監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

無形固定資産とは、企業の収益獲得に寄与する固定資産のひとつです。その名のとおり物理的な形態を持たず目に見えない資産で、1年以上の長期にわたって事業活動のために使用・保有されるものを指します。
本記事では、無形固定資産の種類や耐用年数、減価償却方法などについて解説します。
【関連記事】
固定資産とは?金額基準や流動資産との違い、課税対象となる資産を解説
目次
freee会計は固定資産管理の機能も標準搭載。
freee会計は固定資産の管理は会計ソフトでまとめて管理できます。しかも追加コストなしで利用できます。
無形固定資産とは
無形固定資産とは、物理的な形態を持たず目には見えませんが、企業の収益獲得に寄与する固定資産のひとつです。1年以上の長期にわたって、事業活動のために使用・保有されるものを指します。
「企業の収益獲得に資する」とは、将来的に収益を生み出す源泉となるほか、費用削減に貢献することも含まれます。
会計上、貸借対照表に計上される際の部門は資産の部です。
無形固定資産と有形固定資産の違い
固定資産の種類としては、無形固定資産のほかに有形固定資産があります。この二つの最も大きな違いは、物理的な形態の有無です。
- 有形固定資産:建物、機械装置、土地など、形があり目に見える
- 無形固定資産:権利、ソフトウェアなど、形がなく目に見えない
無形固定資産の代表的な種類
無形固定資産に分類される代表的な例を紹介します。
工業所有権
工業所有権とは、企業独自の技術やブランドを保護するための権利です。
工業所有権は、さらに次の権利に分けられます。
- 特許権:発明を独占的に利用できる権利
- 商標権:商品やサービスを識別するためのマークに関する権利
- 実用新案権:物品の形状、構造等の考案に関する権利
- 意匠権:物品のデザインに関する権利
そのほかの権利
先に挙げた工業所有権以外にも、無形固定資産に分類される権利があります。
具体的には、次のようなものです。
- 電話加入権:固定電話の回線を利用できる権利、相続財産のひとつ
- 借地権:土地を借りる権利
- 著作権:文学、音楽、プログラムなどの創作物に関する権利
- 漁業権、水利権など
ソフトウェア
ソフトウェアは、無形固定資産の代表的なもののひとつです。ただし、すべてのソフトウェアが無形固定資産に該当するわけではありません。
無形固定資産に分類されるのは、ソフトウェアの中でも業務利用目的で購入・自社開発したもの(会計ソフトウェアや顧客管理システムなど)で、かつ取得価額が一定額以上の場合に限ります。
のれん(営業権)
のれん(営業権)とは、企業が保有するブランド力や技術力、顧客基盤などを示す資産で、無形固定資産のひとつです。企業の超過収益力であり、主にM&A(合併・買収)の際に発生するものです。
無形固定資産の耐用年数
無形固定資産には、耐用年数があります。耐用年数とは資産が使用される期間のことで、税法で定められた法定耐用年数を用いるのが一般的です。
なお、無形固定資産の中には減価償却の対象とならないものもあり、その場合は耐用年数は設定されていません。
記事内で取り上げた無形固定資産や、そのほかの主な無形資産の耐用年数は以下のとおりです。
種類 | 細目 | 耐用年数(年) |
---|---|---|
電話加入権 | - (非減価償却資産) | |
借地権 | - (非減価償却資産) | |
著作権 | - (非減価償却資産) | |
漁業権 | 10 | |
水利権 | 20 | |
特許権 | 8 | |
実用新案権 | 5 | |
意匠権 | 7 | |
商標権 | 10 | |
ソフトウェア | 複写して販売するための原本または研究開発用のもの | 3 |
そのほかのもの | 5 | |
のれん(営業権) | 5 | |
専用側線利用権 | 30 | |
鉄道軌道連絡通行施設利用権 | 30 | |
電気ガス供給施設利用権 | 15 | |
水道施設利用権 | 15 | |
工業用水道施設利用権 | 15 | |
電気通信施設利用権 | 20 |
無形固定資産を減価償却する方法
無形固定資産を減価償却する方法を解説します。
そもそも減価償却の目的とは、資産の価値減少を費用として期間配分することにあります。
無形固定資産の減価償却は、原則として定額法で行われるため、先に挙げた耐用年数をもとに毎期定額の減価償却の処理が必要です。
定額法の減価償却費は、以下の計算式で算出できます。
- 定額法の減価償却費 = 取得価額 ÷ 耐用年数
無形固定資産の減価償却は、残存価額はゼロで計算するのが原則です。期中に取得した場合は、年間の減価償却費を計算してから月あたりの減価償却費を計算し、該当年度で計上すべき月数分を計上します。
