会計の基礎知識

再振替仕訳とは?必要性や決算整理仕訳のケース、具体例をわかりやすく解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

再振替仕訳とは?必要性や決算整理仕訳のケース、具体例をわかりやすく解説

経理担当者であれば、一度は「再振替仕訳」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。決算でせっかく入れた仕訳を、わざわざ期首に逆の仕訳で戻すのは、一見すると無駄な作業に見えるかもしれません。

しかし、この「再振替仕訳」は翌期の経理業務を円滑に進め、二重計上などのミスを防ぐために欠かせない非常に重要な処理です。

本記事では再振替仕訳が必要な理由や決算整理仕訳との関係、具体的な仕訳例、実施するタイミングと注意点までをわかりやすく解説します。再振替仕訳の目的と流れを正しく理解し、自信を持って経理実務に対応できるようになるために役立ててください。

目次

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再振替仕訳とは?翌期の会計処理を簡素化する手続き

再振替仕訳とは、決算時に実施した決算整理仕訳を翌期の期首にもとに戻すために入れる、反対の仕訳(逆仕訳)です。

再振替仕訳の目的は、翌期の会計処理をシンプルにし、二重計上などのミスを避けることです。

決算整理仕訳を残したままにしていると、翌期に同じ内容の費用や収益を再度計上してしまい、二重計上になるリスクが生じます。また、決算時に入れる決算整理仕訳は特殊な処理であるため、これが残ったままだと通常の会計業務が複雑になり、経理担当者の業務も煩雑になります。

このような状況を避けるために、再振替仕訳が必要となるのです。

実施するタイミングは翌会計年度の「期首」

原則として、再振替仕訳は決算整理仕訳を計上した翌年度の期首に実施します。

たとえば、決算日が3月31日で4月1日が期首になる場合、再振替仕訳は4月1日付で行います。

再振替仕訳と決算整理仕訳の関係

再振替仕訳は、決算整理仕訳を翌期首に逆仕訳で戻す作業です。決算整理仕訳とは、 期末時点の財産状況を正しく把握するために行う仕訳のことで、期をまたぐ調整仕訳を指します。そのため、決算整理仕訳と再振替仕訳は、ワンセットの手続きだと言えます。

また、決算整理仕訳と混同されやすいものに「決算振替仕訳」がありますが、これは再振替仕訳や決算整理仕訳とは性質が異なります。

決算振替仕訳とは、その会計期間に発生したすべての収益と費用の残高を「損益勘定」に集約する手続きのことです。そこで算出された利益または損失の額を、最終的に「繰越利益剰余金」勘定へ反映させます。

再振替仕訳を行う決算整理仕訳の主なケース

具体的に決算整理仕訳が発生し、再振替仕訳が必要になるケースを説明します。

費用の繰延べ(前払費用)

費用を繰り延べる「前払費用」の計上がこれにあたります。前払費用とは当期に支払った費用のうち、次期以降のサービスに対応する部分を資産計上するものです。

たとえば1年分の家賃や保険料、サーバー代などを前払いした場合に、前払費用が計上されます。

収益の繰延べ(前受収益)

収益の繰り延べである「前受収益」も、これにあたります。前受収益とは当期に受け取った収益のうち、次期以降のサービス提供に対応する部分を負債計上するものです。

たとえば、年間契約の保守料金や会費を前受けした場合に用いられます。

費用の見越し(未払費用)

当期に発生した費用で、支払いが次期以降になるものを負債計上する際に用いられる「未払費用」もこれにあたります。

たとえば給与計算の締め日以降の未払いや、リース料・支払利息の後払いに用いられます。

収益の見越し(未収収益)

当期に発生した収益で、入金が次期以降になるものを「未収収益」として資産計上する場合もこれにあたります。

たとえば貸付金の未収利息や、当期に行った業務で請求が翌期になる収益に用いられます。

【ケース別】再振替仕訳の具体例:前払費用から未収収益まで

先に挙げた、決算整理仕訳・再振替仕訳が必要になる科目の仕訳例を紹介します。

費用の繰延べ(前払費用)の仕訳例

100,000円の費用の繰延べ(前払費用)が発生した場合の仕訳は、以下のとおりです。

決算整理仕訳 (期末)

借方貸方
前払費用100,000地代家賃100,000

再振替仕訳 (翌期首)

借方貸方
地代家賃100,000前払費用100,000

収益の繰延べ(前受収益)の仕訳例

50,000円の収益の繰延べ(前受収益)が発生した場合の仕訳は、以下のとおりです。

決算整理仕訳 (期末)

