会計の基礎知識

投資キャッシュ・フローとは?プラス・マイナスが示す意味や分析時のポイントを解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

投資キャッシュ・フローとは?プラス・マイナスが示す意味や分析時のポイントを解説

投資キャッシュ・フローとは、企業の投資活動による現金(キャッシュ)の増減を示す指標です。キャッシュ・フロー計算書の区分のひとつであり、企業の経営状態を把握するうえで欠かせません。

キャッシュ・フローの計算方法には「直接法」と「間接法」の2種類がありますが、投資キャッシュ・フローの計算方法として認められているのは直接法のみです。

本記事では、投資キャッシュ・フローの概要を説明したうえで、計算方法や「プラス」や「マイナス」が示す意味、投資キャッシュ・フローを分析する際のポイントも詳しく解説します。

目次

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投資キャッシュ・フローとは?

投資キャッシュ・フローとは、企業のある会計期間における現金の流れを示す決算書類「キャッシュ・フロー計算書」の区分のひとつで、投資活動によって生じる現金(キャッシュ)の流れを表します。

投資キャッシュ・フローは、主に以下のような取引による現金の増減を示します。

投資キャッシュ・フローが変動する主な要因

  • 有価証券の取得・売却
  • 固定資産や設備の取得・売却

たとえば、オフィスの増設や新しいシステムの導入といった「設備投資」を現金で行うと投資キャッシュ・フローは「マイナス」に、車両や設備の売却などによって現金を得た場合は「プラス」になります。

事業を拡大するうえで設備投資をはじめとした投資活動は不可欠であり、「マイナス」は必ずしもネガティブな要素ではありません。投資キャッシュ・フローを分析する際には、プラス・マイナスという結果だけでなく、その内容や変動の理由を確認することが重要です。


出典:日本証券業協会「キャッシュ・フロー計算書」

営業キャッシュ・フローや財務キャッシュ・フローとの違い

キャッシュ・フロー計算書には、以下の3つの区分があります。


キャッシュ・フローの種類概要
投資キャッシュ・フロー設備や有価証券の取得・売却などの投資活動による現金の増減を示す
営業キャッシュ・フロー本業の営業活動による現金の増減を示す
財務キャッシュ・フロー営業活動と投資活動を維持していくための、株式の発行・借り入れ・借入金の返済・配当金支払いなどに伴う現金の増減を示す

【関連記事】
営業キャッシュ・フローとは? 計算方法やマイナスになる原因、対処法を解説
財務キャッシュ・フローとは? プラス・マイナスになる要因や確認ポイントを解説


出典:中小企業基盤整備機構J-Net21「キャッシュフロー計算書の見方と活用方法について教えてください。」

投資キャッシュ・フローのプラス・マイナスを左右する要素

投資キャッシュ・フローが変動する主な要因は以下の通りです。


投資キャッシュ・フローの変動要因プラス・マイナス
定期預金預け入れマイナス
払戻しプラス
固定資産(有形・無形)取得マイナス
売却プラス
有価証券取得マイナス
売却プラス
貸付金支出マイナス
回収プラス

企業の投資活動には、「固定資産の取得」や「有価証券の売却」など、さまざまな種類があります。プラス・マイナスのどちらに該当するかは、「手元のキャッシュの増減」を基準に判断しましょう。

定期預金の預け入れ・払戻し

金融機関への預金のうち、「預け入れ期間が3ヶ月を超える定期預金」は投資キャッシュ・フローの対象です。なお、いつでも引き出しが可能な普通預金や当座預金は、投資キャッシュ・フローには含みません。

定期預金として預けると手元の現金が減るため、投資キャッシュ・フローは「マイナス」となります。一方、払戻しを行うと手元の現金が増えるため、投資キャッシュ・フローは「プラス」です。

投資キャッシュ・フローがマイナスの場合、「定期預金への預け入れ」が理由であれば経営状態に大きな影響はありません。ただし、資金が定期預金に偏っているのであれば、「事業拡大に向けて設備投資をする」など資金の活用を検討しましょう。

