監修 橋爪 祐典
支払いサイトとは、取引先に商品やサービスの代金を支払うまでの期間を指します。企業間取引では「売掛金の回収までの期間(回収サイト)」と並び、資金繰りや経営の安定性を大きく左右する要素です。
業界ごとの慣習や企業間の交渉力によっても設定が異なるため、自社の立場に応じて適切なバランスを見極める必要があります。本記事では、支払いサイトの基本的な仕組みや業界別の目安、売り手・買い手双方にとって望ましい調整方法について解説します。
目次
- 支払いサイトとは
- 支払いサイトと回収サイトの違い
- 語源と英語表現
- 一般的な支払いサイトの期間
- 30日(月末締め翌月末払い)
- 60日(月末締め翌々月末払い)
- 90~120日(手形取引)
- 支払いサイトが長い場合に起こること
- 買い手側の資金繰りが楽になる
- 売り手が黒字倒産するリスクが高まる
- 支払いサイトが短い場合に起こること
- 売り手側はキャッシュフロー改善と経営安定化
- 【売り手側】回収サイトを短縮する方法3選
- 契約条件を見直す
- 決済手段を現金・電子化に切り替える
- 手形割引制度を活用する
- 【買い手側】支払いサイトを長くする方法3選
- 取引実績をもとに交渉する
- 仕入量の増加による支払いサイト延長を交渉
- 分割払いを提案する
- まとめ
- はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
- よくある質問
はじめての経理はfreee会計で簡単・安心・確実に
経理未経験でも、freee会計で帳簿や決算書を作成できます。銀行口座と同期すると、複雑な仕訳を自動化したり、日々の記帳を行うと、1クリックで決算書を作成できたり、初心者の方でも安心して進められます。
支払いサイトとは
支払いサイトとは、商品・サービスの取引で、買い手企業が代金を支払うまでの期間や条件を指します。売掛金の回収期間を表す「回収サイト」と並び、企業の資金繰りに大きく影響を与える重要な概念です。
支払いサイトの期間は、締め日から支払日までの日数です。たとえば「月末締め翌月末払い」の場合、8月31日締めで9月30日払いなら、支払いサイトは30日です。
支払いサイトと回収サイトの違い
契約条件は同じでも、立場によって呼び方が以下のように異なります。
支払いサイトと回収サイトの違い
- 支払いサイト:買い手側から見た「支払うまでの期間」
- 回収サイト:売り手側から見た「代金を回収できるまでの期間」
たとえば、「月末締め・翌月末払い」の契約であれば、支払いサイト・回収サイトはいずれも約30日です。これは、取引が締められてから実際に代金が支払われる、または回収できるまで、30日間の猶予があるという意味です。
この間、売り手企業は売掛金を現金化できず、資金繰りに影響が生じる可能性があります。一方、買い手企業にとっては、その分資金を手元に留めておけるため、キャッシュフローの調整に活用できます。
語源と英語表現
支払いサイトは、日本独自の商慣行から生まれた、和製英語です。
一般的な商取引で支払いサイトを示す英語は、「支払条件」を意味する「Payment terms(ペイメント・タームズ)」を用います。
手形取引や貿易実務では、「Usance(ユーザンス)」という専門用語を用いることもあります。これは「支払いまでの猶予期間」を意味する言葉で、日本語の「サイト」に近い概念です。
実際の契約書や請求書では、「Net 30(請求日から 30日以内に全額を支払う)」や「2/10 Net 30(10日以内支払いで2%割引、そうでなければ30日以内に全額支払い)」といった表現が使われます。
出典:NEXI(日本貿易保険)「ユーザンス」
出典:宇尾野行政書士事務所「Payment Terms(代金支払条件の条項)の解説と例文」
一般的な支払いサイトの期間
支払いサイトは一般的に、「30日」または「60日」で設定されます。
30日(月末締め翌月末払い)
30日サイトは、日本の商取引で最も一般的な設定です。流通業やIT・サービス業、小売業などで、広く採用されています。
末締め翌月末払いという形式は、月次決算との整合性が高く、経理処理が簡単です。売り手にとってはキャッシュフローの予測が立てやすく、買い手にとっても過度な資金負担にならないバランスの取れた期間です。
