会計の基礎知識

管理会計とは?財務会計との違いや業務内容、導入メリットも解説

監修 橋爪 祐典 税理士

管理会計とは?財務会計との違いや業務内容、導入メリットも解説

管理会計とは、経営者やマネジメント層が自社の経営状況を把握し、投資・コスト削減・人員配置などの意思決定を行うための仕組みです。

財務会計が社外向けの報告を目的とするのに対し、管理会計は社内の意思決定を支えるために使われます。部門別や製品別に収益やコストを把握でき、無駄の削減や利益改善に役立てることが可能です。

本記事では、中小企業の経営者や経理・財務担当者に向けて、管理会計の基本や財務会計との違い、導入の際の注意点について解説します。

目次

使いやすくはじめやすい統合型の会計システム

freee会計は、短期での導入と運用開始が実現できる統合型の会計システムです。紙の管理や保管等の業務を一掃し、クラウドを活用したデジタル化をスムーズに実現できるので、経理業務にかかる作業時間もコストも削減できます。

管理会計とは

管理会計とは、会社の内部管理を目的に、経営者や各部門の責任者が利用する会計手法です。会社の経営状況を細かく分析し、将来に向けた迅速な経営判断に役立ちます。

具体的には、商品別の収益性を分析して販売戦略を修正したり、部門ごとのコストを明らかにして改善策を検討したりすることが挙げられます。

管理会計の目的

管理会計の目的は、経営者や管理職が迅速かつ的確な意思決定を行えるよう、社内の経営情報をわかりやすく可視化することです。

たとえば、製品別・顧客別の採算を明らかにすることで、利益の出にくい取引を見直す判断につながります。また、予算と実績の差を分析すれば、計画の修正や改善策の立案にも役立ちます。

さらに、投資計画を立てる際には、将来の資金繰りや利益予測をもとに、リスクを抑えた判断が可能です。

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会計とは?経理・財務・簿記との違いから業務効率化のポイントまで解説

管理会計と財務会計の違い

財務会計が社外向けの報告を目的とするのに対し、管理会計は社内の意思決定を支えるために使われます。そのほか、管理会計と財務会計は以下の点で異なります。


管理会計財務会計
目的経営判断外部報告
報告対象社内向け社外向け(株主や投資家、金融機関など)
準拠するルール会社独自のルールで自由度が高い形式や期間など法的制約あり

たとえば、財務会計では分からない「部門別の収益性」や「製品別のコスト構造」などを可視化できるのが管理会計の特徴です。上記の違いを理解すれば、財務会計では見えない経営に役立つ情報を管理会計で補完できます。

管理会計が必要とされるケース

管理会計は、主に次のような状況下で必要とされます。

管理会計が必要なケース

  • 事業規模が拡大して経営状況の把握が難しくなった場合
  • 経営環境が変化し、迅速な意思決定が求められる場合
  • 投資判断やコスト削減など、戦略的な意思決定が必要になった場合

部門や拠点が増えると、会社全体の業績が見えにくくなります。管理会計を導入すれば、各部門・事業の収益やコストを明確に把握できるようになり、全体の経営状況を可視化できます。

また、売上やコストの推移をリアルタイムで把握できれば、想定外の変化にも素早く対応でき、柔軟な戦略変更が可能です。

さらに、管理会計では部門・事業単位での損益管理が行えるため、費用対効果の高い活動とそうでない活動を見極め、コストの最適化にもつなげられます。

このように、管理会計は複雑化する経営環境下で、意思決定の質とスピードを高めるために有効な手段です。

管理会計の主な業務

管理会計は、多岐にわたる業務を通じて経営判断をサポートします。その中心となる業務は、以下の4つに分類されます。

経営分析

経営分析とは、財務データや非財務データをもとに、会社の経営状況を多角的に評価・把握するための手法です。データに基づいた経営課題の発見や、戦略の見直しに活用されます。

