会計の基礎知識

摘要とは?帳簿の摘要欄に書く目的や内容、書き方、備考との違いを解説

監修 橋爪 祐典

摘要とは?帳簿の摘要欄に書く目的や内容、書き方、備考との違いを解説

摘要とは取引の詳細を簡潔に記録する項目です。仕訳の根拠を明確にする役割を担っています。

請求書や領収書、見積書など、さまざまな書類に摘要欄が設けられています。たとえば帳簿では、勘定科目だけでは伝わらない情報を記入することで、取引の内容を一目で把握し、確認しやすくする目的があります。

本記事では、摘要の基本的な意味や書く目的、備考や概要との違いを解説します。あわせて、具体的な記載例や注意点も紹介します。

目次

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摘要とは?

摘要(てきよう)とは、「重要な部分を抜き出したもの」や「要約」を意味します。

会計分野では、帳簿や請求書といった書類の取引記録で、金額や勘定科目だけでは判断できない取引の詳細を記載する欄のことです。

帳簿の摘要欄に取引先名や品目などを記載することで、取引の根拠を明確にし、税務調査時の確認や社内管理体制の強化に役立ちます。

摘要と区別すべき用語

摘要に似た用語として「備考」や「概要」があります。ここでは、摘要と混同されやすい用語との違いを解説します。

摘要と備考の違い

摘要と備考の主な違いは、記載内容の性質と目的にあります。

摘要は、取引の内容を簡潔に記録する欄で、取引先名や品目、用途など「取引の中身」に関わる情報を記載します。帳簿や税務調査での確認に使われる重要な項目です。

一方、備考は、取引に直接関係しない補足情報を記録する欄で、支払条件や担当者名、振込手数料の負担先などを記載します。摘要よりも自由度の高いメモ的な位置づけです。

会計ソフトでも摘要欄は必須入力項目として設定されることが多く、備考欄は任意項目として扱われています。

摘要と概要の違い

概要は、文書全体の要点や流れを大まかにまとめたものです。たとえば、事業計画書の「事業概要」や契約書の「業務概要」など、全体像を把握する目的で使われます。

一方、摘要は個別取引ごとの記録に使われるため、概要とは対象のスケールや使われる場面が異なります。

摘要を記載する目的

帳簿に摘要を記載する目的は多岐にわたりますが、主に以下の3つです。

摘要を記載する目的

  • 仕訳した取引内容をわかりやすくするため
  • 税法上のルールに対応するため
  • 第三者から見ても取引内容が把握できるようにするため

仕訳した取引内容をわかりやすくするため

摘要を記載することで、勘定科目だけでは判断できない取引の詳細を、文章で補完してわかりやすくします。

たとえば、「旅費交通費」の勘定科目だけの記載や摘要欄が空欄の状態では、出張先や目的がわかりません。摘要欄に「大阪出張(新規開拓営業)」と記載することで、取引の背景が明確になります。

税法上のルールに対応するため

摘要は、取引の内容や相手先を明確に記録し、税務上の要件を満たすために必要な項目です。

インボイス制度では適格請求書と帳簿の両方の保存が必要です。摘要に不備があると経費否認や仕入税額控除の否認で追徴課税のリスクが生じます。


出典:e-Gov 法令検索「消費税法 | 第三十条第八項」
出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」

第三者から見ても取引内容が把握できるようにするため

摘要は税理士や監査法人など第三者が帳簿を確認する際に、取引の妥当性と透明性を証明する重要な情報源です。決算や融資、監査などの場面では、限られた時間で大量の取引を確認する必要があるため、摘要のわかりやすさが業務効率にも影響します。

【書類別】摘要欄の役割

書類の摘要欄は、それぞれ異なる役割と重要性があります。ここでは、次の3つの書類に分けて、摘要欄の役割を解説します。

請求書

請求書の摘要欄は、請求内容を具体的に明示し、取引先が支払いの妥当性を判断できるようにする重要な役割を担います。商品名や金額だけでは伝わらない、サービスの内容や提供期間を明記することで、顧客理解の促進が可能です。