固定資産の取得・売却

固定資産とは、主に以下に該当する資産を指します。

固定資産の条件

  • 企業が長期的に保有する資産
  • 1年以上かけて現金化・費用化する資産

固定資産には、主に有形と無形の2種類があり、以下のようなものが該当します。


固定資産の種類具体例
有形固定資産 ・オフィス
・工場
・車
・パソコン
・機械設備など
無形固定資産 ・商標権
・ソフトウェア
・アプリケーションなど

投資キャッシュ・フローでは、固定資産を売却すると現金が増えるため「プラス」に、取得すると現金が減るため「マイナス」となります。

たとえば工場を増設する場合、現金の支出が生じるため投資キャッシュ・フローにおいては「マイナス」です。しかし、新たな工場の稼働によって将来的な収益の増加が見込まれ、長期的に見ると利益を生む可能性があります。

また、固定資産の売却によって投資キャッシュ・フローが「プラス」の場合、状況によっては資金繰りの悪化を意味するケースもあります。

有価証券の取得・売却

有価証券とは、企業の資金調達手段のひとつで、株式・国債・地方債・社債などを指します。短期で売買する目的のものや3ヶ月以内に満期を迎える満期保有目的のもの以外の有価証券を、「投資有価証券」といいます。

有価証券の取得には現金の支出を伴うため、投資キャッシュ・フローは「マイナス」です。一方、売却すると手元の現金が増加するため「プラス」となります。

企業が有価証券を売却する理由のひとつとして、「現金の確保」が考えられます。この場合、確保した現金を事業の成長のために活用するのであれば、経営状態に問題はありません。

ただし、資金繰りの悪化によって「有価証券を売却せざるを得ない」状態の場合、財務状況の見直しが必要です。

貸付金の支出・回収

貸付金とは、企業が「他者に貸し付ける資金」です。

投資キャッシュ・フローにおいて、貸し付けする場合は手元の資金が減るため「マイナス」として扱われます。一方、貸した資金を回収する場合は、手元に現金が戻ってくるため「プラス」です。

貸付金に関して投資キャッシュ・フローが「プラス」であれば、「貸した資金を順調に回収している」状態だといえます。

投資キャッシュ・フローの計算方法

キャッシュ・フローの計算方法には、「直接法」と「間接法」の2種類があります。


計算方法特徴
直接法取引ごとにキャッシュ・フローの総額を算出する
間接法損益計算書と貸借対照表上の数値をもとに算出する

投資キャッシュ・フローの計算方法として認められているのは直接法のみです。

直接法では、固定資産や有価証券などの取得・売却について、その取引ごとに集計します。そのため、収入や支出を把握しやすい点がメリットです。ただし、取引ごとに計算する必要があるため、間接法に比べて時間がかかります。

キャッシュ・フローの計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
キャッシュ・フロー計算書の直接法とは?作り方や間接法との違いをわかりやすく解説
キャッシュ・フロー計算書の間接法とは?作り方や直接法との違いをわかりやすく解説


出典:中小企業基盤整備機構J-Net21「キャッシュフロー計算書の見方と活用方法について教えてください。」

企業にとって「投資キャッシュ・フローがプラス」の意味

投資キャッシュ・フローが「プラス」である場合、「手元に現金が増えている」状態を示します。ただし、「現金の増加=経営が順調」というわけではありません。

以下のように、投資キャッシュ・フローが示す企業の経営状態は、プラスになった要因・状況によって異なります。


投資キャッシュ・フローが
プラスになる事例
考えられる企業の経営状態
固定資産を売却する・不要な固定資産を整理し、資産の有効活用をはかっている
・経営悪化により仕方なく事業を縮小している
有価証券を売却する・市場が好調な場合、適切な利益を確保し、資金活用を計画している
・資金繰りが厳しく、現金の確保のために売却している
貸付金を回収する・貸し付けていた資金を問題なく回収できており、貸し倒れのリスクが減少している

