
法人決算とは、企業の事業年度ごとに年間の損益を取りまとめて必要書類を作成する手続きのことです。個人の確定申告と同様に、小規模な事業であれば法人決算を自分1人で対応する人もいます。
法人決算を自分1人で完結させることは可能ですが、確定申告よりも複雑な手続きを行わなければならないため、最低限の知識を備えておくことが大切です。
本記事では、法人決算の流れや必要書類などの基礎知識について解説します。
目次
法人決算を自分1人で行うメリット
法人決算を自分自身で行う場合は、税理士に業務を委託する必要がないため、税理士費用の削減をはじめ、やりとりに費やす時間や手間を省くことができます。
通常、税理士に法人決算を委託する場合、支払う報酬は15~25万円ほどかかります。また、税理士とのコミュニケーションがうまくいかず、苦労するケースもあるため、コストも含めて負担が減る点は自分1人でやるメリットといえるでしょう。
法人決算を自分1人で行うデメリット
法人決算に関する十分な知識がなければ、都度調べながら対応しなければならないため、必要以上に時間がかかってしまうことが考えられます。
また、プロフェッショナルである税理士から助言を受けることができず、節税対策が不十分になってしまう可能性があるでしょう。
万が一、作成した決算書に不備や誤りがあった場合は、税務署から差し戻されたり、税務調査が入ったりすしてしまいます。そのような事態を防ぐためには、セルフチェックを徹底することが重要です。
法人決算の流れ
法人決算の主な流れは、次のとおりです。
ここでは各工程について詳しく説明します。
1. 帳票整理
決算処理を進めるにあたって、まずは領収書や請求書といった取引や会計に関わる帳票の整理から始めます。
定期的に帳票を管理しておくことで漏れやミスを防ぐことができるため、年度末にまとめて対応するのではなく、なるべく日頃から整理しておくことをおすすめします。
2. データ入力
整理した帳票をもとに、会計ソフトなどにデータを入力して記帳を行います。
決算書類は帳簿データをもとに作成するため、記帳が正しく行われていることが重要です。入力漏れやミスが発生しないように、帳票との突き合わせをしながら、念入りに確認をしましょう。
3. 試算表の作成
記帳が完了したら、正しく記帳がなされているかをチェックするために試算表を作成します。
試算表とは、借方と貸方の合計が一致しているかを照合するための集計表のことで、仕訳やデータ入力にミスがないかを確認できます。
【関連記事】
試算表の作り方とは? 試算表の種類と見るべきポイント
4. 決算整理仕訳
事業年度をまたぐ取引については、今期分と来期分に分ける必要があります。
これを「決算整理仕訳」といいます。支払いや入金が来期に持ち越される取引などがあれば帳簿を修正します。
また、在庫の品質や数量の確認を行い、帳簿上のデータと相違ないかを確認する「実地棚卸」をします。
これによって、正しい売上原価の計算や固定資産の減価償却、棚卸資産の残高を確認できます。
5. 決算書類の作成
帳簿をもとに決算に必要な書類を作成します。書類作成には時間がかかるため、1人で法人決算を行う場合にはスケジュールに余裕をもって計画的に進めましょう。作成する書類については、「法人決算に必要な書類」の項目で詳しく説明します。
6.各種税金の申告・納税
法人にかかる税金には、主に「法人税」「消費税」「法人事業税」「法人住民税」の4つがあります。それぞれの提出先・申告期限・納税期限は以下のとおりです。
種類 | 提出先 | 申告期限 | 納税期限 |
法人税 | 税務署 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月以内 |
消費税 | 税務署 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月以内 |
法人事業税 | 各都道府県税事務所 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月以内 |
法人住民税 (都道府県民税・市町村民税) | 各都道府県税事務所もしくは各市町村 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月以内 |
なお、原則としては各法人の事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に申告する必要がありますが、法人税や法人事業税などに関しては、申告期限の延長申請を行うと延長が可能になります。
