監修 橋爪 祐典 税理士
短期借入金とは、返済期限が決算日の翌日から1年以内に設定された借入金のことです。企業が資金調達するうえで、短期借入金は運転資金の確保に必要な手段です。
本記事では、短期借入金の概要や種類、長期借入金との違い、適正判断の指標を解説します。また、短期借入金の仕訳例もあわせて解説するので、短期借入金を検討している企業の経営者や財務・経理担当者は参考にしてください。
目次
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短期借入金とは?
短期借入金とは、金融機関などから調達した資金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済期限が到来する負債のことです。主に、企業が日常的な事業活動を維持するための運転資金として活用されます。
貸借対照表では流動負債の項目に計上され、企業の短期的な支払能力を評価する重要な指標です。製造業であれば原材料の仕入れ代金、小売業では商品の仕入資金など、業種によって利用目的は多岐にわたります。
金利は長期借入金と比較して低く設定されるケースが多く、一時的な資金需要に向いています。ただし、短期間での返済が求められるため、資金繰り計画を綿密に立てることが必要です。
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短期借入金と長期借入金の違い
短期借入金と長期借入金の主な違いは、以下のとおりです。
| 短期借入金 | 長期借入金 | |
|---|---|---|
| 返済期限 | 1年以内 | 1年超 |
| 貸借対照表の区分 | 流動負債 | 固定負債 |
| 資金使途 | 運転資金の補填など | 設備投資、事業拡大など |
| 金利 | 低め | 短期借入金より高い |
短期借入金は1年以内、長期借入金は1年を超える期間で返済する借入金です。
貸借対照表上の分類も異なり、短期借入金は流動負債、長期借入金は固定負債に区分されます。この分類により、企業の財務安定性を分析する際の見方が変わります。
また、短期借入金は日々の事業運営に必要な運転資金に充てられることが多く、長期借入金は設備投資や不動産取得など大型投資に利用されるのが一般的です。
金利水準については、短期借入金のほうが長期借入金よりも低く設定される傾向にあります。これは貸し手にとってのリスク期間が短いためです。
短期借入金の種類
短期借入金にはさまざまな調達方法が存在します。短期借入金は、次の5種類に区分できます。
- 証書貸付
- 手形貸付
- 手形割引
- 当座貸越
- ファクタリング
それぞれの調達方法の特徴を理解し、企業の資金需要や信用状況に合った手段を選びましょう。
証書貸付
証書貸付は、借入金額や返済条件を記載した金銭消費貸借契約書を取り交わす借入方法です。契約書には借入金額、金利、返済期日、担保の有無などが明記されます。
比較的まとまった金額の資金調達に適しており、企業の信用力に応じて無担保での借入も可能です。手続きは他の方法と比べてやや煩雑になりますが、資金使途の自由度が高いメリットがあります。
返済方法は満期一括返済が基本ですが、金融機関との交渉次第で分割返済も選択可能です。審査に時間がかかる場合もあるため、余裕をもった資金計画が求められます。
手形貸付
手形貸付は、借り手が金融機関に対して約束手形を振り出すことで資金調達する方法です。手形には借入金額と返済期日が記載され、期日になると借り手が手形金額を支払います。
証書貸付と比較して手続きが簡単であり、短期間での資金調達に向いています。ただし、手形の振り出しには印紙税がかかる点に注意が必要です。
借入期間は通常3〜6ヶ月程度で、運転資金の一時的な不足を補う際に活用されます。期日前の返済も可能ですが、金融機関によっては手数料が発生することもあります。
手形割引
手形割引は、企業が取引先から受け取った約束手形を期日前に金融機関に買い取ってもらう方法です。手形の額面金額から割引料(金利相当額)を差し引いた金額が入金されます。
売掛金の早期回収手段として有効であり、資金繰りの改善に役立ちます。ただし、手形の振出人が支払不能となった場合、企業が買戻義務を負うリスクがある点には注意しましょう。
割引率は手形の信用度や残存期間によって変動します。手形振出人の信用力が高いほど、有利な条件で割引を受けられます。
当座貸越
当座貸越は、金融機関と事前に契約を結び、一定の限度額内で自由に借入と返済ができる資金調達方法です。必要なときに必要な金額だけを借り入れできます。
通常の当座預金口座に貸越機能を付加する形で利用され、残高がマイナスになっても自動的に融資が実行されます。利息は実際に借り入れた金額と期間に対してのみ発生するため、コスト効率がよいでしょう。
契約時に限度額が設定されるため、突発的な資金需要にも迅速に対応可能です。ただし、契約更新時に企業の業績が悪化していると、限度額の減額や契約解除のリスクもあります。
ファクタリング
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡して資金化する方法です。厳密には借入ではなく債権の売却ですが、短期的な資金調達手段として広く利用されています。
売掛金の回収を待たずに現金化できるため、キャッシュフローの改善に効果的です。審査は売掛先の信用力が重視されるため、自社の財務状況に不安がある場合でも利用しやすいでしょう。
