安全余裕率とは、実際の売上高が、利益と損失の境目である「損益分岐点売上高」をどれくらい上回っているかを表すものです。経営の安定性を示す指標になります。

安全余裕率が高いほど安定した経営であると判断でき、安全余裕率の向上を狙う取り組みが経営改善につながります。

本記事では、安全余裕率の概要をはじめ、損益分岐点の概要や損益分岐点比率と安全余裕率の関係、安全余裕率の目安、安全余裕率を改善する方法についても解説します。

• 安全余裕率とは
• 安全余裕率の計算式
• 損益分岐点比率とは
• 損益分岐点比率の計算式
• 損益分岐点比率と安全余裕率の関係
• 安全余裕率の目安
• 安全余裕率を改善するには
• 変動費を下げる
• 固定費を削減する
• 販売価格を引き上げる
• まとめ
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• よくある質問

安全余裕率とは、実際の売上高が、利益と損失の境目である「損益分岐点売上高」をどれくらい上回っているかを表すもので、経営の安定性を示す指標のことです。

安全余裕率が高いほど、予期しない事態で売上が減少した場合でも赤字に陥るリスクが低く、経営の安定性が高いと判断できます。企業の財務的な体力や、不測の事態への耐性を測るうえで重要な指標といえます。

安全余裕率の計算式は以下のとおりです。

または、損益分岐点比率（売上高に占める損益分岐点売上高の割合）を用いて、以下の方法で求めることも可能です。

安全余裕率を求めると、売上の減少に対してどれくらいの余裕があるかを具体的な数値で確認できます。

安全余裕率を求める際に必要となる、損益分岐点比率についても解説します。

損益分岐点比率とは、実際の売上高に対して損益分岐点売上高がどの程度の割合になっているのかをみる財務分析の収益性の指標です。実際の売上高100％に対して、損益分岐点売上が何％なのかを算出するものです。

損益分岐点比率の割合は低ければ低いほど、売上高が減少しても赤字になりにくい健全な経営状態であるといえます。業種や業態、または企業規模の大小で変わりますが、損益分岐点比率は一般的には80％を下回っていれば優良であるといわれています。

損益分岐点比率の計算方法は以下のとおりです。

実際の売上高が1,000万円で損益分岐点売上高が800万円の場合、200万円が損益分岐点売上高を超えています。損益分岐点比率は以下のとおりとなります。

またこの時の安全余裕率を計算してみます。安全余裕率の計算方法は以下のとおりです。

上記の場合、安全余裕率は以下のとおりとなります。

損益分岐点比率が80％、安全余裕率は20％となります。ただし、損益分岐点比率が100％未満となるのは、実際の売上高が損益分岐点売上高を超えた黒字となった状態ですが、実際の売上高が損益分岐点売上高を下回ってしまうと100％を超えてしまいます。

実際の売上高800万円に対して損益分岐点売上高1,000万円だった場合では、実際の売上高は損益分岐点売上高に満たしていません。損益分岐点比率の計算は以下の通りです。

実際の売上高が損益分岐点売上高に満たないため、損益分岐点比率が100％を超えています。損益分岐点比率が125％となっているため、実際の売上高は25％、金額にして200万円足りません。

まずは損益をプラスマイナスゼロとするため、損益分岐点売上高まで実際の売上高を上げることが急務となります。損益分岐点比率が100％を超えているため、安全余裕率はありませんが、あえて計算してみます。

計算としてはできますが、安全余裕率は0ではなくマイナスとなってしまい、余裕があることは一切なく、持ち出しの状態だとわかります。まずは早急に実際の売上高を損益分岐点売上高まで増やすことを第一としながら、コスト削減をすることにより損益分岐点売上高を下げることも必要でしょう。

損益分岐点比率と安全余裕率をプラスすると必ず100％となります。損益分岐点比率が80％だとすると安全余裕率は20％となります。損益分岐点比率と安全余裕率の割合は合計で100％となるため、以下の計算式が成り立ちます。

もう一度先ほどの実際の売上高が1,000万円で、損益分岐点売上高が800万円の場合をみてみましょう。

損益分岐点比率は不況に対する抵抗力となり低いほど良いとされ、安全余裕率は経営の余裕の指標であり高いほど良いとされています。

安全余裕率が高いほど企業の経営は安定していると判断されますが、目安となる業種や事業規模によって異なります。一般的には、次のような数値が目安とされています。

これらをもとにすると30%以上を理想としたいところですが、まずは自社の数値や業界平均と比較し、目標値を設定することが重要です。

安全余裕率を改善する基本的なアプローチとしては、損益分岐点売上高を引き下げるか、実際の売上高を上げる必要があります。具体的な方法は以下のとおりです。

材料費や仕入原価、外注費など、売上の増減に比例して変動する費用を見直して下げる方法です。

具体的な取り組みとしては、仕入先との交渉、製造プロセスの効率化、歩留まり改善などが考えられます。変動費の絶対額だけでなく、売上高に占める割合（変動費率）を下げることが重要です。

売上高にかかわらず一定額発生する家賃、人件費、減価償却費、リース料などの固定費を削減する方法です。

具体的な取り組みとしては、毎月発生する光熱費の最適化や、業務効率化による残業代削減などが考えられます。

製品やサービスの付加価値を高め、適正な価格に見直すことも有効な手段です。ただし、価格競争力への影響も考慮する必要があります。

また、販売促進や新規顧客開拓によって売上高そのものを増加させることも、安全余裕率の向上に直接つながる方法です。

安全余裕率や損益分岐点率を把握し、自社に合った数値を目標にさまざまな取り組みを実施することが経営改善につながります。これらの数値を正しく把握するには、会計システムなどの活用によって自社の経営状況を常に可視化しておくのがおすすめです。

本記事で紹介した方法を参考に、自社の安全余裕率を見直してみましょう。

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安全余裕率の目安は業種や事業規模などによって異なりますが、一般的には、20％以上が安全と判断できる目安と言われます。

詳しくは記事内「安全余裕率の目安」をご覧ください。

安全余裕率の計算式には次の2通りの方法があります。

詳しくは記事内「安全余裕率の計算式」をご覧ください。