会計の基礎知識

未成工事受入金とは?前受金との違いや仕訳方法をわかりやすく解説

監修 橋爪 祐典 税理士

未成工事受入金とは?前受金との違いや仕訳方法をわかりやすく解説

未成工事受入金とは、工事が完成する前に受け取った代金を一時的に管理するための勘定科目です。建設工事では、着手金や中間金など、完成前に入金が発生することが多く、これらを売上とは区別して処理する必要があります。

未成工事受入金として処理することで、工事が完了していない段階で売上を計上してしまうミスを防ぎ、決算書上の利益や負債の状態を実態に近づけることが可能です。

本記事では、未成工事受入金の基本的な意味や前受金との違い、消費税の取り扱い方までを整理します。初めて建設業会計に関わる人でも判断に迷わないよう、実務での考え方をわかりやすく解説します。

目次

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未成工事受入金とは

未成工事受入金とは、工事が完了していない段階で受け取った代金を管理するための勘定科目です。

建設業では、工事の完成までに一定の期間を要するため、着手金や中間金として代金の一部を先に受け取る取り引きが多く存在します。しかし、この時点では工事が完了しておらず、会計上の売上としては扱えません。

そのため、受け取った金額は「未成工事受入金」として一時的に負債に計上し、工事が完成したタイミングで売上に振り替えます。未成工事受入金を正しく理解することで、売上計上の時期を誤るリスクを防ぎ、決算や税務処理のズレを回避しやすくなります。

未成工事受入金は建設業会計上の前受金

未成工事受入金は、建設業特有の前受金といえます。前受金とは、商品やサービスを提供する前に受け取った代金のことです。

建設業では工事期間が数ヶ月から数年に及ぶことが多く、着手金や中間金として先に代金の一部を受け取る商慣習があります。受け取った代金は、工事が完成するまで「まだ提供していないサービスに対する預かり金」といった性質をもつため、貸借対照表では負債の部に計上されます。

建設業法に基づく建設業会計では、この勘定科目を使用することで工事の進捗状況と財務状態の適切な表示が可能です。実務では工事台帳と照合しながら、各工事ごとに未成工事受入金の残高の管理が求められます。

【関連記事】
建設業会計とは?独自の会計基準や勘定科目、仕訳方法を解説

未成工事受入金と前受金の違い

未成工事受入金と前受金は、どちらも「商品やサービスを提供する前に受け取った代金」という点では共通していますが、適用される業種と会計基準に違いがあります。

前受金は、小売業やサービス業など一般的な業種で使用される勘定科目です。一方、未成工事受入金は建設業法に基づく建設業会計で使用される専門的な勘定科目です。

建設工事は完成までに長期間を要し、着手金・中間金・完成金と複数回に分けて代金を受け取るケースが多いため、工事の進捗管理と紐づけた会計処理が欠かせません。

また、工事進行基準を採用する場合は、工事の進捗度合いに応じて未成工事受入金を部分的に売上に振り替える処理も発生します。建設業として決算書を提出する際には、未成工事受入金を用いることで業界の会計慣行に沿った表示となります。

未成工事受入金にかかる消費税の取り扱い方

未成工事受入金に関する消費税は、売上計上のタイミングに応じて課税関係が決まる仕組みです。原則として、完成前に受け取った未成工事受入金は、その時点では課税売上に該当しません。

ただし、工事完成基準を採用するか工事進行基準を採用するかによって異なります。


  • 工事完成基準を採用している場合:工事が完成して売上を計上する時点で課税売上として消費税を計上
  • 工事進行基準を採用している場合:工事の進捗度合いに応じて部分的に売上を計上するため、その都度消費税も按分して計上

消費税の扱いは採用している会計基準によって異なるため、契約内容や入金状況を確認しながら処理する必要があります。判断に迷う場合は、国税庁の見解や税理士の確認を踏まえて処理すると、税務上のリスクを抑えやすくなります。

未成工事受入金の仕訳方法

未成工事受入金の仕訳は、どの会計基準で工事収益を計上するかによって処理が変わります。建設業では主に「工事完成基準」と「工事進行基準」の2つが用いられ、同じ入金であっても売上に振り替えるタイミングが異なります。

