会計の基礎知識

簿価とは?計算方法や時価との違い、管理の注意点を解説

監修 橋爪 祐典 税理士

簿価とは?計算方法や時価との違い、管理の注意点を解説

簿価とは、会計帳簿上での資産や負債の価格です。取得価額・時価・評価額と混同されやすいものの、それぞれ意味や使われる場面は異なります。

簿価を正しく把握していないと、資産の売却益や売却損、決算書に記載する金額に間違いが出かねません。

本記事では、簿価の基本的な意味・計算方法・資産別の考え方を解説します。また、決算・税務申告・資産管理で確認すべきポイントも整理するので、実務の参考にしてみてください。

目次

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簿価(帳簿価額)とは

簿価とは、会計帳簿に記録される資産や負債の金額です。会社や個人事業主が保有する資産について、帳簿上いくらの価額として残っているかを示すもので、正式には「帳簿価額」と呼ばれます。

たとえば、100万円で取得した設備について、これまでに40万円の減価償却費を計上しているケースでは、現在の簿価は60万円です。

簿価はあくまでも、取得価額や減価償却をもとにした帳簿上の金額です。実際の売却価格は市場の需要や資産の状態によって変わるため、簿価と同じ金額で売却できるとは限りません。

簿価は、貸借対照表で資産や負債の金額を確認する際にも関係します。貸借対照表の見方については、 以下の記事もご覧ください。


【関連記事】
貸借対照表(バランスシート)とは?見方や読み方についてわかりやすく解説

簿価と混同しやすい3つの指標とその違い

取得価額・時価・評価額は、いずれも資産の金額を表す言葉ですが、使われる場面や意味は異なります。

簿価と取得価額の違い

取得価額とは、資産を取得した時点でかかった金額を指します。

たとえば、会社が100万円で車両を購入したケースでは、取得価額は100万円です。その後、累計で40万円を減価償却していれば、帳簿に残る簿価は60万円ですが取得価額は100万円のまま変わりません。

つまり、取得価額は資産管理の出発点となる金額であり、簿価は取得後の会計処理を反映した現在の帳簿上の金額です。建物・車・設備などの固定資産では、時間の経過とともに両者の金額がずれていきます。

簿価と時価の違い

時価とは現在の市場で取引される価格や、売却できると見込まれる市場価格を指します。一方で簿価は会計帳簿に記録されている金額であり、過去の取得価額や減価償却をもとに計算されます。時価と異なり、現在の価値をそのまま表しているとは限りません。

たとえば、取得した土地は原則として減価償却しないため、簿価が購入時の金額のまま維持されるケースがあります。しかし、地価が上昇し、現在の時価が上がっていれば、帳簿上の金額と市場での評価には差が生まれるでしょう。

不動産や株式・投資信託・債券などの有価証券では、簿価と時価との差額によって、含み益・含み損が生じます。

簿価と評価額の違い

評価額とは、特定の目的に応じて算出される価格です。たとえば、固定資産税評価額・相続税評価額・不動産鑑定による評価額などを指します。簿価は、会社や個人の会計帳簿に記録されている資産の価額です。

簿価の基準は、取得価額や減価償却です。一方、評価額の基準は、以下のような目的に応じて決まります。

評価額の用途

  • 税務
  • 相続
  • 担保評価
  • 売却査定

計算方法や使われる場面も、目的に応じて変わります。

評価額の考え方については、以下の記事もご覧ください。


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減損損失とは?減損会計のメリット・デメリット、財務諸表への影響をわかりやすく解説

簿価の計算方法

簿価は、資産を取得したときの金額をもとに、減価償却などの会計処理を反映して求めます。基本的な計算式と、簿価が減少する仕組みを確認しましょう。

簿価の基本的な計算式

簿価は、資産の取得価額から、これまでに計上した減価償却累計額を差し引いて求めます。計算式は、以下のとおりです。

簿価=取得価額-減価償却累計額

簿価の基本的な考え方

取得価額とは、建物・車両・設備などを取得した時点の金額です。減価償却累計額とは、取得後に毎年費用として計上してきた減価償却費の合計を指します。

たとえば、100万円で機械を取得し、これまでに40万円を償却していれば、帳簿に残る簿価は60万円です。この60万円は会計帳簿に記載されている資産の価額であり、売却価格や市場価格と一致するとは限りません。

減価償却の計算方法は、以下の記事でも解説しています。


【関連記事】
減価償却の定率法とは?定額法との違いや償却率、計算方法などを解説

減価償却によって簿価は減少する

建物・車・設備などの固定資産は、使用や時間の経過によって、価値が減少します。この考え方を帳簿に反映した処理が、減価償却です。

減価償却では、資産の取得にかかった費用を、耐用年数にわたって毎年費用として計上します。

たとえば、100万円で取得した車両について、1年目に20万円、2年目に20万円の減価償却費を計上したケースでは、2年後の簿価は60万円になります。

減価償却の詳細は、以下の記事でも解説しています。


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減価償却とは?仕組みや対象資産、計算方法をわかりやすく解説

