監修 橋爪 祐典
会計監査とは、企業が作成した財務諸表や会計処理が、会計基準や法令に沿って適正に行われているかを、第三者の立場から確認する仕組みです。融資やM&A、ガバナンス強化を目的に、上場企業だけでなく非上場企業でも会計監査の重要性は高まっています。
本記事では会計監査の基本的な役割や対象企業、実施の流れを整理したうえで、実際にチェックされる項目や必要書類、指摘を受けた場合の対応までをわかりやすく解説します。
初めて監査対応を任された人や、事前に全体像を把握したい経理担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 会計監査とは?
- 会計監査の目的
- 会計監査の実施時期
- 会計監査の対象企業
- 会計監査の種類と役割
- 内部監査
- 外部監査
- 監査役監査
- 会計監査の流れ
- 会計監査でチェックされる項目
- 財務諸表の整合性の確認
- 売掛金・買掛金の残高および突合チェック
- 現金・預金・借入金の実残高の確認
- 経理処理フローと帳簿・システム連携の確認
- 伝票・証憑類の適正性の確認
- 各勘定科目の残高・内容の妥当性の確認
- 引当金の設定根拠と計上妥当性の確認
- 固定資産の取得・償却・除却処理の確認
- 棚卸資産の実査(実地棚卸)の確認
- 会計監査に必要な書類
- 期中監査で求められる資料
- 期末監査で準備すべき資料
- 監査で提出が必要なその他の資料
- 会計監査を受ける際にするべきこと
- 必要資料を整理して漏れなく提出できる状態にしておく
- 監査人の質問には根拠を示しながら明確に回答する
- 帳簿・証憑・システムデータの整合性を事前にチェックしておく
- 会計監査で指摘事項が出た場合の対応
- 指摘内容を把握し修正点を特定する
- 関係部署と連携し必要な修正・整備を行う
- 再発防止策をまとめ運用フローに反映する
- 会計監査を受けるメリット・デメリット
- 会計監査を受けるメリット
- 会計監査を受けるデメリット
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
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会計監査とは?
会計監査とは、企業が作成した財務諸表や会計処理の内容が、ルールに沿って正しく行われているかを、第三者の立場から確認する仕組みです。
ここでは、会計監査の基本的な定義と目的について詳しく解説します。
会計監査の目的
会計監査の目的は、企業の財務諸表が正しく作成されていることを、独立した第三者の立場から証明し、会社の透明性を確保することです。
企業が自ら健全性を主張しても、客観的な裏付けがなければ、正式な証明とはいえません。そのため監査人は、会社から報酬を受けていても、顧客の視点に立ち職業的懐疑心をもって厳格に検証します。
監査は単なる法令対応や指摘の場ではなく、財務報告の信頼性を高めるための品質保証プロセスであり、企業価値やガバナンス強化につながる重要な役割を担うものです。
会計監査が行われることで、投資家・金融機関・取引先などは、公表される財務情報が信頼できるものと判断でき、信頼関係の構築につながります。また、財務情報の信頼性が担保されていなければ、融資条件の悪化や投資の見送り、取引縮小といった形で企業活動そのものにも影響するでしょう。
会計監査の実施時期
会計監査は、決算直後の短期間で終わるものではなく、1年を通じて継続して行います。
3月決算の企業であれば、まず3~4月に監査計画が立てられます。その後、四半期ごとのレビューや中間監査で、内部統制や取引内容の確認が行われるのが一般的です。
翌年1〜3月は期末準備として棚卸や残高確認を実施し、4〜5月に期末監査本番を迎えます。
繁忙期だけ意識するのではなく、夏〜秋のオフピークに先回りで対応し、監査人と連携することが、決算期の業務負担を減らすために重要です。とくに、四半期レビューや期中監査の段階で指摘された不備は、その都度解消しておくことで、翌年以降の監査手続きが簡素化され、決算期の負担軽減につながります。
会計監査の対象企業
会計監査の主な対象は、法律により会計監査の実施が義務付けられている以下の企業・法人です。
会計監査の対象企業
