医療機関が健康保険組合に提出する月ごとの診療報酬明細書(レセプトデータ)のオンライン請求が原則化されたため、医事会計システムを導入する医療機関が増えています。
医事会計システムとは、レセプト作成や外来の受付、予約状況管理などの機能を搭載した窓口業務と受付業務を効率化できるシステムです。
本記事では、医事会計システムの主な機能や導入するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
- 医事会計システムとは
- 医事会計システムの主な機能
- レセプト業務
- レセプトチェック
- 外来の受付と予約管理
- 入退院情報の管理
- 電子カルテや自動精算機などとの連携
- データ分析と帳票出力
- 医事会計システム導入のメリット
- 待ち時間の短縮で患者の満足度が高まる
- 請求や会計時のミスを減らせる
- スタッフの業務負担や人件費を削減できる
- システム内のデータを経営戦略や業務改善に活用できる
- 法改正へスムーズに対応できる
- 個人情報漏えいのリスクを減らせる
- 医事会計システム導入のデメリット
- 初期費用や維持費が発生する
- 運用に慣れるまでに時間がかかる
- システム障害が起きたときには使えない
- 医事会計システムの導入費用相場
- 医事会計システムを選ぶポイント
- 病院の規模に合っているか
- 電子カルテやほかのツールと連携ができるか
- レセプト業務関連の機能が充実しているか
- 自動算定機能は充実しているか
- 操作性に優れているか
- セキュリティ対策は万全か
- まとめ
- 導入シェアNo.1のクラウド会計ソフト freee会計とは
- よくある質問
医事会計システムとは
医事会計システムとは、患者への会計業務やレセプト業務を効率化する医療機関向けのシステムです。
2023年の法改正により、2024年4月以降に発行するレセプトデータ(診療報酬明細書)はオンライン請求が原則的に義務付けられました。それにより、医事会計システムへの注目度が高まっています。
出典:厚生労働省「オンライン請求への移行に向けて」
医事会計システムの主な機能
医事会計システムに搭載されている主な機能は以下の6つです。
医事会計システムの主な機能
レセプト業務
レセプトとは、医療機関が健康保険組合に提出する月ごとの診療報酬明細書のことです。
「診療報酬」とは、診察・治療・処方などの医療行為の対価として、健康保険組合から医療機関に支払われる費用のことで、診療報酬点数表をもとに算出されます。
患者が被保険者であれば、診察内容に問わず、会計のタイミングで患者にもレセプトを交付しなければなりません。
医事会計システムでは、患者の診療内容に応じて、診療報酬額を自動で計算が可能です。また、福祉医療やDPC適用病院の包括請求、労災レセプトなど、多様な形式に対応しています。
医事会計システム内で診療報酬の点数換算とレセプト作成のどちらにも対応しているため、正確な内容のレセプトが効率的に発行できるようになります。
【関連記事】
電子処方箋とは?仕組みや利用するメリット、今後の課題などをわかりやすく解説
レセプトチェック
レセプトチェックとは、病名の記載有無や診察内容の整合性など、作成したレセプトに不備がないかを確認する作業です。
医事会計システムではレセプトチェックを会計ごとに自動で行うため、診療報酬点数の算定漏れなどの人的ミスを大幅に軽減することができます。
外来の受付と予約管理
外来の受付と予約管理機能が搭載された医事会計システムを導入することで、患者対応をスムーズかつ効率化できます。
受付では患者情報や保険証の登録機能を搭載しており、登録情報をもとに診察券や処方箋、レセプトの発行が可能です。
一方、予約管理では患者の氏名を入力するだけで、来院日時や保険証の情報などをシステム上で確認できます。
入退院情報の管理
入退院情報の管理とは、入院時の情報管理から退院時の会計処理までをシステム上で完結できる機能です。
システム上で管理できる主な情報や、対応できる業務は以下のとおりです。
- 日常生活動作への評価(ADL評価)
- 医療区分
- 食事内容
- 外泊の有無
- 退院時の請求
- 定期請求
- 領収書や請求書、レセプトの作成・発行
電子カルテや自動精算機などとの連携
医事会計システムは電子カルテや自動精算機など、病院内で利用するほかのツールと連携ができます。
外部ツールと連携可能な医事会計システムを導入することで、医療機関と患者の双方にメリットをもたらします。
たとえば、医事会計システムと電子カルテを連携した場合、医師が電子カルテに入力した内容がそのままシステム上にも反映されるため、一度の入力で済みます。
また、自動精算機や会計表示器と連携すると、医事会計システムに登録された診療内容をもとに会計額が自動で表示されるようになります。スタッフが窓口で会計業務を行う必要がなくなり、患者も会計の待ち時間が短縮されます。
