会計の基礎知識

法人事業税とは? 法人税の他に「所得」に課されるもう一つの税金の特徴について

法人事業税とは? 法人税の他に「所得」に課されるもう一つの税金の特徴について

会社が事業を行う上で必ず納付しなければならない税金が3つあります。それが法人税、法人住民税、法人事業税です。これらは似ている部分もありますが、納付先や税金の性質、算定方法が異なります。この記事では法人事業税を中心に、ほかの税金との違いも含めて説明していきます。
[執筆:熊谷恵佑(公認会計士)]

目次

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法人事業税とは、法人税・法人住民税と並ぶ「法人税等」のひとつ

本記事のテーマである法人事業税は「法人税等」という企業会計の勘定科目を構成する要素です。「法人税等」は損益計算書の当期純利益の上に掲載されるものです。法人税等に計上される税金は法人事業税のほかに、法人税、法人住民税があります。 法人事業税は一部別項目に計上される場合がありますので、その点については後述します。損益計算書の表示項目では「法人税、住民税及び事業税」と掲載されており、「法人税等」はその略称です。

法人事業税と法人税、法人住民税の違い

会計上は、法人事業税・法人税・法人住民税は「法人税等」の科目に計上されるため、処理方法に違いはないのですが、税金の性質としてはさまざまな違いがあります。ここでは4つの視点で相違点を解説します。

国税か地方税か

この3つの税金は国税か地方税かという点で異なります。法人事業税と法人住民税は地方税に、法人税は国税に該当します。

課税標準の違い

また、これらの税金は課税標準も異なります。「課税標準」とは、税額を算定する上での基礎となる数値であり、課税される対象を指します。

法人事業税と法人税の課税標準は基本的には「所得」になります。「所得」とは、会計上の「利益」に種々の調整項目を算定する数値です。法人税の課税標準も法人事業税と同じく「所得」です。

一方で、法人住民税の課税標準は「法人税額」(法人税割の場合)であり、法人税に連動する形で金額が算定されることになります。

なお、法人事業税の課税標準は基本的に「所得」ですが、資本金が1億円超の法人の場合は「外形標準課税」が適用されます。「外形標準課税」とは、課税標準を「所得」「付加価値」「資本金の額」に分割して税金の課税を行う方法で、所得以外の課税標準が導入されているところが特徴です。詳しくは後述します。

法人住民税も、法人税の金額にしたがって定まる「法人税割」のほかに、「均等割」という税金が規定されています。これは法人の資本金の額や従業員数に応じて課される税金です。法人住民税も法人事業税と同じく複数の課税基準が設定され、税の徴収がなされています。

これに対し、法人税の課税標準は「所得」というひとつの基準であり、この点がほかの税金と異なります。

赤字の場合に課税されるか

この3つの税金は赤字の際に課税されるかどうかが異なります。法人事業税の場合、基本的に「所得」に課税されることになります。したがって、赤字会社(所得がゼロ以下)は所得に対しては課税されません。しかし、資本金1億円超の法人の場合、「外形標準課税」が適用されるため、所得以外の要素に課税されることもあります。したがって、赤字会社でも課税されるケースがあるということです 。

一方、法人税に関しては、課税対象は所得のみに限られます。したがって、赤字会社(所得がゼロ以下)の場合、法人税は発生しません 。

また、法人住民税のケースですが、法人住民税は法人税割と均等割に分かれます。赤字の場合は法人税が発生しないため法人税割も発生しませんが、均等割は資本金と従業員の人数から税額が定まるため、赤字であっても課税されます。

損金算入できるかどうか

この3つの税金は法人税の計算において損金算入できるかどうかという点でも異なります。 法人事業税は、法人税の計算において損金算入ができます。しかし、法人税と法人住民税に関しては損金に算入できません。

種類課税標準赤字の場合損金算入
法人事業税地方税所得課税されるケースがあるできる
法人税国税所得課税されないできない
法人住民税地方税法人税額課税されるケースがあるできない

