監修 好川 寛 プロゴ税理士事務所
キャッシュ・フロー計算書(C/F)とは、一定期間(一会計年度)におけるキャッシュの出入りを示す決算書のことです。貸借対照表や損益計算書と並ぶ財務三表のひとつで、企業における現金などの流れ(=キャッシュ・フロー)を把握する上で役立ちます。
このキャッシュ・フロー計算書には、「間接法」と「直接法」という2つの記入法があります。本記事では、作成の全体像と必要な書類、間接法・直接法それぞれの作り方の手順、どちらを採用すべきかの判断ポイント、作成時の注意点までをまとめて解説します。
キャッシュ・フロー計算書の見方については、別記事「キャッシュフロー計算書の見方とは?見る順番やチェックポイントを実例で解説」をご参照ください。
目次
- キャッシュ・フロー計算書とは
- キャッシュ・フロー計算書の作り方の全体像
- 作成に必要なもの
- キャッシュ・フロー計算書の間接法と直接法の違い
- 間接法は損益計算書をもとに作成する方法
- 直接法は取引ごとに総額を表す方法
- 間接法と直接法のメリットとデメリット
- 間接法と直接法はどちらで作成すべき?
- 間接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方
- 1. 税引前当期純利益の額を確認する
- 2. 非資金損益項目を調整する
- 3. 営業外損益と特別損益を調整する
- 4. 営業活動に関するキャッシュ項目を調整する
- 直接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方
- 1. 営業収入を集計する
- 2. 仕入による支出を集計する
- 3. 人件費の支出を集計する
- 4. そのほかの営業費の支出を集計する
- キャッシュ・フロー計算書を作成するときの注意点
- まとめ
- 大変な法人決算と税務申告を効率的に行う方法
- よくある質問
キャッシュ・フロー計算書とは
キャッシュ・フロー計算書とは、一定期間(一会計年度)での企業の資金の増減を区分ごとに示した決算書類です。英語表記が「Cash Flow Statement」であることから、「C/F」と略されることがあります。企業の現金の動きを可視化するための書類で、貸借対照表や損益計算書と合わせて「財務三表」と呼ばれます。
キャッシュ・フロー計算書では、現金などの流れが「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つの区分で表され、これを見れば過去の該当会計期間におけるお金の流れを把握できます。
キャッシュ・フロー計算書は金融商品取引法や会社法によって上場企業には作成が義務付けられていますが、非上場企業に作成の義務はありません。しかし、資金繰りの状況がわかりやすくなるため非上場企業でも作成が推奨されます。
キャッシュ・フロー計算書の概要・役割や活用方法などの基礎知識は、別記事「キャッシュ・フロー計算書とは?仕組み・3つの区分・ひな形をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
出典:e-Gov 法令検索「金融商品取引法第二十四条第一項」
出典:「会社法第四百四十四条第三項」
キャッシュ・フロー計算書の作り方の全体像
キャッシュ・フロー計算書は、おおまかに次の4つのステップで作成します。
キャッシュ・フロー計算書の作り方の全体像
- 作成方法を選ぶ:営業活動のキャッシュ・フローを「間接法」「直接法」のどちらで作るか決める
- 必要な書類を準備する:損益計算書・貸借対照表・総勘定元帳などをそろえる
- 区分ごとに集計・調整する:営業・投資・財務の3区分で現金の増減を計算する
- 期末残高を確定する:期首の現金残高に当期の増減を加え、期末残高を求める
まずは全体像をつかんだうえで、自社に合った作成方法を選びましょう。間接法・直接法それぞれの作り方の手順は、記事内「間接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方」「直接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方」で後述します。
作成に必要なもの
作成方法によって、用意すべき書類が異なります。
作成に必要な書類
- 間接法:損益計算書・貸借対照表(前期末・当期末の2期分)
- 直接法:総勘定元帳(+ 損益計算書・貸借対照表)
間接法では損益計算書と前期末・当期末の貸借対照表があればキャッシュ・フロー計算書を作成できますが、直接法では主要な取引ごとにキャッシュの増減を確認するため、総勘定元帳などの補助資料も準備します。
会計ソフトを使えば、日々の記帳データから必要な数値を自動で集計でき、書類準備の手間を大きく減らせます。
キャッシュ・フロー計算書の間接法と直接法の違い