下請法の制限を、余裕をもってクリアできるため、法的リスクも最小限に抑えられます。
60日(月末締め翌々月末払い)
60日サイトは、建設業や製造業で多く採用されてきた支払いサイトです。2024年11月1日以降から適用された下請法運用基準により、2025年11月現在、60日サイトが実質的な上限といえます。
建設業や製造業では工期が長く、資材の仕入れから製品完成、代金回収までの期間が長くなる傾向にあります。
しかし、下請法の運用基準見直しにより、中小企業の資金繰り改善と優越的地位の濫用防止を目的として、業種を問わず60日以内の「できる限り短い期間内」で設定することが義務付けられています。
出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」
90~120日(手形取引)
手形取引では、90日から120日の長期サイトが一般的でした。しかし、2024年11月以降の下請法運用基準で、60日超は指導対象となっています。さらに、2026年度末には紙の手形・小切手が全面電子化される方針のため、長期サイトを維持する手段が限られています。
90日以上の長期サイトを利用している企業は、早急に見直しが必要です。
出典:公正取引委員会「手形等のサイトの短縮について(令和6年10月1日)」
支払いサイトが長い場合に起こること
支払いサイトが長期化すると、資金繰りや事業運営に直接影響を及ぼします。とくに売り手側にとっては安定的な経営を阻害する要因となるため、契約時には適切な支払いサイトを設定するようにしましょう。
買い手側の資金繰りが楽になる
支払いサイトが長くなると、買い手側は資金を長期間手元に留めておけるため、資金繰りが楽になります。仕入債務回転期間が長くなるため、運転資金ギャップの改善にも貢献します。
長い支払いサイトは、実質的に取引先から無利息融資を受けているのと同じ効果があります。
ただし、下請法では「受領日から60日以内のできる限り短い期間」での設定が必須です。従来見られた90日以上の長期サイトは、法的リスクがあります。
出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」
売り手が黒字倒産するリスクが高まる
支払いサイトが長いと、売り手側は売掛金の回収に長い期間を要することとなります。入金までの間、キャッシュフロー不足に陥りやすくなり、利益が出ているにも関わらず資金繰りが悪化する可能性も。結果、黒字倒産するリスクが高まります。
運転資金ギャップが拡大すると、外部からの資金調達が必要です。しかし、中小企業は大企業に比べて銀行融資の条件が厳しいため、十分な資金確保は難しいでしょう。早期支払割引の導入やファクタリングの活用、複数取引先でのリスク分散など、対策が必須です。
支払いサイトが短い場合に起こること
支払いサイトが短いと、売り手は資金回収が早まりますが、買い手側は資金繰り悪化や成長投資の制約など、リスクが発生します。
売り手側はキャッシュフロー改善と経営安定化
支払いサイトが短くなるということは、売り手側にとっては回収サイトが短くなるため、売掛金を早期に現金化できます。キャッシュフローが改善し、資金繰りの安定化が可能です。
支払いサイトが短いほど、貸倒リスクは軽減されます。さらに、取引先からの入金が早いため、支払遅延や経営悪化といった異常が起きた際に、迅速な把握が可能です。取引先の信用状況の変化を早期に察知し、必要な対策(与信管理の見直しや取引条件の調整など)を取れるでしょう。
ただし、支払いサイトの短縮は買い手にとって負担となる場合もあるため、支払いサイトを短くする代わりに料金を割り引く「早期支払割引」を導入する企業もあります。
【売り手側】回収サイトを短縮する方法3選
売り手企業にとって、代金回収が遅れることは資金繰りを圧迫し、成長機会を逃す要因になり得ます。以下の方法で回収サイトを短縮し、取引先との関係を保ちながら現金化のスピードを上げましょう。
回収サイトを短縮する3つの方法
- 契約条件を見直す
- 手形取引から現金取引に切り替える
- 手形割引制度を活用する
契約条件を見直す
契約条件の見直しにより、支払いサイトを短縮できる可能性があります。とくに、早期支払割引(早期決済による値引き)は現実的な手段のひとつです。