たとえば、摘要欄に「Web制作費」とだけ書かれていても、期間や内容が不明確では支払遅延などにつながる可能性もあります。「Webサイト制作業務(2025年9月分)・デザイン修正3回・コーディング作業・SEO設定一式」と具体的に記載すれば、作業内容と期間が明確で、支払いを判断しやすいでしょう。

【関連記事】
請求書にある摘要欄に書くこと

領収書

領収書の摘要欄は、但し書きとして記載される部分が該当し、支払った内容を詳細に記録し、経費計上する際の証拠書類としての機能を果たします。

しかし、「お品代」「飲食代」などの簡略な記載では、経費の妥当性や事業関連性が判断できないことがあります。そのため、税務調査を見据える場合には、但し書きだけでなく出金伝票や社内メモなどで内容を補足するのが現実的です。

領収書摘要には事業目的を含め、プライベート使用との区別を明確にすることで税務リスクの回避が可能です。

【関連記事】
領収書の書き方を見本付きで解説!必須項目やルールなどのポイントは?

見積書

見積書の摘要欄は、提案する商品・サービスの詳細内容を明示する欄です。

摘要欄を明確に記載することで、顧客は見積内容を把握しやすくなり、他社との比較や社内での検討がスムーズになります。後の請求書や納品書との整合性を保つため、曖昧な表現は避けた方が望ましいでしょう。

「システム開発一式」のような摘要では作業範囲が不明確ですが、「顧客管理システム開発(ユーザー登録・検索・出力機能含む/保守6ヶ月)」と具体的に記載すれば、業務範囲の認識違いによるトラブルの防止にもつながります。

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【文例あり】見積書をメールで送付するときの書き方は?郵便やFAXで送る方法・注意点も解説

帳簿の摘要欄に記入する内容

次の3つのケース別に、帳簿の摘要欄の記入例を紹介します。帳簿の摘要欄を適切に記載することは、帳簿の実用性や自社の取引内容の透明性を向上させます。

売上に関する摘要欄の記入項目

売上の摘要欄には、取引先名、商品・サービス内容、数量、単価、契約条件などを明記します。売上の根拠と内容を第三者が理解できるよう具体的に記載しなければいけません。

たとえば、〇〇株式会社へ商品A(1万円)を10個売り上げたとすると、仕訳と摘要欄を以下のように記入します。


借方貸方摘要
売掛金100,000円売上100,000円〇〇株式会社へ商品A(1万円)を10個売上

小売・飲食店など不特定多数相手の業種であれば、摘要欄には「本日売上分」と記載することも可能です。


借方貸方摘要
売掛金100,000円売上100,000円本日売上分

経費に関する摘要欄の記入項目

経費の摘要欄には、支払先名、購入品目、事業目的、使用部門・担当者などを明記します。事業関連性と経費の妥当性を明確に示すことが必要です。

たとえば、〇〇文具店で1万円分のコピー用紙を現金で購入したとすると、仕訳と摘要欄を以下のように記入します。


借方貸方摘要
消耗品費10,000円現金10,000円〇〇文具店、コピー用紙

新幹線代やタクシー代など交通費の帳簿であれば、交通機関会社の名称や乗降した駅名、移動目的を記入しましょう。


借方貸方摘要
旅費交通費10,000円現金10,000円JR東日本、新幹線代、東京駅〜新大阪駅、〇〇株式会社へ訪問出張

消費税に関する摘要欄の記入項目

会計帳簿では、取引ごとの消費税区分を正しく記録する必要があります。

多くの会計ソフトでは、消費税に関する情報は「税区分欄」や「適用税率欄」などに個別で入力できるため、摘要欄に必ず記載する必要はありません。

ただし、摘要欄は補足情報を記録できる自由度の高いスペースとして活用されることがあり、必要に応じて税率や軽減税率対象品目、登録番号などを記載しておくと取引の正確性を補強できます。

2023年10月から始まったインボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、適格請求書の保存と帳簿への記載が義務付けられています。


