監修 橋爪 祐典 税理士
企業の交際費は、家計と異なり、取引を円滑に進めるうえで必要な費用を指します。日々の経理処理で頻繁に登場する一方、税務上のルールが複雑な費用のひとつです。処理を誤ると、本来は経費にできた支出が否認されたり、税務調査で思わぬ指摘を受けたりするリスクがあります。
本記事では、交際費の基本的な考え方から、他の勘定科目との違い、損金算入の上限、実務で押さえるべきポイントまで解説します。
目次
- 交際費とは
- 法人税法における「交際費等」の定義
- 国税庁が示す交際費等の範囲
- 交際費に該当する支出・該当しない支出
- 交際費に該当する支出
- 交際費に該当しない支出
- 【税務調査】交際費が否認される3つの条件
- プライベートな支出である
- 金額が不自然に大きい
- 別の勘定科目に該当する
- 交際費と似ている勘定科目との違い
- 接待交際費
- 会議費
- 福利厚生費
- 交際費の損金算入と上限金額
- 中小企業(資本金1億円以下)
- 資本金1~100億円の企業
- 資本金100億円超の企業
- 個人事業主の交際費には上限がない
- 交際費を経費処理する3つのポイント
- 領収書の保管が必須
- 商品券・ギフト券は非課税対象
- 消費税率の適切な処理
- まとめ
- はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
- よくある質問
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交際費とは
交際費とは、取引先や事業関係者との関係を円滑に進めるため、支出される費用です。交際費に該当する費用は、一定の条件を満たすことで、税務上の損金(経費)に算入できます。
ただし、接待や贈答品の支出すべてが、交際費となるわけではありません。交際費の定義や範囲について、以下の観点から解説します。
- 法人税法における「交際費等」の定義
- 国税庁が示す交際費等の範囲
交際費の基礎的な内容については、関連記事をご覧ください。
【関連記事】
勘定科目の基礎知識:交際費とは
法人税法における「交際費等」の定義
税特別措置法第61条の4によると、交際費の定義は「事業に関係のある者に対する接待や贈答などの行為に伴う支出」です。判断基準として、3つの要件が設けられています。
| 要件名 | 内容 |
|---|---|
| 相手方要件 | 取引先や仕入先、株主、役員など、事業に直接または間接に関係する者に対する支出である |
| 行為要件 | 接待・供応・慰安・贈答など、交際的な行為に該当する支出である |
| 目的要件 | 取引関係の維持や円滑化など、事業目的に基づいて支出されている |
上記すべてを満たす場合に限り、交際費として扱われます。
国税庁が示す交際費等の範囲
国税庁が示す交際費等の範囲は、法人税法で定められた定義を、実務で判断する際の考え方を示したものです。事業関係者に対する接待や贈答などの行為であれば、原則として交際費等として整理します。その後、税務上の取り扱いを判断するのが基本です。
このような姿勢をとる理由は、私的支出や便宜的な科目振替を防ぐためです。交際費等として事業に必要な支出のみを計上し、経費処理の公平性を保つことが、国税庁の判断基準となります。
交際費に該当する支出・該当しない支出
交際費として処理すべき支出と、それ以外の科目に振り分けられる支出を、区分して紹介します。原則的な考え方に加え、特例として認められる飲食費の扱いを押さえることで、計上時の勘定科目を適切に選択できるでしょう。
交際費に該当する支出
事業に関係のある者に対して、下記の支出を行った場合は、原則として交際費に該当します。
- 接待
- 供応
- 慰安
- 贈答
上記に該当する支出で、1人あたり10,000円を超える飲食費は、交際費に該当します。この場合、法人の規模に応じて損金算入が制限されます。飲食を伴わない支出については、10,000円以下でも交際費扱いになります。
また、下記の支出も、交際費として認められます。
- ゴルフ接待
- 観劇
- 旅行への招待
- 結婚祝金
- 香典
なお、個人事業主の場合、法人のように交際費の計上金額に上限はありませんが、事業との関連性が認められる範囲に限り、必要経費として認められます。
交際費に該当しない支出
交際費に該当する行為であっても、税務上の特例や支出の性質により、交際費から除外されるケースがあります。たとえば、「飲食費の特例」に該当する支出は、1人あたり10,000円以下であれば会議費などとして処理可能です。
また、下記の場合は、交際費以外の勘定科目を使います。
| 勘定科目 | 内容 |
|---|---|
| 会議費 | 社内外の打ち合わせや会議に通常必要とされる茶菓・弁当代などの費用 |
| 福利厚生費 | 全従業員を対象とした忘年会、社員旅行など、社会通念上妥当な範囲で行われる社内行事の費用 |
| 広告宣伝費 | 不特定多数を対象に配布するカレンダーやノベルティなど、販売促進や認知向上を目的とした費用 |
このような処理を適用するためには、領収書に参加者・人数・目的を明確に記録し、適切に保存することが不可欠です。
交際費に該当しない支出に関しては、関連記事でも解説しています。
【関連記事】
経費精算のルール(規定)やマニュアルを設定するには?