出典:国税庁「法人税」
7. 決算書の保存
「会社法」と「法人税法」という2つの法律では、各決算書類の保存期間をそれぞれ定めています。書類によって保存期間は異なるものの、基本的に決算書類は10年間保存しておくようにしましょう。
なお、2022年1月1日から施行された電子帳簿保存法によって、領収書や請求書などの取引情報をメールなどの電子的なやり取りで送受信した場合、それらの書類はデータで保存しなければならないと定められています。
事業規模や法人・個人にかかわらず、全事業者が対象となる法律であるため、保存には十分注意してください。
出典:会社法(第432条第2項)
出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
法人決算に必要な書類
法人決算においては、主に次の書類を作成する必要があります。
種類 | 内容 |
総勘定元帳 | 全ての経理処理が科目ごとに記録されたもの |
領収書綴 | 経費や領収書などが日付順に綴られたもの |
決算報告書 | 貸借対照表 損益計算書 キャッシュフロー計算書 株主資本変動計算書など |
法人税申告書 | 定められた複数の別表の書類に決算報告書を添付したもの |
法人事情概況説明書 | 事業内容、従業員数、取引状況、経理状況などが記載された書類 |
消費税申告書 | 消費税および地方消費税の申告に必要な書類 |
税務代理権限証書 | 申告書提出、税務調査立ち会い、問い合わせ対応などを税理士に委託した場合に必要な書類 |
地方税申告書 | 法人住民税、法人事業税などの申告に必要な書類 |
勘定科目明細書 | 主要な勘定科目ごとの収支の詳細が記載された書類 |
1人で法人決算を行う場合に注意しておきたいこと
自分1人で法人決算を行うにあたって注意すべきことは、帳簿付けなどの経理業務を日頃からこまめに行っておくことです。
日頃の管理が徹底されていれば決算時に慌てる必要がなく、漏れやミスの防止にもつながります。経理業務の最適化を図り、効率よく処理ができるように心がけましょう。
もし相談できる税理士がいる場合は、請求書や通帳のコピーなどをクラウドサービスを通じて、データを共有しておくことをおすすめです。
データ更新があっても双方ですぐに確認できる状態にしておけば、決算書類の作成時も相談しやすくなります。
【関連記事】
経理業務を効率化するためにできること
法人決算について相談するなら
法人決算において疑問がある場合は、税理士に相談するとよいでしょう。教えてもらった内容は会計ソフトのコメントなどにメモをしておくと、ご自身の知識の蓄積にもつながります。
なお、国税庁が公表している「決算期月別法人数」によると、国内法人の約2割が3月決算であるため、その時期は税理士事務所への相談も混み合うことが予想されます。相談や質問がある場合は、なるべく繁忙期を避けるようにしましょう。
法人の申告業務は、税理士に依頼して代理申告で行うか、または自分で申告書の作成から提出・納税まで行うこともできます。
まとめ
法人決算はとても複雑に感じるかもしれませんが、中小企業の規模であれば、決して自分1人で不可能というわけではありません。
毎月の経理処理を正確に行い、決算時にスムーズに対応できるように日頃から準備をしておきましょう。
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それぞれの特徴についてご紹介していきます。
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法人決算の手順は?
法人会計を1人で完結させるメリットは?
法人決算を自分自身で行うメリットは、税理士に業務を委託する必要がないため、税理士費用の削減をはじめ、やり取りに費やす時間や手間も削減することができる点です。
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1人で法人決算を行う場合の注意点は?
自分1人で法人決算を行うにあたって注意すべきことは、「1人で抱え込まないこと」です。法人決算は処理が複雑なため、自分1人での処理が困難な場合は、専門家への相談をおすすめします。
また、帳簿付けなどの経理業務を日頃からこまめに行っておけば、決算時に慌てる必要がなく、漏れやミスの防止にもつながります。
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