たとえば、売上高や利益率の推移を時系列で比較すれば、業績の伸び悩みの原因を特定できます。また、同業他社との数値を比較することで、自社の強み・弱みが明確になります。

さらに、部門別の業績を分析すれば、どの部門が収益に貢献しているか、どこに改善余地があるかを判断できます。

予実管理

予実管理とは、設定した予算(計画)と、実際の業績(実績)を比較・分析する管理会計の基本業務です。差異の要因を明らかにすることで、経営判断の精度を高めることができます。

たとえば、ある月の売上目標が1000万円だったのに対し、実績が800万円だった場合、予実管理ではその差を生んだ原因を探ります。販管費の不足、競合の新製品の影響など、原因を特定することで次のアクションが明確になります。

予実管理を継続的に行うことで、目標達成に向けた軌道修正がスムーズに行えます。

原価管理

原価管理とは、製品やサービスの提供にかかったコストを詳細に把握・分析し、利益の最大化や業務の効率化につなげる管理会計の業務です。

原価を適切に管理すれば、販売価格の根拠が明確になり、利益を確保しやすくなります。コストの内訳の把握は製造工程や業務プロセス上の無駄を見つけ、削減策を検討できます。

原価管理を通じてコスト構造を正しく把握することは、利益を圧迫する要因の早期発見につながり、健全で持続的な経営の実現に役立ちます。

資金繰り管理

資金繰り管理とは、会社の入出金の流れを整理し、将来的な資金不足のリスクを防ぐための業務です。日々のキャッシュフローを可視化し、安定した経営の土台を支えます。

売上が順調でも、入金が遅れると一時的に資金が不足し、仕入れや給与の支払いに支障が出るリスクがあります。こうした事態を防ぐには、毎月の資金繰り表を作成して、数ヶ月先までの残高予測をしておくことが重要です。

とくに成長過程にある企業では、設備投資や人材採用に多額の資金が必要となることもあります。借入や補助金の利用も含めてシミュレーションしておくと効果的です。

さらに、資金繰り管理を徹底している企業は、金融機関からの信頼度が高まり、融資を受けやすくなります。

管理会計を導入するメリット

管理会計を導入することで、経営の可視化を通じて成長につながる具体的なアクションが取れるようになります。

経営状態を見える化して迅速な意思決定ができる

管理会計を導入すると、売上やコスト、利益の構造が明確になり、経営状態をリアルタイムに把握できます。その結果、経営者は数字にもとづいた客観的な判断が可能です。

たとえば、管理会計システムを導入しダッシュボード上で月次の収益や費用を確認すれば、コスト増加や利益の変動要因をすぐに特定できます。

数値をもとに即座に分析・判断できる体制は、投資判断や人員配置の見直しにも役立ち、経営の安定性や競争力の強化につながります。

部門別管理で生産性の向上が期待できる

管理会計を活用すれば、部門や事業ごとの収益性を把握し、業績の見える化によって生産性向上につなげられます。

たとえば、営業部門ごとの利益率を比較すれば、成果の高いチームの手法を他部門に展開できます。生産部門では、原材料や人件費の管理を通じて、、無駄な工程の発見・改善が可能です。

部門ごとの数字を可視化することで、現場での課題発見や改善が進めやすくなり、全体の生産性や効率性の向上につながります。

正確な評価で社員の働き方の改善につながる

管理会計によって業務ごとのコストや利益貢献度を可視化できるため、売上などの定性的な目標だけでなく、社員の業務実績を客観的に評価しやすくなります。

たとえば、営業担当者ごとの売上や利益貢献を分析すれば、努力や実力に応じた評価制度の構築が可能です。数値にもとづいたフィードバックは、社員の納得感を高め、モチベーションの向上につながります。

