監修 神谷 竜介 税理士法人H&P

営業利益は企業が本業で稼いだ利益で、売上高から売上原価と販売費および一般管理費(販管費)を差し引いて計算します。財務諸表の損益計算書に記され、企業の業績を評価・判断する際の重要な指標となります。
利益の種類としては、営業利益のほかに、売上総利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益などがあります。業績を評価する際は、各利益の意味合いを理解しておくことが重要です。
本記事では、営業利益の概要・計算方法やほかの利益との違い、営業利益から経営・財務状況を評価する方法などを解説します。
目次
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営業利益とは

営業利益とは、企業が本業で稼いだ利益のことで、企業の収益性や経営効率を判断する重要な指標です。損益計算書上に表される利益のひとつで、具体的には「売上高から売上原価と販管費を差し引いた額」を指します。
営業利益が高いということは、本業で十分な利益を上げていることを意味し、事業の健全性を示します。
なお、損益計算書に記載される利益区分は、以下の5つです。
損益計算書に記載される利益区分
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
営業利益とともに決算時に着目されることの多い経常利益をはじめ、その他の利益との違いは、「営業利益と経常利益の違い」で詳しく紹介します。
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売上高とは?利益との違いや目標売上高の計算方法について解説
営業利益は損益計算書で確認できる
営業利益は、損益計算書(P/L)の「営業損益の部」で確認できます。
損益計算書は、企業のある一定期間の収益と費用をまとめて記載した決算書(財務諸表)です。損益計算書は収益・費用・利益の3つの要素で構成され、どれくらいの収益があがったか、どのような費用を使ったのかなどがわかります。
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営業利益と経常利益の違い

経常利益は、企業が本業で得た利益(営業利益)に、資産運用による利益など「本業以外から得た収益(営業外収益)」を加え、借入金の利息などの「本業以外で経常的に発生する費用(営業外費用)」を差し引いたものです。
経常利益には、たとえば不動産賃貸業以外の企業が保有する不動産の家賃収入によって得た収益なども含むため、本業のみの利益がわかる営業利益とは異なります。
経常利益を見れば、企業が継続的に行っている「通常の事業活動」でどれだけの利益を出せているかがわかります。経常利益について詳しく知りたい方は、別記事「経常利益とは?営業利益・純利益との違いや計算方法などを解説」をご覧ください。
その他の利益区分との違い
経常利益以外の残り3つの利益区分が、営業利益とどう違うかは以下の通りです。
売上総利益

売上総利益とは、売上から売上原価(仕入れや製造にかかった費用)を差し引いた金額のことで、「粗利」「粗利益」ともいわれます。営業利益との違いは、売上総利益は製品やサービスを生み出すのにかかった費用のみを差し引くという点です。
この売上総利益の計算には、小売業では人件費を含まない「売上原価」を用い、製造業は製造部門の人件費を含む「製造原価」を用います。
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売上総利益とは?売上高との違い、計算方法、改善のポイントについて解説
税引前当期純利益

税引前当期純利益は、経常利益に臨時で発生した収益と損失を反映したものです。企業が得た利益には法人税などが課税されますが、それらの税金を差し引く前の金額が「税引前当期純利益」です。
営業利益との違いは、本業以外から発生する収益や費用と、臨時的に発生した損益が含まれる点です。
この税引前当期純利益は税金支払以外の企業活動全体から生じた最終的な利益であり、企業の経営状態がわかります。資産の売却益・売却損など臨時の損益も含まれているため、突発的な事情で大きく変動します。
当期純利益

