会計の基礎知識

有利子負債とは?無利子負債との違いや財務分析からわかることなどを解説

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

有利子負債とは?無利子負債との違いや財務分析からわかることなどを解説

有利子負債とは、企業が抱える負債のうち「利息を付けて返済する必要があるもの」を指します。企業経営において資金調達は不可欠ですが、有利子負債が過大になると利息負担や返済義務が企業の財務を圧迫し、資金繰り悪化や倒産リスクにつながる可能性があります。

本記事では、有利子負債の種類や無利子負債との違い、財務分析に使われる主要指標や適切な管理方法について解説します。

目次

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有利子負債とは

有利子負債とは、企業が抱える負債のうち「利息を付けて返済する必要があるもの」を指します。貸借対照表で「負債の部」に計上され、企業財務を分析するうえで重要な指標の一つです。

企業が事業活動を行うにあたって、自己資金だけでは十分な資金を確保できないことも多くあります。そのため、銀行などの金融機関から借入れを行ったり債券を発行したりして、外部から資金を調達するケースが一般的です。有利子負債はこのような外部からの資金調達手段であり、事業拡大や設備投資、日々の運転資金の確保などに活用されています。

しかし、借り入れた資金には利息の支払い義務が発生するため、収益性や財務状況によっては大きな影響をおよぼす可能性があります。適切に管理できないと返済負担が重くなり、企業経営を圧迫する要因につながるため注意が必要です。

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有利子負債の具体例

有利子負債には、具体的に「短期借入金」「長期借入金」「社債」「コマーシャルペーパー」が該当します。以下でそれぞれ解説します。

短期借入金

短期借入金は、決算日の翌日から1年以内に返済期限が到来する借入金です。主に、日々の事業活動に必要な運転資金を円滑に調達するための手段として活用されています。

長期借入金

長期借入金は、決算日の翌日から1年を超えて返済期限が到来する借入金です。主に、設備投資や新規事業の立ち上げなど、長期的な資金需要に対応するために利用されます。

返済期間が長いため毎月の返済負担を軽減できるメリットがありますが、利息の総支払額が大きくなりやすい点に注意が必要です。

社債

社債は、企業が投資家から資金調達を行うために発行する債券です。満期(償還日)に元本を返済し、それまでの間は定期的に利息を支払います。銀行借入とは異なるため、金融機関を介さずに直接市場から資金を調達できます。

また、発行後に一定の条件でその会社の株式に転換できる権利がついた「転換社債」も、株式に転換されるまでは有利子負債として扱われます。

コマーシャルペーパー

コマーシャルペーパーは、企業が短期の資金調達を目的として割引形式で発行する、無担保の約束手形です。購入価格と額面金額の差額が利息に相当します。

社債と同様に金融機関を介さずに市場から資金調達が可能ですが、償還期間は1年未満という点に注意しましょう。

無利子負債との違い

負債には、返済義務はあるものの利息の支払いが発生しない「無利子負債」も存在します。無利子負債の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。


種別概要
買掛金商品やサービスの仕入れに対する未払金
未払金仕入れ以外のサービスや物品の購入に係る支払い義務
預り金従業員の所得税や社会保険料等に使われる他人の預り額
前受金商品やサービス提供前の受取金

有利子負債と無利子負債の大きな違いは「利息支払いがあるかどうか」です。有利子負債は利息負担があるため、企業の損益計算書における「支払利息」として費用計上され、キャッシュフローにも影響を与えます。一方、無利子負債には利息負担がなく、企業は実質的にコストなしで資金を利用できます。

融資・増資との違い

企業が資金を調達する方法には、大きく分けて「融資」と「増資」があります。融資は金融機関などから資金を借り入れる方法で借入金に該当し、かつ有利子負債として扱われます。融資は企業の信用性に基づいて行われるため、返済義務と利息支払義務が生じます。とはいえ、返済さえすれば経営へは関与されず、企業の所有構造に変化が生じない点はメリットといえます。

一方、増資は株主や投資家から出資を募ることを指します。増資により純資産である企業の自己資本が増加するほか、返済義務はありません。ただし、株主構成が変化することで既存株主の持分比率が低下する可能性があります。また、株主に対する配当金の支払いが期待される側面もあります。

つまり、融資を含む有利子負債は「他人資本」の調達であり、返済が必要となります。反対に増資は「自己資本」の調達であり、返済は不要です。どちらの手段で資金調達を行うかは、企業の財務状況や成長戦略、市場環境などを考慮して決めましょう。

有利子負債の分析からわかること

有利子負債はいわば借金です。すべて自己資金で経営ができれば、財務の健全性・安全性の観点からも心配はなくなるでしょう。しかし、経営における設備投資や業務拡大のためには必要な場合も多くあります。

有利子負債の適切な水準は、業種や事業規模、成長段階によって異なります。有利子負債の金額や推移、関連する財務指標などの情報から総合的に分析しましょう。

財務の健全性

有利子負債の額が大きい、あるいは自己資本に対してその比率が高い場合、返済負担や利息負担が重く、財務的なリスクにつながる可能性があります。

反対に、有利子負債が少ない、または適切に管理されている場合、財務的に安定していると評価できます。

資金調達戦略

有利子負債の状況を分析することで、企業がどのくらい外部からの借入に依存しているかがわかります。

積極的に有利子負債を活用して事業拡大を目指すレバレッジ経営をしているのか、自己資金中心の堅実な経営を目指しているのかなど、さまざまな経営方針が見えてきます。

返済能力と倒産リスク

有利子負債の額と企業の収益力を比較して、借入金の返済能力を測れます。たとえば、有利子負債の総額が大きくても、それに見合う安定した収益力があれば返済能力は高いと評価できます。