- 上場企業
- 大会社(会社法上の要件を満たす株式会社)
- IPO準備企業(株式上場を目指している企業)
- 一定規模以上の非営利法人(学校法人・社会福祉法人・労働組合など)
上場企業は、金融商品取引法の適用を受け、不特定多数の投資家から資金を調達する立場にあるため、厳格な会計監査と情報開示が必要です。
大会社とは最終事業年度の貸借対照表上、資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の株式会社を指し、定款に関係なく会計監査人の設置が必要な会社となります。
IPO準備企業は、上場申請に直前2期分の監査証明が必要なため、法的義務が生じる前から監査を受けるのが一般的です。
また、非営利法人でも、多額の補助金や税制優遇を受ける場合は、一定規模を超えると各法令に基づき会計監査が義務化されます。
会計監査の種類と役割
会計監査には複数の種類があり、目的や立場、確認範囲が制度上明確に分かれています。
それぞれの違いを理解しておくことで、誰がどの視点で何を確認しているのかがわかり、監査で指摘された内容の重要度を冷静に判断できます。指摘への過剰反応や見落としを防ぐためにも、監査の違いを把握しておくことが大切です。
内部監査
内部監査とは、社内の専門部署が業務プロセスや内部ルールの運用状況を確認し、不正やミス、非効率を早期に発見・改善する仕組みです。社員が主体となって行うため、組織の自浄作用として機能します。
内部監査の設置は法律上の義務ではありませんが、上場企業では実務上欠かせない役割を担っています。上場企業には、決算書の数字が正しく作られていることを社内で管理・確認する体制が求められており、その確認役となるのが内部監査です。
各部署の業務やルールの運用状況を点検し、不備やリスクを早期に見つけることで、決算の信頼性を支えています。内部監査を外部監査の予行演習として活用すれば、押印漏れや証憑不備などを決算前に是正でき、会計監査での指摘を未然に防ぐことが可能です。
内部監査は粗探しの場ではなく、監査対応の負担を減らし、会社の信頼性を高めるための重要な取り組みと捉えることが大切です。
内部監査について詳しくは、以下の記事でわかりやすく解説しています。
【関連記事】
内部監査とは?必要な企業や目的、やり方をわかりやすく解説
外部監査
外部監査とは、会社と利害関係のない公認会計士や監査法人が行う監査で、一般的に会計監査と呼ばれるものです。
財務諸表が企業会計基準に沿って適正に作成されているかを確認し、投資家や債権者などの利害関係者を保護することが目的です。会社が公表する決算数字を「第三者の視点で確認し、信頼できる情報にする」ために行われ、会社自身が信用を得て、資金調達や取引を円滑に進めるためにも欠かせません。
投資家や金融機関は、決算書をもとに投資や融資を行うか判断するため、数字に誤りや誇張があれば損失につながります。そこで利害関係のない監査人が検証することで、決算の信頼性が担保される仕組みです。
外部監査は、会社法や金融商品取引法に基づき実施され、数値の正確性だけでなく、その数値が生まれる業務プロセスや内部統制の有効性まで厳しく検証されます。
そのため担当者には説明資料に加え、承認記録や業務フロー、システムログなど客観的な監査証拠の準備が不可欠です。説明資料に加え、承認記録や業務フロー、システムログなど客観的な監査証拠の準備が必要です。
監査役監査
監査役監査とは、株主総会で選任された監査役が、取締役の職務執行が法令や定款に沿って適正に行われているかを監督する仕組みです。
業務の適正性を確認する業務監査と、計算書類の妥当性を確認する会計監査の両面を担います。
監査役自身が帳簿を詳細にチェックするわけではなく、監査法人による外部監査の方法や、結果が妥当かを検証するのが主な役割です。また、監査役は会計監査人の選任や報酬への同意権を持ち、外部監査人と密接に連携しています。
経理担当者は、外部監査への対応状況が監査役にも共有されることを意識し、三者間の円滑なコミュニケーションを心がけることが重要です。
監査役については、以下の記事をまとめているので参考にしてください。
【関連記事】
監査役とはどんな役員?役割や必要な資格・要件、設置義務、IPOを目指す場合の対応などを解説
