監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

当期純利益とは、企業の一会計期間における最終的な利益を指し、売上高から各種費用や税金を差し引いて算出される金額です。企業の黒字・赤字を示す重要な指標ですが、経営状態を正しく判断するには、その内訳や推移を分析することが欠かせません。
特に、財務担当者や経営者、投資家にとっては、企業の収益性や財務の健全性を見極める重要な指標となります。
本記事では、当期純利益の概要や計算方法、経営分析の指標などを紹介します。そのほか、売上高当期純利益率、総資産利益率(ROA)、自己資本利益率(ROE)など、当期純利益を用いて算出される経営分析の指標についても解説します。
目次
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当期純利益とは
当期純利益とは、会計期間の全収益から全ての費用・法人税などを差し引いて残る利益のことです。当期純利益がプラスであれば、その期間は黒字となります。反対に、マイナスの場合は赤字となり、「当期純損失」と呼ばれます。
ただし、当期純利益には、臨時的な収益や費用(特別損益)が含まれるため、当期純利益の赤字・黒字だけで、一概に経営状態を判断することはできません。
当期純利益は年間の事業の成果を表す指標ですが、経営状態を判断する際には、赤字・黒字だけでなく、内訳まで確認することが重要です。
当期純利益の計算方法

当期純利益の計算式は以下の通りです。
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等 ± 法人税等調整額
税引前当期純利益から法人税等(法人税・法人住民税・法人事業税)を差し引き、法人税等調整額で調整することで、当期純利益が求められます。
税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、売上高から、売上原価と販管費を差し引き、営業外収益・営業外費用・特別損益を加減し算出する利益です。法人税などの計算基準となる数字であり、税金を支払う前の段階の企業利益を表します。
法人税等
法人税等とは、法人の利益に対し課される法人税・法人住民税・法人事業税のことです。3つの税金の概要は、次の通りです。
税金の種類 | 課税対象 | 課税主体 | 特徴 |
---|---|---|---|
法人税 | 法人の所得(利益) | 国(国税) | 企業の利益に対して課される基本的な税金 |
法人住民税 | 法人の所得に基づく地方税 | 都道府県・市区町村(地方税) | 法人税額に連動する部分と均等割(赤字でも支払い義務あり)がある |
法人事業税 | 法人の所得・付加価値など | 都道府県(地方税) | 企業の事業活動に応じて課される税金。利益のほか、付加価値額なども考慮される |
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法人税等調整額
法人税等調整額は、企業の会計上の利益と税務会計の課税所得のズレを解消するための勘定科目です。
企業の収益と費用を算出する企業会計と、利益にかかる税額を算出する税務会計は、目的の違いから、収益・費用と益金・損金が一致せず、ズレが生じることがあります。
企業の利害関係者が適正に損益を把握できるよう、法人税等調整額でズレを解消する手続きを「税効果会計」と呼びます。上場企業や、会計監査人の監査を受ける非上場企業など会社法上の「大企業」にあたる企業は、税効果会計の対応が義務付けられています。
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当期純利益とそのほかの利益との違い
当期純利益のほか以下の4つの利益は、損益計算書上で記載される企業の経営状況を表す重要な指標です。損益計算書では、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益を順に計算して、最終的に当期純利益を算出します。
利益の種類 | 利益の概要 |
---|---|
売上総利益 | ・売上高から売上原価を差し引いた金額 ・粗利とも呼ばれる |
営業利益 | ・売上総利益から販管費を差し引いた金額 ・本業で得た利益を表す |
経常利益 | ・営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を差し引いた金額 ・本業以外で発生した損益も加味した、企業の総合的な収益力を表す |
税引前当期純利益 | ・経常利益に特別損益を加減した税引き前の最終的な利益 ・固定資産の売却損益や災害による損失などで変動する |
当期純利益 | ・税引前当期純利益から各種税金を差し引いた会計期の最終的な利益 ・会社の年間の最終的な経営成績を表す |
当期純利益を用いた経営分析
当期純利益を用いた経営分析の指標としては、以下が挙げられます。
当期純利益を用いた経営分析
- 売上高当期純利益率
- 総資産利益率(ROA)
- 自己資本利益率(ROE)
