会計の基礎知識

【経理担当者向け】計上とは?タイミングや売上・仕入れ計上の基準と注意点を解説

監修 橋爪 祐典

【経理担当者向け】計上とは?タイミングや売上・仕入れ計上の基準と注意点を解説

計上とは、事業活動において発生した取引の内容を帳簿に記録し、財務諸表へ反映させる一連の会計処理です。

企業の財務状況を正確に把握し財務諸表の信頼性を担保するため、また正しい納税を行うために、計上にまつわる考え方やルールを理解しておくことが重要です。

本記事では、計上の意味やタイミングなどの基礎知識のほか、売上計上・仕入計上における基準や注意点など、経理実務に役立つポイントを解説します。

目次

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計上とは

計上とは、事業活動において発生した取引について「いつ・どの勘定科目で・どれだけの資産や負債などが増減したか」を認識し、帳簿に記録して決算書や企業の財務状況に反映させることです。

正確な財務諸表の作成や申告・納税の基礎になるという点で、非常に重要な会計処理だと言えます。

類似する「記帳」や「請求」と計上の違いについて、以下で解説します。

記帳との違い

記帳とは、日々の取引を帳簿に記録する作業のことです。

計上は「費用・収益を認識して帳簿に記録し、最終的に決算書に反映させる」という一連の会計処理であり、記帳は計上のプロセスに含まれる、実務的な一ステップと位置づけられます。

請求との違い

請求とは、取引相手に代金の支払いを求める業務で、計上は、取引内容を会計上の基準に従って認識・記録し、帳簿や決算書に反映させるプロセスを指します。

請求と計上では、行われるタイミングの決め方も異なります。請求における「締め日」や請求書の「発行日」は、企業の都合や商慣行をふまえて、契約や発注の時点で取り決められるのが一般的です。一方、計上のタイミングについては会計基準(発生主義・実現主義)に従う必要があります。

計上タイミングは3種類

計上には、「収益や費用などをどのタイミングで認識するか」という観点で、以下3種類の考え方があります。

計上タイミングの3つの考え方

  • 発生主義
  • 実現主義
  • 現金主義

それぞれの考え方について、詳しく解説します。

発生主義

発生主義とは、実際の金銭のやりとりの有無にかかわらず、取引という経済的事実が発生した時点で費用・収益を計上する考え方です。

たとえば「掛け取引(後払いの取引)による仕入れが3月に確定し、代金の支払を4月に行う」場合、発生主義では、代金の支払い前であっても、取引が確定した3月時点で費用として計上します。

日本の会計基準では、費用については原則として発生主義が適用されます。

金銭の動きと事業の実態は、必ずしも一致しません。取引の発生時点で計上を行うことで、入出金のタイミングに左右されることなく事業・経済活動の実態を帳簿に反映でき、より正確な期間損益を計算できるでしょう。

実現主義

実現主義とは、商品やサービスの対価として収益を得る権利が確定した時点で、収益を計上する考え方です。

日本の会計基準では、収益については原則として実現主義が適用されます。確実な収益のみを計上することで、財務諸表の正確性や信頼性を確保するためです。

「具体的にどの時点で『権利が確定した』とするか」という計上タイミングの基準は、業種やサービスによって異なります。この計上基準の例については、「売上計上基準」で紹介します。

現金主義

現金主義とは、実際に現金の入金・出金があった時点で収益・費用を計上する考え方です。

金銭の動きと帳簿の数値が一致するため、分かりやすい点はメリットです。一方で、掛け取引(後払いの取引)のように取引と金銭の動きにタイムラグがある場合などに、事業・経済活動の実態を正しく帳簿に反映するのは困難です。

原則として、法人税法上では現金主義を採用することは認められておらず、法人は発生主義・実現主義に基づいて収益や費用を計上する必要があります。

売上計上とは

売上計上とは、企業が商品の販売やサービスの提供によって得る収益を適切なタイミングで認識し、帳簿に記録して財務諸表に反映することです。

原則として、収益は実現主義に基づき「商品やサービスの対価として収益を得る権利が確定した時点」で計上します。

売上計上を適切なタイミングで行うことは、企業の一定期間における経営成績を正確に把握し、信頼性の高い財務諸表をステークホルダーに提示するためにも、正しく納税を行うためにも欠かせません。

そこで、期ずれによる損益計算の誤りを防ぐため、計上のタイミングに一定の基準を設け、それに従うことが求められます。

売上計上基準

「具体的にどの時点で『収益を得る権利が確定した』と認識するか」という、売上計上のタイミングにおける基準を、売上計上基準と呼びます。

売上計上基準には複数の種類があり、業種やサービスによって異なるものが採用されます。主な売上計上基準として、以下3つを紹介します。

主な売上計上基準

  • 出荷基準
  • 検収基準
  • 検針基準

出荷基準

出荷基準とは、商品を自社から出荷した時点を基準に、売上を計上する考え方です。製造業や卸売業など商品・製品の販売を扱う業界において広く採用されています。

たとえば、卸売業では一般に月末締めの出荷実績に基づき、運送中の商品についても当月の売上として計上します。EC業界においても、基本的には商品発送時点が基準とされ、顧客への商品の到着を待たずに、配送業者への引渡しを行った時点で売上計上します。

出荷表などの記録を計上の根拠として明示できるため管理がしやすいほか、到着確認や検収といった相手先の作業を待つ必要がないため、スムーズかつ迅速な売上計上が可能です。

検収基準

検収基準では、顧客が納品された商品について品質・数量・仕様などを確認し、受け入れを承認した時点を売上計上の基準とします。

確実な売上のみを計上できる考え方で、修正・交換・仕様変更などが発生しやすい業種、たとえばIT業界やカスタム製品を扱う製造業で多く採用されています。

とくにシステム開発においては、納品したシステムの不具合などにより改修の対応が必要となるケースも少なくありません。顧客の検収完了後に売上計上を行うことで、後から売上の修正や取り消しが必要になるリスクを最小化できるでしょう。

