会計の基礎知識

為替手形とは? 為替手形のメリット・デメリット、仕組みや仕訳方法

手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類がありますが、為替手形は、手形の振出人が第三者である支払人に依頼し、受取人に対して支払いを行ってもらう三者間取引のための有価証券のことをいいます。

この記事では、為替手形の基礎知識、メリット、デメリットなど仕組みや取引の流れについて詳しく解説していきます。

為替手形とは? 為替手形のメリット・デメリット、仕組みや仕訳方法

目次

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*1 シミラーウェブ、ローカルフォリオ(2019年10月)
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為替手形とは

そもそも手形とは、将来のある期日に相手方と取り決めた金額を支払う(または受け取る)ことを交わした証書を指します。

なかでも為替手形は、手形の振出人が第三者である支払人に依頼し、受取人に対して支払人に支払いを行ってもらう三者間取引で利用されます。

三者間で為替手形を使って取引した場合、手形を発行した人は売掛金と買掛金を同時に打ち消せるため、債権を回収したり債務を支払ったりするプロセスを省略できます。

為替手形を使うシーンとしては、後述する自己受為替手形の形態で、取り立ての確実化を目的に利用されています。

為替手形の登場人物

為替手形の登場人物には、さまざまな呼び方がありますので、はじめに登場人物を整理しておきましょう。

振出人(手形作成者、差出人)・・・手形を作成した人
支払人(名宛人、引受人)・・・手形の支払いを行う人
受取人(指図人)・・・支払いを受け取る人

為替手形にも取引の種類がある

為替手形を使って発行する取引のなかには、二者間で行う場合もあるため、取引形態に応じて、為替手形を使い分ける場合があります。為替手形は取引の方法に応じて、次の3種類が使い分けられます。

  1. 他人宛為替手形(通常の為替手形)
    振出人、支払人、受取人の三者間で取引をする時に使用する為替手形です。為替手形のなかでも、もっともポピュラーな形式です。
  2. 自己受為替手形
    二者間で取引する時に使う、取引形態です。振出人と受取人が、同じ人になっています。国内では取立の確実化のために、一部の取引でこの方法が利用されています。特に貿易において、輸出者が輸入者に対して取り立てるために利用されています。
  3. 自己宛為替手形
    こちらも二者間で取引をする時に使う、特殊な取引形態となります。振出人と支払人が同じ人になっています。

約束手形との違い

為替手形と約束手形の違いは、携わる会社数と支払担当者です。約束手形の取引では二者間で利用され、手形を振り出した人が受取人に支払います。

一方、為替手形での決済は三者間でのやり取りが基本で、手形を振り出した人とは違う企業が支払います。振出人と支払人が違うため、約束手形とは内容が異なります。

為替手形のメリット・デメリット

為替手形は使い方によって大きなメリットがある一方でデメリットもありますので、それぞれの特徴をよく理解しておく必要があります。

メリット

メリットを4つ紹介します。

  1. 入出金が伴わずに買掛金を消し込める
    為替手形を発行し、支払人が手形代金の支払いをすることで、振出人は入出金を伴わずに買掛金を消し込めます。自社で買掛金を支払わなくていいため、口座の残高不足による支払い漏れも起きません。
  2. 取り立てを確実化できる
    為替手形を二者間で扱う自己受為替手形の形態をとることで、国内では資金の取り立てを確実に行えます。その他、輸出入の取引で利用されています。相手が当座預金を持っていない場合で、約束手形を振り出せない場合に有効です。為替手形を振り出した場合、仮に支払いが遅れた場合に不渡りとなってしまいますので、支払いの強制力がより高まります。
  3. 支払人は支払いまでに猶予が生まれる
    為替手形が用いられた場合、手形の発行から支払日までに猶予が生まれます。支払人の目線から見ればメリットと言えるでしょう。
    ただし親企業は下請法の影響で、繊維業に対して手形を発行する場合は最大90日以内、その他業種の企業へ対しても120日以内となっているため注意が必要です。
  4. 支払利息が発生しない
    為替手形を用いて現金を払う場合、借入金の返済と異なり、支払利息は発生しません。

デメリット

為替手形のデメリットを3つ紹介します。

  1. 不渡手形を出すと企業としての信用度が落ちる
    不渡手形とは、手形を発行したにもかかわらず、出金日に口座残高が不足しており、引き落とされなかったことを指します。不渡りは6ヶ月間のうちに2回以上出すと、支払人は取引停止処分を受け、当座預金取引と貸出取引が2年間できなくなります。結果として、取引や融資が受けられずに資金繰りが悪化し、倒産するケースもあります。
  2. 手形を受け取っても、口座にお金がなければ現金化できない
    為替手形を受け取っても、指定された日に支払側の口座にお金がなければ、現金を受け取ることができません。
  3. 期日より前に現金を受け取る場合、利子と手数料が発生する
    指定された受取日よりも前に現金を受け取る場合、利子と手数料が発生します。よって、受取額が減ります。

為替手形取引の仕組みと流れ

為替手形取引の仕組みと流れを詳しく解説します。

為替手形取引の仕組みと流れ

①、②:商品の提供と手形の振り出し
A社から商品やサービスの提供を受け、B社は支払い方法として、現金の代わりに為替手形を発行します。

この段階で、A社には手形に書いてある金額を受け取れる権利が発生します。

③、④、⑤:為替手形の支払いを引き受けてもらう
仮にC社がB社に対して買掛金を抱えている場合、B社はC社に対して、A社へ代わりに手形代金を支払うことで、買掛金の支払いを免除することを提案します。C社は、それを了承しました。