会計監査の流れ
会計監査の流れを把握しておくことで、「いつ・何を準備すべきか」が明確になり、監査対応の手戻りや突発的なトラブルを防げます。
会計監査は、1年を通じて段階的に進められます。全体的な流れは以下のとおりです。
会計監査の流れ
- 予備調査・監査計画を行う
- 中間監査(期中監査)を実施する
- 期末監査(本番)を行う
まず、予備調査・監査計画では、事業内容や前期の指摘事項を踏まえてリスクの高い取引を特定し、年間の監査方針を定めます。
次に、中間監査では内部統制や主要取引の運用状況を確認し、不備があれば期末前に是正します。最後に、期末監査で財務諸表や残高を検証し、監査報告書を作成するのが一般的な流れです。
余裕をもって対応することが、決算期に集中しがちな経理・管理部門の監査対応の負担を抑える重要なポイントです。とくに新規取引や会計処理の変更がある場合は、早めに監査法人へ相談しておくことで、期末の手戻りや追加資料対応を防げるでしょう。
会計監査でチェックされる項目
会計監査でチェックされる項目を事前に把握しておくことで、準備する書類や指摘されやすい点が明確になり、監査対応の手戻りや無駄な確認作業を減らせます。
また、あらかじめチェック項目を理解しておけば、決算期の負担軽減だけでなく、日常業務の精度向上や指摘リスクの低下にもつながります。
会計監査でチェックされる項目は、以下のとおりです。
会計監査でチェックされる項目
- 財務諸表の整合性の確認
- 売掛金・買掛金の残高および突合チェック
- 現金・預金・借入金の実残高の確認
- 経理処理フローと帳簿・システム連携の確認
- 伝票・証憑類の適正性の確認
- 各勘定科目の残高・内容の妥当性の確認
- 引当金の設定根拠と計上妥当性の確認
- 固定資産の取得・償却・除却処理の確認
- 棚卸資産の実査(実地棚卸)の確認
財務諸表の整合性の確認
財務諸表の整合性の確認とは、貸借対照表や損益計算書の数値が、元となる会計帳簿と完全に一致しているかを確かめる作業です。ここで1円でもズレがあると、以降の監査手続きの前提が崩れるため、監査人は最初に厳しく確認します。
具体的には、以下の2点を検証します。
財務諸表の整合性の確認
- 会計システムから出力した試算表と決算書の数値が正しく連動しているか
- 注記情報の記載内容に根拠があるか
円滑な監査対応のためには、決算修正仕訳を反映した最終試算表と決算書を必ず突き合わせし、修正漏れやシステム連携ミスを事前に防ぐことが大切です。
財務諸表の目的や分析方法などは、以下の記事でわかりやすく解説しています。
【関連記事】
財務諸表とは?作成する目的や読み方、分析方法をわかりやすく解説
売掛金・買掛金の残高および突合チェック
売掛金・買掛金の突合チェックでは、決算書に計上された債権・債務が実在し、正しい金額・正しい会計期間で計上されているかを確認します。
売上や利益に直結し、不正や誤りが生じやすいため、監査では重点的に確認される項目です。
具体的には、帳簿残高と取引先別内訳の一致を確認するとともに、取引先へ残高確認状を送付し、実在性を検証します。あわせて期末前後の取引について、計上時期のズレがないかも確認されます。差異が出た場合に備え、原因を整理した差異調整表を事前に準備しておくことが重要です。
売掛金について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】
売掛金とは?買掛金・未収入金との違いや仕訳例を解説
現金・預金・借入金の実残高の確認
現金・預金・借入金の実残高の確認では、帳簿上の残高が実際に存在しているかを検証します。
流動性が高く不正リスクも大きいため、監査人は銀行確認状を用いて、預金・借入金残高や担保提供の有無を金融機関から直接確認します。回答書は信頼性の高い外部証拠として扱われ、残高ゼロの口座を含め全取引銀行が対象です。
また、小口現金や受取手形については現金実査が行われ、現物と帳簿残高の一致が求められます。事前に金庫内を整理し、不明金や私物の混入などを防ぐことが重要です。
経理処理フローと帳簿・システム連携の確認
経理処理フローと帳簿・システム連携の確認では、数値そのものだけでなく、取引発生から記帳までの業務プロセスと会計システムの信頼性が検証されます。