たとえば、「10日以内支払いで2%割引」のような条件設定により、売り手は早期に現金を回収でき、買い手も割引というメリットを得られます。双方にとってwin-winの関係を築けるため、交渉の余地がある場合に有効です。
このほか、継続的な取引や年間契約、在庫協力など、買い手側に別の付加価値を提供することで、支払い条件の交渉がしやすくなることもあります。
新規取引では、初期条件として「月末締め翌月末払い(=30日サイト)」など標準的な支払条件を提示し、契約書に明記しておくことで、後々のトラブルを防止できます。
決済手段を現金・電子化に切り替える
手形取引から現金取引への切り替えは、下請法や決済制度の改正に対応するうえで重要なポイントです。
2024年11月からは、下請法の運用基準により「60日超の手形サイト」は指導対象となり、従来の90日~120日といった長期の支払手形は、法的リスクを伴う可能性があります。
とくに建設業や製造業など、もともと支払いサイトが長くなりがちな業界でも、60日以内の現金決済がスタンダードになりつつあります。未対応の場合は、早めの切り替えを検討しましょう。
さらに、2026年度末には「手形の全面電子化」も予定されており、これを機に、でんさい(電子記録債権)や銀行振込などの現金取引への移行を進める企業が増えています。
これらの手段は、紙の手形に比べて支払期日が明確で、印紙税も不要となるなど、効率的かつ安全性の高い決済方法です。
出典:公正取引委員会「手形等のサイトの短縮について」
出典:全国銀行協会「紙の手形・小切手の全面的な電子化(2026年度末目標)」
手形割引制度を活用する
現在、手形取引を前提とした取引を行っている場合、手形割引制度を使って回収サイトを実質的に短縮するという手段もあります。手形割引制度とは、受け取った支払手形を期日前に金融機関などに買い取ってもらい、現金化を早める仕組みです。
ただし、手数料(割引料)が発生し、不渡り時には売り手が買い戻さなければならないリスクもあるため、あくまで短期的・暫定的な資金調達策として活用するのが現実的です。
手形割引制度の割引料は、通常年利1〜3%程度です。
出典:金融庁「電子記録債権法の概要」
出典:中小企業庁「電子記録債権の活用について」
出典:中小企業庁「平成25年度 下請代金の受取等に関する調査報告書」
【買い手側】支払いサイトを長くする方法3選
買い手企業にとって支払いサイトを長く設定することは、手元資金の確保や資金繰りの安定に直結します。ただし、過度な延長は取引先との関係悪化を招くリスクもあるため、以下の方法を参考にしましょう。
取引実績をもとに交渉する
支払いサイトの延長を交渉する際には、過去の取引実績をもとに、取引先からの信頼を裏付ける材料を提示することが効果的です。
たとえば、「過去3年間、一度も支払い遅延がない実績を踏まえ、月末締め翌月末払いから翌々月末払いへの変更をご検討いただけませんか」のような形で、提案を行いましょう。
ただし、下請法では、納品から60日以内の支払期日設定が義務付けられているため、取引先が下請事業者に該当する場合、これを超えるサイト延長は法令違反となります。
仕入量の増加による支払いサイト延長を交渉
発注量や契約規模の拡大を条件とした支払いサイト延長の交渉は、売り手・買い手の双方にメリットがある方法です。取引先にとっては売上拡大の見込みが立つことで、生産効率の向上や固定費の分散といった経済的効果が期待できます。
たとえば、以下のような交渉例があります。
「年間発注量を現在の1.5倍に増加する代わりに、支払いサイトを30日から60日に延長していただけませんか」
「3年間の長期契約への切り替えと引き換えに支払い条件の見直しを検討いただけないでしょうか」
自社の調達計画をあらかじめ整理し、まとめ発注や長期契約が可能な品目を明確にしておきましょう。取引先の生産キャパシティを考慮して、実現可能性のある計画を提示するのも重要です。
分割払いを提案する
一括払いから分割払いへの変更は、実質的に支払いサイトを延長できる方法のひとつです。とくに、高額な取引や継続的な取引で有効です。分割払いの導入により、買い手側は一時的な資金負担を軽減できる一方、売り手側は確実な入金スケジュールが立てられるというメリットがあります。
たとえば、次のような支払いスケジュールが考えられます。
- 月末締めの請求を翌月15日に50%、翌月末に50%の2回払い