また、評価データをもとに教育・研修を設計すれば、個々の課題に応じた育成がしやすくなり、働き方の改善やキャリア形成の支援にも役立ちます。

従業員満足度が向上すれば、離職率の低下も期待でき、組織の安定性を高める好循環が生まれるでしょう。

資金繰りを把握して安定した経営判断ができる

管理会計を活用すれば、入出金の流れを把握し、将来の資金残高を見通すことができます。資金不足のリスクを事前に察知できるため、安定した経営判断につながります。

たとえば、入金予定と支払予定を一覧化し、数ヶ月先の資金残高を試算すれば、借入や投資のタイミングを誤らずに済みます。

突発的な支出増や売上減にも柔軟に対応でき、金融機関からの信頼獲得や融資交渉にもプラスに働きます。

管理会計を導入する際の注意点

管理会計は、会社の経営判断を改善できる可能性を秘めていますが、導入には以下のような注意点があります。

時間や人的コストなど業務負担が発生する

管理会計の導入にあたっては、初期段階で時間や人的コストの負担が大きくなる可能性があります。

業務フローの見直しや必要なデータの整備、集計ルールの設計など、準備に多くの工数がかかるため、専任の担当者を配置したり、社員への周知・研修を行ったりする体制が求められます。

たとえば、導入初期には、既存データの整理やルール設計に時間がかかることがあります。負担を軽減するには、会計ソフトやシステムを活用して、集計・分析の自動化を進めることが効果的です。

高度な分析スキルや専門知識が必要

管理会計では、背景を読み解き、改善策に落とし込む分析力が求められます。

たとえば、売上が目標を下回ったとき、その要因が単価の低下か、販売数量の不足かを見極めるには、会計や統計の知識が必要です。経営層に正しく伝えるには、指標の設定や報告スキルも求められます。

こうした専門性を補うため、導入初期には外部の専門家やコンサルタントを活用し、社内にノウハウを蓄積することが効果的です。特に中小企業では、運用体制をどう構築するかを事前に計画しましょう。

Excelでの運用には限界がある

Excelは手軽に使える一方で、データ量の増加や複数人での運用には不向きです。入力ミスや計算式の誤り、ファイルの重さ、整合性の確認など、運用が煩雑になりやすくなります。

部門別管理やリアルタイムでのデータ共有が求められる管理会計では、こうした課題が業務の非効率を招く原因となります。

効率的に管理会計を運用するには、会計ソフトやERP(統合基幹業務システム)などのシステムを導入し、自動集計や分析を行える環境を整えることが有効です。

【関連記事】
経理担当者が必ず覚えておきたいエクセルテクニック

スムーズな管理会計導入のコツ

管理会計を成功させるためには、事前の準備と導入後の運用方法が重要です。

安易に導入を進めてしまうと、社員の反発を招いたり、効果が十分に発揮されなかったりする可能性があります。ここでは、スムーズに管理会計を導入するための3つのコツを紹介します。

スムーズな管理会計導入のコツ

  • 事前準備や社員への周知を行う
  • 会計ソフトやERP(統合基幹業務システム)などのシステムを活用する
  • 専門家の力を借りる

事前準備や社員への周知を行う

管理会計を導入する際は、目的や導入方針を事前に明確にし、現場の理解を得ることが重要です。

いきなり全社導入せず、まずは特定部門で試験運用し、課題を洗い出すことでスムーズに展開できます。あわせて、社内説明会やマニュアルの整備を行い、仕組みを定着させましょう。

会計ソフトやERPなどのシステムを活用する

Excelで管理会計を行うには限界があるため、会計ソフトやERP(統合基幹業務システム)などのシステムの活用が効果的です。

会計ソフトは、仕訳・帳簿作成・決算書の作成など、会計業務に特化したシステムで、中小企業でも導入しやすいのが特徴です。一方、ERPは会計だけでなく、生産・販売・在庫・人事・勤怠など、企業全体の業務を一元管理できる統合型のシステムです。


項目会計ソフトERP(統合基幹業務システム)
主な用途会計・経理業務に特化会計・販売・在庫・人事など全社業務を一元化
対応できる管理会計簡易的な部門別収支、予実管理など多部門・多拠点の収益分析、原価計算など
コスト・導入負荷比較的低コスト・短期間で導入可高コスト・設計・定着に時間がかかる
向いている企業中小企業中堅〜大企業、多拠点展開企業