データ分析と帳票出力
医事会計システムは、患者数や診療行為の内容、収益率など、病院経営に関するデータ分析も可能です。収集したデータは任意の条件に基づき、システムが自動で分析します。
分析結果はグラフや表などの視覚情報が多数交えて表示されるため、収支状況や業務上の課題を正確に把握できます。また、分析結果はCSVやPDFなどの形式でも出力が可能です。
任意の時間で自動的に分析実行(日次・週次・月次など)もできるので、作業漏れや操作ミスといったヒューマンエラー防止にもつながります。
医事会計システム導入のメリット
医事会計システムの導入は、病院側と患者側の双方にメリットをもたらします。医事会計システム導入による以下の主なメリットについて解説します。
医事会計システム導入の主なメリット
待ち時間の短縮で患者の満足度が高まる
医事会計システムを導入すると、システム上に登録した患者情報をもとに、診察券の発行からレセプトの作成まで、一連の業務が自動化されます。それにより、窓口業務や会計処理が効率化され、患者の待ち時間短縮につながります。
病院における待ち時間の長さは利用満足度にも影響します。待ち時間が短縮されれば、継続的な利用が期待できるでしょう。
請求や会計時のミスを減らせる
医事会計システムには、レセプト業務とレセプトチェック機能が搭載されています。
算定漏れの有無や診療内容の整合性確認、診療報酬額の算出などをシステム内で自動算出してくれるため、計算ミスや入力漏れなどのミスを防ぐことができます。
スタッフの業務負担や人件費を削減できる
病院で働くスタッフは、窓口の受付業務だけでなく、病室内の環境整備や看護用品の管理、患者のサポートなど、さまざまな業務を行わなければなりません。
医事会計システムを導入することで、会計業務や受付業務、予約管理などの業務を効率化でき、スタッフの業務負担や人件費削減につながります。
また、医事会計システムを導入した場合、業務の効率性と正確性を高いレベルに保てるようになるため、病院事務を必要以上に採用する必要もありません。
システム内のデータを経営戦略や業務改善に活用できる
医事システムでは、患者数や診療内容別の収益、病室の稼働率など、病院の経営状況に関するデータを蓄積・分析できます。
分析結果から、現在の経営状態や収支改善に向けての課題を把握し、今後の経営戦略への反映が可能です。
たとえば、予約の受付人数や患者の来院情報から、「何曜日のどの時間帯に患者が集中するか」を分析します。その分析内容をもとにシフトを調整し、適切な人員配置をすることで、より円滑に病院の稼働率を高めることができるでしょう。
法改正へスムーズに対応できる
医事会計システムにはクラウド型とオンプレミス型の大きく2種類があります。
クラウド型であれば基本的にベンダーが保守・メンテナンスなどを行ってくれるため、法改正によって価格変動や制度の見直しが発生しても、自分たちでシステムの更新を行う必要がありません。
一方、オンプレミス型の医事会計システムの場合は、法改正などがあった場合は基本的に自分たちで更新をする必要があります。時間も手間もかかるため、システム内の整備を簡略化したい場合にはクラウド型の医事会計システムがおすすめです。
個人情報漏えいのリスクを減らせる
自動精算機などほかのツールと連携できる医事会計システムを導入することは、個人情報漏えいのリスクの軽減につながります。
たとえば、自動精算機と医事会計システムが連携している病院の場合、患者は診療が終わり次第、自動精算機で提示された費用を支払うため、スタッフとやりとりを行うことは基本ありません。
そうすることで、人的ミスによる個人情報が漏えいするリスクを最小限に抑えることができます。
医事会計システム導入のデメリット
医事会計システムを導入する際は、一定の時間と費用が発生します。システム障害が起きた際は利用できないといったデメリットもあるため、代替策を考えておかなければなりません。
ここでは、医事会計システムを導入するにあたって起こりうるデメリットについて解説します。
初期費用や維持費が発生する
医事会計システムを導入するには、初期費用や維持費が発生します。
初期費用や維持費の具体的な額は、導入形態や搭載機能数、カスタマイズの有無など、さまざまな要因によって変動します。
医事会計システムの導入が、中長期的にみてコスト削減につながるのかどうかを導入前にしっかりと検討することが大切です。
運用に慣れるまでに時間がかかる
医事会計システムを導入してから実際に運用するまで、一定の研修期間が必要です。
また、運用開始後もイレギュラーな対応が発生した場合に時間がかかってしまう可能性もあるため、操作マニュアルを準備しておく必要があります。