キャッシュ・フロー計算書の表示方法には「間接法」と「直接法」の2種類があります。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」は「財務活動によるキャッシュ・フロー」は主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額で表示します。間接法・直接法を選択できるのは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」のみで、日本では間接法を採用するケースが一般的です。
「間接法」と「直接法」の書き方の違いは以下のとおりです。
| 直接法で示した場合 | 間接法で示した場合 | ||
|---|---|---|---|
| 項目 | 金額 | 項目 | 金額 |
| 営業収入 | 63,750 | 税引前当期純利益 | 20,000 |
| 商品の仕入れなどの支出 | -21,250 | 減価償却費 | 3,750 |
| 人件費支出 | -6,250 | 売上債権の増加 | -2,500 |
| そのほかの営業支出 | -7,500 | 投資有価証券売却損 | 1,000 |
| 法人税支払 | -10,000 | 棚卸資産の増加 | -1,000 |
| 買入債務の増加 | 7,500 | ||
| 法人税等支払 | -10,000 | ||
| 営業活動による キャッシュ・フロー | 18,750 | 営業活動による キャッシュ・フロー | 18,750 |
間接法は損益計算書をもとに作成する方法
間接法とは、損益計算書に記載された「税引前当期純利益」に、減価償却費などの非資金損益項目や、売上債券・棚卸資産・仕入債務といった営業活動に係る資産・負債の増減額などを加減して、「営業活動によるキャッシュ・フロー」を求める方法です。
営業収入や費用を直接計算しないことから、「間接法」と呼ばれています。具体的には、税引前当期純利益から以下の項目を加算したり減算したりします。
間接法で加減する項目
- 非資金損益項目(減価償却費、のれん償却費など)
- 貸倒引当金の増減額
- 営業外収益(受取利息など)
- 営業外費用(支払利息など)
- 特別利益(固定資産売却益など)
- 特別損失(固定資産売却損など)
- 前払費用、未払費用の増減額
- 売掛金、受取手形の増減額
- 棚卸資産、買掛金、支払手形の増減額(棚卸資産と買掛金・支払手形に分ける)
損益計算書と貸借対照表の項目を使い、現金の動きを逆算的に算出していくのが間接法と理解しておきましょう。
間接法での作り方をさらに詳しく知りたい方は、別記事「キャッシュ・フロー計算書の間接法とは?作り方や直接法との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
直接法は取引ごとに総額を表す方法
直接法は、営業活動によるキャッシュの流入・流出を総額でとらえる方法です。
具体的には、営業収入、商品や原材料費などの仕入、給料や賃金の支払、経費の支払といった主要な取引ごとにキャッシュ・フローの総額を表します。同じ営業活動キャッシュ・フローの販売と仕入にかかった支払いはそれぞれ記載し、相殺はしません。
直接法では、営業収入は現金売上や売掛金・受取手形の現金回収分が該当します。商品などの仕入による支出には、現金仕入のほか、買掛金や支払手形の現金支払分が含まれます。
現金ベースで資金の動きを確認するため、「家庭でつける家計簿の企業版」といえばイメージしやすいかもしれません。営業活動の項目ごとに、キャッシュの増減が明確にわかる点が特徴です。
直接法での作り方をさらに詳しく知りたい方は、別記事「キャッシュ・フロー計算書の直接法とは? 作り方や間接法との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
間接法と直接法のメリットとデメリット
間接法と直接法、どちらを用いても最終的な金額は同じです。しかし「営業によるキャッシュ・フロー」に関しては、間接法を使うケースが多いといえます。理由は、間接法を用いたキャッシュ・フロー計算書は損益計算書と貸借対照表があれば作成でき、直接法に比べて作成の手間や負担が少ないという実務上のメリットによるものです。
直接法では主要な取引ごとにデータを準備しなくてはならないため、間接法に比べて作成の事務負担が大きい点がデメリットです。ただし間接法よりも詳しく実態を把握できることから、国際会計基準では直接法が推奨されています。
直接法・間接法それぞれのメリットやデメリットを正しく理解し、自社に合った方法を選びましょう。
| 直接法 | 間接法 | |
|---|---|---|
| 作り方 | 収入・支出を項目別に集計する | 損益計算書から資金の増減を調整する |
| メリット | キャッシュ・フローの実態を詳しく把握できる | 作成に手間がかからない |
| デメリット | 主要な取引ごとのデータが必要なため手間がかかる | 収入や支出を把握しづらい |
間接法と直接法はどちらで作成すべき?