当期純利益は、税引前当期純利益から各種税金を差し引き、法人税等調整額を加味(税効果会計を適用している場合)したものです。企業価値を評価したり、資本の利用効率を示す指標の計算に活用したりします。
営業利益との違いは、本業以外の収益や費用と臨時的に発生した損益を反映し、各種税金が差し引かれている点です。
当期純利益を見れば企業の最終利益がわかりますが、当期純利益がプラスでも、本業以外の固定資産の売却などによる特別利益が含まれているケースがあります。
そのため企業やステークホルダーは、当期純利益だけでなく、売上総利益・営業利益・経常利益などその他の利益とあわせて経営状況の良し悪しを判断する必要があります。
営業利益と限界利益の違い
売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益のほかに「限界利益」というものもあります。限界利益は、企業経営にかかる諸費用のうち「変動費」を売上高から差し引いて求める利益のことです。
利益を計算する際、営業利益は費用として固定費・変動費の両方を差し引くのに対し、限界利益は変動費のみを差し引きます。
また、用途・目的にも違いがあります。営業利益は企業が本業で稼いだ利益を表し、主に収益性や経営効率の判断に使われます。一方、限界利益からは損益分岐点売上高の計算ができ、どれだけの限界利益を確保できれば事業を継続していけるかの判断が可能です。
固定費を限界利益率(売上高に対する限界利益の割合)で割ることで損益分岐点売上高が算出でき、赤字と黒字の境目を判断する目安となります。
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限界利益とは?経営判断に役立つ損益分岐点や貢献利益との関係を解説
営業利益の計算方法
営業利益は、以下の計算方法で算出できます。
営業利益の計算方法
営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販管費
売上原価とは、商品やサービスを生み出すために必要な費用のことです。仕入れにかかった費用や原材料費などが当てはまります。
販管費とは、販売活動や一般管理活動にかかる費用のことです。具体的には、下表の勘定科目に該当する費用が挙げられます。
区分 | 勘定科目 |
---|---|
販売費 | ・広告宣伝費 ・販売手数料 ・荷造運賃 ・旅費交通費 ・交際費 ・給与手当 (販売部門の人員にかかるものが販売費に該当) |
一般管理費 | ・地代家賃 ・水道光熱費 ・通信費 ・リース料 ・消耗品費(事務用品費) ・減価償却費 ・研究開発費 ・給与手当 (管理部門の人員にかかるものが一般管理費に該当) ・役員報酬 |
販売費とは、商品やサービスを販売するためにかかった費用のことです。一方、一般管理費とは、企業全体の一般的な管理業務にかかった全ての経費を指します。
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販売費及び一般管理費(販管費)とは?内訳や販売費比率の計算方法を解説
営業利益から経営・財務状況を評価する方法
営業利益を見れば、企業の本業が軌道に乗っているかどうかを知ることができます。営業利益から自社の経営状況や財務状況を評価する際には、特に以下のポイントに着目してみてください。
過去の営業利益と比較する
営業利益を過去の実績と比較して推移を確認すると、本業の成長性がわかり、今後の経営判断に活用できます。
たとえば、営業利益が上昇傾向にある場合は、さらなる成長を目指すための積極的な事業投資を検討することも選択肢のひとつです。反対に営業利益が伸び悩んでいたり、減少していたりする場合は、利益を創出できない要因を探り、事業戦略を見直すことが必要です。
売上高営業利益率を算出する
営業利益を評価する際には、企業の収益性を測る指標として、売上高営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)の確認が有効です。売上高営業利益率は、以下の計算方法で算出できます。
売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
売上高営業利益率が高いほど収益性が優れていると判断でき、投資家などが業績を判断する際に重要視する指標のひとつです。資金調達を視野に入れている場合は意識しておきましょう。
業界水準や競合他社と比較する
売上高営業利益率を業界水準や競合他社と比較することで、自社の市場での競争力を把握できます。売上高営業利益率は業界によって大きく異なるため、同業界の平均数値が参考になります。
経済産業省「2024年企業活動基本調査速報(2023年度実績)」によると、業界別の売上高営業利益率の平均数値は以下の通りです。
業界 | 売上高営業利益率の平均値 |
---|---|
製造業 | 5.2% |
情報通信業 | 8.2% |
小売業 | 3.8% |
卸売業 | 3.2% |
同業界の売上高営業利益率の平均数値よりも高い場合は、市場での競争力が高いと判断できます。反対に平均数値よりも著しく低い場合は、原価の見直しを図るなどして利益率の早期改善が必要です。
