監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

勘定科目内訳明細書とは、貸借対照表や損益計算書の勘定科目の内訳を示した決算書類のひとつです。企業が法人税の確定申告を行う際に、法人税申告書の添付書類として税務署に提出します。
勘定科目内訳明細書は、勘定科目別に全部で16種類の内訳書がありますが、全てを作成する必要はなく、該当するもののみを作成します。また、2019年4月以後に終了する事業年度から、記載件数が100件を超える場合に勘定科目内訳明細書の記載の簡素化が可能になりました。
本記事では、勘定科目内訳明細書の概要や記載項目、作成時の注意点などを解説します。
目次
- 勘定科目内訳明細書とは
- 勘定科目内訳明細書の書き方
- 16種類の勘定科目内訳明細書の各概要
- ①預貯金等の内訳書
- ②受取手形の内訳書
- ③売掛金(未収入金)の内訳書
- ④仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書
- ⑤棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書
- ⑥有価証券の内訳書
- ⑦固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
- ⑧支払手形の内訳書
- ⑨買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
- ⑩仮受金(前受金・預り金)の内訳書・源泉所得税預り金の内訳書
- ⑪借入金及び支払利子の内訳書
- ⑫土地の売上高等の内訳書
- ⑬売上高等の事業所別内訳書
- ⑭売上高等の事業所別内訳書
- ⑮地代家賃等の内訳書・工業所有権等の使用料の内訳書
- ⑯雑益、雑損失等の内訳書
- 勘定科目内訳明細書作成時の注意点
- 件数が100件を超える場合の記載方法
- インボイス制度により勘定科目内訳明細書の様式が変更に
- まとめ
- はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
- よくある質問
勘定科目内訳明細書とは
勘定科目内訳明細書は、貸借対照表や損益計算書の勘定科目の内訳を示した決算書類のひとつです。
法人税法施行規則第35条により、法人税の確定申告を行う企業は法人税申告書の添付書類として勘定科目内訳明細書を税務署に提出することが義務付けられています。提出期限は決算日の翌日から2ヶ月以内です。
税務署は勘定科目内訳明細書の内容を確認し、提出した申告書類が正しく作成されているかどうかを確認します。また、決算書だけではわからない取引の実態や財務状況を税務署が把握するためにも、勘定科目内訳明細書が必要です。
勘定科目内訳明細書の作成は書類を提出する企業の役員や経理担当が行いますが、税理士への代行依頼も可能です。
出典:e-Gov法令検索「法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)|第三十五条」
勘定科目内訳明細書の書き方
勘定科目内訳明細書は、勘定科目ごとに16種類に分類されています。提出にあたっては、状況に応じて該当種類のみを作成します。
勘定科目内訳明細書の種類
①預貯金等の内訳書
②受取手形の内訳書
③売掛金(未収入金)の内訳書
④仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書
⑤棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書
⑥有価証券の内訳書
⑦固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
⑧支払手形の内訳書
⑨買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
⑩仮受金(前受金・預り金)の内訳書・源泉所得税預り金の内訳書
⑪借入金及び支払利子の内訳書
⑫土地の売上高等の内訳書
⑬売上高等の事業所別内訳書
⑭売上高等の事業所別内訳書
⑮地代家賃等の内訳書・工業所有権等の使用料の内訳書
⑯雑益、雑損失等の内訳書
勘定科目内訳明細書の作成が必要かどうかは、貸借対照表に記載されている「資産科目・負債科目」と損益計算書に記載されている「損益科目」で分けて考えると判断しやすいです。
勘定科目が資産科目・負債科目の場合、期末日に残高があるものを全て内訳明細書に記載しなければいけません。一方、損益科目の場合は、役員報酬や人件費(役員報酬手当等及び人件費の内訳書)など、特定の科目のみ勘定科目内訳明細書を作成します。
勘定科目内訳明細書の用紙は、国税庁のサイトよりダウンロードすることが可能です。電子申告を行うのであれば、e-Taxサイト上で公開されている標準フォームを使用できます。
勘定科目内訳明細書の作成時は会計ソフトがあると便利です。会計ソフト内に記録されている貸借対照表や損益計算書の内容をもとに、勘定科目内訳明細書をワンクリックで作成できます。
16種類の勘定科目内訳明細書の各概要
勘定科目内訳明細書は、16種類それぞれで様式や記入すべき項目が異なります。以下では各勘定科目内訳明細書に記入する際のポイントを解説します。
①預貯金等の内訳書
銀行ごとに預金種類、口座番号、期末残高を記載します。このとき、預金種類は「定期」「普通」「当座」でさらに区分し、まとめます。