- 大型案件を納品時30%、1ヶ月後40%、2ヶ月後30%の分割支払い
また、法人カードの活用も、実質的な支払い猶予期間を確保できます。「15日締め翌月10日払い」や「月末締め翌月26日払い」などの決済サイクルを利用すれば、資金繰りの調整に役立つでしょう。
まとめ
支払いサイトは、企業のキャッシュフロー管理において重要な要素です。一般的には、30日から60日の範囲で設定されます。下請法により、60日を超える支払いサイトは指導対象となるため、60日以内に収めましょう。
買い手は支払いサイトを延ばすことで資金繰りが楽になり、売り手は短縮することで黒字倒産リスクを回避できます。立場に応じた具体的な改善策を実践することで、安定したキャッシュフローと健全な取引関係を構築できるでしょう。
はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
経理業務は日々の入出金管理のほか、請求書や領収書の作成・保存、仕訳作成まで多岐にわたります。
シェアNo.1のクラウド会計ソフト*1「freee会計」は、面倒な入力作業や仕訳を自動化し、見積書や請求書も簡単に作成できるため、経理業務にかかる時間を半分以下*2に削減できます。
※1リードプラス「キーワードからひも解く業界分析シリーズ:クラウド会計ソフト編」(2022年8月)
※2 自社調べ。回答数1097法人。業務時間が1/2以上削減された法人数
また、一度の入力で複数の業務が完了するため、重複作業や転記作業はほぼ発生しません。
数ある会計ソフトの中でも、freee会計が選ばれる理由は大きく分けて以下の3つです。
- AI-OCR機能で自動入力・自動仕訳
- 全国ほぼすべての銀行・160以上の外部サービスと連携
- 充実のサポート体制
それぞれの特徴についてご紹介していきます。
AI-OCR機能で自動入力・自動仕訳
領収書・受取請求書などをスマホのカメラで撮影しfreee会計に取り込めば、読み取り機能(OCR機能)が取引先名や金額などをAI解析し、仕訳に必要な情報を自動で入力。そのまま支払管理・仕訳まで自動で作成できます。
全国ほぼすべての銀行・160以上の外部サービスと連携
freee会計は全国ほぼすべての銀行やクレジットカード、決済サービスなどと連携可能。同期していれば自動で利用明細を取り込むので、勘定科目の登録はもちろん、売掛金や買掛金の消し込み、入金仕訳などの記帳が、freee会計の画面だけで行えます。
さらに、地代家賃や役員報酬など定期的に入金・支払金が発生する取引は、登録さえしておけばfreee会計が自動で記帳まで完了します。
充実のサポート体制
freee会計には、経理をするうえでの不安を解消できる充実したサポートコンテンツを用意しています。
それでも解決できないお悩みはfreeeの専任スタッフにご相談いただける体制も整っているため、はじめて経理される方でも安心して始めることができます。
よくある質問
一般的な支払いサイトは?
国内商取引では、30日サイトと60日サイトが一般的です。「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月末払い」という形で設定されています。
30日サイトは、日本の商取引で最も一般的な設定であり、流通業やIT・サービス業、小売業などで広く見られます。一方、60日サイトは建設業や製造業で多く採用されていました。2024年11月以降の下請法運用基準により、現在は60日が実質的な上限とされています。
詳しくは記事内「一般的な支払いサイトの期間」をご覧ください。
支払いサイトの数え方は?
支払いサイトの期間は、締め日から支払日までの日数です。たとえば「月末締め翌月末払い」の場合、8月31日締めで9月30日払いなら、支払いサイトは30日です。
詳しくは記事内「支払いサイトとは」をご覧ください。
サイトが60日を超える手形はある?
2024年11月1日以降、下請法の運用基準見直しにより手形サイトも業種を問わず60日以内への指導対象となりました。60日を超える支払いサイトの設定は、困難になっています。
さらに、2026年度末には紙の手形・小切手が全面電子化され実質廃止となる予定です。長期サイトの設定は、事実上不可能でしょう。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