借方貸方
受取手数料50,000前受収益50,000

再振替仕訳 (翌期首)

借方貸方
前受収益50,000受取手数料50,000

費用の見越し(未払費用)の仕訳例

200,000円の費用の見越し(未払費用)が発生した場合の仕訳は、以下のとおりです。

決算整理仕訳 (期末)

借方貸方
給料手当200,000未払費用200,000

再振替仕訳 (翌期首)

借方貸方
未払費用200,000給料手当200,000

収益の見越し(未収収益)の仕訳例

10,000円の収益の見越し(未収収益)が発生した場合の仕訳は、以下のとおりです。

決算整理仕訳 (期末)

借方貸方
未収利息10,000受取利息10,000

再振替仕訳 (翌期首)

借方貸方
受取利息10,000未収利息10,000

再振替仕訳で失敗しないために:よくあるミスと対策

最後に、再振替仕訳を実施する際の注意点を解説します。

実施漏れは費用や収益の計上漏れなどにつながる

再振替仕訳の計上を忘れると、費用や収益の二重計上や計上漏れが発生し、月次試算表などの数値が不正確になるリスクが生じます。

財務諸表が正しく作成されない恐れもあり、内部だけでなく外部にも影響を与える可能性があります。

とくにこうした処理を手作業で行う場合、計上漏れや入力ミスといったヒューマンエラーが起こりやすくなります。その結果、財務諸表が正しく作成されず、内部の経営判断だけでなく、金融機関や株主といった外部の信頼にも影響を与える可能性があるため注意が必要です。

このような手作業によるリスクを防ぎ、決算業務を効率化するためには、会計ソフトの活用が有効です。会計ソフトには、決算整理仕訳の入力と同時に、翌期首の再振替仕訳を自動で予約・作成する機能が備わっています。これらの機能を活用することで、担当者の負担を大幅に軽減し、正確な会計処理を実現できるでしょう。

再振替が不要な決算整理仕訳もある

再振替仕訳は決算整理仕訳と対になるものであると説明してきましたが、決算整理仕訳の中には再振替が不要なものもあります。

再振替が不要な決算整理仕訳には、減価償却費の計上が挙げられます。減価償却費は、固定資産の取得費用をその耐用年数にわたって分割して費用として計上するものです。減価償却費は毎期、費用を配分するために計上するものなので、翌期に戻す必要はありません。

まとめ

再振替仕訳を実施して当期の収益と費用を正確に把握できるようにすることで、会計業務がシンプルになるほか、正しい経営判断にもつながります。

計上するタイミングや対象となる決算整理仕訳には注意が必要ですが、これらの煩雑になりがちな決算仕訳は、会計システムを導入することで効率的に進めるのがおすすめです。会計システムを利用すれば、再振替仕訳の自動作成機能などでミスなくスムーズに処理でき、経理業務全体の負担を大幅に削減できるでしょう。

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よくある質問

再振替仕訳の目的は?

再振替仕訳の目的としては、二重計上などの会計処理のミスを防ぐこと、期中の会計仕訳を簡潔にすることが挙げられます。

詳しくは、記事内の「再振替仕訳とは?翌期の会計処理を簡素化する手続き」をご覧ください。

再振替仕訳を実施するタイミングは?

原則として、再振替仕訳は決算整理仕訳を計上した翌年度の期首に実施します。

詳しくは、記事内の「実施するタイミングは翌会計年度の「期首」」で解説しています。

再振替仕訳を実施しないとどうなる?

再振替仕訳の計上をしないと費用や収益の二重計上や計上漏れが発生し、月次試算表などの数値が不正確になるリスクが生じます。

記事内の「再振替仕訳で失敗しないために:よくあるミスと対策」で、詳しく解説しています。

再振替仕訳は手作業でやるべき?

再振替仕訳は、手作業で実施することも可能です。しかし、手作業で行う場合は計上漏れや入力ミスといったヒューマンエラーが起こりやすくなるため注意が必要です。

詳しくは、記事内の「再振替仕訳で失敗しないために:よくあるミスと対策」をご覧ください。

再振替仕訳には会計ソフトを使える?

再振替仕訳には、会計ソフトの活用が有効です。会計ソフトには、決算整理仕訳の入力と同時に、翌期首の再振替仕訳を自動で予約・作成する機能が備わっています。これらの機能を活用することで、担当者の負担を大幅に軽減し、正確な会計処理を実現できます。

詳しくは、記事内の「再振替仕訳で失敗しないために:よくあるミスと対策」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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