監修 鶏冠井 悠二
監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

仕入帳とは、商品を仕入れた際や返品・値引きを受けた際など、その明細を記録する帳簿です。仕入帳は、取引を時系列で記録することで、仕入に関する情報を整理し、仕入の管理に活用可能です。
補助簿のひとつであり、作成は任意ですが、仕入取引がある個人事業主にとって事業の経営状況を把握するうえで役立ちます。
本記事では、仕入帳の概要や仕入先元帳との違い、作成のメリット、書き方を解説します。
目次
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仕入帳とは
「仕入帳」とは、仕入れが増減する取引があった際、取引発生順にその明細(仕入先・数量・単価など)を記録する帳簿です。
仕入れが増減する主な取引
- 商品を仕入れた
- 商品を返品した
- 商品の値引きを受けた
仕入帳は、法律上作成が義務付けられているものではなく、必要に応じて作成する補助簿に分類されます。
個人事業主であれば、作成した仕入帳は所得税法に基づき、原則として7年間の保管が必要です。会計ソフトなどで作成した仕入帳は、電子帳簿等保存法に則った一定の要件のもとで、出力せずにデータのまま保存できます。
出典:国税庁「記帳のしかた 青色申告編」
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
出典:国税庁「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)」
仕入帳の役割
会計帳簿は、全ての取引を記録する「主要簿」と主要簿を補完する「補助簿」の2種類に大別されます。そのうち仕入帳は「補助簿」に分類されます。

主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)が法律で義務付けられているのに対し、補助簿は、より詳細な情報を把握するために、任意で作成するものです。
主要簿である仕訳帳や総勘定元帳では仕入の合計金額を確認できるものの、詳細が把握できません。そのため、仕入帳を作成し、仕入先・数量・仕入高などの詳細を正確に記録すると、仕入状況や支出の流れを時系列で把握できます。
出典:国税庁「記帳のしかた 青色申告編」
仕入帳と仕入先元帳の違い
仕入先元帳とは、仕入先ごとに買掛金を管理する補助簿のことで、「買掛金元帳」とも呼ばれます。
全ての仕入取引を日付順に記録する「仕入帳」に対し、仕入先ごとに買掛金の増減や残高などを記録するものが「仕入先元帳」です。仕入先元帳を見れば仕入先ごとにどれだけ買掛金残高があるかを一目で把握できるため、仕入先が多い個人事業主にとって重要な補助簿です。
仕入帳は当月の仕入高や月ごとの仕入れの推移、仕入先元帳は仕入先ごとの買掛金残高を把握するのに役立ちます。
個人事業主が仕入帳を作成する判断基準
仕入帳は法律上作成の義務はありませんが、仕入取引がある個人事業主にとっては実務上の必要性が高い帳簿です。
仕入帳の必要性が高い個人事業主の特徴は、以下の通りです。
仕入帳を作成する必要性が高い個人事業主の特徴
- 仕入れが多い業種である
- 消費税の課税事業者である
たとえば、物販業・飲食業・製造業など一般的に仕入れが多い業種では、売上原価の計算や在庫管理を適切に行うために仕入状況の正確な記録が求められます。
一方、仕入取引が発生しにくい業種(例:コンサルティング業・講師業 など)では、必ずしも仕入帳を作成する必要はありません。
また、消費税の課税事業者である個人事業主は、正しく仕入税額控除を受け、税務リスクを回避するために、仕入帳を作成したほうがよいでしょう。仕入帳は主要簿の会計の根拠として活用できるためです。
仕入帳を作成するメリット
仕入帳を作成するメリットは、大きく以下の2つです。
仕入帳を作成するメリット
- 仕入れの状況を把握しやすくなる
- 税務リスクを低減できる
- 仕入税額控除の適用要件を満たす証拠として活用できる
仕入帳を正確に作成すると、いつ・どこで・何を・どれだけ仕入れたかを把握可能です。これにより、仕入れコストの分析や在庫管理などがしやすくなり、資金繰りの向上や経営判断に役立ちます。
仕入帳を正確に作成すれば、仕訳帳に転記する際の漏れやミスを防ぎやすくなります。仕訳帳の内容の根拠が仕入帳に記録されているため、税務署から指摘されるリスクを低減できる点もメリットです。
さらに、仕入帳には全ての仕入取引を記録されるため、仕入時に支払った消費税を全て確認可能です。この記録は、仕入税額控除の適用要件を満たす証拠として活用できます。
仕入税額控除とは、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて計算し、消費税の二重課税を防ぐ制度です。仕入税額控除を適用するために必要なインボイス(請求書)と仕入帳の内容を照らし合わせることで、仕入金額や消費税額が正しいことを証明しやすくなります。
出典:国税庁「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」
仕入帳の書き方
仕入帳は、主に以下の項目で構成されます。
項目 | 内容 |
---|---|
日付 | 商品などを仕入れた日付 |
摘要 | 仕入先・品名・数量・単価・支払方法など |
内容(内訳) | 商品ごとの仕入金額 |
金額 | 1日ごとの合計仕入金額 |
以下の取引が発生したケースを例に、仕入帳の具体的な書き方を解説します。
4月1日 A商店から商品5,000円(ノート100冊@50円)を掛けで仕入れた
4月3日 A商店から仕入れた商品のうち、500円(ノート10冊@50円)を返品した
4月15日 B商店から商品1万円(ボールペン100本@100円)を現金で仕入れた
4月19日 C商店から商品75万円(ノートパソコン10台@6万円・タブレット5台@3万円)を掛けで仕入れた
4月21日 C商店から仕入れた商品のうち、6万円(ノートパソコン1台@6万円)の値引きを受けた
4月30日 月末のため、仕入帳を締める
上記の取引やお金の動きを仕入帳であらわすと、以下のようになります。仕入帳の様式に関して、法律による定めはありません。