基準を誤ると売上や負債の計上時期がずれ、決算書の内容に影響が出るため、慎重な作業が必要です。ここでは、それぞれの基準における仕訳の考え方を整理します。

工事完成基準の仕訳例

工事完成基準では、工事が完成して引き渡しが完了した時点で初めて売上を計上する方法です。工事期間中に受け取った着手金や中間金は、すべて未成工事受入金として負債に計上し、完成時に一括して売上に振り替えます。

【前提条件】※工事の収益認識は工事完成基準


  • 総工事金額:1,100万円(税込)
  • 着手金:330万円
  • 中間金:440万円
  • 完成時残金:330万円

【着手時】

  
借方貸方
現預金3,300,000円未成工事受入金3,300,000円

【中間金受領時】

  
借方貸方
現預金4,400,000円未成工事受入金4,400,000円

【完成時】

  
借方貸方
完成工事未収入金3,300,000円完成工事高10,000,000円
未成工事受入金7,700,000円仮受消費税1,000,000円

完成基準は判断が比較的シンプルで、小規模工事や短期案件での採用が多い方法です。

工事進行基準の仕訳例

工事進行基準は、工事の進捗度合いに応じて段階的に売上を計上する方法です。工期が1年以上に及ぶ工事や、請負金額が大きい案件で採用されるケースが多く見られます。進捗率は、実際にかかった工事原価を見積総原価で割って算出するのが一般的です。

【前提条件】※工事の収益認識は工事進行基準


  • 総工事金額:1,100万円(税込)
  • 着手金:330万円
  • 中間金:440万円
  • 決算時の工事進捗度:70%

【着手時】

  
借方貸方
現預金3,300,000円未成工事受入金3,300,000円

【中間金受領時】

  
借方貸方
現預金4,400,000円未成工事受入金4,400,000円

【決算時】
決算時の完成工事高は、税抜きの請負金額に工事進行度を掛けて求めます。今回の例では、10,000,000円の70%は7,000,000円となり、初年度の完成工事高は700万円です。消費税は、各年度の完成工事高を計上するタイミングで計上します。

  
借方貸方
未成工事受入金7,700,000円完成工事高7,000,000円
仮受消費税700,000円

進行基準は計算が複雑になるため、契約書や工事台帳と連動した管理が必要です。

【関連記事】
工事進行基準とは?収益認識基準との関係や廃止後の適用基準について解説

仕訳の際に負債に分けられる理由

未成工事受入金が負債として計上される理由は、受け取った代金に対してまだ工事を完成させる義務が残っているためです。会計上は、この責任を貸借対照表に正しく示す必要があり、資産や売上ではなく負債に分類されます。

建設業の場合、契約時や工事途中で代金を受け取っても、実際に工事を完成させて引き渡すまでは収益として認識できません。もし完成前に売上として計上すると、利益が実態より多く見え、税務や金融機関の評価に影響する可能性があります。未成工事受入金として処理することで、工事の進行状況と財務内容を一致させられます。

未成工事支出金とは

未成工事支出金とは、工事が完成する前に発生した費用を、一時的に資産として管理するための勘定科目です。

建設工事では、材料費・労務費・外注費などの支出が工事期間中に継続的に発生しますが、工事が終わるまでは最終的な原価が確定しません。

そこで、完成前にかかった費用はその都度「未成工事支出金」として資産に計上し、工事が完成した時点で工事原価へ振り替えます。この処理により、工事途中で費用だけを先に計上してしまうことを防ぎ、損益を実態に近い形での表示が可能です。

決算においては、未成工事支出金のうち完成したものは工事原価に振り替えられて損益計算書に、次期へ繰り越すものは貸借対照表の資産の部に計上されます。

未成工事受入金が「受け取ったお金」を管理する勘定科目であるのに対し、未成工事支出金は「支払った費用」を管理する点が大きな違いです。

未成工事受入金の仕訳における注意点

未成工事受入金の仕訳では、実際の工事内容と会計処理が一致しているかの確認が重要です。入金があったからといって形式的に処理すると、売上計上の時期がずれ、決算書の信頼性が下がる原因になります。

