会計の基礎知識

少額減価償却資産の特例とは?対象の資産・法人、仕訳などについて解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

少額減価償却資産の特例とは?対象の資産・法人、仕訳などについて解説

「少額減価償却資産の特例(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)」は、中小企業者等が資産を取得した場合に活用できるもので、節税のための有効な手段です。

本記事では、「少額減価償却資産の特例」とは何か、適用条件や注意点、具体的な節税方法や会計仕訳について解説します。法改正による変更点なども説明していますので参考にしてください。

目次

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「少額減価償却資産の特例」とは

「少額減価償却資産の特例」は正式な名称を「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といい、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合に、その取得価額全額を即時で損金算入できる制度です。

これまで税制改正で複数回延長されており、今後の改正でまた延長される可能性もありますが、少額減価償却資産の特例が適用されるのは、2026年3月31日まで(2025年度末まで)に取得した減価償却資産のみと定められています。

通常の減価償却との違い

そもそも、少額減価償却資産の特例が適用されない通常の減価償却資産がどのように扱われるか説明します。

たとえば、取得価額が10万円以上の固定資産を購入した場合は、耐用年数(その資産の使用可能年数)に応じて、毎年費用を計上する減価償却の処理が必要になります。減価償却の処理を行う場合、耐用年数に応じて段階的に費用が計上されるため、資産を取得したタイミングで費用を全額損金算入することはできません。

少額減価償却資産の特例を利用すると、固定資産を購入した年に全額を費用計上できるため、減価償却を行う通常の処理よりも固定資産を取得した年の課税所得を圧縮でき、節税につなげることができます。

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「少額減価償却資産の特例」の適用要件

「少額減価償却資産の特例」が適用される資産・法人について、具体的に解説します。

適用される資産

前述のとおり、少額減価償却資産の特例の対象となる資産は、取得価額30万円未満の減価償却資産です。ただし、2022年度の法改正では、リース事業者などが主な事業のために所有する場合を除き、貸付けのために供した資産は少額減価償却資産の特例から除外されることになっています。

なお、一事業年度内に少額減価償却資産の特例が適用されるのは、資産の取得価額の合計300万円までと上限が定められています。

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リース資産とは?メリット・デメリットや会計処理上の仕訳などを解説

適用される法人

少額減価償却資産の特例は主に中小企業に適用されるものですが、適用されるためには次の要件をすべて満たす必要があります。

少額減価償却資産の特例が適用される法人

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の青色申告法人であること
  • 常時使用する従業員の数が500人以下であること
  • 適用除外事業者((その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)に該当しない中小企業者または農業協同組合等に該当すること

出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

ただし、上記の要件を満たす場合でも、以下に該当する場合は少額減価償却資産の特例が適用されません。


  • 大規模法人(資本金または出資金の額が1億円超の法人、資本金5億円以上などの大法人の100%子法人等)から2分の1以上の出資を受ける法人
  • 上記以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人

なお、2020年度の法改正により、それまで少額減価償却資産の特例の適用対象の法人であった連結法人が除外されています。また、常時使用する従業員の数も「1,000人以下」から「500人以下」の法人に限定されています。

少額減価償却資産の特例に関する注意点

少額減価償却資産の特例が適用される場合、処理するにあたっていくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、主な注意点について解説します。

固定資産の取得価額によって減価償却の方法が異なる

通常の固定資産の減価償却処理においては、固定資産の取得価額によって減価償却の方法が下表のように異なります。


取得価額減価償却の方法
30万円以上通常どおり
30万円未満20万円以上合計額300万円までを上限に全額損金算入
20万円未満10万円以上一括償却、もしくは合計額300万円までを上限に全額損金算入
10万円未満消耗品費等として全額損金算入可能

なお、一括償却とは、資産を使用開始した年から3年間、取得価額の3分の1ずつを減価償却することです。

重複して適用できない特別措置がある

少額減価償却資産の特例と重複適用できない特別措置があるため、複数の制度を利用している場合、したいと考えている場合は注意が必要です。

少額減価償却資産の特例と重複適用できないものには、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳などがあります。


重複適用できない特別措置概要
租税特別措置法上の特別償却特定の条件を満たす設備投資に対して、通常の減価償却とは別に、追加的に償却を行うことができる制度
税額控除法人税や所得税の計算において、算出された税額から一定の金額を直接控除する制度
圧縮記帳補助金や保険金を受け取った際に、その金額を固定資産の取得価額から減額し、課税の繰り延べを行う会計処理の方法

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上限300万円を全額使えないケースがある

購入した資産の金額によっては少額減価償却資産の特例の上限である300万円を全額使えない可能性があるため注意が必要です。

たとえば、23万円の減価償却資産を14個購入し、合計額が322万円になった場合、少額減価償却資産の特例の対象となるのは300万円ではなく、資産13個分の合計額である299万円になります。

また、会社の設立年度などの理由で事業年度が1年に満たない場合、少額減価償却資産の特例の上限は月割で計算されるため、300万円の上限を全額適用できません。

自社の会計処理が税込・税抜のどちらか確認する

固定資産の処理においては、会計処理を税込・税抜のどちらで行うか、確認が必要です。税込方式か税抜方式かは会社ごとに決まっているため、社内で統一されたルールで処理しましょう。

資産の取得価額は、税抜方式を採用している場合は税抜の金額が税込方式を採用している場合、税込の金額がこれに相当します。

たとえば、税抜28万円の減価償却資産を購入した場合、税抜方式を採用している法人であれば取得金額28万円として特例の適用にできますが、税込方式を採用している法人の場合は税込30万円を超えるため特例の適用はできません。

少額減価償却資産の特例による節税方法

先に、少額減価償却資産の特例を用いることで節税につながることを説明しましたが、具体的にどのような方法をとるのか説明していきます。

各事業年度に分散する

少額減価償却資産の特例の対象になるのは、30万円未満の資産の取得に対してで、300万円の限度額が要件になっています。もし資産の取得が限度額を超えそうな場合は、各事業年度に分散させることで特例の対象外となることが避けられ、節税効果を高められます。

税抜経理を適用する

前述のとおり、税抜方式を採用するか税込方式を採用するかで、同じ資産を取得する場合でも少額減価償却資産の特例になるケース、ならないケースに分かれます。

税込経理を適用していたために特例を受けられないことが考えられるため、節税効果を最大化したい場合は、税抜経理を採用したほうがメリットが大きいといえます。

少額減価償却資産の特例の仕訳

少額減価償却資産の特例を会計処理する際の仕訳について解説します。ここでは、25万円のノートパソコンを購入し、資産に計上する場合の仕訳を説明します。

この場合、まずはノートパソコンを購入した際に「備品」の科目で資産として計上します。


借方貸方
備品250,000円現金250,000円

事業年度末に、対象となる資産科目を「減価償却費」の費用に振り替えます。


借方貸方
減価償却費250,000円備品250,000円

この事業者が少額減価償却資産の特例の適用法人となっており、該当資産がその対象と認められる場合、減価償却費が損金とみなされます。

まとめ

少額減価償却資産の特例は、中小企業にとって資産を取得した際の節税につながります。適用要件や対象資産について正しく理解したうえで、積極的に活用してください。

また、本記事で説明したとおり、この特例は年間上限額が設定されていたり、通常とは仕訳方法が異なったりするため、会計ソフトなどを利用してミスや漏れがないよう適切に処理しましょう。

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よくある質問

少額減価償却資産の特例とは?

少額減価償却資産の特例とは、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合に、その取得価額全額を即時で損金算入できる制度です。

詳しくは記事内「「少額減価償却資産の特例」とは」で解説しています。

少額減価償却資産の特例の適用期間はいつまで?

少額減価償却資産の特例は、2026年3月31日まで(2025年度末まで)に取得した減価償却資産に適用されます。

詳しくは記事内「「少額減価償却資産の特例」とは」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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