監査人はウォークスルー手続きを通じて、承認や入力がマニュアルどおり行われているかを確認します。あわせて、退職者IDの削除状況や権限分掌など、IT全般統制(ITGC)も重要なチェック対象です。
マニュアルと実務に乖離がないか、アクセス権限が適切に管理されているかを事前に点検し、必要に応じてシステム部門と連携して整備しておきましょう。
伝票・証憑類の適正性の確認
伝票・証憑類の確認では、計上された仕訳が実在する取引に基づくものかを検証します。
これは、不正や誤った計上を防ぎ、財務諸表の信頼性を確保するために不可欠な作業です。監査人は口頭説明ではなく、発注書・検収書・請求書などの客観的な証憑を突き合わせ、取引内容の妥当性を確認します。
とくに購買や経費処理では、品目・数量・金額が一致しているかを確認する三点照合が基本です。あわせて、発注日・納品日・請求日の時系列や承認手続きの有無もチェックされます。
証憑に不足・不備があると、仕訳の信頼性自体が否定されるため、日頃から整理・保管し、提出前に形式面も含めて確認しておくことが重要です。
各勘定科目の残高・内容の妥当性の確認
各勘定科目の残高・内容の妥当性の確認では、個別伝票を見る前段階として、財務諸表全体の数字の動きに不自然な点がないかを確認します。
誤計上やリスクの兆候を効率的に見つけ、重点的に確認すべき科目を特定することが目的です。
監査人は、前期比で大きく増減した勘定科目や、売掛金回転期間などの指標を分析し、事業内容と整合しているかを確認します。たとえば、経費が急増していれば計上漏れや一時費用の有無を、売掛金の回収期間が長期化していれば貸倒リスクの有無を検証します。
担当者は、主要科目の変動理由を事前に整理し、業績や施策と結びつけて説明できるよう準備しておくことで、監査対応を円滑に進められるでしょう。
引当金の設定根拠と計上妥当性の確認
引当金の確認では、将来の支出や損失を見積もる前提が合理的か重点的にチェックされます。
賞与引当金や貸倒引当金は見積もり要素が強く、恣意的に利益調整ができてしまうためです。
たとえば、賞与引当金では次のような点が確認されます。
賞与引当金の確認方法
- 支給対象期間の区分の適切性
- 算定方法と社内規定
- 過去実績との整合性
一方、貸倒引当金では次のような点が確認されます。
貸倒引当金の確認方法
- 直近の回収状況
- 取引先の信用状態を踏まえた引当率設定の妥当性
引当金は将来の支出や損失を見積もって計上するため、毎年同じ計算方法を機械的に使えばよいわけではありません。監査では、前提・算定方法を採用した理由や、反映した今期の業績や取引先の状況などが重視されます。
そのため、前年と同じ計算方法をそのまま使うのではなく、事業環境や回収状況の変化を踏まえて見積もりを見直し、その判断理由を文書で説明できるよう準備しておくことが重要です。
固定資産の取得・償却・除却処理の確認
固定資産の取得・償却・除却処理の確認では、資産が実際に存在しているかと、帳簿に計上された金額が適正かの2点が主なチェック項目です。
まず、固定資産台帳と現物を照合し、すでに廃棄・売却した資産が帳簿上に残っていないかをチェックします。収益性が低下した店舗や使用されていない遊休資産については、実態に合わない過大な資産計上が財務諸表の信頼性を損なうおそれがあるため、資産価値を引き下げる必要がないかチェックされます。
また、完成後も建設仮勘定のまま放置されている資産がないかの確認も重要です。本勘定へ振り替えられていないと、減価償却費が計上されず、利益が実態より大きく見えてしまいます。
棚卸資産の実査(実地棚卸)の確認
棚卸資産の実査では、帳簿上の在庫数量と現物が一致しているかが重点的に確認される項目です。
在庫は利益に直結し不正リスクも高いため、期末の実地棚卸に監査人が立ち会い、数量が正確か検証します。
また、長期滞留品や破損・陳腐化在庫の有無を確認し、評価損を計上すべきかも判断されます。とくに工場や倉庫で在庫を保管している企業は、整理整頓が不十分だと管理体制への不信につながるでしょう。
そのため、棚卸前に在庫を整理し、誰でも確認しやすい状態を整えることが重要です。
棚卸しの目的や評価方法などは、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