正確な会計処理を行うためには、以下の2点に注意する必要があります。


  • ケースに応じた会計基準を理解しておく
  • 契約書や工事台帳と突合しながら管理する

これらを押さえておくことで、決算や税務調査の場面でも説明しやすい会計処理につながります。

ケースに応じた会計基準を理解しておく

会計基準とは、工事収益をいつ売上として計上するかを決めるルールです。建設業では主に、工事完成基準と工事進行基準のいずれかを採用します。

工事期間が1年未満で請負金額が比較的小規模な案件では工事完成基準を、工事期間が1年以上にわたる大型案件では工事進行基準を採用するケースが多くなるのが一般的です。

工事完成基準では、完成時まで未成工事受入金として処理し、工事進行基準では進捗に応じて一部を売上に振り替えます。

この違いを理解せずに処理すると、売上や利益が過大・過少に表示されるおそれがあります。会計ソフトの設定も含め、自社が採用している基準を明確にしておくことが、仕訳ミスを防ぐ有効な手段です。

契約書や工事台帳と突合しながら管理する

未成工事受入金を正しく管理するには、会計データと契約書・工事台帳を突き合わせる作業が欠かせません。とくに複数の工事を同時に進めている場合、工事ごとの入金状況を把握していないと、どの工事の未成工事受入金なのかわからなくなるリスクがあります。

決算時には契約書・請求書・入金記録・工事台帳を揃え、未成工事受入金の残高が実態と一致しているか最終確認が必要です。丁寧に整理しておくことで、税務調査や金融機関からの確認時にも説明しやすくなります。

まとめ

未成工事受入金とは、工事が完成する前に受け取った代金を、売上とは分けて一時的に管理するための勘定科目です。前受金と似ていますが、建設業特有の長期工事や複数回の入金に対応するため、業界特有の会計処理が設けられています。

適切に処理するには、工事完成基準・工事進行基準の違いを理解し、未成工事支出金とあわせて工事全体の収支を把握する視点が必要です。

とくに実務では、契約内容・工事の進捗・会計データを一致させて管理できているかが判断の分かれ目になります。

こうした管理負担を軽減する手段として、「freee会計」のようなクラウド会計ソフトを活用する方法も有効です。工事ごとの入金・支出を紐づけて管理しやすく、仕訳の自動化や履歴確認もしやすいため、入力ミスや計上漏れを防ぐ仕組みを整えやすくなります。

未成工事受入金の考え方を正しく理解したうえでツールも併用することで、決算や税務対応を落ち着いて進めやすくなります。

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よくある質問

未成工事受入金と前受金の違いは何ですか?

未成工事受入金は、建設業に特化した前受金です。

前受金とは、商品やサービスを提供する前に受け取った代金を指す一般的な勘定科目で、業種を問わず使われます。一方、未成工事受入金は、工事契約に基づき、工事が完成する前に受け取った着手金や中間金を管理するための科目です。

建設業では工期が長く、入金と完成のタイミングがずれることが多いため、売上と区別して管理する必要があります。

詳しくは記事内の「未成工事受入金と前受金の違い」をご覧ください。

未成工事受入金はなぜ負債になるのですか?

未成工事受入金が負債に分類される理由は、工事が未完成の段階では、まだ仕事を果たしていない状態と考えられるためです。

会計上、受け取ったお金が売上になるのは、サービスや工事が完了したあとです。工事途中で受け取った代金は、将来工事を完成させるまでは、返す必要のあるお金と判断されます。

そのため、貸借対照表では「負債」として表示され、完成時に売上へ振り替えられます。

詳しくは記事内の「仕訳の際に負債に分けられる理由」をご覧ください。

未成工事受入金は買掛金とは違いますか?

未成工事受入金とは、顧客から先に受け取ったお金を管理する勘定科目であり、買掛金とは性質が異なります。

買掛金は、材料費や外注費など、すでに発生しているものの、まだ支払っていない費用を表す勘定科目です。

どちらも負債に分類されますが、「お金を先にもらっているか」「後から支払うか」という点で異なります。仕訳を誤ると資金状況の見え方が大きく変わるため、入金か支払いかを基準に区別すると判断しやすくなります。

監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)

2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。

監修者 橋爪 祐典

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