会計の基礎知識

負債比率とは?求め方と安全性の目安をわかりやすく解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

負債比率とは?求め方と安全性の目安をわかりやすく解説

「うちの会社、借金が多いかも……」と不安に感じていませんか?

負債比率はそんなあなたの疑問に答え、会社の「財務の体力」を客観的に示す指標です。自己資本(返済不要の純資産)に対して負債(返済義務のある借入金など)がどれくらいの割合かを示します。企業の財務的な安全性を測るうえで欠かせない指標です。

本記事では、負債比率の正しい計算方法から、業界ごとの適正な目安、そして数値を改善するための具体的な方法まで、わかりやすく解説します。自社の財務状況を客観的に評価し、健全な経営に向けた具体的なアクションプランを立てるための参考にしてください。

目次

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負債比率とは?企業の財務安全性を測る重要指標

負債比率とは、返済義務のない自己資本に対して、返済義務のある他人資本がどれくらいの割合なのかを示す数値です。企業の「財務の安全性」を測る指標として、重要視されています。

たとえば、自己資本2億円の企業が3億円の負債を抱えている場合、負債比率は150%となります。これは、自己資本の1.5倍の借金を抱えている状態です。

負債比率が低ければ、「借入金への依存度は低く財務的に安定している」と評価されます。一方、数値が高いと「外部からの借入に依存した経営状態である」と評価されます。金利上昇や売上減少などの環境変化に対するリスクも、負債比率が高い状態です。

負債比率が重要視されるのは、主に「金融機関からの融資審査」「取引先の与信管理」「M&Aの判断材料」といった場面です。負債比率は企業の財務体質を評価し、さまざまな経営判断を下すための重要な指標として機能します。

負債比率の求め方

負債比率は、以下の計算式によって算出できます。

  • 負債比率(%)= 負債(他人資本)÷ 自己資本 × 100

他人資本とは、返済義務のある資金を指します。具体的には、貸借対照表の貸方である流動負債と固定負債の合計です。

また、自己資本は返済義務のない資金を指します。貸借対照表の貸方である、純資産の合計です。株主からの出資や利益余剰金などが、これに含まれます。

負債については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

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流動負債とは?勘定科目や流動負債と固定負債の分類基準をわかりやすく解説

なお、負債比率の計算には、主に会計ソフトやExcel、Web自動計算サイトが役立ちます。

最もおすすめなのは会計ソフトで、日々のデータから負債比率などの経営指標を自動で正確に算出・分析できます。

手軽に計算したい場合はExcelやWebサイトも便利ですが、継続的に経営状況を把握し、迅速な意思決定に繋げるためには会計ソフトの活用が最適です。

負債比率と自己資本比率や有利子負債比率の違い

負債比率と混同しやすい経営指標として、「自己資本比率」や「有利子負債比率」が挙げられます。これらは企業の財務健全性を評価する点では共通していますが、それぞれ異なる視点から分析を行うものです。

ここでは、自己資本比率や有利子負債比率との違いを解説します。

自己資本比率との違い

自己資本比率とは、総資本に占める自己資本の割合を示す指標のことです。総資本は貸借対照表の貸方である、負債と純資産の合計です。

自己資本比率は、以下の計算式で算出します。

  • 自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本 × 100

自己資本比率は企業の総資産のうち、どれだけを返済不要な自己資本でまかなっているかを表す指標です。

一方、負債比率は自己資本に対する負債の割合を示します。返済義務のない資金に対して、返済が必要な資金がどの程度あるかを表しています。

有利子負債比率との違い

有利子負債比率とは、支払利息を伴う借入金や社債などの有利子負債のみに着目した指標です。

  • 有利負債比率(%)= 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100

通常、負債比率では買掛金や未払金といった無利子の負債も含めて計算します。

一方、有利子負債比率では金利負担が発生する負債だけが対象です。これにより、企業が実際に金利として支払わなければならない負担の大きさを、より具体的に把握しやすくなります。