既存の医事会計システムから乗り換える場合は、データ移行をしなければなりません。正しくすべての情報が引き継がれているかの確認作業も発生します。
システム障害が起きたときには使えない
医事会計システムは停電や災害、システム障害などが発生した場合には一定時間利用ができなくなります。医事会計システムが機能不全に陥ると、受付や会計、請求業務などがシステム上で処理できず、手動で行わなければなりません。
その場合には、システム障害が発生していることを患者へ周知し、いつもより待ち時間が長くなるなどの説明をあらかじめする必要があります。
ほかにも、システム障害によって過去のデータが損失するおそれもあります。定期的にデータのバックアップをとるように心がけましょう。
医事会計システムの導入費用相場
医事会計システムの導入費用は、導入形態や機能搭載数など、さまざまな要因によって変動します。
オンプレミス型の医事会計システムの場合、初期費用の相場は300〜500万円ほどです。
ただしオンプレミス型の場合は、ほかにもサーバーやネットワーク機器など、インフラ機器もあわせて購入しなければなりません。電子カルテや自動精算機などと連携する場合は、さらに追加費用が発生します。
一方、クラウド型の医事会計システムは、初期費用の相場は10万円前後です。
クラウド型はオンプレミス型と異なり、自社でインフラ整備を行う必要がないため、初期費用はさほどかかりません。ただし、毎月数万円の維持費が発生します。
クラウド型のほうが安価に導入できますが、ランニングコストがかかるのがネックです。使い勝手や機能面なども踏まえて、オンプレミス型・クラウド型どちらを選ぶのか予算と相談しましょう。
医事会計システムを選ぶポイント
自院に合った医事会計システムを選ぶには、さまざまな点を比較してから購入を決断しなければなりません。
医事会計システムを選ぶときに見ておくべきポイントは主に以下の6つです。
医事会計システムを選ぶポイント
病院の規模に合っているか
病院の規模に合っていない医事会計システムを選んでしまうと「必要な機能が足りない」「導入後に持て余す」など、ミスマッチを招く可能性が高まります。
ほかのツールと連携をして幅広い業務を医事会計システムで統一したいということであれば、連携機能が備わっていることを最優先の条件としましょう。
医事会計システム内で扱う業務が限られていたり、病床数やスタッフ数が少なかったりする場合には、値段重視で必要最低限の機能が備わっているものを選んだほうが最低限のコストで済みます。
電子カルテやほかのツールと連携ができるか
すでに電子カルテや自動精算機、受付機などを取り入れている病院は、外部ツールと連携可能な医事会計システムを選ぶのがおすすめです。
医事会計システムに集約することで、窓口業務や会計処理など、複数の業務を効率化し、スタッフの業務負担や患者の待ち時間の削減につながります。
院内全体の生産性に関わってくるため、医事会計システムを選定する際は、既存システムやツールとの連携可否を必ず確認するようにしましょう。
レセプト業務関連の機能が充実しているか
レセプト内容に記載漏れや誤り、不明点があると健康保険組合から差戻しされる場合があります。
レセプトの差戻しが頻繁に生じると、診療報酬の支払いが遅延し、キャッシュフローにも影響を及ぼします。また誤った内容のレセプトを患者に渡してしまうと、病院の信用問題にも関わります。
医事会計システムの中には、算定漏れや回数制限超過などを事前に検知できるものもあります。レセプト業務の効率化はスタッフの負担も削減できるため、機能が整っているシステムを選ぶとよいでしょう。
自動算定機能は充実しているか
自動算定機能とは、患者の診療内容に基づき、医療行為に対応する保険点数を自動で計算・算定する機能です。
診療報酬制度は年々複雑化しており、手計算ではヒューマンエラーが起きやすく、算定漏れやレセプト差戻しの原因となります。
自動算定機能が充実した医事会計システムを導入することで、算定漏れによる減収と業務の属人化の防止につながります。
操作性に優れているか
すべてのスタッフが使いやすい、操作性に優れた医事会計システムを選ぶことも重要です。
操作性に優れた医事会計システムを選ぶには、無料トライアルの利用がおすすめです。事前に試すことで、スタッフからも意見を取り入れやすくなります。
クラウド型の医事会計システムであれば、ほとんどのシステムで無料トライアルが利用可能です。初めてシステム導入する病院はまず無料でお試ししてみるとよいでしょう。
セキュリティ対策は万全か
患者の個人情報や機密情報の漏えいのリスクを軽減するためにも、セキュリティ対策面は事前に確認しておきましょう。
具体的には、通信の暗号化やアクセス制限、ログデータの記録などが挙げられます。
また、プライバシーマークやISMSを取得している企業のシステムを選ぶのもひとつの選択肢です。どちらも第三者機関の規格で、個人情報の保護体制やセキュリティ対策に関して、一定の評価を得ている証明になります。