「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」は直接法で作成しますが、「営業活動によるキャッシュ・フロー」は間接法・直接法のどちらかを選べます。 どちらを採用すべきかは、作成の目的とかけられる手間で判断しましょう。
間接法・直接法の選び方
【間接法が向いているケース】
- 損益計算書・貸借対照表をすでに作成しており、キャッシュ・フロー計算書作成の手間を抑えたい
- 多くの日本企業と同じ実務に合わせたい(営業キャッシュ・フローは間接法が一般的)
【直接法が向いているケース】
- 営業収入・支出の総額を把握し、将来のキャッシュ・フローを予測したい
- 国際会計基準(IFRS)への対応を見据えている
実務上は、手間の少ない間接法を選ぶ企業が多数派です。一方で、キャッシュの流れを項目ごとに詳細に管理したい場合は直接法が適しています。自社の目的に合わせて選びましょう。
間接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方
間接法を使ってキャッシュ・フロー計算書を作成する手順は、以下の4ステップです。
間接法のキャッシュ・フロー計算書の作り方
- 税引前当期純利益の額を確認する
- 非資金損益項目を調整する
- 営業外損益と特別損益を調整する
- 営業活動に関するキャッシュ項目を調整する
キャッシュ・フロー計算書の作成にあたっては、エクセルなどの表計算ソフトを用いて作成することもできますが、会計ソフトを使えば数値の転記ミスや集計ミスなどを防げます。効率化を図る、ミスを減らしたいなどの意向にあわせて、導入を検討しましょう。
ここでは作り方の概要を解説します。間接法による作り方についてさらに詳しくは、別記事「キャッシュ・フロー計算書の間接法とは?作り方や直接法との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
1. 税引前当期純利益の額を確認する
まずは損益計算書で当期分の「税引前当期純利益」を確認し、キャッシュ・フロー計算書の「税金等調整前当期純利益」の項目にその金額を転記します。
2. 非資金損益項目を調整する
非資金損益項目とは、「キャッシュが減少しない費用」と「キャッシュが増加しない収益」のことで、減価償却費や貸倒引当金繰入額などが該当します。減価償却費は実際に現金を支払っていませんが、損益計算書と整合性を取るため加算します。貸倒引当金は貸借対照表で前期と当期の差分を求め、増えていれば加算、減っていれば減算します。
3. 営業外損益と特別損益を調整する
営業活動のキャッシュ・フローは営業活動に関する現金収支を見る資料であるため、「営業外収益」「営業外費用」「特別利益」「特別損失」が税引前当期純利益に含まれている場合は、ここで差し引きます。
4. 営業活動に関するキャッシュ項目を調整する
損益計算書の売上高や売上原価には売掛金・買掛金などキャッシュ以外の項目も含まれるため、調整を行います。前期と当期の貸借対照表を比較し、売上債権や棚卸資産が増えていれば減算、減っていれば加算します。仕入債務は増えていれば加算、減っていれば減算します。
直接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方
キャッシュ・フロー計算書を「直接法」で作成する方法を解説します。直接法の場合は、下記の4ステップで作ります。
直接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方
ここでも作り方の概要を解説します。直接法による作り方についてさらに詳しくは、別記事「キャッシュ・フロー計算書の直接法とは?作り方や間接法との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
1. 営業収入を集計する