あなたの会社は大丈夫?負債比率の適正な目安と業界別の平均値

安定した企業経営のためには、負債比率の適正値を理解することが欠かせません。

ここでは、負債比率の水準別に財務状況がどのように評価されるのかを、段階的に解説します。


負債比率企業の財務状況
100%以下・自己資本が負債を上回っており、財務的に安全性が高い
101%~301% ・一概に危険とはいえないが300%に近づくほど注意が必要
・多くの企業がこの範囲に収まる
301%~600% ・自己資本に対して負債が多い状態
・資金繰りが厳しくなっている可能性あり
・金融機関からの評価も厳しくなる傾向
601%以上 ・債務超過に陥るリスクが高い状態
・早急な財務改善が求められる

財務の安全性を重視するのであれば、自己資本のみで借金をすべて返せる100%以下の状態が理想です。

ただし、業種や成長段階によって理想の水準は異なります。自社の比率が適正かどうか知りたい場合は、定点観測や同業他社との比較も取り入れながら総合的に判断することが重要です。

業界別の平均負債比率一覧

負債比率の適正な目安は業界ごとに異なります。自社の負債比率を評価する際は、同業他社との比較が不可欠です。
業種負債比率(%)
建設業110.1
製造業100.7
情報通信業80.1
運輸業173.4
卸売業129.6
小売業177.6
不動産業148.9
学術研究52.5
宿泊業・飲食業525
生活関連サービス業189.5
サービス業(ほかに分類されないもの)121.2
出典:中小企業庁「令和6年中小企業実態基本調査」

運輸業や小売業、不動産業、宿泊業・飲食業などは、一般的に負債比率が高い傾向にあります。これらの業界に共通するのは、事業を行うために設備投資や材料調達が必要であることです。初期投資の金額が大きいほど自己資本だけでまかなうことは難しく、金融機関からの借入に頼るケースも多くなります。

これに対して、情報通信業や学術研究は負債比率が低い傾向にあります。製品の在庫を持たないことや、人的リソースが主な経営資源となることが理由です。

負債比率を高いまま放置する経営リスク

負債比率の高い状態を放置することは、企業経営において深刻なリスクをもたらす可能性があります。

財務の安全性が損なわれるだけでなく、企業の持続的な成長や存続そのものを脅かす恐れがあるため、放置するのは非常に危険です。

資金繰りが悪化する

負債比率が高い企業は、借入金の元本返済と利息の支払いが負担となり、日々の資金繰りを圧迫します。毎月の返済額が増大すると運転資金が不足し、仕入れ代金や給与の支払いに支障をきたす恐れもあります。

とくに危険なのは、「黒字倒産」のリスクです。返済期日に現金が用意できなければ、たとえ帳簿上は黒字でも倒産に追い込まれることがあります。

追加融資や資金調達が困難になる

金融機関は融資審査において、企業の返済能力を重要視します。負債比率が高い企業は、すでに多額の借入を抱えており、追加融資のリスクが高いと判断されます。

負債比率が高いことで、以下のような不利な条件を提示されるケースも考えられます。

  • 新規融資を断られる
  • 融資額が希望より減額される
  • 金利が高く設定される

経営の自由度が低下する

高すぎる負債比率は、経営の自由度にも影響をおよぼします。毎月の返済を最優先にせざるを得ず、将来への投資が後回しになってしまうためです。

返済を最優先にするあまり、以下のような経営に必要な投資を制限すると、企業の成長や競争力を低下させてしまう恐れがあります。

  • 新規事業への参入
  • 設備の更新
  • 研究開発への投資

負債比率を下げるには? 経営者ができる5つの改善策

負債比率を改善する方法としては、主に以下のようなものがあります。


  • 自己資本を増やす
  • 負債を減らす
  • キャッシュフローを改善する

それぞれの方法について、より具体的な改善策を紹介します。

利益を創出し内部留保を増やす(自己資本を増やす)

最も本質的な改善策のひとつは、事業活動を通じて利益を生み出し、内部留保として蓄積することです。売上拡大と同時にコスト削減を進めることで、税引後の利益を最大化できます。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。