具体例として、耐用年数5年に分類されるソフトウェアを取得した場合について考えます。ソフトウェアを期首に取得し、取得価額が50万円であった場合、期末の減価償却は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 100,000円 | ソフトウェア | 100,000円 |
無形固定資産を減価償却するときの注意点
無形固定資産は種類によって扱いが異なるため、減価償却をする際にも注意が必要です。無形固定資産を減価償却するときの主な注意点を解説します。
減価償却しない無形固定資産がある
前述のとおり、すべての無形固定資産が減価償却の対象となるわけではありません。
たとえば次のような無形固定資産は、状況などによって減価償却をするケースとしないケースにわかれます。
無形固定資産 | 減価償却の要不要 |
---|---|
借地権 | 時間の経過によって価値が減少しないと考えられ、減価償却が不要となるケースあり ただし、契約期間が定められ更新料の支払いがないなどの場合は減価償却することもある |
電話加入権 | かつては非償却資産とされていた 現在は経済的価値がないとし、会計上は減損処理し、税務上は加算調整する場合もある |
商標権 | 会計上・税法上は、通常10年で償却する資産 更新により永続的に使用可能であり、法的保護期間が長期にわたる可能性があるため、例外的に非償却とされるケースがある |
電話加入権、著作権、 漁業権、水利権 | 減価償却資産には該当しない |
上記以外にも、取得価額が10万円未満のものは原則として取得時に全額費用処理(損金算入)でき、会計上の資産として計上する必要はありません。
中小企業者等の少額減価償却資産の特例では、対象となる企業が特定の減価償却資産を取得した場合に30万円未満であれば取得時の全額費用処理を可能としています。結果的に、複数年にわたる償却計算も不要になります。
ソフトウェアの減価償却方法に違いがある
ソフトウェアの減価償却は、無形固定資産の中でも特殊な点があります。これは、ソフトウェアの区分によって会計処理や耐用年数が異なるためです。
先の表で区分されていたとおり、ソフトウェアには耐用年数5年とされるものと、3年とされるものがあります。
具体的には、以下のように種類が分けられます。
- 自社利用目的のソフトウェア
- 販売目的のソフトウェア
- 受注制作のソフトウェア
さらに、自社利用目的のソフトウェアは以下に分類されます。
利用目的 | 減価償却方法 |
---|---|
購入した場合 | 購入代価と付随費用の合計を資産計上し、耐用年数5年で定額法償却する |
自社制作した場合 | 制作にかかった費用(研究開発費を除く、一定段階以降の直接的な費用)を資産計上し、耐用年数5年で定額法償却する(研究開発費は費用処理される) |
以上のように、固定資産の管理は種類の多様性や複雑な会計処理から煩雑になりがちです。手作業での管理はミスや手間、属人化も避けられません。
会計システムを導入することで減価償却の自動計算や一元管理、法改正への対応が可能となります。これにより、業務の大幅な効率化と正確性の向上につながります。
まとめ
無形固定資産はほかの資産と同様に、企業の競争力や収益力を支える重要な資産であり、適切な管理と減価償却が求められます。
耐用年数や減価償却方法は資産によって異なるため、正確に理解し適切に処理することが重要です。
freee会計ひとつで固定資産の管理も実現
固定資産を減価償却を行う最大のメリットは、節税になることです。
しかし、減価償却を含む固定資産の会計処理には手間と労力がかかります。
シェアNo.1のクラウド会計ソフト「freee会計」は、固定資産管理機能も標準搭載。追加のコストなく、利用可能です。
減価償却費の自動計算/自動計上の機能で、複数ツール間の転記作業や確認モレを防ぐ体制を実現します。
freee会計は会計ソフトと一体型だから、登録から仕訳まで固定資産をまとめて管理できるので手間を減らせます。
税制改正への対応も自動アップデートされるため、今後法改正があっても安心してご利用いただけます。
freee会計の固定資産への対応について詳しく知りたい方は、資料でご紹介してます。
使い勝手を試してみたい方は、30日間の無料お試しをご利用いただけます。メールアドレスのみで、クレジットカードの登録は不要です。
無料お試しはこちら
よくある質問
無形固定資産とは?
無形固定資産とは、物理的な形態を持たず目には見えず、企業の収益獲得に寄与する資産のことです。1年以上の長期にわたって、事業活動のために使用・保有されるものを指します。
詳しくは、記事内「無形固定資産とは」で解説しています。
のれん(営業権)は無形固定資産に含まれる?
のれん(営業権)は、無形固定資産に含まれます。
記事内の「無形固定資産の代表的な種類」で詳しく解説しています。
ソフトウェアは無形固定資産に含まれる?
ソフトウェアのうち、無形固定資産の要件を満たすものは無形固定資産に該当します。
詳しくは、記事内「無形固定資産の代表的な種類」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