総勘定元帳などを準備し、現金売上で増加した額、売掛金・受取手形の現金回収分、売上に関わる前受金などを集計し「営業収入」に記入します。含めるのは「売上に関わる現金の増加額」です。
2. 仕入による支出を集計する
現金仕入で減少した額、買掛金・支払手形の現金支払分、仕入に関わる前渡金などを集計し、「営業収入」から差し引きます。
3. 人件費の支出を集計する
給料や賞与など人件費の現金支払額を集計して差し引きます。当期発生分でも未払分は除き、現金支払分のみを計算します。
4. そのほかの営業費の支出を集計する
損益計算書の「販売費及び一般管理費(販管費)」から未払分を差し引いた当期現金支払分を集計します。これで営業活動によるキャッシュ・フローの小計が確定します。
あとは「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」を項目ごとに増減し、最終的に期首残高を加えて期末の現金残高を確定させれば完成です。
キャッシュ・フロー計算書を作成するときの注意点
キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書や貸借対照表の数値を調整しながら作成するため、次の点に注意しましょう。
キャッシュ・フロー計算書を作成するときの注意点
- 加算・減算の符号を間違えない:資産が増えればキャッシュは減少、負債が増えればキャッシュは増加と、方向が直感と逆になる項目がある
- 期首残高との整合を取る:算出した増減額に期首の現金残高を加えた額が、貸借対照表の期末残高と一致するか必ず確認する
- 区分の分類ミスに注意する:同じ取引でも、営業・投資・財務のどの区分に該当するかを正しく判断する
- 転記ミスを防ぐ:項目数が多いため手作業による転記ではミスが起こりやすいため注意する。日々の記帳データから自動作成ができる会計ソフトの活用が有効
まとめ
キャッシュ・フロー計算書とは、一定期間での資金の増減を一定の区分で示した決算書類です。
作り方には「間接法」と「直接法」の2種類があり、まずは必要な書類をそろえ、自社の目的に合った作成方法を選ぶことが第一歩です。日本企業では、実務上のメリットから営業活動のキャッシュ・フローに間接法を用いるケースが多くなっています。本記事の手順と注意点をおさえ、正しくキャッシュ・フロー計算書を作成しましょう。
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よくある質問
キャッシュ・フロー計算書の間接法を使った作り方は?
損益計算書と貸借対照表を用意し、以下の順番に沿って各項目に金額を入れ込んで計算していきます。
- 税引前当期純利益の額を確認する
- 非資金損益項目を調整する
- 営業外損益と特別損益を調整する
- 営業活動に関するキャッシュ項目を調整する
詳しくは、記事内「間接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方」をご覧ください。
キャッシュ・フロー計算書の直接法を使った作り方は?
総勘定元帳を用意し、必要な金額を集計しながら、以下の順番で記入していきます。
- 営業による収入を集計する
- 仕入による支出を集計する
- 人件費の支出を集計する
- そのほかの営業費の支出を集計する
詳しくは、記事内「直接法を使ったキャッシュ・フロー計算書の作り方」をご覧ください。
キャッシュ・フロー計算書を作成するには何が必要?
間接法で作成する場合は損益計算書と貸借対照表を、直接法で作成する場合は総勘定元帳などのデータを用意しましょう。また、記入ミスや計算ミスなどを防ぐためにも、会計ソフトの導入をおすすめします。
詳しくは、記事内「作成に必要なもの」をご覧ください。
監修 好川 寛(よしかわひろし)
プロゴ税理士事務所。元国税調査官。国税(調査・相談2万件・審判実務)×民間(事業会社実務・PdM)の複眼的な視点が強み。クリエイター/IT・SaaS等の現代的ビジネス、海外取引・非居住者税務に明るい。