A社はC社から代金を受け取りました。その後、C社がB社に対して抱えていた買掛金は、消滅します。

今回の場合、為替手形を発行したB社は、A社に対する売掛金とC社に対する買掛金を一度の取引で同時に消し込むことができます。つまり為替手形での支払いは、手形を発行したB社にとって、便利な決済方法となるのです。

為替手形を振り出す

ここでは、為替手形を振り出す側に立って、解説します。

為替手形の各項目

為替手形に記入する項目は、以下のようになります。

  1. 振出人(手形作成者)
    手形を振り出した企業(個人)名です。
  2. 振出日
    手形を作成した日付です。
  3. 振出地住所
    振出人の住所と会社名を記入します。
  4. 受取人(指図人)
    手形の代金を受け取る企業(個人)名です。
  5. 支払人(引受人、名宛人)
    手形に記載された代金を支払う企業(個人)名です。ここに支払人が署名することで支払い義務を負います。ちなみに、約束手形の場合は受取人の企業(個人)名となるため注意が必要です。
  6. 引受日
    支払人が、為替手形を引き受けた日を記入します。
  7. 支払日(支払期日)
    手形の金額を支払う日付です。振出日よりも前の日付を記入することはできません。支払日は、支払人が指定します。
  8. 支払地
    支払地は、支払う金融機関の住所を書きます。都道府県名と市区町村を記入します(例.東京都港区、愛知県名古屋市など)。
  9. 支払場所
    金融機関名と支店名を記入します(例.〇〇銀行××支店)。
  10. 金額
    支払う金額を入力します。チェックライターで記入する時は、算用数字で記載し、金額の頭に「¥」。末尾に「☆」、「※」などを付けてください。一方、手書きの場合は、金額を漢数字(壱、弐、参、拾など)で書きます。金額の頭には「金」、末尾には「也」を付けます。

振出人が空欄の場合

振出人が空欄の場合、問題点があります。それは印紙税を負担する人が変わることです。通常、印紙税は振出人が負担します。しかし、振出人が空欄の場合、支払人、もしくは為替取引に携わっている他の人が、印紙税を負担しなくてはいけません。

つまり振出人以外の人に、予期せぬ負担が生じる恐れがあります。振出人以外の人が予期せぬ負担を強いられないためにも、振出人の欄は埋めましょう。

為替手形の裏書

裏書とは、手形を別の人に譲渡した時に、手形の裏側に残しておく記録です。手形の裏側には、「元々の手形の持ち主(裏書人)」と「譲渡先(被裏書人)」を記入します。銀行は、裏書の情報を見て手形代金の振込先を判断します。この場合、被裏書人が手形の支払期日が来ると支払いを受けることになります。

裏書には注意点があります。支払人(引受人)が手形代金を被裏書人に支払わなかった(不渡りが起きた)場合、裏書人に支払いの義務が遡及します。そのため、裏書をする時は、支払人が手形代金を払えるか判断することが大切です。

見方を変えれば、被裏書人は裏書人に信用力があれば、支払人に関わらず安心して譲渡を受けることができるとも言えます。

印紙税額はどうやって決まる?

手形には金額に応じて印紙税が課されます。金額の記載がなされていない手形の場合は、金額を記入した人が作成者と見なされるため、納税義務が発生します。また、振出人の署名がないものは、引受人などが手形の作成者ということになります。印紙税額は法律によって規定されており下記の通りになります。

手形に記載された金額印紙税額
10万円未満非課税
100万円以下200円
100万円以上200万円以下400円
200万円以上300万円以下600円
300万円以上500万円以下1,000円
500万円以上1,000万円以下2,000円
1,000万円以上2,000万円以下4,000円
2,000万円以上3,000万円以下6,000円
3,000万円以上5,000万円以下1万円
5,000万円以上1億円以下2万円
1億円以上2億円以下4万円
2億円以上3億円以下6万円
3億円以上5億円以下10万円
5億円以上10億円以下15万円
10億円を超えるもの20万円

【国税庁】「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」より作成
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm

為替手形の仕訳

最後に、為替手形の仕訳を見ておきましょう。ここでは、額面が10万円の手形を使って取引した時を例に解説します。

振り出し時(振出人の仕訳)

振り出し時は、下記の形で記帳します。

借方金額貸方金額
買掛金100,000円売掛金100,000円

手形代金を支払う人に対する売掛金と、手形の代金を受け取る人に対して発生していた買掛金が減るため、上記の形で記帳します。

引き受け時(支払人の仕訳)

為替手形の振出人から、手形代金を支払うことになった時の仕訳はこちらです。

借方金額貸方金額
買掛金100,000円支払手形100,000円

振出人に対する買掛金が減って、自身で支払う手形が増えるため、上記の形で記帳します。

受け取り時

手形の代金を受け取った時の仕訳は、こちらです。

借方金額貸方金額
買掛金100,000円支払手形100,000円

振出人に対する買掛金が減って、自身で支払う手形が増えるため、上記の形で記帳します。

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まとめ

為替手形は正しい使い方で利用することで大きなメリットがある一方で、正しく発行されない場合に法的な拘束力がなくなる場合もあります。基本をしっかりと抑えて、確実な経理業務を実践しましょう。


監修:筧 智家至(公認会計士・税理士)

慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理士法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。

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