固定資産の売却による「プラス」状態は、「設備を維持する資力の低下」や「事業の縮小」を示している可能性があります。

企業の状態を判断する際、「プラス」という結果よりも、「プラスになった理由・プロセス」を把握することが大切です。

企業にとって「投資キャッシュ・フローがマイナス」の意味

たとえば、工場の増設など「設備投資」を積極的に行っている場合、将来的に大きなリターンを得られる可能性があるためです。

投資キャッシュ・フローがマイナスになる場合と、その事例から考えられる企業の経営状態は以下の通りです。


投資キャッシュ・フローが
マイナスになる事例
考えられる企業の経営状態
定期預金として預け入れする ・流動性を確保しつつ、安全性の高い資産保有の方法として定期預金を活用している
・短期間で使用する予定のない資金がある
・設備投資など事業の拡大には消極的である
固定資産を取得する ・工場・オフィスなどの増設によって、事業の拡大を目指している
・新しいシステムやソフトウェアの導入によって、業務の効率化を狙っている
有価証券を取得する ・余剰資金を成長性のある株式・債権などで運用し、長期的に利益を見込んでいる
・市場の変動に応じて、資金の安定化をはかっている

事業の成長を見込んだ一時的な「マイナス」であれば、経営状態に大きな問題はないといえます。

ただし、投資のために支出したものが将来的に利潤をもたらさなければ意味がありません。新規事業のために投資した場合、その後の利益を把握するため、営業キャッシュ・フローの動きも確認しましょう。

投資キャッシュ・フローを分析するポイント

投資キャッシュ・フローを分析する際、「プラス」や「マイナス」という結果だけに注目しても、正確な経営状態は把握できません。

投資キャッシュ・フローを分析するうえで重要な2つのポイントを解説します。

プラス・マイナスに偏りがないか確認する

投資キャッシュ・フローは、定期預金・有価証券・固定資産・貸付金など複数の要素によって変動します。

企業を成長させるうえで、積極的な投資活動による「マイナス」は悪いことではありません。ただし、「どの要素がプラス・マイナスなのか」や「金額が偏りすぎていないか」などをチェックすることは重要です。

たとえば、「貸付による支出」や「有価証券の取得」によるマイナスが大きい場合、注意が必要なケースがあります。貸付金や有価証券に関する資金の流出は、「回収できない」リスクがあるためです。

貸した資金が返ってこなかったり、市場の状況によって損失が生じたりする場合、経営に影響を与える可能性があります。

営業キャッシュ・フローとのバランスを確認する

投資キャッシュ・フローと営業キャッシュ・フローの合計を「フリー・キャッシュ・フロー」といいます。

フリー・キャッシュ・フローは、営業活動や投資活動に必要な支出を除いた後の資金を指し、企業にとって「自由に使えるキャッシュ」を意味します。

フリー・キャッシュ・フローが「プラス」であれば、「企業の経営は安定している」と見なされるのが一般的です。

一方、フリー・キャッシュ・フローが「マイナス」の場合、「自由に使えるキャッシュが少ない」状態であることを意味します。ただし、事業の成長を見込んだ一時的な「マイナス」であれば、経営状態に大きな問題はないといえます。

投資キャッシュ・フローを分析する際は、営業キャッシュ・フローとのバランスも考慮し、企業の経営状態を適切に判断しましょう。

まとめ

投資キャッシュ・フローとは、企業の投資活動による現金(キャッシュ)の流れです。固定資産の取得・売却、有価証券の取得・売却など、複数の要素によって変動します。

工場やオフィスの新設などには多額の現金支出を伴いますが、事業の成長に投資活動は不可欠です。設備投資などによって投資キャッシュ・フローが「マイナス」となっても、経営状態を過剰に心配する必要はありません。

投資キャッシュ・フローを分析する際は、「プラス」や「マイナス」の結果だけでなく、取引の内容や変動の理由、営業キャッシュ・フローとのバランスを把握することが重要です。

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投資キャッシュ・フローとは?

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詳しくは「投資キャッシュ・フローとは?」をご覧ください。

投資キャッシュ・フローのプラス・マイナスが示す意味は?

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詳しくは「企業にとって「投資キャッシュ・フローがプラス」の意味」および「企業にとって「投資キャッシュ・フローがマイナス」の意味」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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