監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

決算修正とは、すでに確定している過去の年度の決算書について、その内容を当年度の決算書で修正することです。決算の結果は企業が納める税金額にも影響するため、決算書の内容に誤りがあった場合には、正しい決算書を作成しなければなりません。
すでに確定した過去の決算に誤りがあった場合、ペナルティを課されることがあるため、適切な方法で修正が必要です。
本記事では、決算修正とは何か、どのような手順で進めるのか、決算修正を行う際の注意点などを詳しく解説します。
目次
決算修正とは
決算修正とは、すでに確定している過去の年度の決算書に誤りがあった際に、その内容を当年度の決算書で修正することです。決算書(財務諸表)には複数の書類が該当しますが、決算修正を行う書類はそのうち「財務三表」と呼ばれる、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書が該当します。
決算修正の期限
決算修正の期限は、原則として5年です。株式会社は決算書などを定時株主総会の日の1週間前の日(取締役会設置会社は2週間前の日)から5年間、本店に備え置くことを定められています。株主および債権者は、いつでもそれらの閲覧を請求することが可能です。
株式会社に求められる「適切な情報開示」の観点からも、少なくとも過去5年分の決算書に誤りが見つかった際は、決算修正を行ってください。
出典:e-Gov法令検索「会社法|第四百四十二条」
決算修正と決算整理の違い
決算修正と似た用語に「決算整理」があります。決算整理とは、決算の際に当期の収益や費用を正確に把握し、修正点があれば正し、企業の財政状態や経営成績を明らかにする作業です。
一方、決算修正はすでに申告してある決算内容の間違いを修正するものなので、決算整理とは目的や実施のタイミングが異なります。
決算修正の方法
決算修正の方法は、中小企業と大企業で異なります。
中小企業は、「中小企業の会計に関する基本要領」に基づき、過去の誤りを当期の財務諸表で修正することが認められています。具体的には、「前期損益修正益」や「前期損益修正損」といった勘定科目を使用して、当期の特別利益または特別損失として処理します。
一方、大企業の決算修正には「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用されます。過去の誤謬(ミス)を発見した場合、過年度の財務諸表を遡及修正し、利益剰余金の期首残高を修正する必要があります。
出典:国税庁「法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について」
決算修正後は税務上の修正手続きも必要
企業の規模にかかわらず、過年度の決算の誤りを修正したら、税務署への修正手続きが必要です。
収益の計上忘れ・漏れによる決算修正なら「修正申告」を、費用の計上忘れ・漏れによる決算修正なら「更正の手続き」を行います。それぞれ詳しくは次の「決算修正の手順」でしています。
決算修正の手順
決算修正の流れは、計上忘れ・漏れが「収益」か「費用」かで異なります。
以下では、それぞれのケースで「前期損益修正益/損」を用いた修正手順と、遡及修正の手順を解説します。
収益の計上忘れ・漏れがあったとき
「前期損益修正益」を用いるのであれば、以下の手順で決算修正を行います。
前期損益修正益を用いた収益の決算修正方法
- 当期の期首日付で、修正用の振替伝票を作成
- 借方へ「資産科目」、貸方へ「前期損益修正益」を記入
- 摘要欄へ、本来の取引内容がわかる情報と修正用仕訳である根拠を添付する
過年度遡及による決算修正を行うのであれば、以下の手順で修正を行います。
過年度遡及による収益の決算修正方法
- 過去の決算書の誤りをさかのぼって訂正
- 正しい金額を当期の決算書(貸借対照表、損益計算書)に反映させる
大企業はこの時、修正額が巨額であるなど投資家や利害関係者の判断に影響を与えると判断できるときは、株主や金融機関への報告が必要です。さらに上場企業であれば、有価証券報告書の訂正報告が必要になるなど、さまざまな対応が求められます。
収益の計上忘れの決算修正での税務上の手続き
収益の計上忘れがあったなら決算修正後にすみやかに修正申告を行わなければならず、これは、無申告加算税や延滞税などのペナルティの対象です。
過少申告加算税は、すでに申告した過去の決算内容に誤りがあり、追加で納税が必要であったケースに適用されます。過少申告加算税の税額は、以下の計算式で求められます。
- 過少申告加算税額 = 申告した額と本来申告すべき額の増差額 × 10%
ただし、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
申告の期限が2017年1月1日以後である税金に関しては、修正申告のタイミングが税務調査の事前通知の後であると、過少申告加算税が発生します。以下の通り、修正申告のタイミングによって過少申告加算税額は異なります。