これらのシステムは、自動集計やリアルタイム分析が可能になり、集計作業の負担を軽減できます。自社の業種・規模に合ったシステムを選定することで、より効率的で精度の高い経営判断が行えるようになります。

専門家の力を借りる

自社に管理会計の専門知識をもつ人材がいない企業は、税理士や公認会計士、コンサルタントなどの専門家によるサポートを活用しましょう。会社の現状を客観的に分析し、最適な管理会計の仕組みを構築するためのアドバイスを提供してくれます。また、システムの選定から導入、運用に至るまでのサポートも可能です。

専門家のサポートを得ることで、時間や人的コストを抑えながら、失敗のリスクを低減して効率的に管理会計を導入できます。

管理会計の入力・分析作業を効率化する方法

管理会計の導入を検討している企業のなかには、手作業によるデータ入力や分析に大きな負担を感じている企業もあります。
これらの作業は、統合型クラウド会計ソフトのfreee会計の活用で効率化できます。

freee会計は、日々の業務で蓄積された財務・経営データを自動で分析・集約し「経営の意思決定に必要なデータ」をリアルタイムで出力できる経営管理ツールです。経理業務の自動化を促進し、時間・コストの削減が期待できます。

さらに、freee会計の部門別管理機能を使えば、部署ごとの損益を簡単に把握でき、各部門の採算性を明確に評価できます。予実管理機能も充実しており、予算と実績を比較して目標達成に向けた課題の発見も可能です。
このように、freee会計は管理会計に必要なデータ入力から分析までの一連の作業を自動化し、経営者がより効率的に経営判断を行える環境を提供します。

まとめ

管理会計は、経営判断を迅速かつ合理的に行うための強力な仕組みです。経営分析や予実管理、原価管理、資金繰り管理などの業務を通じて、企業の収益構造を可視化し、改善につながる具体的な行動を促せます。

ただし、導入にあたっては時間・人的コストの増加や高度な分析スキルの習得、Excel運用の限界などの課題も存在します。

これらを克服するには、事前準備や社員教育を徹底するとともに、管理会計に適したシステムを活用して効率化を図ることが重要です。

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それぞれの特徴についてご紹介していきます。

AI-OCR機能で自動入力・自動仕訳

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決算業務は正しく、確実に対応できる

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  • 貸借対照表・損益計算書
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PDFやCSVファイルへの出力も可能なため、士業の方への共有や、社内での資料作成にも活用できます。また、領収書1枚・仕訳1件単位でコメント機能を使ってやりとりできるため、士業の方ともスムーズにコミュニケーションがとれます。

よくある質問

管理会計と財務会計の違いとは?

管理会計と財務会計は、目的と利用者が異なります。

財務会計は、投資家や銀行など、企業の外部にいる人に向けて、経営成績や財政状態を報告するために行われるものです。

一方、管理会計は、経営者や社内の各部門など、企業の内部の人が経営判断を行うために利用するものです。

詳しくは記事内「管理会計と財務会計の違い」をご覧ください。

管理会計を導入する際の注意点はある?

管理会計の導入には、時間や人的コストが発生する可能性があります。

また、データの分析には専門的な知識が必要となるため、社内に適切な人材がいない企業は外部の専門家や会計ソフトの活用の検討が効果的です。

詳しくは記事内「管理会計を導入する際の注意点」をご覧ください。

管理会計に役立つ資格はある?

簿記検定や公認会計士、中小企業診断士などが管理会計の知識を深めるために役立つ資格です。

簿記検定は、会社の取引を記録・集計する基本的なスキルを身につけられ、管理会計の基礎となります。公認会計士や中小企業診断士は、より高度な財務分析や経営コンサルティングのスキルを証明し、管理会計を体系的に学び、実践に活かす際に大いに役立つでしょう。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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