棚卸しとは?目的や評価方法、棚卸資産と在庫との違い、使用する勘定科目、回転期間、評価方法などを解説
会計監査に必要な書類
会計監査を円滑に進めるためには、事前に「どのタイミングで、どの資料が必要になるのか」を把握しておくことが重要です。
必要書類を理解していれば、直前の資料探しや差し戻しを防ぎ、監査対応の負担を軽減できます。ここでは、監査のフェーズごとに求められる主な書類を、以下3つの項目別に整理して紹介します。
会計監査に必要な書類
- 期中監査で求められる資料
- 期末監査で準備すべき資料
- 監査で提出が必要なその他の資料
期中監査で求められる資料
期中監査(主に8月〜11月)では、日々の業務に組み込まれた内部統制が、実際に機能しているかが重点的に確認されます。
中心となる必要資料は、業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリクスの内部統制3点セットです。これらは、現場の運用と内容が一致しているか、承認権限やシステム設定が最新かを厳しくチェックされます。
さらに、統制が正しく運用されている証拠として、売上や購買取引のサンプリング資料(注文書・納品書・請求書の突合、承認履歴など)の提出も求められます。
期中監査で不備が見つかると期末監査の負担が増えるため、事前に各部署へ確認し、マニュアルや資料を更新しておくことが重要です。
期末監査で準備すべき資料
期末監査(主に4月〜5月)では、決算数値の正確性と妥当性を裏付ける資料が重点的に求められます。
必須資料となるのは、全勘定科目の残高と内訳を示す勘定科目内訳明細書です。
また、監査の内容やリスク判断に応じて、以下のような資料の追加提出を求められることもあります。
期末監査で準備すべき資料
- 残高確認書(銀行・主要取引先):外部から取得した証拠として残高の実在性を確認
- 実地棚卸結果・在庫差異資料:在庫の実在性や数量・評価が適正かを確認
- 引当金・減損の算定資料:見積もりの前提条件や計算根拠の合理性を検証
これらは必ず求められるものではありませんが、事前に準備しておくと監査対応がスムーズになります。
期末監査を円滑に進めるには、計算結果だけでなく、前提条件や判断プロセスまで文書化して示して、追加質問や修正指示を防ぐのがポイントです。
監査で提出が必要なその他の資料
監査では、財務数値の裏付け資料以外にも、企業の存続可能性や潜在的なリスクを評価するための資料の提出が求められます。
たとえば、将来の収支見通しを示す事業計画書や予算書は、減損会計や繰延税金資産の回収可能性判断に不可欠です。赤字が続く企業では、継続企業の前提について計画の実現性が厳しく確認されます。
また、以下のような書類も必要です。
監査で提出が必要なその他の資料
- 訴訟や偶発債務を確認する弁護士確認状
- 税務リスクを把握する法人税申告書(案)
- 経営者確認書への署名 など
これらの資料は経理部門だけで完結しないため、経営企画や法務部門と早期に連携して準備を進めることが重要です。
会計監査を受ける際にするべきこと
会計監査を受ける際にするべきことは、主に以下の3つです。
会計監査を受ける際にするべきこと
- 必要資料を整理して漏れなく提出できる状態にしておく
- 監査人の質問には根拠を示しながら明確に回答する
- 帳簿・証憑・システムデータの整合性を事前にチェックしておく
必要資料を整理して漏れなく提出できる状態にしておく
監査対応を円滑に進めるには、必要資料を事前に整理し、すぐ提出できる状態を整えておくことが大切です。
監査では、事前に共有されるPBCリスト(監査法人から提示される資料依頼リスト)に沿って、期限内に正確な資料の提出が求められます。
準備不足のまま監査当日を迎えると、提出遅延や資料不備が発生し、監査人から管理体制を疑われる原因になります。そのため、監査開始前に勘定科目別のフォルダ構成を整え、ファイル名も内容がわかる形式で統一するのが有効です。
紙資料はPDF化し検索可能にすることで、資料探しの手間を削減できます。即座に提出できる環境づくりが、監査対応の効率化と残業削減につながるでしょう。
監査人の質問には根拠を示しながら明確に回答する
監査人の質問には、結論と客観的な根拠をセットで明確に回答することが大切です。