検針基準

検針基準とは、メーターの検針によって販売・使用量を確認した時点を基準に、売上を計上する考え方です。電気・ガス・水道など、使用量に応じた料金体系を設けているサービス業で採用されます。

公共料金は顧客の使用実績にもとづいて課金され、検針によって確定された使用量が売上計上の根拠となります。

売上計上の注意点

正確な売上計上のために、次のポイントを押さえましょう。

売上計上の注意点

  • 売掛金は入金まで監視する
  • 売上計上基準の変更は難しい
  • 期ずれ・二重計上・計上漏れを避ける

売掛金は入金まで監視する

商品やサービスを販売・提供した後もなお未収の代金について、これを受け取る権利を売掛金といいます。

取引先の経営状況などによっては、売掛金を必ず回収できるとは限らないため、売上計上後も期日通りに入金がなされるまで継続的に監視する必要があります。

売上計上基準の変更は難しい

一度採用した売上計上基準は、簡単には変更できません。会計処理の基本的な指針を示す「企業会計原則」において、一度決めた会計処理の方法について安易な変更をせず、継続して使用しなければならないと定められているためです。

基準の選択は、継続して適用することを前提として慎重に行いましょう。

期ずれ・二重計上・計上漏れを避ける

売上計上において重複(二重計上)や漏れ(計上漏れ)が発生したり、本来計上すべき事業年度と異なる年度に計上(期ずれ)してしまったりすることがないよう、注意が必要です。

こうしたミスがあると、財務諸表の信頼性を損なうほか、正しい納税ができず税務調査で指摘を受けるリスクも生じます。

業務プロセスの整備やダブルチェック体制の確立などの対策を行い、正しく売上計上を行いましょう。

仕入計上とは

仕入計上とは、販売や製造のために仕入れた商品や原材料などを会計帳簿に記録し、費用または在庫として認識する処理を指します。企業が損益や在庫の実態を正確に把握するうえで、欠かせないプロセスです。

仕入計上においても、売上計上と同様に計上のタイミングに関する基準を選択し、継続的にこの基準に則って会計処理を行うことが求められます。

仕入計上基準

仕入計上のタイミングにおける基準を、仕入計上基準と呼びます。

仕入計上基準にも複数の種類があります。主な仕入計上基準としては、以下の3つが挙げられます。

主な仕入計上基準

  • 発送基準
  • 入荷基準
  • 検収基準

発送基準

発送基準とは、仕入先が商品を発送した時点を基準に、仕入計上を行う考え方です。継続的に大量の仕入を行う業種などで採用されます。

売上計上において出荷基準を採用している場合、売上と仕入(原価)の対応関係が分かりやすくなります。仕入先からの発送通知や運送業者による集荷確認など客観的な根拠を持って仕入計上ができます。

入荷基準

入荷基準とは、商品が自社に到着した時点で仕入計上を行う考え方です。

物理的な商品の受領という明確な事実に基づくため、計上タイミングの判断が容易です。仕入取引の内容を現物をもって確認でき、在庫と帳簿上の数値を対応させやすいことから、小売業をはじめ広く採用されています。

検収基準

仕入計上における検収基準は、自社に商品が到着し、数量や品質などに問題がないと確認できた時点で仕入計上する考え方です。

取引が確定してから会計処理を行うため信頼性が高く、計上後に修正や変更が生じるリスクを押さえられます。

仕入計上の注意点

仕入計上業務を正しく行うために押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。

仕入計上の注意点

  • 取引先ごとに買掛金の管理を行う
  • 売れ残った在庫は棚卸資産として持ち越す

取引先ごとに買掛金の管理を行う

商品や原材料を掛け取引で仕入れた際に生じる、将来的に代金を支払う債務のことを買掛金といいます。

仕入計上により発生した買掛金の支払方法や締め日・期日などは、取引先によって異なります。各取引先個別に契約書・請求書や買掛金残高を確認のうえ、しっかりと管理しましょう。

買掛金の未払いは、取引先との信頼関係を損ない、取引の条件悪化や停止によって事業運営に重大な支障をきたすリスクもあるため、十分な注意が必要です。

売れ残った在庫は棚卸資産として持ち越す

仕入れた商品のうち、期末時点で販売されず在庫として残っている分は棚卸資産として翌期に持ち越しましょう。持ち越さずに当期の費用として計上してしまうと、当期の損益計算が正しく行えません。

まとめ

計上とは、事業活動において発生した取引の内容を帳簿に記録し、最終的に決算書や企業の財務状況に反映させることです。

計上には発生主義・実現主義・現金主義の3つの考え方があり、日本の会計基準では原則として、収益については実現主義、費用については発生主義が適用されます。

商品・サービスの提供によって得る収益や、仕入れた商品や原材料などを計上するにあたっては、計上のタイミングについて一定の基準(売上計上基準・仕入計上基準)を設け、継続的にこの基準に則る必要があります。

自社の業種やサービスに適した計上基準を選択し、正しく売上計上や仕入計上を行いましょう。

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よくある質問

経費はいつ計上する?

経費は原則として発生主義の考え方に基づき、金銭のやりとりの有無にかかわらず、取引という経済的事実が発生した時点で計上します。

詳しくは、記事内「計上タイミングは3種類」をご覧ください。

売上と計上の違いは?

売上は、企業が商品の販売やサービス提供によって得る対価の総額を指します。一方、計上は取引を会計帳簿に記録し、財務諸表に反映する一連の流れを指します。

詳しくは、記事内「計上とは」をご覧ください。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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