従業員一人あたりの営業利益を計算する
従業員一人あたりの営業利益を計算すると、従業員が効率的に利益を生み出しているかを把握できます。従業員一人あたりの営業利益は、以下の式で計算が可能です。
従業員一人あたりの営業利益 = 営業利益 ÷ 従業員数
同業他社の数値も計算して比較すれば、自社の数値が優れているのかが目安として判断できます。
総資産営業利益率を算出する
総資産営業利益率は、企業の総資産(総資本)がどれだけの営業利益を生み出しているかを示す指標です。総資産営業利益率は、以下の式で計算できます。
総資産営業利益率 = 営業利益 ÷ 総資産(総資本)× 100
総資産営業利益率が高いほど、資本を有効活用して効率的に経営ができているとの判断が可能です。なお、総資産利益率は、営業利益のほか、経常利益や当期純利益から計算される場合もあります。
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ROA(総資産利益率)とは?計算式やROE(自己資本利益率)との違いを解説
営業利益を増やす方法
営業利益は、売上高から売上原価・販管費を差し引いて計算します。営業利益を増やすためには、売上を増やす、費用を減らすという2つの方向性があり、具体的な方法としては以下が挙げられます。
営業利益を増やす方法
- 販売単価を上げる
- 販売数量を増やす
- 売上原価を減らす
- 販管費を減らす
以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
販売単価を上げる
販売単価を上げて販売数を維持できれば、売上高や営業利益の増加につながります。
ただし、販売単価を上げると、既存の顧客が離れる可能性があります。販売数を維持するためには、付加価値の高い商品の開発、既存商品のブランド力向上などにも目を向けましょう。
具体的な方法として、たとえば商品の機能・品質の向上、デザインの見直しなどの高付加価値化が挙げられます。ブランド力向上のためには、広告・SNS発信などが有効です。
販売数量を増やす
販売数量が増えれば、その分売上高や営業利益の増加につながります。
販売数量を増やすには、新規顧客の開拓、既存顧客のリピート率向上などに向けた取り組みが必要です。広告・SNS発信で新たな顧客層にリーチする、既存顧客へのアフターケアを手厚くするなどの施策を行いましょう。
売上原価を減らす
売上原価とは、商品やサービスを生み出すためにかかる費用です。売上原価を削減できれば、営業利益の増加につながります。
売上原価を削減するには、仕入れ先の見直しや価格交渉、生産プロセスの効率化による原材料費の削減、在庫管理の見直しなどの方法が挙げられます。
【関連記事】
売上原価とは?をわかりやすく解説!勘定科目や計算方法も押さえておこう
販管費を減らす
販管費とは、事業を行ううえで生じた、販売業務や一般管理業務にかかる経費のことです。
広告宣伝費や交通費、商品発送にかかる配送料、代理店への販売手数料などが該当します。販管費を見直して無駄な出費を削減できれば、営業利益の増加につながります。
【関連記事】
販売費及び一般管理費(販管費)とは?内訳や販売費比率の計算方法を解説
まとめ
営業利益とは、売上高から売上原価・販管費を差し引いたもので、本業で稼いだ利益を表します。過去の金額や競合他社と比較することで、経営状況の判断ができます。
また、売上高営業利益率や総資産営業利益率などを計算すれば、さらに詳細に評価を行うことが可能です。
営業利益を増やすためには、販売単価を上げる、販売数量を増やす、売上原価・販管費を減らすなどの方法があります。
営業利益の基本や考え方を理解し、企業の経営・財務の評価に役立てましょう。
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よくある質問
営業利益とは?
営業利益とは、企業が本業で稼いだ利益を指し、売上高から売上原価と販管費を差し引くことで求められます。
詳しくは、本記事内の「営業利益とは」をご覧ください。
営業利益と経常利益の違いは?
営業利益は、企業が本業で稼いだ利益のことで、売上高から売上原価と販管費を差し引いたものです。
一方で経常利益は、企業が本業で得た利益(営業利益)に、資産運用による利益など「本業以外から得た収益(営業外収益)」を加え、借入金の利息などの「本業以外から経常的に発生する費用(営業外費用)」を差し引いたものです。
詳しくは、本記事内の「営業利益と経常利益の違い」で解説しています。
営業利益率は目安としてどれくらいあればいい?
企業の業績を評価する基本的な指標のひとつである(売上高)営業利益率は、業種や企業規模によっても平均数値が変わります。
経済産業省「2024年企業活動基本調査速報(2023年度実績)」によると、製造業で5.2%、情報通信業で8.2%、小売業で3.8%、卸売業で3.2%です。
詳しくは本記事内の「業界水準や競合他社と比較する」で解説しています。
監修 神谷 竜介
2014年税理士登録。税理士法人H&Pに所属し、主に会社の合併・分割をはじめ、その他の法人業務を担当。
