監修 橋爪 祐典 税理士
企業会計原則とは、企業が財務諸表を作成する際の判断軸となるルールです。一般原則や損益計算書原則、貸借対照表原則を正しく理解することで、監査や決算の場面でも一貫した説明が可能になります。
本記事では、企業会計原則の全体像や7つの一般原則、8つ目の原則である「重要性の原則」について解説します。併せて、企業会計基準・会計公準の内容や、覚え方も紹介するので、実務の参考にしてください。
目次
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企業会計原則とは
企業会計原則とは、日本の企業会計において、基本的な考え方の最高規範です。1949年に公表されて以来、会社法や金融商品取引法が求める「一般に公正妥当と認められた企業会計の基準」の中核となっています。
新しい取引や明確な基準が存在しない場面では、企業会計原則を最終的な判断材料とします。また、投資家や利害関係者に企業の実態を伝えるためには、原則に立ち返った会計処理が欠かせません。そのため、企業会計原則を正しく理解しておくことは重要です。
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企業会計原則の3要素
企業会計原則は、次の3要素から構成されます。
- 一般原則
- 損益計算書原則
- 貸借対照表原則
一般原則
一般原則とは、企業会計におけるすべての会計処理の判断基準となる、基本的な考え方です。損益計算書や貸借対照表の土台であり、「真実性の原則」「正規の簿記の原則」などで構成されています。具体的な処理手順を示すものではなく、会計判断に迷った際に立ち返る指針です。
実務では、新しい取引や明確な基準が存在しない場面に直面することも少なくありません。そのような場合、一般原則に照らして判断することで、会計処理の妥当性を説明しやすくなります。
中小企業の実務では、法人税法に基づく税務会計が中心となることもあります。しかし、上場準備や資金調達の場面では、一般原則をはじめとする財務会計の考え方が必要です。
損益計算書原則
損益計算書原則とは、一定期間の経営成績を正しく示すため、収益と費用の認識方法を定めた考え方です。現金の動き・損益の認識を切り分け、経済的な実態に基づく計算によって、損益を捉えます。
損益計算書原則の考え方では、費用は「発生主義」、収益は「実現主義」が基本です。出ていく費用は取引の時点で認識し、収益は回収の確実性が認められた段階で認識することで、期間損益を適切に把握できます。
実務では、未払費用の計上漏れや前受収益の管理が重要です。適切に処理されないと、利益が過大または過小に表示され、財務諸表の信頼性が損なわれます。月次決算の段階から、期間対応の考え方を意識した管理が欠かせません。
貸借対照表原則
貸借対照表原則とは、企業の財政状態を正しく示すための原則です。決算日時点での安全性や支払能力を把握できるよう、資産・負債・純資産の区分や配列、評価の考え方を定めています。目的は、投資家や金融機関が正しく企業の財務状況を把握できるよう、財務諸表の信頼性を確保することです。
貸借対照表原則では、資産と負債は1年基準により流動と固定に分類し、換金性の高い順に並べます。資産評価では、取得原価主義が基本です。回収不能や価値低下の可能性がある場合は、評価減や引当金を計上し、資産の過大表示を防ぎます。
一般原則は7つの原則で構成される
企業会計原則の一般原則は、次の7要素から構成されます。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
会計処理の基本については、関連記事も参考にしてください。
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会計処理とは?経理処理・財務処理との違いや日次・月次・年次の作業を解説
真実性の原則
真実性の原則とは、企業の財務諸表が「経済的実態を適切に表している」ことを求める考え方です。企業会計原則の中でも、最上位に位置づけられています。
真実性の原則を理解することで、財務諸表の信頼性を高め、利害関係者との健全な関係を築けます。
正規の簿記の原則
正規の簿記の原則とは、取引の網羅性と検証可能性を確保する考え方です。企業会計原則においては、財務諸表の信頼性を支える土台として位置づけられています。
網羅性とは、企業活動に伴う取引を漏れなく記録することです。一方、検証可能性とは、仕訳の根拠となる証憑が存在し、第三者から内容が閲覧できる状態を指します。
正規の簿記の原則に従うと、一部の取引だけを帳簿に載せない処理や、意図的に計上時期をずらす行為は認められません。また、請求書が届いていなくても、役務提供が完了していれば費用を認識する必要があります。
資本取引・損益取引区分の原則
資本取引・損益取引区分の原則とは、株主から拠出された資本と、事業活動によって生じた利益を区別する原則です。資本は企業が維持すべき元本であり、利益は分配の対象となる成果にあたります。両者の区別は、財務の健全性を維持するうえで必須です。
資本と利益を混同すると、配当可能額の算定を誤るおそれがあります。たとえば、増資や株式発行に伴う取引で、元本を取り崩して配当を行うことは「違法配当」にあたります。発行に要した費用は資本金から直接控除せず、定められた区分で処理しましょう。
明瞭性の原則
明瞭性の原則とは、財務諸表の数値だけでなく、前提・背景となる情報を分かりやすく開示することです。情報を漏れなく伝えることで、利用者の誤った判断を防ぎます。
決算書は結果を示すだけでなく、意思決定を支える説明資料としても機能します。減価償却の方法や、棚卸資産の評価基準などは、利用者が前提条件を理解できるよう、記載が必要です。さらに、決算日後の重要な出来事や、将来に影響を与える可能性のある事項も開示しましょう。
