動費 = 目標利益達成売上高 ×(1 - 限界利益率)
変動費 = 571 × 0.3
変動費 = 約171万円

損益分岐点の把握によりできる事業改善方法

損益分岐点を正しく把握できるようになると、以下のような事業改善に活かせます。

損益分岐点の把握によりできる事業改善方法

  • 費用の削減を検討する
  • 最適な目標設定を行う
  • 販売価格の見直しを行う

費用の削減を検討する

損益分岐点を把握することで、売上高に対してどれくらいの固定費・変動費がかかっているのか分かります。たとえば、グラフを見たときに売上よりも費用が上回っている場合は、費用の削減ができる場合があると考えられるでしょう。

まず、固定費を削減するには、毎月の賃料や保険料などの見直し、人件費の削減などが考えられます。いずれも簡単に削減することは難しいですが、かかっている固定費を改めて見直すことで、より効果的な資金繰りにつながるでしょう。

一方の変動費は、仕入れ単価が売上に対して高いという可能性が考えられます。変動費は売上によって増減するものであるため、売上に直結していない変動費がある場合は、削減を検討するべきです。

なお、変動費を削減した結果として商品やサービスのクオリティを下げてしまい、顧客からの満足度に影響が出てしまわないように注意しましょう。

最適な目標設定を行う

損益分岐点を把握すると、黒字にするために必要な売上高が明確になるため、逆算してどれくらいの利益が見込めそうなのか目標設定しやすくなります。

たとえば、損益分岐点が500万円であるとわかれば、事業で利益を100万円出したいときの売上高目標は600万円であると、すぐに計算可能です。このように、損益分岐点を把握することで、明確かつ効率的な目標設定ができるでしょう。

販売価格の見直しを行う

損益分岐点を把握することで、売上高に対してかけている費用が把握できます。よって、商品やサービスの販売価格が適正かどうかの判断もしやすくなるでしょう。

固定費や変動費に対して売上が追いついていない場合は、そもそも商品やサービスの販売価格が低い可能性も考えられます。一方で、販売や契約数量が少ないという場合は、販売価格が高いのかもしれません。

どちらの状況であっても、損益分岐点を下回っていたり余裕がなかったりする場合には、販売価格を一度見直すことが重要です。

まとめ

損益分岐点とは、管理会計上の概念のひとつで、事業における売上高と費用がちょうど同じ額になるポイントのことです。損益分岐点を上回っていれば事業は黒字であることを示し、逆に下回っていれば事業は赤字であることを示します。

また、損益分岐点はさまざまな活用ができ、安全余裕率を求めれば事業のリスクの評価が、目標達成売上高を求めれば必要な売上高が算出可能です。さらに、グラフを活用して損益分岐点と現在地を見直すことで、より効率的な経営改善ができるでしょう。

事業を黒字化さえ継続さえていくためにも、ぜひ損益分岐点について理解を深めて活用してみてください。

よくある質問

損益分岐点の計算方法はなんですか?

損益分岐点の計算は、損益分岐点数量を求める方法と損益分岐点売上高を求める方法の2種類で行います。これらを求めるには、固定費や変動費、売上高などの費用が必要です。詳しくは記事内「損益分岐点の計算方法」をご覧ください。

損益分岐点を超えるとどうなりますか?

損益分岐点を超えると、売上が費用を上回り利益が出ている状況となります。一方で、損益分岐点を下回れば事業は赤字状態となっているため、早急な見直しが必要です。詳しくは記事内「損益分岐点とは」をご覧ください。

損益分岐点比率が高いほどどうなりますか?

損益分岐点比率が高いということは、収支の余裕が少ない状況になっています。損益分岐点比率は、売上高がその比率まで減少してもトントンであるという指標なので、より低い方が事業は安定しているといえます。詳しくは記事内「損益分岐点比率を求めて利益の状態を確認する」をご覧ください。

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