【税務調査】交際費が否認される3つの条件
交際費として計上した支出は、次の条件に該当する場合、税務調査で否認されるリスクがあります。
- プライベートな支出である
- 金額が不自然に大きい
- 別の勘定科目に該当する
プライベートな支出である
事業との関連性を説明できない私的な飲食代・遊興費は、交際費と認められません。事業遂行上の必要性を説明できない交際費があった場合、否認の対象となります。
加えて、支出の目的が「役員個人の支払い」と判断された場合、役員に対する給与として認定されるリスクもあります。法人側では損金不算入となり、法人税の負担が増えるうえ、役員個人にも所得税や住民税が課税されるでしょう。
税務調査では、領収書の日付や場所、支出内容が業務実態と整合しているか、細かく確認されます。「誰と」「何の目的で」行った支出なのか、客観的に説明できるよう記録を残しましょう。
金額が不自然に大きい
支出額が、社会通念上妥当な範囲を大きく超える場合、交際費としての正当性が疑われます。取引先との会食であっても、税務調査で否認される可能性が否定できません。
交際費とは、事業を円滑に進めるための常識的な支出です。過度に高額な接待は、特定の個人に対する利益供与や、私的なぜいたくとみなされやすくなります。たとえば、高級料亭での1人あたり数万円の飲食や、二次会・三次会と続く多額の支出は、通常の交際費として説明するのが困難です。
このようなリスクを避けるには、自社の規模・業界水準を踏まえた交際費の目安を定め、支出の妥当性を説明することが重要です。
別の勘定科目に該当する
損金算入制限を避けるため、交際費に該当する支出を別の勘定科目で処理すると、税務調査で否認されます。税務署の判断基準は、勘定科目の名称ではなく、支出の実態です。
実態が接待であるにもかかわらず会議費として処理した場合や、特定の役員のみが参加する飲食を福利厚生費とした場合は、科目誤りと判断されやすくなります。判断に迷う支出は、無理に他科目へ振り替えず、交際費として正しく処理しましょう。
交際費と似ている勘定科目との違い
交際費と似ている勘定科目は、次の3つです。
- 接待交際費
- 会議費
- 福利厚生費
接待交際費
「接待交際費」は税法上、「交際費等」と同じ意味として扱われます。接待や贈答といった支出の性質をわかりやすく表現するため、会計ソフトや社内ルール上で、便宜的に用いられている名称です。したがって、仕訳時に「交際費」と「接待交際費」のどちらを選ぶか、悩む必要はありません。
社内ルールで、表記を一方に統一し、継続して使用しましょう。支出の内容が、交際費の条件を満たしていれば、損金不算入額として計算できます。計上の際は、補助科目を活用して「飲食代」「贈答品」と表記すると、税務調査時の説明がスムーズになります。
会議費
会議費は交際費と異なり、限度額がありません。さらに、事業に必要な支出であれば、全額を経費として計上できます。
従来の会議費は、会議中の茶菓や弁当代が中心でした。しかし、2026年現在は飲食費の特例により、取引先との会食であっても会議費に計上できます。1人あたり10,000円以下であれば、会議費としての処理が可能です。
ただし、特例の適用には、参加者や目的など必要事項の正確な記録・保存が必要になります。
福利厚生費
福利厚生費と交際費は、次のポイントで区別できます。
- 対象者が全従業員であるか
- 参加機会の平等性が保たれているか
交際費の目的は、取引先や役員などへの接待です。一方、福利厚生費は従業員全体の慰労や労働環境の向上を目的とします。
そのため、一部の役員・限られた社員だけが参加する飲み会やゴルフ、旅行などは福利厚生費として認められません。