監査中の質問対応の仕方は、監査の進行速度や印象に影響します。監査人は職業的懐疑心を持っており、記憶や主観に基づく説明は監査証拠として認められません。
そのため、結論→理由→数値や資料といった形で、文書化された根拠を添えて回答する必要があります。たとえば売上増加の理由を問われれば、口頭説明だけでなく、企画書やデータなど検証可能な資料を提示しましょう。
第三者が確認できる根拠を示す姿勢が、監査人からの信頼獲得と円滑な監査対応につながります。
帳簿・証憑・システムデータの整合性を事前にチェックしておく
会計監査に関する資料を提出する前に、帳簿・証憑・システムデータの整合性をチェックすることが重要です。事前に確認することで、日付や金額の不一致、承認漏れなどの初歩的なミスを防げます。
事前チェックで防げるような不備が多いと、内部統制そのものを疑われ、監査範囲の拡大や追加テストを招きます。具体的には、発注書・納品書・請求書の三点一致や、販売管理システムと会計システムの数値突合を徹底することが重要です。
整合性の確認は、監査人の役割ではなく経理部門の責務です。事前確認を徹底することで、不要な指摘を防ぎ、監査を効率的に進められるでしょう。
会計監査で指摘事項が出た場合の対応
会計監査をスムーズに進めるには、監査開始後に慌てて対応するのではなく、事前準備が重要です。準備を十分に行っておくことで、対応工数の増大や指摘事項が発生するリスクを軽減できます。
ここでは、会計監査を受ける前に必ず押さえておきたい、以下3つの基本的な対応ポイントを整理します。
会計監査で指摘事項が出た場合の対応
- 指摘内容を把握し修正点を特定する
- 関係部署と連携し必要な修正・整備を行う
- 再発防止策をまとめ運用フローに反映する
指摘内容を把握し修正点を特定する
まずは、指摘事項が今すぐ修正が必要なミスなのか、今後の運用改善の提案なのかを整理しましょう。
監査で見つかった事項がすべて修正対象になるわけではなく、重要度が低い場合は、未修正として扱われることもあります。
ただし、計算ミスや入力漏れなどの事実関係が明確な誤りは、速やかに修正しましょう。
一方、引当金の金額など見積もりや判断が関わる事項については、会計基準に基づく考え方や前提条件を整理し、根拠資料を用いて監査人とすり合わせを行います。
指摘に対して感情的に対応するのではなく、冷静に判断し、今やるべきことを把握することが大切です。
関係部署と連携し必要な修正・整備を行う
会計監査で指摘が出た場合、経理だけで完結しない内容については、関係部署と連携して対応しましょう。経理処理だけを修正しても、実態との不整合が残っていれば、翌期以降も同様の指摘を受ける可能性が高まります。
たとえば、在庫差異が確認された場合は、物流部門に実数の再確認を依頼し、数値の根拠を明確にすることが必要です。また、承認漏れが判明した場合には、該当部署に事実確認や理由の整理を依頼し、監査人に説明できる状態を整えなくてはなりません。
こうした対応は、監査対応のためだけでなく、会社としての説明責任を果たすためのものです。対応の意図を共有することで、関係部署の協力も得やすくなるでしょう。経理は、監査人と各部門をつなぐ調整役として、全体を整理する重要な役割であるといえます。
再発防止策をまとめ運用フローに反映する
指摘事項は修正して終わりではなく、ミスの原因を分析し、再発防止策をまとめ運用フローに反映することが重要です。同じ指摘が繰り返されると、監査人からの統制評価が下がり、監査手続きの増加や監査報酬の上昇につながるおそれがあります。
一方で、改善状況が確認できれば、監査人の信頼を得やすくなり、監査対応の効率化も期待できます。具体的な対策としては、業務マニュアルへのチェック工程追加や入力漏れを防ぐシステム設定、社内研修での注意点共有などが有効です。
指摘事項に対する具体的な再発防止策の実行は、企業全体の経理業務の品質とガバナンスを高める好機にもなるでしょう。
会計監査を受けるメリット・デメリット
会計監査には、企業の信頼性向上や資金調達の円滑化といったメリットがある一方で、監査報酬や業務負担の増加といったデメリットも存在します。
自社にとって会計監査が本当に必要かを判断するには、メリットとデメリットを把握することが重要です。ここでは、会計監査のメリット・デメリットをそれぞれ詳しく解説します。