名義人が企業の代表者になっているかを確認し、法人名と代表者が異なる場合は摘要欄に「名義人〇〇」と記しましょう。
出典:国税庁「預貯金等の内訳書」
②受取手形の内訳書
受取手形の内訳書には、振出人・期日・金額を明記し、裏書譲渡や割引処理の有無についても記載します。ひとつの取引先からの受取手形の総額が100万円以上の場合は、その取引先を個別記入し、100万円未満の取引は一括でまとめて「その他」として記入します。
ただし、100万円以上のものが5口未満の場合は、期末残高の大きいものから5口程度記入が必要です。つまり、50万円以上の取引先が3社しかないのであれば、50万円未満の取引先について、金額が大きい順から2社分を個別記入する必要があります。
出典:国税庁「受取手形の内訳書」
③売掛金(未収入金)の内訳書
会社・個人名、金額、発生日などを取引先ごとに記載しますが、取引先の該当勘定科目の期末残高が50万円未満の場合は、まとめて「その他」として合計金額を記載します。
ただし、50万円以上の取引先が5社未満しかない場合は、金額が大きい順に5社分を個別に記入しなければなりません。
出典:国税庁「売掛金(未収入金)の内訳書」
④仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書
「仮払金(前渡金)の内訳書」については、相手先別(企業・個人)に、仮払金または前渡金の金額を記載します。「貸付金及び受取利息の内訳書」は、取引先・子会社・役員などの貸付先や、契約内容や利率などについても明確に記載します。
いずれも、相手先別の期末残高が50万円以上の場合は個別で記入し、50万円未満であれば一括でまとめて記入します。相手先が「役員・株主およびその関係会社」である場合は、期末残高が50万円未満であっても個別に記入しなければなりません。
ただし、期末現在高がなくても期中の受取利息額(未収利息を含む)が3万円以上のものは、各別に記入します。
出典:国税庁「仮払金 (前渡金) の内訳書」
⑤棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書
⑥有価証券の内訳書
区分欄には、以下のいずれかを記載します。
- 売買目的有価証券:「売買」
- 満期保有目的等有価証券:「満期」
- その他有価証券:「その他」
⑦固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
期末現在高がないものであっても期中において売却、購入または評価換えを行ったならば、「期中取得(処分)の明細」の各欄に記入を行います。
出典:国税庁「固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書」
⑧支払手形の内訳書
取引先に対する支払手形の総額が100万円以上のものは個別に記入しますが、100万円未満であれば、まとめて一括で「その他」として記入します。
ただし、100万円以上のものが5口未満の場合は、期末残高が大きいものから5口程度記入します。
出典:国税庁「支払手形の内訳書」
⑨買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
ひとつの取引先からの該当勘定科目の期末残高の総額が50万円以上の場合は、その取引先を個別記入し、50万円未満の取引は一括でまとめて「その他」として記入します。
ただし、50万円以上のものが5口未満のときは期末残高が大きいものから5口程度記入します。
出典:国税庁「買掛金 (未払金・未払費用) の内訳書」
⑩仮受金(前受金・預り金)の内訳書・源泉所得税預り金の内訳書
「仮受金(前受金・預り金)の内訳書」では、ひとつの相手先からの該当勘定科目の期末残高の総額が50万円以上の場合は、その取引先を個別記入し、50万円未満の取引は一括でまとめて「その他」として記入します。ただしこのとき、相手先が役員・株主および関係会社であれば、期末残高が50万円未満であっても全て個別に記入します。
「源泉所得税預り金の内訳書」は、「仮受金(前受金・預り金)の内訳書」と異なり、所得の種類を記入します。そのほか期末現在高や支払年月も記入します。
出典:国税庁「仮受金 (前受金・預り金) の内訳書」
⑪借入金及び支払利子の内訳書
相手先別期末残高が50万円以上のものについては個別に記入します。
ただし、役員、株主及び関係会社においては、期末残高が50万円未満であっても全て個別に記入します。 なお、期末残高がない場合でも、期中の支払利子の額が3万円以上ある相手先については、記入が必要です。
出典:国税庁「借入金及び支払利子の内訳書」
⑫土地の売上高等の内訳書
棚卸資産として保有している土地を売却した場合、もしくは土地等を仲介した場合に、取引金額の大きいものから個別に記入します。記入が必要な口数が多い場合、取引金額の大きいものから20口のみ記入する形としても問題ありません。
「区分」欄には、売上、仲介手数料の別を記入します。
出典:国税庁「土地の売上高等の内訳書」
⑬売上高等の事業所別内訳書
保有している各事業所の名称や所在地の情報とその事業所ごとに紐づく売上高や期末棚卸高を記入します。事業所別に売上高や期末棚卸高を明記することで各事業所の実在することを示します。
全ての事業所の金額をまとめた最終行の「計」欄には、損益計算書の金額と一致するように記入します。「事業等の内容」欄には、 事業所において営んでいる事業等の内容を具体的な記入が必要です。