反対に、収益力に比べて有利子負債が過大であれば、資金繰り悪化や倒産のリスクが高く、返済能力が低いと判断できます。

投資意欲

一般的に、企業が成長を目指す際には設備投資や長期間の開発、M&Aのために多額の資金が必要となり、有利子負債が増加する傾向があります。そのため、有利子負債の増加は直ちに財務状況の悪化を意味するわけではなく、むしろ企業の戦略的な成長につながる可能性もあります。

有利子負債の財務分析で使われる指標

有利子負債を用いた財務分析では、いくつかの重要な指標が用いられます。これらの指標を理解することで、企業の財務状況や返済能力をより深く分析できます。

有利子負債比率

有利子負債比率は、自己資本や総資産に対して有利子負債がどのくらいの割合を占めているかを示す指標で、一般的には以下の計算式が用いられます。

有利子負債比率(対総資産)= 有利子負債 ÷ 総資産 × 100

一般的に、比率が低いほど財務の安全性が高いとされています。ただし、設備投資の多い製造業や不動産業では比較的高くなる傾向がある一方、サービス業や小売業では低い傾向があるなど、業種によって目安は異なります。

また、この比率は企業が保有する総資産のうち、どれだけ返済・利息支払義務のある有利子負債でまかなっているかを示しているため「有利子負債依存度」と呼ばれることもあります。

DEレシオ

DEレシオ(デット・エクイティ・レシオ)は、企業の自己資本に対する有利子負債の割合を示す指標です。負債と自己資本のバランスを見ることで、財務構造の健全性を評価します。

DEレシオ = 有利子負債 ÷ 自己資本

DEレシオの値が低いほど、自己資本に対して借入金の割合が少なく、財務的に安定していると判断されます。たとえばDEレシオが0.5の場合は、有利子負債が自己資本の半分であることを意味します。

一般的に、有利子負債と自己資本が同額となる1.0倍を下回ると、安全性が高いとされます。とはいえ、業種や企業の成長戦略によって適正水準は異なります。レバレッジを効かせて積極的に事業展開する企業の場合はDEレシオが高くなる傾向があるため、値が高いからといって健全ではないとは一概にはいえません。

EBITDA有利子負債倍率

EBITDA有利子負債倍率とは、有利子負債をEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)で割った値です。有利子負債EBITDA倍率などとも呼ばれており、特に金融機関が融資審査を行う際などに参考にされます。

企業が事業活動から生み出すキャッシュフロー(≒EBITDA)の何年分で有利子負債を返済できるかを示し、企業の債務返済能力を測る指標として重視されます。

EBITDA有利子負債倍率 = 有利子負債 ÷ EBITDA

なお、EBITDA有利子負債倍率の計算方法には、ネット有利子負債(有利子負債 - 現金および預金)を分子に使うケースもあります。

この倍率が低いほど短期間で借入金を返済できる能力が高いことを意味しており、財務的にも健全であると評価されます。一般的に、10倍を超えると返済能力に懸念があると判断されることが多くなります。

有利子負債を正しく管理するには

有利子負債の適正水準は、業種や企業の成長段階、市場環境などさまざまな要因によって異なります。有利子負債が多いからといって、財務状況が悪いと一概に決めつけることはできません。将来的な成長を見据えて事業や設備などへの投資を増やすために資金調達を行い、有利子負債が増加するケースもあるためです。

企業の財務状況を正しく把握するには、有利子負債だけに着目するのではなく、そのほかの財務指標とあわせて総合的に判断したり、事業規模や業種が近い企業と比較して分析したりすることが求められます。

また、自社の経営悪化を避けるため、有利子負債が適正かどうかを正しく管理するには会計システムの導入がおすすめです。クラウド会計ソフトなどを活用することでリアルタイムに財務状況を把握でき、経営判断にも役立ちます。

まとめ

有利子負債とは利息を付けて返済する必要がある企業の負債ですが、その適正水準は業種や企業の成長段階、市場環境によって異なります。財務の健全性を評価する際は、有利子負債比率やDEレシオ、EBITDA有利子負債倍率などの指標を用いて総合的に判断することが重要です。

また、有利子負債が多いからといって、必ずしも財務状況が悪いとはかぎりません。成長投資のために戦略的に活用されるケースもあります。正確な財務状況の把握には、クラウド会計ソフトなどを活用し、リアルタイムの分析を行うことをおすすめします。

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よくある質問

有利子負債とは?

有利子負債とは、企業が抱える負債のうち「利息を付けて返済する必要があるもの」を指します。企業外部からの資金調達手段であり、事業拡大や設備投資、日々の運転資金の確保などに活用されています。

詳しくは記事内「有利子負債とは」をご覧ください。

有利子負債はどれくらいの比率が理想的?

「有利子負債比率」「DEレシオ」「EBITDA有利子負債倍率」などさまざまな指標がありますが、一般的には値が低いと財務の健全性・安全性が高いとされています。ただし、適正水準は業種や成長戦略によって異なります。

詳しくは記事内「有利子負債の財務分析で使われる指標」で解説しています。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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