法人事業税の詳細

法人事業税とはどんな目的で課税されるのか

法人事業税とは、法人が事業を行うにあたって使用する公共サービスの維持費を法人に一部負担させる目的で課される税金のことを指します。都道府県は経済の活性化のために公費を用いてさまざまな方法でサービスを提供していますが、それを法人が享受していることの対価として税金が課されているのです。

法人事業税の税率とは

繰り返しとなりますが、法人事業税の課税標準は基本的には「所得」であり、これに税率を乗じて納付すべき金額が算定されます。この税率は「標準税率」と「超過税率」に分けられます。標準税率は各都道府県一律ですが、超過税率はそれぞれ独自に定められており、超過税率を使用しなければならない条件も異なります。

法人事業税の外形標準課税とは

前述のとおり、資本金が1億円超の法人については、外形標準課税が適用されます。外形標準課税とは課税の基準を法人の儲けである「所得」ではなく、企業の規模に応じて課税する方法のことを指しますが、外形標準課税がなされたとしても、所得に課税される部分がすべてなくなるわけではありません。

外形標準課税は「所得割」「付加価値割」「資本割」という3つの課税対象に分けられます。

ひとつ注意すべきなのが、会計上の計上区分についてです。「所得割」が「法人税、住民税及び事業税」に計上されるのに対し、「付加価値割」と「資本割」は「販売費及び一般管理費」の「租税公課」に計上されます。

理由は、一般的に所得割が利益と連動する項目であるのに対し、付加価値割と資本割は利益と連動しない項目と考えられるためです。

所得割

「所得割」とは法人の「所得」の金額に一定の税率をかけて算定した金額を指します。

外形標準課税の場合は、所得割のほかにも、付加価値割と資本割が発生するので、外形標準課税ではない通常の事業税の所得割よりも税率が低めに設定されています。

付加価値割

「付加価値割」とは、「単年度損益」と「収益分配額」の合算額の一定の税率をかけて 算定した金額を事業税として納付する算定方法のひとつです。

「単年度損益」とは、欠損金控除適用前の法人の所得の金額を指します。

「収益分配額」は「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」の合計額で構成されており、それぞれの構成要素は次のように計算されます。

  1. 「報酬給与額」 報酬、給与等と企業年金等の掛け金の合計
  2. 「純支払利子」 支払利子から受取利子を控除したもの
  3. 「純支払賃借料」支払賃借料から受取賃借料を控除したもの

この「単年度損益」と「収益分配額」を足し合わせ、付加価値割に適用する税率をかけて、付加価値割を算定します。

資本割

「資本割」とは法人の「資本金等」の金額に一定の税率をかけて算定した金額を指します。課税標準が「資本金」ではない点に注意が必要です。

「資本金等」とは、「資本金」と「資本準備金」の合計額ですが、無償増資や無償減資があった場合はその分を調整額として足し引きし、最終的な金額を算出します。

ただし、計算した「資本金等」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回っている場合は、課税標準として「資本金と資本準備金の合計額」を用います。

法人事業税の納税までの流れ

法人事業税の申告、納税期限も基本的には法人税と同様、会計期末から2ヶ月以内にです。法人税の規定には「中間申告」の規定と「確定申告」の規定がありますが、基本的には連動する形で申告・納税が行われます。

法人事業税の納付先は各都道府県です。納付書を使用して現金で法人事業税を納付することも可能ですし、eLtaxを用いて電子納税を行うことも可能です。ただし、eLtaxには対応していない地方自治体も存在するので、事前に確認することをおすすめします。

まとめ

法人事業税は法人税と比べるとマイナーな税科目でありますが、法人税と異なる取り扱いをする部分もあるので、最低限の基礎的な内容をおさえておきましょう。そうすることで、税理士に委託するとき、よりスムーズにコミュニケーションを図ることが可能になります。

執筆:熊谷恵佑(公認会計士)

宮城県仙台市出身。東北大学経済学部卒業。公認会計士として、日本で監査、税務業務等に従事後、国際業務に関心を持ち、2015年より東南アジアに拠点を移し、活動をしている。タイ、カンボジア、ベトナムでの業務経験を持つ。現在は、日本(仙台、東京)とタイ、バンコクで会計サービスを提供している。

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