福利厚生費として計上できるのは、忘年会や歓送迎会、社員旅行などです。ただし、社内行事の案内や参加者リストを保存し、会社全体の公式行事であることを説明する必要があります。
交際費の損金算入と上限金額
損金算入できる交際費の金額には、上限があります。企業規模ごとの上限金額を、下記の場合に分けて見ていきましょう。
- 中小企業(資本金1億円以下)
- 資本金1~100億円の企業
- 資本金100億円超の企業
中小企業(資本金1億円以下)
資本金1億円以下の中小企業は、交際費等の損金算入について、もっとも手厚い特例措置を受けられます。上限金額は、下記のいずれか有利な方を選択可能です。
- 年間800万円までの金額(定額控除限度額)
- 接待飲食費の50%相当額
接待飲食費が年間1,600万円を超える場合は、50%相当額の制度が有利です。しかし、実務では接待飲食費が高額になるケースは少ないため、大半の企業が定額控除限度額を利用します。
800万円までの定額控除限度額では、飲食費だけでなく、贈答品や接待費用も経費処理できるのが特徴です。
資本金1~100億円の企業
資本金が1〜100億円以下の企業には、年間800万円の定額控除は適用されません。この規模の企業が利用できるのは、接待飲食費の50%を損金算入できる制度のみです。取引先との会食などの飲食費は、半額まで経費として認められます。しかし、贈答品やゴルフ、旅行など飲食を伴わない支出は、損金に算入できません。
経理実務では、飲食費とそれ以外の交際費を、明確に区別する必要があります。なお、1人あたり1万円以下で会議費として全額損金算入した飲食費は、接待飲食費の50%控除の対象に含まれません。
資本金100億円超の企業
資本金が100億円を超える企業では、原則として交際費等は損金に算入できません。この条件には、資本金5億円以上の法人における、100%子会社のようなみなし大企業も含まれます。
したがって、大企業では、交際費計上による節税効果が期待できません。実務では、「交際費」に該当する支出を、下記のいずれかに振り分ける必要があります。
- 会議費(1人あたり1万円以下の飲食費)
- 福利厚生費(全従業員が対象)
- 広告宣伝費(不特定多数が対象)
上記の要件を満たさない場合、わずかな記載漏れや判断ミスでも交際費と認定されます。支出を損金に算入するために、適切な振り分けを行いましょう。
個人事業主の交際費には上限がない
個人事業主の交際費には、法人のような金額上限は設けられていません。法人の損金上限額が定められているのは、法人税法に「交際費は原則損金不算入」という厳しい前提があるためです。
しかし、個人事業主の税金を定める所得税法には、損金算入制限の規定がありません。事業を行ううえで必要な支出であれば、原則として全額を経費計上できます。
ただし、上限がないからといって、すべてが経費になるわけではありません。個人事業主は事業とプライベートの区別が曖昧になりやすく、税務調査では事業との関連性が重点的に確認されます。否認を防ぐには、誰と何の目的で支出したのか記録し、事業に必要な支出だけを計上することが重要です。
交際費を経費処理する3つのポイント
交際費を経理処理する際は、以下のポイントを押さえましょう。
- 領収書の保管が必須
- 商品券・ギフト券は非課税対象
- 消費税率の適切な処理
領収書の保管が必須
交際費を適切に経費処理するには、領収書の保存が不可欠です。宛名が曖昧な領収書や、内容が不明瞭な支出は、税務調査で否認される可能性があります。
とくに、1人あたり1万円以下の飲食費を会議費として損金算入する場合、領収書の保管だけでは足りません。下記の項目を列挙し、漏れなく記録する必要があります。
