会計の基礎知識

単式簿記とは?複式簿記との違いやメリット・デメリットを解説

監修 鶏冠井 悠二

単式簿記とは?複式簿記との違いやメリット・デメリットを解説

帳簿は、事業を行ううえで発生する取引や収支を記録する書類です。法人・個人にかかわらず、事業を行ううえでは帳簿の作成が必要です。

帳簿への記録(記帳)の方法には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。

個人事業主が青色申告で10万円の特別控除を受ける場合や白色申告をする場合は、単式簿記で記帳を行います。単式簿記は、ひとつの取引の内容についてひとつの科目のみで記録するシンプルな記帳方法であり、少ない手間で日々の記帳ができます。

本記事では、単式簿記の概要や書き方、メリット・デメリットを詳しく解説します。

目次

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単式簿記とは

単式簿記とは、ひとつの取引の内容についてひとつの項目のみで帳簿に記録する方法です。

たとえば「1月1日に2,000円を電気代として現金で支払った」場合は、以下のように記帳します。


日付会計科目収入支出摘要
1月1日水道光熱費 2,000円電気代

「いくらお金が増えたか・いくら使ったか」といったお金の流れをシンプルに記録・把握できる方法で、家計簿や小遣い帳などでも採用されています。

単式簿記の歴史

簿記の歴史は非常に古く、起源は古代ローマ時代まで遡るといわれており、当初の簿記においては、現代でいう単式簿記に近い記録が行われていたと考えられています。

なお、14世紀以降のルネサンス期にヴェネチアの商人によって複式簿記が使われ始め、現代では一般的に、簿記といえば複式簿記を指すようになっています。

単式簿記の書き方

以下の取引を例に、単式簿記の書き方を解説します。

1月1日 現金1,000円を元入れ
1月2日 商品を400円で仕入れた
1月3日 商品300円分を500円で売った
1月4日 電気代を50円支払った
1月5日 給料を150円支払った

これらの取引を単式簿記で記帳する場合、まずは現金がプラスになる取引と、マイナスになる取引に分類します。

現金がプラスになるのは以下の2つの取引です。

1月1日 現金1,000円を元入れ
1月3日 商品300円分を500円で売った

現金がマイナスになるのは以下の3つの取引です。

1月2日 商品を400円で仕入れた
1月4日 電気代を50円支払った
1月5日 給料を150円支払った

プラスになる取引では金額を左側の「収入」欄に、マイナスになる取引では金額を右側の「支出」欄に記載します。


日付会計科目収入支出摘要
1月1日元入金1,000円  
1月2日仕入高 400円商品の仕入れ
1月3日売上高500円 商品の売上
1月4日水道光熱費 50円電気代
1月5日給与手当 150円給料支払い

なお単式簿記では、収支が正確にわかれば、帳簿の作成は手書きではなくエクセルでも構いません。エクセルを利用すると計算機能が利用できるため、ミスの防止や時間短縮になります。

単式簿記のエクセルフォーマットは、国税庁のホームページでダウンロードが可能です。事業所得者用・農業所得者用・不動産所得者用などの様式例が公開されています。


出典:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」

単式簿記と複式簿記の違い

単式簿記が、ひとつの取引の内容をひとつの項目のみで記録する方法であるのに対し、複式簿記では各取引について「原因」と「結果」のふたつの側面から記録します。

たとえば「1月4日に電気代として50円を現金で支払った」場合、単式簿記では以下のように、ひとつの科目を用いてお金の流れを記録します。


日付会計科目収入支出摘要
1月4日水道光熱費 50円電気代

これに対して複式簿記では以下のように、お金の動きが生じた原因である「水道光熱費」の発生とその結果である「現金」の支出のふたつの側面で、取引の内容を詳細に記帳します。


日付借方貸方摘要
1月4日水道光熱費50円現金50円電気代

単式簿記のメリット

単式簿記のメリットとして、以下の2点が挙げられます。

単式簿記のメリット

  • 記帳方法がシンプル
  • 簿記の専門知識が不要

特に青色申告では記帳方法を選べるため、単式簿記の特性を理解しておきましょう。

記帳方法がシンプル

単式簿記は、収支のみを簡単に記帳する方法であり、複式簿記と比較して仕訳作業の負担が少なく済みます。日々の経理作業に多くの時間を割くことなく、事業を支えるコア業務に時間を費やすことができるでしょう。

簿記の専門知識が不要

単式簿記では、収支を基礎的な科目で記帳すればよく、複式簿記における「借方」「貸方」のような複雑な概念もないため、簿記に関する専門知識は基本的に不要です。初心者でもスムーズに記帳できる点がメリットだと言えます。

単式簿記のデメリット

単式簿記では、簡易的に記帳が行える一方で、複式簿記と比較すると以下のようなデメリットがあります。

単式簿記のデメリット

  • 青色申告特別控除による控除額が少ない
  • 経営状況を把握しづらい

青色申告特別控除による控除額が少ない

青色申告特別控除の控除額には、10万円・55万円・65万円の3種類があります。55万円・65万円の控除を受けるには以下の要件を満たす必要があり、単式簿記を選択した場合は控除額が10万円に制限されます。

55万円控除の要件

  • 不動産所得または事業所得があること
  • 不動産所得の場合は事業的規模であること
  • 単式簿記ではなく複式簿記で記帳していること
  • 現金主義ではなく発生主義で記帳していること
  • 申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること
  • 確定申告の法定期限を守ること

65万円控除の要件

  • 55万円の青色申告特別控除の要件に該当していること
  • 次のいずれかに該当していること

    ・その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存(優良な電子帳簿保存)を行っていること
    ・その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書などの提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

経営状況を把握しづらい

単式簿記はあくまで現金収支のみを記録する方法です。複式簿記と異なり、現金の増減の背景にある具体的な取引内容や、資産や負債などの全体像やその変動を捉えることができません。

そのため、経営状況を客観的かつ正確に把握するうえでは不十分となる可能性があります。

まとめ

単式簿記は会計の専門知識がなくても記帳できる簡易な方法で、記帳にかかる時間と手間を大幅に削減できるメリットがあります。一方で、青色申告特別控除による控除額が少ないことや、経営状況を把握しづらいことがデメリットです。

経営戦略への活用が難しいため、事業会計で単式簿記が採用されることは稀ですが、個人事業では、記帳を簡単に済ませたい場合などに単式簿記が選ばれることがあります。

単式簿記の書き方や複式簿記との違いを知って、記帳方法の選択や日々の記帳に役立ててください。

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よくある質問

単式簿記と複式簿記の違いは?

単式簿記は、ひとつの取引内容についてひとつの項目のみで記録する記帳方法で、たとえば「電気代を支払った」といった内容のみを記録します。

一方、複式簿記では「電気代を支払った(原因)」と「現金が減った(結果)」のふたつの側面から取引内容を記録するため、取引の全体像がより明確になります。

単式簿記と複式簿記の違いについて詳しくは、記事内「単式簿記と複式簿記の違い」をご覧ください。

単式簿記のデメリットは?

単式簿記のデメリットとしては、青色申告特別控除による控除額が少ないことや、経営状況を把握しづらいことが挙げられます。

単式簿記のデメリットについて詳しくは、記事内「単式簿記のデメリット」をご覧ください。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。

監修者 鶏冠井 悠二

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