【資産別】簿価の考え方と計算例

簿価の考え方は、資産の種類によって異なります。有価証券・不動産・車両・設備を例に、資産ごとの簿価の捉え方を整理します。

有価証券

有価証券の簿価とは、株式・投資信託・ETF・国債・債券などを取得したときの、取得価額や平均取得単価をもとに管理される金額です。簿価は現在の市場価格そのものではなく、売却時の利益や損失を計算するための基準になります。

たとえば、ある株式を1株1,000円で100株、後日1株1,200円で100株取得したと仮定します。このケースでは、合計取得額は22万円、保有株数は200株となり、1株あたりの平均取得単価は1,100円です。このケースでは、1株当たり1,100円(総額22万円)が、帳簿上の取得価額として管理され、簿価の基礎となります。

有価証券は、建物や車両のように減価償却する資産ではありません。そのため、保有期間が長くなっただけで簿価が下がるわけではなく、追加購入や一部売却によって平均取得単価が変わったときなどに簿価も変動します。

なお、NISA口座・特定口座・一般口座の違いは、主に売却益や配当・分配金への課税に関わるものです。口座区分によって取得価額・平均取得単価が変わるわけではありません。実際の金額は、証券会社の取引画面や、取引報告書で確認しましょう。

土地・建物(不動産)

不動産の簿価は、土地と建物を分けて考える必要があります。土地は使用によって物理的に摩耗しない資産とされ、原則として減価償却の対象になりません。取得後に追加取得や減損などの会計処理がない限り、土地の取得価額と簿価は基本的に一致します。

一方、建物は時間の経過や使用によって価値が減少するため、取得価額から減価償却累計額を差し引いて簿価を計算します。

たとえば、土地2,000万円、建物1,000万円で物件を取得し、建物について300万円を償却しているケースでは、土地の簿価は2,000万円、建物の簿価は700万円です。不動産全体では、2,700万円が帳簿上の金額となります。

売却や相続、税務申告を行う際は、売買契約書や固定資産台帳で取得価額と償却状況を確認しておく必要があります。

車両・設備

車両や設備の簿価とは、取得価額から減価償却累計額を差し引いた、帳簿に残っている固定資産の金額です。会社や個人事業主が保有する車・機械・設備などは、使用するほど性能や価値が下がる有形固定資産とされます。

たとえば、業務用車両を300万円で取得し、これまでに180万円の減価償却費を計上しているケースでは、簿価は120万円です。その車両を150万円で売却すれば、簿価との差額30万円が売却益になります。反対に、100万円で売却すれば売却損が生じます。

簿価の確認が必要になるタイミング

簿価は、日常的に意識する機会は少なくても、決算や資産処分時の判断材料になります。とくに次のような場面では、正確な簿価の確認が欠かせません。

決算書を作成するとき

決算書を作成する際、簿価は資産や負債をいくらで記載するか判断する基準になります。

貸借対照表では、建物・車両・設備・有価証券などの資産を、取得価額や減価償却などの会計処理を反映した金額で表示します。簿価は、決算時点で資産や負債をいくらで計上するかを判断する基準になります。

たとえば、100万円で取得した設備について40万円の減価償却費を計上しているケースでは、決算時点の簿価は60万円です。この金額を誤ると、固定資産の残高や減価償却費がずれ、利益を正しく計算できなくなります。その結果、税務申告の内容にも影響するおそれがあります。

固定資産台帳を管理するとき

固定資産台帳を管理するときも、簿価の確認は必須です。固定資産台帳には、以下の項目が記録されます。

固定資産台帳の記録項目

  • 資産の取得日
  • 取得価額
  • 耐用年数
  • 当期の減価償却費
  • 減価償却累計額
  • 期末簿価

建物・車両・設備のような固定資産は、取得後も毎年の償却によって、帳簿上の価額が変動します。現在の簿価を正しく把握するには、台帳の更新が必要です。

台帳を整理しておくことで、決算書の作成や税務申告、資産の売却や廃棄を行う際に、根拠となる金額を確認できます。

資産を売却・除却するとき

売却・除却時の損益判断には、簿価の確認が必須です。簿価は帳簿上、まだ費用化されていない資産の金額であるため、基準として参考になります。資産を売却・除却する際は、売却価格や処分価格と簿価を比較して、利益や損失を計算します。

たとえば、簿価120万円の業務用車両を150万円で売却したケースでは、差額30万円が売却益です。反対に、100万円で売却したケースでは簿価を20万円下回るため、売却損が発生します。

また、設備を廃棄する際に簿価が残っていれば、その残額を除却損として会計処理するケースがあります。資産を処分する前に、固定資産台帳や証券会社の取引報告書などで簿価を確認しましょう。

簿価を管理するときの注意点

簿価は帳簿上の金額であり、実際の資産価値と常に一致するわけではありません。資産の売却・決算・税務申告で正しく判断するには、固定資産台帳や取得時の資料をもとに、簿価を継続的に管理する必要があります。