出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」

【関連記事】
インボイス制度で経費精算はどう変わる?請求書ごとの経費計上の方法について解説

【勘定科目別】実務で悩む帳簿の摘要欄の記入例

実務で悩みやすい、帳簿の摘要欄の記入例を4つ紹介します。

通信費

通信費の摘要欄には、通信手段の種類や使用目的、支払先などを明記します。

具体的には、「インターネットプロバイダ料、〇〇株式会社、2025年9月分」「電話料金、〇〇株式会社、2025年9月分」などと記載します。

通信費の支払いは後払いで未払費用として計上することが少なくありません。そのため、摘要欄に「〇月分」と使用期間の記載が必要です。

消耗品費

消耗品費の摘要欄には、購入店舗名、具体的な商品名・型番、使用目的、使用部署などを明記します。

記載例として「〇〇株式会社、コピー用紙A4×10束、営業資料印刷用」「〇〇株式会社、コピー用紙A4×10束、営業資料印刷用」などがあります。

10万円未満の資産は消耗品費として即時償却できるため、実際の取得価額と経費計上額の整合性が重要です。

接待交際費

接待交際費の摘要欄には、参加者の所属・役職、商談内容・目的、参加人数などを記載する必要があります。

たとえば、「〇〇株式会社田中様と新規取引商談、参加人数5人、〇〇レストラン」「〇〇社チーム懇親会、プロジェクト打上げ、参加人数6人、居酒屋〇〇」のように記載します。

1人当たり1万円以下の飲食費は会議費として損金算入が可能です。ただし、金額と参加人数を記載しなければいけません。

旅費交通費

旅費交通費の摘要欄には、交通機関名、利用区間、出張目的、訪問先などを具体的に記載します。

「〇〇交通株式会社、タクシー代、◯◯駅〜◯◯町、◯◯株式会社への訪問」「東京メトロ〇〇線、〇〇駅〜〇〇駅、〇〇株式会社打ち合わせ」などの書き方があります。

高額な移動手段を利用するなら必要性を具体的に記載し、定期券区間外の移動や通常と異なる経路であれば理由も併記しましょう。

帳簿の摘要欄を記載する際の注意点

帳簿の摘要欄を記載する際、いくつか注意しなければいけない点があります。

帳簿の概要欄を記載する際の注意点

  • 摘要欄は空欄にしない
  • 記載内容は簡潔に入力する

注意点を遵守することで、より正確に帳簿を管理できます。

摘要欄は空欄にしない

帳簿の摘要欄を空欄のままにすると、帳簿を見返した際に取引の内容や根拠がわからず、業務効率の低下や税務リスクの増大につながります。

また、税務調査の際には不備として指摘を受けやすくなるため注意が必要です。

帳簿の摘要欄には、取引先や具体的な取引内容を記録し、正確で信頼性のある帳簿管理を心がけましょう。

記載内容は簡潔に入力する

帳簿の摘要欄を記載する際は、必要な情報を簡潔にまとめることが重要です。

取引先名や取引内容は具体的に記入しますが、細かすぎる説明は不要です。記録が長くなると確認に手間がかかり、管理の効率を下げるため、誰が見ても取引内容が理解できる範囲で端的にまとめましょう。

また、表記方法を社内で統一しておくと、後日の確認作業もスムーズに進みます。

まとめ

帳簿の摘要欄は、取引内容を簡潔に記録する項目です。仕訳の根拠を明確化し、業務効率化や税務調査対応に欠かせません。

請求書などでは、取引先名・取引内容・目的を簡潔に記載することで、第三者が見ても取引の正当性を理解できます。

帳簿の摘要欄を記載する際は、空欄を避け、簡潔でわかりやすい表現を心がけましょう。

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よくある質問

摘要と概要の違いは何ですか?

摘要は帳簿や会計書類で個別取引の内容を簡潔に記載した記録です。会計では取引の事実を具体的に記録する役割を担います。

一方、概要は全体的な内容の大まかな説明であり、詳細な事実の記録よりも全体的な理解を目的とします。

詳しくは記事内「摘要と概要の違い」をご覧ください。

帳簿の摘要欄には何を書くべきですか?

帳簿の摘要欄には、取引先名、取引内容、取引目的などを記載します。

消費税法では仕入税額控除の要件として、帳簿に以下の記載が義務付けられています。

  • 取引相手の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 税率区分ごとの対価の額

また、請求書番号や契約書番号を併記することで、関連書類との対応関係の明確化が可能です。

詳しくは記事内「帳簿の摘要欄に記入する内容」をご覧ください。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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