税額増差額 | 税務調査の事前通知後かつ 税務調査前の自主的修正 | 税務調査後に指摘されて修正 |
---|---|---|
50万円以下の部分 | 5% | 10% |
50万円超の部分 | 10% | 15% |
過少申告加算税について詳しく知りたい方は、別記事「過少申告加算税とは?無申告加算税や不納付加算税との違い、計算方法、かからない場合について解説」をご覧ください。
一方の延滞税とは、過去の申告で納付が漏れていた税金があり、本来の申告期限を越えて納付するケースに適用されます。追加で納める税額に対し課せられるペナルティであり、計算式は以下の通りです。
納付までの期間 | 税率(年率) |
---|---|
納期限の翌日から 2ヶ月以内 | 年7.3% または 特例基準割合+1%(どちらか低い方) |
納期限の翌日から 2ヶ月超 | 年14.6% または 特例基準割合+7.3%(どちらか低い方) |
費用の計上忘れ・漏れがあったとき
費用の計上忘れ・漏れによる決算修正の際、「前期損益修正損」を用いるのであれば、以下の手順で修正を行います。
前期損益修正損を用いた費用の決算修正方法
- 当期の期首日付で、修正用の振替伝票を作成
- 借方へ「前期損益修正損」、貸方に「資産科目または負債科目」を記入する
- 摘要欄へ、本来の取引内容がわかる情報と修正用仕訳である根拠を添付する
過年度遡及による決算修正は、収益の計上忘れの際の修正方法と同じく、以下の手順で行います。
過年度遡及による費用の決算修正方法
- 過去の決算書の誤りをさかのぼって訂正
- 正しい金額を当期の決算書(貸借対照表、損益計算書)に反映させる
費用の計上忘れの決算修正での税務上の手続き
企業規模にかかわらず、費用の計上忘れによって過年度分の申告納税額が過大になっていたことが判明したら、「更正の請求」を行いましょう。更正の請求とは、納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合に、税金を還付してもらうための手続きです。
手続きは、更正の請求書を税務署に提出することにより行います。更正の請求書から、還付されるべき税金があると認められると税金が還付されます。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
出典:国税庁「C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求」
出典:国税庁「【申告が間違っていた場合】」
決算修正を行う際の注意点
決算修正では、内容に応じてペナルティが科せられることがあります。以下の点に注意し、適切な決算修正を行いましょう。
誤りが発覚したらすぐに申告する
決算修正で納めるべき税金が発覚したら、税務署に対して「修正申告」を行います。修正申告は期限が定められておらず、申告が遅くなればなるほど支払うべき延滞税は増えていきます。
ペナルティ額をなるべく少なくするためにも、誤りが発覚したらすぐに修正申告を行いましょう。
決算修正を繰り返すと税務署のチェックが厳しくなることも
毎年のように決算修正を繰り返していると、税務署からのチェックが厳しくなる可能性があります。
決算は人が行う作業のため間違いを100%避けることは不可能ですが、できるだけ間違いのないよう細心の注意を払って行わなくてはなりません。何度も修正を重ねると適切な会計処理が行われていないと見なされるリスクがあるため、会計ソフトの導入などで極力ミスを軽減できるようにしましょう。
まとめ
決算修正とは、すでに確定している過去の年度の決算書に誤りがあった際に、その内容を当年度の決算書で修正することです。決算修正の方法は中小企業と大企業で異なり、大企業の場合は当年度の決算書上で修正するだけでなく、過年度の決算書についても正しい金額に修正(遡及修正)する必要があります。
特に収益の計上忘れがあり、決算修正によって過去の納税額が不足していたと発覚したら、速やかに修正申告を行いましょう。修正申告が遅くなるほど、延滞税などペナルティの額が増えていきます。
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よくある質問
決算修正とは?
決算修正とは過去の年度の決算書について、その内容を当年度の決算書で修正することを指します。「前期損益修正益/損」の勘定科目や過年度遡及によって、最長で5年前まで修正が可能です。
詳しくは記事内、「決算修正とは」をご覧ください。
決算修正を行う際の注意点は?
決算修正に伴い、過少申告加算税や延滞税などが発生する恐れがあります。これらのペナルティは支払いが遅くなると金額も増えていくので、過去の決算に誤りが発覚したらすぐに申告することが重要です。
詳しくは記事内、「決算修正を行う際の注意点」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
