会計の基礎知識

不渡りとは?主な原因や種類、対策についてわかりやすく解説

監修 橋爪 祐典 税理士

不渡りとは、手形や小切手の支払期日に決済ができない状態を指します。企業間取引では、手形や小切手が支払手段として使われることがあり、振出人は期日までに当座預金口座へ必要な資金の準備が必要です。

不渡りを起こすと、取引先や金融機関からの信用低下や資金調達へ悪影響を及ぼすおそれがあり、最悪の事態では取引停止処分につながる可能性があります。

本記事では、不渡りの意味や主な原因・種類、不渡りを起こしそうな場合の対応策についてわかりやすく解説します。

目次

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不渡りとは

不渡りとは、手形や小切手が支払期日に決済されず、支払いが行われないことです。たとえば、振り出した手形の期日に当座預金口座の残高が不足していると、金融機関は手形金額を支払えず不渡りとなります。

不渡りの主な原因は当座預金の残高不足ですが、口座解約のほか、手形や小切手の記載内容の不備なども該当します。手形・小切手による取引は受け取った側が一定期間後に現金化することを前提としているため、期日に決済できないと受取人に多大な損害を与えかねません。

とくに資金不足による不渡りは、企業の支払能力に疑念をもたれる原因となるため経営上の重大なリスクとして扱われます。

不渡りを起こすと取引先や金融機関からの信用低下につながるため、日頃から入出金予定を管理し、支払期日に必要な資金を準備しておくことが欠かせません。

不渡りを起こすとどうなる?

不渡りを起こすと、企業の信用や資金繰りに影響が出る可能性があります。

1回の不渡りで直ちに倒産するわけではありませんが、金融機関の融資審査が厳しくなったり、取引先から支払条件の変更を求められたりするケースも珍しくありません。

以下では、不渡りを起こした場合に企業へ生じる主な影響を解説します。

取引先や金融機関からの信用が低下する

不渡りを起こすと、取引先や金融機関からの信用が低下します。手形や小切手による取引は相手への信頼を前提に成り立っており、不渡りは信頼を損なう行為とみなされるためです。

取引先にとっては、予定していた入金が遅れることで自社の資金繰りにも影響が及ぶため、今後の取引継続に慎重になる可能性があります。

また、金融機関からは返済能力や資金管理体制に不安がある企業と判断され、新規融資や追加融資の審査が厳しくなるケースも少なくありません。

取引停止処分になるケースがある

不渡りを繰り返すと、取引停止処分を受けるケースがあります。全銀協の電子交換所では、6ヶ月間に2回、手形・小切手の不払い(不渡り)を起こした場合、その後2年間、参加銀行との当座預金取引や貸出取引が禁止される制度が設けられています。

取引停止処分を受けると、手形・小切手を使った決済が難しくなるだけでなく、金融機関からの借入にも制約が生じるため、資金調達や取引継続が難しくなり、事業運営に影響を及ぼしかねません。

取引停止処分を避けるためには、1回目の不渡りが発生した時点で、直ちに資金繰りの抜本的な見直しと再発防止策の実行が求められます。

出典:一般社団法人 全国銀行協会「手形交換制度 | 決済システム等の企画運営 」

不渡りの種類と主な原因

不渡りは、その原因や性質によって、以下の3種類に分類されます。

  • 0号不渡り:記載不備や形式不備によるもの
  • 1号不渡り:残高不足や口座解約によるもの
  • 2号不渡り:契約トラブルや偽造・盗難などによるもの

それぞれの違いを理解し、自社の手形・小切手取引にどのようなリスクがあるかを把握しておきましょう。

0号不渡り:記載不備や形式不備によるもの

0号不渡りとは、手形・小切手の記載内容や形式に不備があり、金融機関で決済できない場合に発生する不渡りです。

たとえば、金額・日付・振出人の署名などの記載ミスや押印漏れ、用紙の損傷・改ざんが疑われる場合などが原因になります。資金不足による不渡りではないため、企業の支払能力そのものに直接影響するとは限りません。

ただし、手形や小切手を受け取った取引先にとっては、期日に現金化できないことに変わりはありません。事務処理の不備として不安を与える可能性もあるため、発行前には金額・支払期日・振出人名・押印などを必ず確認しましょう。

1号不渡り:残高不足や口座解約によるもの

1号不渡りとは、支払期日に当座預金口座の残高が不足していたり、口座が解解・凍結されていたりすることで決済できない不渡りです。

一般的に、不渡りと聞いて想定されるのが1号不渡りです。資金不足が原因であるため、取引先や金融機関からは「支払能力に問題がある」と判断されやすく、信用低下につながるリスクが高まります。

売掛金の入金遅れや予想外の支出、資金繰り表の管理不足などが主な原因になるため、日頃から資金繰り表を作成・管理し、当座預金残高と支払予定を照合しておく必要があります。