- 参加した取引先等の氏名・名称
- 参加人数
- 金額
- 飲食店の名称と所在地
参加者や目的を明確に記録することが、税務リスクの回避につながります。
商品券・ギフト券は非課税対象
取引先へのお中元や謝礼として、商品券やギフト券などを購入した場合は、非課税対象になります。消費税法上、商品券やギフト券は「物品切手等」です。商品券が商品やサービスと交換されたタイミングで消費税が発生するため、商品券そのものに消費税は課税されません。
誤って課税仕入として処理すると、消費税を過少申告するリスクがあります。勘定科目は「交際費等」になりますが、会計ソフト上では「非課税」や「対象外の税区分」を選択しましょう。補助科目に「贈答品(商品券)」や「金券」を作成することで、経常ミスを防げます。
商品券の計上方法については、関連記事もご参照ください。
【関連記事】
商品券の勘定科目は?目的別の仕訳方法や会計処理
消費税率の適切な処理
交際費を処理する際は、適用される消費税率を正しく判定する必要があります。取引先との店内飲食は、標準税率です。しかし、手土産として渡す食品やテイクアウト品には、軽減税率が適用されます。これらが混在する領収書は、税率ごとに区分して入力しなければなりません。
また、1人あたり1万円の判定は、税込経理か税抜経理かによって、基準額が異なります。税抜経理の場合は、税抜金額での判断が必須です。さらに、免税事業者の店舗利用時には、仕入税額控除の経過措置も関係します。
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まとめ
交際費は、法人税法や消費税法により厳密なルールが定められています。金額や相手・目的・勘定科目の選択を誤ると税務調査で否認されかねません。一方で、会議費や福利厚生費、飲食費の特例などを正しく理解すれば、適法に税負担を抑えることも可能です。
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よくある質問
上限800万円はいつまで続く制度?
中小企業の交際費を年間800万円まで損金算入できる制度は、期限付きの「租税特別措置法」に基づく特例です。これまで2〜3年ごとに延長が繰り返されており、令和6年度改正でも延長されました。
しかし、将来の継続は保証されていません。経営者や経理担当者は、毎年の税制改正大綱を確認し、制度変更に備えた資金計画を立てることが重要です。
詳しくは「交際費の損金算入と上限金額」をご覧ください。
社員だけの慰労会は交際費?福利厚生費?
社員向けの慰労会が福利厚生費として認められるには、「対象者の公平性」と「金額の妥当性」が必須です。全従業員を対象とし、参加機会が平等であれば、忘年会などは福利厚生費として処理できます。
一方、役員のみや特定グループ限定の会合は、交際費扱いです。社内規程や参加者記録を残し、会社行事であることを客観的に示す必要があります。
詳しくは「交際費に該当する支出・該当しない支出」をご覧ください。
オンライン飲み会は交際費になる?
オンライン飲み会も、実態として同時に飲食を共にしていれば「飲食費」として扱われます。1人あたり1万円以下で、参加者や日時の記録があれば、会議費として全額損金算入が可能です。
ただし、単に自宅へ飲食物を送るだけで、会合実態がない場合は「贈答」とみなされます。このような場合は「交際費」になるので、画面キャプチャなどで開催実態の証明資料を残すと、税務トラブルを回避できるでしょう。
詳しくは「交際費に該当する支出・該当しない支出」をご覧ください。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