日付
商品などを仕入れた日付を記載します。同じ月の取引が上段に記載されている場合、「○月」は省略して問題ありません。
摘要
摘要欄には、仕入先・品名・数量・単価・支払方法などを記載します。
A商店から商品5,000円(ノート100冊@50円)を掛けで仕入れたとすると、以下のような記載になります。
A商店 ノート 100冊 @50円 掛け
返品や値引きがあったときは、「返品」や「値引き」などの文言を赤字で記載すると明確です。
内容(内訳)
内容(内訳)欄には、ひとつの仕入先から複数の商品を仕入れた際の、商品ごとの合計仕入金額を記載します。
4月19日にC商店から商品75万円を掛けで仕入れた以下のケースで考えます。内訳は以下の通りです。
ノートパソコン10台 @60,000円
タブレット5台 @30,000円
上記の場合は、2行に分けてノートパソコンの行に600,000円、タブレットの行に150,000円と記載します。
金額(残高)
金額欄には、1日ごとの合計仕入金額を記載します。返品や値引きがあった場合は、摘要欄と同様に「返品」や「値引き」といった文言と該当金額を赤字で記載すると明確です。
この金額をもとに、月末には総仕入高・仕入戻し高・純仕入高などを集計し、月の仕入金額を締めます。
項目 | 内容 |
---|---|
総仕入高 | 1ヶ月の累計仕入金額 |
仕入戻し高 | 1ヶ月の返品や値引きの合計額 |
純仕入高 | 総仕入高から仕入戻し高を差し引いた純粋な仕入金額 |
総仕入高から仕入戻し高を差し引いた金額が「純仕入高」です。仕入戻し高は返品や値引きの合計額のため、赤字で記載しましょう。
仕入帳を作成する方法
仕入帳には法律上の決まった様式がないため、自身の業務内容やスキルに合った方法で作成しましょう。主な作成方法は、以下の3つです。
仕入帳を作成する主な方法
- ノートに手書きする
- エクセルのテンプレートを使用する
- 会計ソフトで作成する
デジタル機器に不慣れな人は、ノートに手書きする方法が手軽です。ただし、全て手作業であるため、手間や時間がかかり、ミスも起きやすくなります。仕入取引が多い場合や、より効率的に管理したい場合には、エクセルのテンプレートや会計ソフトの活用が有効です。
会計ソフトであれば、入力した仕訳データから会計帳簿を自動で作成できるものもあります。一定の費用はかかりますが、経理業務を効率化でき、転記ミスや計算ミスも防げる点が大きなメリットです。
まとめ
仕入帳とは、仕入取引が発生した順に、商品の仕入内容を記録する帳簿です。仕入先・日付・数量・金額などを正確に記録することで、仕入れ状況や支出の流れを把握できます。買掛金を仕入先ごとに管理する仕入先元帳との違いを把握し、使い分けることで経理業務の正確性が向上します。
仕入帳を作成すると、仕入れの状況を把握しやすくなるだけでなく、税務リスクの低減も実現可能です。仕入取引がある個人事業主は、仕入帳を活用し、仕入管理や経営管理に役立てましょう。
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よくある質問
仕入帳の作成は必要?
仕訳帳や総勘定元帳では、仕入金額の合計しか把握できません。仕入れの詳細(仕入先・品名・数量・単価など)を把握するためには、仕入帳の作成が必要です。
詳しくは記事内「仕入帳の役割」をご覧ください。
仕入帳の書き方は?
仕入帳に記載する項目は主に、日付・摘要・内容(内訳)・金額(残高)の4項目です。内容欄には商品ごとの金額を、金額欄には1日ごとの合計仕入金額を記載しましょう。
詳しくは記事内「仕入帳の書き方」をご覧ください。
監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)
コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。
HP:かいでFP事務所

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