2号不渡り:契約トラブルや偽造・盗難などによるもの

2号不渡りとは、0号不渡りや1号不渡りに該当しない理由で、手形や小切手の支払いが行われない不渡りです。

たとえば、取引内容に関する契約トラブル・商品の未納や品質不良を理由とした支払拒否・手形や小切手の偽造や変造・盗難などが該当します。

1号不渡りとは異なり、2号不渡りは必ずしも当座預金の残高不足が原因とは限りません。ただし、手形や小切手が期日に決済されない点は同じであり、取引先との関係悪化や信用不安につながる可能性があります。

また、契約トラブルや偽造・盗難が関係する場合は、当事者間での話し合いだけでは解決できず、法的な対応が必要になるケースもあります。2号不渡りを防ぐには、取引契約書や納品・検収の記録を整備するとともに、手形や小切手を適切に保管・管理することが大切です。

不渡りを起こしそうな場合の緊急対応策

資金繰りが悪化し、手形や小切手の決済が難しくなりそうな状況に気づいたら、不渡りが現実になる前に迅速な対応が求められます。

代表的な対応策には、以下のような方法が挙げられます。

  • 過振りで一時的な資金不足に対応する
  • 支払期日の延長(ジャンプ)を取引先へ相談する
  • 売掛金の早期資金化(ファクタリング)を検討する

いずれの方法も直前になってからでは対応が困難です。資金不足の可能性に気づいた時点で早めに関係先へ相談し、自社の状況に合った対応を進めましょう。

過振りで一時的な資金不足に対応する

過振りとは、当座預金の残高を超える手形や小切手の支払いについて、金融機関に一時的な立て替えを依頼する方法です。一時的に資金が不足しているものの、近日中に入金予定がある場合や不足金額が一時的・限定的な場合などに活用できる可能性があります。

ただし、過振りは金融機関の判断によって認められるものであり、必ず利用できるとは限りません。加えて、過振りを依頼すること自体が企業の信用を低下させる要因となるため、利用する際には慎重に検討する必要があります。

日頃の取引状況や信用力も影響するため、不渡りの可能性があるとわかった時点で、できるだけ早く金融機関へ相談することが大切です。

支払期日の延長(ジャンプ)を取引先へ相談する

支払期日の延長は、資金が不足する見込みがある場合に、手形の受取人である取引先へ支払期日を先延ばししてもらう対応です。実務上は「ジャンプ」と呼ばれることもあります。

取引先にとっては入金予定が遅れるため、必ず承諾を得られるとは限りません。しかし、事前に事情を説明し、具体的な入金予定や返済計画を明確に示すことで、交渉の余地が生まれる可能性があります。

ジャンプが認められた場合でも、支払いが免除されるわけではありません。延長された期間を使って、入金予定や支払予定を見直し、金融機関への相談や資金調達など、資金繰りを立て直す対応を進めることが重要です。

連絡が遅れるほど取引先の不信感は強まるため、支払えない可能性が出た段階で速やかに相談しましょう。

売掛金の早期資金化(ファクタリング)を検討する

売掛金の入金前に資金が必要な場合は、ファクタリングによる早期資金化を検討する方法もあります。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、入金期日前に資金化する仕組みです。

ファクタリングは融資とは異なるため、借入を増やさずに資金調達できる点が特徴です。ただし、手数料が発生するため、受け取れる金額は売掛金の額面より少なくなります。

また、売掛金があれば必ず利用できるわけではなく、売掛先の信用力や債権内容によって審査されます。契約条件や手数料も会社によって異なるため、緊急時でも複数社を比較し、信頼できるファクタリング会社を選ぶことが大切です。

不渡りを起こした際の対応

万が一、不渡りが発生してしまった場合は、初動対応の速さが事態の悪化を左右します。不渡り後の対応によって取引先や金融機関との関係悪化を最小限にとどめられる可能性もあるため、冷静かつ誠実に行動することが重要です。

以下では、不渡りを起こした際の対応について重要なポイントを解説します。

金融機関・取引先に速やかに連絡する

不渡りが発生したら、取引銀行と関係する取引先に対して速やかに連絡を入れることが最優先です。連絡が遅れると、支払いの意思がないと受け取られたり、経営状態への不安を強めたりする原因になります。

金融機関には現状の資金状況と今後の返済・補填の見通しを正直に伝え、今後の対応方針について早急な協議を行います。取引先には、支払いが遅れた理由と今後の支払予定を具体的に説明し、誠意をもって謝罪することが大切です。

このとき、都合の悪い情報を曖昧にしたり、実現が難しい支払予定を伝えたりすると、かえって信用を損なうおそれがあります。事実を整理したうえで、できるだけ早く誠実に対応することが重要です。

資金繰りを見直す

不渡りが発生した後は、再発を防ぐために資金繰りを見直す必要があります。不渡りは一時的な入金遅れや想定外の支出によって起こることもありますが、入出金予定の管理不足や収益構造の問題が表面化している場合もあります。

まずは直近の資金繰り表を作成して今後数ヶ月の入金・出金予定を可視化し、資金不足が生じるタイミングと金額を明確にしましょう。

そのうえで、固定費の削減や売掛金の回収サイクルの短縮、支払条件の見直しなど、改善できる項目を検討します。不渡りは一時的な資金不足だけでなく、資金管理の甘さや収益構造の問題が表面化した結果であるケースもあります。そのため、短期的な資金確保とあわせて、継続的に資金繰りを管理できる体制を整えることが重要です。