  • 既存顧客への販売強化
  • 新規顧客の開拓
  • 販管費の見直し

また、利益を配当として流出させずに利益剰余金として積み上げ、自己資本を増やすことも大切です。

増資を行う(自己資本を増やす)

新株発行による増資も、負債比率の改善に有効です。既存株主への株主割当増資や、新たな投資家を募る第三者割当増資により、返済義務のない資金を調達できます。

ただし、増資は既存株主の持分比率が変化するため、経営権への影響を考慮する必要があります。

また、非上場企業の場合は引受先を見つけるのが困難な場合もあるため、実現可能性を検討することも重要です。

不要な資産を売却する(負債を減らす)

負債を減らす方法としては、遊休資産や不採算事業などを売却し、その資金で借入金を返済することが挙げられます。不要な資産は、使用していない土地や稼働率の低い設備なども対象です。

資産の売却は、比較的短期間で実行できるため資金を確保しやすいメリットがあります。ただし、将来的に必要となりそうな資産まで売却しないよう注意が必要です。

経費を見直し支出を抑える(キャッシュフロー改善)

日常的な経費を徹底的に見直し、無駄な支出を削減することで、返済原資となる現金の確保が可能です。固定費では家賃の交渉や不要な契約の解約、変動費では仕入先の見直しや在庫の適正化などが考えられます。

小さな改善の積み重ねが、年間では大きな効果を生むことがあります。全社的にコスト意識を高め、継続的な改善活動を行うことが重要ですす。

借入金の返済計画を見直す(リファイナンス)

既存の借入条件を見直すことで返済負担を軽減できる可能性があります。より低金利のローンへの借り換えや複数の借入を一本化するなど、月々の返済額を減らす方法を検討することをおすすめします。

なお、リファイナンスは借入元本や自己資本の額を直接変えるものではないため、負債比率そのものは即座には改善しません。ただし、返済負担が軽減されると事業運営に余裕が生まれます。そこで利益の積み上げ(内部留保の増加)につながれば、間接的に負債比率が改善する可能性があります。

また、一時的に返済が困難な場合は、金融機関に対して返済期間の延長を相談することも可能です。ただし、信用情報に影響する可能性があるため、あくまで最終手段として考えましょう。

まとめ

負債比率とは、自己資本に対する負債の割合を示し、企業の財務安全性を測る指標です。数値が100%以下であるほど安定的な経営を行っていると言えます。負債比率が高いままでは、資金繰りや融資条件の悪化、経営の自由度低下といったリスクを招きます。

ただし、業界や企業の成長度合いによって適正水準は異なります。自社の負債比率が適正であるかどうか確認する場合は、同業他社との比較を行うなど、さまざまな観点から確認することが重要です。

このような正確な数値把握や分析を手作業で行うのは手間がかかり、ミスが生じるリスクもあります。会計ソフトを活用すれば、日々の取引から財務諸表が自動で作成され、負債比率といった経営指標もリアルタイムで簡単に確認できます。

会計ソフトを活用して自社の現状を正しく把握しながら、本記事で紹介したような負債比率の改善策を実施し、安定した財務体質を維持しましょう。

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負債比率とは?

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詳しくは、記事内の「負債比率とは?企業の財務安全性を測る重要指標」で解説しています。

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負債比率の求め方は?

負債比率を算出するための計算式は、「負債比率(%)= 負債(他人資本)÷ 自己資本 × 100」です。

詳しくは、記事内の「負債比率の求め方」をご覧ください。

負債比率は低いほどいいの?

基本的には、負債比率が低いほど財務の安全性が高いと言えます。しかし、低すぎることが必ずしも良いとは限りません。

詳しくは、記事内の「あなたの会社は大丈夫?負債比率の適正な目安と業界別の平均値」で解説しています。

負債比率が高いとどうなる?

負債比率が高いままでは、企業経営において深刻なリスクをもたらす恐れがあります。具体的には資金繰りの悪化や資金調達の困難化、経営の自由度の低下などです。

それぞれのリスクについて、詳しくは記事内の「負債比率を高いまま放置する経営リスク」で解説しています。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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