固定資産が増えるほど、減価償却費や期末簿価を手作業で更新する負担は大きくなりがちです。「freee会計」のような会計ソフトを使うと、固定資産台帳の作成や、減価償却費の計算を効率化できます。決算や税務申告に必要な金額も確認しやすく、複数の固定資産を管理する際の負担軽減につながるでしょう。

簿価と実際の価値がずれるケースがある

簿価は会計帳簿に記載されている金額であり、実際に売却できる価格や市場で評価される価値とは一致しないケースがあります。実際の資産価値は、以下のような要因で細かく変動します。

資産価値の変動要因

  • 市場の需要
  • 資産の状態
  • 立地や周辺の開発環境
  • 株価や金利の変動

たとえば、30年前に取得した土地の簿価が1,000万円のままでも、現在の市場価格が3,000万円になっているケースがあります。反対に、簿価500万円の設備でも、技術の陳腐化により中古市場では100万円程度でしか売却できないケースもあります。

資産の売却や投資判断では、簿価だけでなく時価・査定額・取引価格もあわせて確認するのが大切です。

簿価が高すぎる場合は減損処理が必要なケースがある

帳簿に残っている簿価が、資産から将来得られる収益や回収可能な金額を上回る場合は、減損処理を必要とするケースがあります。

減損とは、固定資産の収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった際に、一定の条件のもとで帳簿価額を回収可能な金額まで減額する会計処理です。

建物・設備などの固定資産は、所得後の市場環境や使用状況の変化により、帳簿に記載された簿価ほどの価値や収益性を持たなくなるケースがあります。なお、有価証券については、固定資産の減損会計とは別に、時価が著しく下落した場合に強制評価減などの処理が求められる場合があります。

減損の判断には専門的な確認が必要になるため、気になる資産がある場合は会計担当者や税理士に相談しましょう。

取得時の資料を保管しておく

簿価を正しく管理するには、資産を取得したときの資料を保管しておく必要があります。以下のような書類が残っていないと、取得価額や減価償却の根拠を確認できません。

取得価額を確認するための書類例

  • 売買契約書
  • 領収書
  • 請求書
  • 支払明細
  • 固定資産台帳
  • 証券会社の取引報告書

とくに不動産や相続した資産では、資料の有無が売却時の利益計算や税務申告に大きく影響します。取得時の資料がなく取得価額を証明できないケースでは、売却価格の5%を概算取得費として計算する方法が使われることがあります。

しかし、実際の取得費が5%より高かった場合、譲渡益が大きく見積もられ、課税額が増える可能性があります。取得時の資料は、将来の税額を正しく計算するためにも保管しておきましょう。

まとめ

簿価とは、会計帳簿に記録されている資産や負債の金額です。取得価額・時価・評価額とは意味が異なり、減価償却や会計処理によって金額が変わる場合があります。

資産の売却・決算・税務申告では、簿価を正しく把握しておくことが重要です。とくに不動産・設備・有価証券を扱う際は、簿価や時価とあわせて、 売買契約書・領収書・固定資産台帳などの 資料も確認しておきましょう。

固定資産の簿価を正しく管理するには、取得価額・減価償却累計額・期末簿価の継続的な記録が必要です。「freee会計」を活用すれば、固定資産台帳の作成や減価償却費の計算を効率化できます。日々の経理処理から決算・税務申告までまとめて管理したい場合は、会計ソフトの活用が有効です。

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よくある質問

簿価とは「取得価額(購入金額)」のことですか?

簿価は資産を取得した後に行う減価償却や会計処理を反映し、現時点で帳簿に残っている価額を意味します。一方、取得価額は、資産を取得した時点でかかった金額です。

ただし、土地のように原則として減価償却しない資産では、取得価額が簿価の基準として使われるケースもあります。

詳しくは、記事内「簿価と取得価額の違い」をご覧ください。

「帳簿価額(減価償却後の未償却残高)」とは何ですか?

帳簿価額とは、会計帳簿に記録されている資産や負債の金額です。簿価は「帳簿価額」を略した表現で、同じ意味で使われます。

建物・車両・設備などの固定資産は、取得時の金額を耐用年数にわたって、少しずつ減価償却費として計上します。結果、取得価額から減価償却累計額を差し引いた残りの金額が、減価償却後の未償却残高です。

詳しくは、記事内「減価償却によって簿価は減少する」をご覧ください。

不動産の簿価とは「土地や建物の帳簿価額」のことですか?

不動産の簿価とは、土地や建物について帳簿に記録されている価額のことです。ただし、土地と建物では簿価の考え方が異なります。

土地は原則として減価償却の対象にならず、取得価額が簿価の基準として残りやすい特徴があります。一方、建物は時間の経過や使用によって価値が減少するため、取得価額から減価償却累計額を差し引いて簿価を計算します。

詳しくは、記事内「土地・建物(不動産)」をご覧ください。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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