必要に応じて税理士や中小企業診断士などの専門家に相談しながら、現実的な資金繰り改善計画を策定しましょう。

不渡りを防ぐための対策

不渡りは、日頃からの適切な資金管理と取引条件の整備によって、未然に防げる可能性があります。経営が順調なときこそ、資金繰りの仕組みを見直す絶好のタイミングです。

不渡りリスクを根本から下げるためには、日々の入出金をリアルタイムで把握する習慣をつけ、取引条件を自社の資金サイクルにあわせて整備する必要があります。

入出金予定や資金繰りを管理する

不渡りを防ぐ基本的な対策は、資金繰り表を活用して入出金の予定を継続的に管理することです。資金繰り表とは、一定期間の現金の入りと出を時系列で整理した表であり、いつ・いくらの資金が不足するかを事前に把握するためのツールです。

売掛金の入金日・仕入代金や外注費の支払日・借入返済日・税金や社会保険料の納付日などを資金繰り表にまとめ、将来の現金残高を予測します。とくに手形や小切手を利用している場合は、支払期日に当座預金の残高が不足しないよう、早めの資金準備が必要です。

freee会計のようなクラウド会計ソフトを活用すると、日々の取引データと連動しながら資金繰りをリアルタイムで管理できるため、担当者の負担を抑えつつ精度の高い資金管理を実現できます。資金繰りを継続的に把握するための手段として、ツールを活用するのもひとつの方法です。

決済方法や支払条件を見直す

資金繰りを安定させるには、取引における決済方法や支払条件を自社の資金サイクルに合った形に見直すことも重要です。たとえば、手形決済から銀行振込への切り替えを進めることで、手形に伴う不渡りリスク自体を減らせる可能性があります。

また、売上代金の入金よりも仕入代金や外注費の支払いが先に発生する状態では、利益が出ていても手元資金が不足する可能性があります。取引先と交渉し、入金を早める、支払いを分散する、支払期日を調整するといった資金繰りに無理のない条件へ見直す方法も有効です。

新規取引先との取引では、前払いや短期回収の条件を設定するなど、与信管理の観点からも支払条件を検討することが重要です。取引条件は一度決めたら終わりではなく、定期的に見直す習慣をつけることが、不渡りリスクの継続的な低減につながります。

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まとめ

不渡りとは、手形や小切手が支払期日に決済されないことです。形式不備や契約トラブルによって発生する場合もありますが、残高不足による不渡りは、企業の支払能力に疑念をもたれる大きな要因になります。

不渡りを起こすと、取引先や金融機関からの信用が低下し、資金調達や取引継続に影響するおそれがあります。また、一定期間内に不渡りを繰り返すと、取引停止処分の対象になるケースもあるため、早めの対応と再発防止が重要です。

不渡りを防止するには、入出金予定を正確に把握し、資金繰りを継続的に管理することが重要です。クラウド会計ソフトのfreee会計を活用すれば、銀行口座やクレジットカードと連携して入出金明細を自動で取り込めるため、日々の取引を効率的に記録できます。また、資金繰りレポートでは、売掛金や買掛金などの入出金予定を反映して資金の動きを確認できます。

感覚に頼って管理するのではなく、会計ソフトなどのツールを活用して入出金予定を可視化し、支払期日前に必要な対応を取れる状態を整えておきましょう。

よくある質問

不渡りを起こした企業はどうなる?

不渡りを起こした企業は、取引先や金融機関からの信用が低下する可能性があります。とくに資金不足による不渡りの場合に懸念されるのは、支払能力に不安があるとみなされ融資審査が厳しくなったり、取引条件の変更を求められたりするケースです。

また、一定期間内に不渡りを繰り返すと、取引停止処分を受けるケースもあります。

詳しくは、記事内「不渡りを起こすとどうなる?」をご覧ください。

不渡りの原因は?

不渡りの原因は、大きく分けると手形や小切手の形式不備、資金不足、契約トラブルなどです。

たとえば、手形や小切手の金額・支払期日・押印などに不備がある場合は、形式上の問題で決済できないことがあります。また、当座預金の残高不足や口座の解約も不渡りの原因のひとつです。

そのほか、商品の未納や品質不良をめぐる契約トラブル、手形や小切手の偽造・盗難などによって支払いが行われないケースもあります。

詳しくは、記事内「不渡りの種類と主な原因」をご覧ください。

不渡りと支払遅延の違いは?

不渡りと支払遅延の違いは、手形や小切手の決済に関わるかどうかです。

不渡りは、手形や小切手が支払期日に決済されない状態を指します。一方、支払遅延は、請求書払いや銀行振込などで約束した支払期日までに代金を支払えない状態を広く指す言葉です。

どちらも信用低下につながる点は共通していますが、不渡りには手形・小切手取引に関する制度上の扱いがあります。一定期間内に不渡りを繰り返すと取引停止処分につながる可能性があるため、通常の支払遅延よりも金融取引への影響が大きくなりやすいといえます。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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