手数料は債権額の1〜20%程度と幅があり、売掛先の信用度や契約内容によって変動します。また、償還請求権の有無によって、リスクとコストのバランスが変わります。
短期借入金の適正範囲内であるか判断する指標
短期借入金が過剰になると、企業の財務健全性に悪影響を及ぼす可能性があります。適正水準を維持できているかを判断するためには、財務指標を用いた分析が大切です。ここでは代表的な2つの指標について解説します。
流動比率
流動比率とは、流動資産を流動負債で割って算出する指標です。短期的な支払能力を測る財務比率として広く活用されています。
計算式は、以下のとおりです。
【流動比率の計算式】
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
100%を下回ると短期的な支払能力に問題があると判断されるでしょう。ただし、業種によって適正水準は異なります。在庫回転率が高い小売業では150%程度でも問題ないケースがありますが、製造業では200%以上が望ましいとされることが少なくありません。
流動比率が低い場合は、短期借入金の削減や流動資産の増加を検討する必要があります。逆に過度に高い場合は、資産の有効活用ができていない可能性も考えられます。
当座比率
当座比率とは、より厳格に短期支払能力を評価する指標です。流動資産から在庫などの換金性が低い資産を除いた当座資産を、流動負債で割って算出します。
当座比率は次の計算式で算出され、100%以上が健全とされる目安です。
【当座比率の計算式】
当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
当座資産には、現預金や受取手形、売掛金などが含まれます。
流動比率と比較して保守的な指標であるため、より確実な支払能力を測定できます。在庫の比率が高い企業では、流動比率だけでなく、当座比率も確認することが大切です。
金融機関が融資審査を行う際にも重視される指標であり、継続的にモニタリングすることで財務体質の改善につなげられます。
短期借入金の仕訳例
ここでは、実務における短期借入金の会計処理について、具体的な仕訳例を解説します。正確な記帳は決算書の信頼性を保つうえで大切です。
借入時
企業が金融機関から100万円を短期借入した場合の仕訳は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000 | 短期借入金 | 1,000,000 |
資金が企業の口座に入金されるため、資産である普通預金が増加し、同時に負債である短期借入金も増加する取引です。現金で受け取った場合は、借方科目を現金に変更します。
手形貸付の場合は、貸方科目が手形借入金となるケースもあります。企業の会計方針によって科目名が異なることがあるため、会計処理方法を変更せずに適用する継続性の原則を順守することが大切です。
借入時に手数料が発生した場合は、支払手数料などの勘定科目で費用計上します。
返済時
100万円の短期借入金を利息1万円とともに返済した場合の仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 短期借入金 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,010,000 |
| 支払利息 | 10,000 | ||
元本の返済で負債の短期借入金が減少し、支払利息は費用として計上されます。また、普通預金からの支払いで資産が減少する取引です。
利息は支払う時点でまとめて計上するだけでなく、借入期間に応じて毎月少しずつ費用として計上することもあります。この場合、決算日時点でまだ支払っていない利息があれば、未払利息として負債に計上し、期間に対応した利息費用を正しく反映させます。
まとめ
短期借入金は企業の運転資金確保に有効な資金調達手段です。返済期限が1年以内であることを理解したうえで、証書貸付・手形貸付・手形割引・当座貸越・ファクタリングなど、目的に応じた方法を選択することが大切です。
仕訳処理では借入時に資産と負債の増加、返済時に負債と資産の減少および利息費用の計上を正確に行うことが求められます。
財務健全性を保ちながら効果的に短期借入金を活用することで、安定した事業運営が可能です。
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よくある質問
短期借入と長期借入の違いは何ですか?
短期借入は返済期限が1年以内の借入金で、運転資金に利用されます。長期借入は返済期限が1年を超え、設備投資など大型資金需要に対応する借入金です。
貸借対照表では短期借入金が流動負債、長期借入金が固定負債に分類されます。金利は短期借入のほうが低く設定される傾向があるのに対し、長期借入は短期借入よりも高く設定されています。
企業の財務戦略として、資金使途と返済能力に応じて使い分けることが大切です。
詳しくは記事内「短期借入金と長期借入金の違い」をご覧ください。
短期借入金の勘定科目は?
短期借入金の勘定科目は短期借入金で、貸借対照表の流動負債に計上されます。借入時には貸方に記入し、返済時には借方に記入します。
手形貸付の場合は手形借入金、当座貸越の場合は当座借越として別科目で管理する企業もあります。会計基準や企業の方針によって勘定科目名が異なることがあるため、継続性の原則に基づく処理が大切です。
詳しくは記事内「短期借入金の仕訳例」をご覧ください。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