出典:国税庁「売上高等の事業所別内訳書」
⑭売上高等の事業所別内訳書
役職名・氏名・住所・代表者との関係・常勤と非常勤の別・役員給与の計・その内訳、退職給与などを記入します。記入順は最上段が代表者、そのほかの役員の順番については任意です。役員給与の計に記入する金額に退職給与は含みません。
内訳が役員報酬手当に限らず、従業員の給与手当や従業員の賃金手当を含む人件費の場合は、「人件費の内訳書」を用います。
出典:国税庁「売上高等の事業所別内訳書」
⑮地代家賃等の内訳書・工業所有権等の使用料の内訳書
地代家賃・権利金等の期中支払・工業所有権等の使用料について、それぞれ内訳書が存在します。たとえば「地代家賃等の内訳書(地代家賃・権利金等の期中支払の内訳を扱う)」の場合、地代家賃の区分・借地(借家)の物件の用途や所在地・貸主の名称や所在地・支払対象期間・支払賃借料などを記入します。
なお、記入する口数が100口を超える場合、金額が大きいものから100口のみを記入する形にしても問題ありません。
出典:国税庁「地代家賃等の内訳書」
⑯雑益、雑損失等の内訳書
科目・取引内容・相手先の名称や所在地・金額を記入します。
科目別かつ相手先別の金額が10万円以上のものについて記入します。ただし、税金の還付金については、その金額が10万円未満であっても全ての記入が必要です。
出典:国税庁「雑益、雑損失等の内訳書」
勘定科目内訳明細書作成時の注意点
勘定科目内訳明細書の期末残高は、貸借対照表や損益計算書の残高と一致させなければいけません。残高が一致しないと税額計算の信憑性を税務署から疑われてしまい、税務調査で指摘されるリスクが高まる可能性があります。
残高が一致しない主な原因は、転記ミスや決算書の数値の誤りなどです。特に手作業で作成する場合、転記ミスなどの人的ミスが発生する可能性が少なからず生じます。手作業で作成する際は記入した内容にミスが発生していないことを確認しましょう。
件数が100件を超える場合の記載方法
2019年4月以後に終了する事業年度から、勘定科目内訳明細書の記載方法の簡素化が認められるようになりました。勘定科目内訳明細書への記載件数が100件を超える場合は、以下の方法で記載することができます。
簡素化された記載方法
- 記載量が多くなる傾向にある勘定科目を対象に上位100件のみを記載
- 記載単位を相手先としている勘定科目を対象に、支店・事業所別の合計金額を記載
インボイス制度により勘定科目内訳明細書の様式が変更に
インボイス制度の導入により、2024年3月1日以後に終了する事業年度から勘定科目内訳明細書の様式が一部変更されました。
変更後の勘定科目内訳明細書には、「インボイス登録番号(法人番号)」を記載する項目が追加されています。この項目に取引先のインボイス番号(T+16桁)や法人番号を記載すると、勘定科目内訳明細書への取引先の名称と所在地の記載を省略できます。
出典:e-Taxホームページ「【法人の方へ】令和6年3月25日以降に、令和5年4月1日以後終了事業年度等分の法人税申告を行う方へ」
「インボイス登録番号(法人番号)」の項目が追加された勘定科目内訳明細書の種類は以下の通りです。
インボイス登録番号の記載欄が追加された内訳明細書
②受取手形の内訳書
③売掛金(未収入金)の内訳書
④仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書
⑦固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
⑧支払手形の内訳書
⑨買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
⑩仮受金(前受金・預り金)の内訳書・源泉所得税預り金の内訳書
⑫土地の売上高等の内訳書
⑮地代家賃等の内訳書・工業所有権等の使用料の内訳書
⑯雑益、雑損失等の内訳書
まとめ
法人税の確定申告を行う企業は、決算日の翌日から2ヶ月以内に、税務署へ法人税申告書の添付書類として勘定科目内訳明細書を提出しなければなりません。勘定科目内訳明細書は全部で16種類に分類され、それぞれ記入すべき内訳が異なります。
なお、勘定科目内訳明細書を作成する際は、会計ソフトを使用すると作業がラクになります。会計ソフトがあれば、勘定科目内訳明細書の作成コストが減るだけでなく、日々の経理業務の負担も減らせるでしょう。
はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
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よくある質問
勘定科目内訳明細書はどんな書類?
勘定科目内訳明細書は、企業が法人税の確定申告を行う際、法人税申告書の添付書類として税務署に提出することが義務付けられている書類です。
詳しくは記事内「勘定科目内訳明細書とは」をご覧ください。
勘定科目内訳明細書の作成方法は?
勘定科目内訳明細書は国税庁のホームページから用紙をダウンロードし、会計ソフトなどを使用して作成します。
詳しくは記事内「勘定科目内訳明細書の書き方」をご覧ください。
勘定科目内訳明細書を作成する際の注意点は?
勘定科目内訳明細書は、期末残高を貸借対照表や損益計算書の残高と一致させる必要がある点に注意が必要です。
詳しくは記事内「勘定科目内訳明細書の書き方」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