まとめ
医事会計システムの導入メリットは、会計処理や窓口業務の効率化で、患者の待ち時間やスタッフの負担、人件費を削減できる点です。
レセプト作成や診療報酬額の計算、記載漏れの有無確認などを自動で進められるため、業務の効率性と正確性を高められます。
ただし、初めて医事会計システムを導入する場合、どのように選定作業を進めていいか、わからないかもしれません。受付や窓口業務など、バックオフィス業務を効率化する際には、外注を選ぶのもひとつの選択肢です。
フリー株式会社の「freee BPaaS」を利用すると、豊富な知識や経験を兼ね備えた人に業務を任せられます。正確かつ素早い仕事ぶりが期待でき、サービス導入前と比べて業務の効率性と正確性を高められます。
サービスを利用し続ける限り、一定水準以上の業務品質を保てるため、新たにスタッフを採用する必要もありません。
業務効率化や人手不足解消に取り組んでいるなら、「freee BPaaS」の導入をご検討ください。
導入シェアNo.1のクラウド会計ソフト freee会計とは
シェアNo.1のクラウド会計ソフト*1「freee会計」とは、面倒な入力作業や仕訳を自動化し、見積書や請求書も簡単に作成できるクラウド会計ソフトです。簿記の経験がなくても使いやすく、経理業務にかかる時間を半分以下*2に削減します。
※1リードプラス「キーワードからひも解く業界分析シリーズ:クラウド会計ソフト編」(2022年8月)
※2 自社調べ。回答数1097法人。業務時間が1/2以上削減された法人数
数ある会計ソフトの中でも、freee会計が選ばれる理由は大きく3つ。
- 一度の入力で複数の業務が完了。重複作業や転記作業はほぼ発生なし!
- 決算業務は正しく、確実に対応できる!
- インボイス制度・電子帳簿保存法に完全対応!
それぞれの特徴についてご紹介していきます。
一度の入力で複数の業務が完了。重複作業や転記作業はほぼ発生なし!
見積書・請求書をfreee会計で発行すると、書類へ入力した金額をもとに、自動で入金管理・売上仕訳まで完了。銀行口座やクレジットカード、POSレジなどと同期すれば、自動で利用明細を取り込み、勘定科目の登録はもちろん、売掛金や買掛金の消し込み、入金仕訳などの記帳も簡単に行えます。
さらに、領収書・受取請求書などをスマホのカメラで撮影しfreee会計に取り込むだけで、取引先名や金額などをAI解析し、自動で入力。支払管理・仕訳も自動で作成できます。
freee会計は一度の入力で複数の業務が完了するうえ、自動入力・自動仕訳によって手作業の少ない経理を実現します。
決算業務は正しく、確実に対応できる!
freee会計には、正しい決算書を作るためのチェック機能も充実。預金残高との一致や会計ルールとの整合性をfreeeが自動判定し、修正が必要そうなリストを自動作成します。修正後は、ボタンクリックひとつで貸借対照表・損益計算書などの決算書が作成可能です。
<作成可能な書類例>
- 貸借対照表・損益計算書
- 仕訳帳・総勘定元帳
- 固定資産台帳
- 試算表
- 現金出納帳 など
PDFやCSVファイルへの出力も可能なため、士業の方への共有や、社内での資料作成にも活用できます。また、領収書1枚・仕訳1件単位でコメント機能を使ってやりとりできるため、士業の方ともスムーズにコミュニケーションがとれます。
インボイス制度・電子帳簿保存法に完全対応!
freee会計では、取引先の登録番号が国税庁データに存在するかを自動照合し、適格請求書が適切かを判断するなど、インボイス制度に対応した機能をご利用いただけます。
また、紙書類はスキャンしてfreeeのファイルボックスに保管すれば、電子保存も可能。完全ペーパーレスな経理体制を実現できます。
機能更新にインストールが不要なクラウド型だからこそ、今後の法改正にも自動対応でき、常に最新の状態でソフトをご利用いただけます。
よくある質問
医事会計システムとはなんですか?
医事会計システムとは、会計処理や受付業務を効率化するシステムです。レセプト業務や外来の受付、予約管理などの機能を搭載しており、人間が行うよりも業務を素早く正確に進められます。
また、自動精算機との連携に対応したシステムを導入すると、受付〜精算まで、一連の業務をオンライン上で処理できます。
詳細は「医事会計システムとは」をご覧ください。
医事会計システムとレセコンの違いは?
医事会計システムとレセコンでは、対応業務の範囲が異なります。
レセコンとは診療報酬額の自動計算やレセプトチェックなど、レセプト作成業務に特化したソフトウェアです。医事会計システムと異なり、外来の受付や予約管理、入退院情報の管理などの機能は搭載されていません。
また、連携可能なツールにも違いがあり、レセコンの場合は電子カルテとの連携のみです。