会計監査を受けるメリット
会計監査を受ける最大のメリットは、財務情報の信頼性が客観的に証明され、資金調達や重要な取引が進めやすくなる点です。
会計監査により、独立した第三者である公認会計士や監査法人から適正意見を得ることで、「この会社の数字は信頼できる」という評価を外部から得られます。これにより、銀行融資や投資家からの出資、IPOなどの資金調達が円滑になります。
また、大手企業や新規取引先に対しても、会計監査を受けていること自体が信用力の裏付けとなり、取引判断のハードルを下げる効果があるのも魅力です。さらに、監査を通じて管理上の課題が可視化されるため、不正リスクの低減や社内体制の強化にもつながるでしょう。
会計監査を受けるデメリット
会計監査の最大のデメリットは、短期的なコストと負担が増えることです。
監査報酬に加え、決算期には資料作成や監査対応が集中し、経理担当者を中心に業務負荷が増加します。
具体的には、企業規模やリスクに応じた監査報酬が毎年発生し、通常業務に加えて追加資料の作成や質問対応が求められます。資料不備があると再対応が必要となり、残業や調整業務が増える要因にもなるでしょう。
また、外部の専門家から継続的に指摘を受けることで、精神的なプレッシャーを感じるケースも少なくありません。ただし、監査スケジュールを見据えた事前準備や監査人との継続的なコミュニケーションを行えば、これらの負担は軽減できます。
まとめ
会計監査は、単なる形式的なチェックではなく、企業の財務情報の信頼性を高め、経営判断や対外的な信用を支える重要な仕組みです。
監査で確認される項目や必要書類、対応の流れを事前に理解しておくことで、監査対応の負担を軽減できます。
また、指摘事項への対応や再発防止策は、経理業務や内部統制を見直すいい機会にもなります。会計監査をコストではなく、企業価値を高めるプロセスと捉え、継続的な業務改善につなげていきましょう。
経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
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よくある質問
会計監査は何のために行われるのですか?
会計監査の目的は、企業の決算書が正しく作成されていることを第三者が確認し、社会的な信頼を確保することです。公認会計士や監査法人が独立した立場でチェックすることで、第三者から信頼される財務情報を整えることが可能です。
監査報告書で適正意見が示されることで、投資や融資が円滑に行われます。会計監査は法令対応のためだけでなく、企業の信用力を高め、経済活動を支える重要な仕組みです。
会計監査の目的は、記事内「会計監査の目的」でも解説しています。
会計監査では何を確認されますか?
会計監査では、主に以下の2点が確認されます。
- 決算書の数値が正しいか
- その数値を生み出す業務プロセスが適切に機能しているか
数値が合っていても、承認体制やシステム管理が不十分であれば信頼性は認められません。
監査人はリスクの高い領域を中心に、資産が実在するか(実在性)、計上漏れがないか(網羅性)、評価が妥当か(妥当性)を検証します。帳簿の数字と、現場の事実が一致しているかが重要です。
上記を確認するためには、さまざまな項目をチェックする必要があります。会計監査でチェックされる項目は「会計監査でチェックされる項目」でそれぞれ詳しく解説しています。
会計監査で必要な書類は何ですか?
会計監査で必要な書類は、主に証憑類と内部統制資料の2種類です。提出物は、監査法人から提示される資料依頼リストに基づきます。
証憑類には、請求書・領収書・契約書・預金通帳の写し・残高確認状などが含まれ、数値の正確性の裏付けが不可欠です。
一方、内部統制資料としては、業務記述書・フローチャート・稟議書・取締役会議事録などが求められます。口頭説明だけでは不十分で、第三者が検証できる文書での裏付けが必要です。
会計監査の必要書類については、記事内「必要資料を整理して漏れなく提出できる状態にしておく」を参考にしてください。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