各指標を確認することで、収益力などの判断が可能です。それぞれの指標を解説します。
売上高当期純利益率
売上高当期純利益率とは、企業の売上に対して最終的にどれだけの利益(当期純利益)が残るかを示す指標であり、企業の収益性や効率性を測ることができます。
売上高当期純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高 × 100
売上高当期純利益率は、売上高に対してどの程度の利益を確保できているか、つまり、企業の収益力を評価します。
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総資産利益率(ROA)
総資産利益率(ROA:Return On Assets)とは、企業が持つ総資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標です。以下の計算式で算出します。
総資産利益率(ROA)の計算式
総資産利益率(ROA)= 利益/総資産 × 100
一般的に、ROAが高いほど企業は少ない資産で効率よく利益を生み出していることを意味します。業界によって基準は異なりますが、5%以上であれば良好とされることが多いです。
ROAが低いと、資産を有効活用できていない可能性があり、経営の効率性に課題があるかもしれません。ROAは、企業の経営効率を分析する際にROE(自己資本利益率)と併せて確認されることが多い指標です。
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自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率(ROE:Return On Equity)とは、企業の自己資本に対する当期純利益の割合を示す指標です。以下の計算式で算出します。
自己資本利益率(ROE)の計算式
自己資本利益率(ROE)= 当期純利益/自己資本 × 100
自己資本をどれだけ効率的に運用して利益を生み出したかを表します。一般的に、ROEは10%以上であれば良好な状態だと判断でき、ROEの数値が高いほど、自己資本を使って効率よく利益を生み出せていることを表します。
当期純利益を増やす方法
売上高からさまざまな費用を差し引くことで、売上総利益、営業利益、経常利益が算出でき、最終的に当期純利益が算出されます。当期純利益を増やすためには、いずれかの対策が必要です。
当期純利益を増やす対策
- 「売上総利益」を増やす: 売上高の増加/売上原価の削減が必要
- 同じ売上高で「営業利益」を増やす:販売費及び一般管理費(販管費)の削減が必要
- 同じ営業利益で「経常利益」を増やす:営業外収益の増加/営業外費用の削減が必要
それぞれ、具体的な対策として以下の例が挙げられます。
当期純利益を増やす方法 | 具体的な対策の例 |
---|---|
売上総利益を増やす | ・仕入れ先を見直す ・安価な原材料を使用する ・在庫ロスを減らす ・価格を見直す ・販売数量を増やす(ブランド力を高めるなど) ・新規市場・顧客の開拓 ・価格戦略を見直す ・客単価を向上させる |
営業利益を増やす | ・広告宣伝費の最適化 ・家賃の安い事業所やオフィスに引越す ・事務・管理コストの削減 ・業務効率化・DX推進で業務コストを抑える |
経常利益を増やす | ・借入金を返済して利息負担を軽減する ・不要な設備投資を減らす ・有価証券の利息・評価益を得る ・不動産を貸し出して不動産賃貸料を得る |
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販売費及び一般管理費(販管費)とは?内訳や販売費比率の計算方法を解説
まとめ
当期純利益は、会計期間の全収益から全ての費用・法人税などを差し引いて残った最終的な利益のことです。税引前当期純利益から法人税等を差し引き、法人税等調整額による調整を行うことで算出します。
当期純利益を用いた経営分析の指標としては、売上高当期純利益率・総資産利益率・自己資本利益率などがあり、企業の収益力や効率性などを測ることができます。
当期純利益を増やすためには、売上総利益・営業利益・経常利益を増やすなどが選択肢です。当期純利益やその内訳を理解して、企業の収益の判断などに活用しましょう。
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よくある質問
当期純利益の計算方法
税引前当期純利益から法人税等(法人税・住民税・事業税)を差し引き、法人税等調整額による調整を行うことで、当期純利益を算出します。
詳しくは記事内、「当期純利益の計算方法」をご覧ください。
当期純利益を増やす方法は?
売上総利益、営業利益、経常利益のいずれかを増やす対策が必要です。具体的には、売上高の増加、売上原価・販管費・営業外費用の削減、営業外収益の増加などに向けた対策を行います。
詳しくは記事内、「当期純利益を増やす方法」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