数値だけでは伝わらない情報を補い、透明性を高めることが、明瞭性の原則の目的です。
継続性の原則
継続性の原則とは、一度採用した会計処理の方法・手続きを、継続して使うことを求める原則です。財務諸表は複数の期間を比較して利用されるため、処理方法が頻繁に変わると、数値が増減した要因を正確に把握できません。
利益を操作するための、恣意的な会計方針変更は、原則として認められません。会計方法の変更には、事業内容の大きな変化や、会計基準の改正など、合理的な理由が必要です。このような場合は、変更によって財務諸表の数値にどのような影響が生じるのかを、論理的に整理して説明することになります。
保守主義の原則
保守主義の原則とは、リスクが生じた場合を考慮し、慎重な会計処理を求める考え方です。将来の不確実性に備えることで、財務諸表の信頼性を高める役割があります。
保守主義の原則では、損失が予想される場合は早めに反映し、見込み段階の収益は計上しないのが基本です。将来の支出や損失が見込まれる場合に、当期の費用として計上することで、期間損益を適切に示します。
ただし、利益を意図的に低く見せる行為には、保守主義の原則が認められません。客観的な根拠に基づいた、適正な見積りが必要です。
単一性の原則
単一性の原則とは、提出先や目的が異なる財務諸表であっても、同一の会計帳簿に基づいて作成しなければならない原則です。様式や表示科目が異なる場合でも、根拠となる会計データは、共通している必要があります。
株主総会用や税務申告用などで、財務諸表の表示形式を変えることは可能です。しかし、利益額や純資産が変わることは認められません。
単一性の原則は、二重帳簿を禁止し、会計記録の信頼性を守ることが目的です。利益調整を目的とする帳簿を別個に作成したり、融資を有利に進めるために実態と異なる決算書を用意したりする行為は、原則違反にあたります。
【8つ目】重要性の原則とは
一般原則は、公式に7つとされています。しかし、実務では注解で示された「重要性の原則」を含めて、8つの原則として運用するケースも珍しくありません。
重要性の原則とは、厳密な会計処理を簡便化する考え方です。企業の財政状態や経営成績に与える影響が軽微な項目を、すべて厳密に管理するのは難しくなります。たとえば、少額の消耗品購入は、軽微な項目として会計処理の省略が可能です。
ただし、安易な省略を正当化する運用は認められません。定量的な基準や、内容の基準を定め、組織として一貫した判断を行うことが重要です。
企業会計原則の覚え方
企業会計原則を効率よく覚える方法として、一般原則7つの頭文字を用いた語呂合わせが広く使われています。代表例が「しせしめけほた」「しんせいしめいけいほたん」です。このような語呂合わせは、各原則の名称を整理するのに有効です。
ただし、実務に携わる立場では原則の内容を理解する必要があるため、語呂合わせで名称を覚えるだけでは不十分です。
実務においては、決算業務の流れと各原則を結び付けて理解しましょう。仕訳や帳簿作成では正規の簿記や継続性、期末処理では保守主義、開示段階では真実性や明瞭性、と意識します。原則と対応する業務を意識することで、効率的な暗記が可能です。
企業会計原則を守らないリスク
企業会計原則は、法律ではないため、違反しても刑事責任には問われません。しかし、企業会計原則を軽視すると、企業経営に深刻な影響を及します。
会計は、企業と外部の利害関係者をつなぐ共通言語です。原則に沿わない決算書は、外部から信頼できない資料と判断されます。たとえば、上場準備企業では監査法人から適正意見を得られず、計画中断を余儀なくされるリスクが否定できません。
また、金融機関との取引でも、粉飾や逆粉飾が判明すれば格付けが下がります。資金調達を希望しても、審査通過は難しくなるでしょう。
企業会計原則の遵守は、努力目標ではありません。企業が、市場に参加し続ける前提条件と考えるのが適切です。
企業会計原則と企業会計基準の違い
企業会計基準は、特定の取引や論点について、より具体的な処理方法を定めたルールです。企業会計原則が大枠の考え方を定め、企業会計基準が詳細な点を詰める関係にあります。両者の違いを、次のポイントから見ていきましょう。
- 会計公準とは
- 会計公準の原則3つ
企業会計原則と企業会計基準を含む、財務会計の全体像については、関連記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
財務会計とは?目的・機能・管理会計との違いについてわかりやすく解説
会計公準とは
会計公準とは、企業会計原則や企業会計基準が成り立つための、基礎的な前提条件です。企業会計原則を会計の憲法、企業会計基準を具体的な法律とするならば、会計公準は両者の土台となる共通認識になります。
会計公準がなければ、企業の取引を記録したり、一定期間ごとに損益を計算したりする必要性が論理的に説明できません。たとえば、会社と経営者を別人格として扱う前提がなければ、会社の資金・経営者個人の資産区別がなくなります。同時に、財務諸表の存在意義はなくなるでしょう。
会計公準は、個別の会計処理を直接定めるものではありません。しかし、会計判断の前提として常に存在し、会計判断の補助的な役割を担っています。
会計公準の3つの原則
会計公準の原則は、次の3つです。
- 企業実体の公準
- 継続企業の公準
- 貨幣的評価の公準
企業実体の公準は、企業を株主・経営者と独立して捉えることです。経営者個人の資産や取引と企業の取引を明確に区別でき、純粋な企業活動の成果を測定できます。
継続企業の公準は、企業が将来にわたって事業活動を継続する前提になります。建物や設備を耐用年数にわたって費用配分する減価償却や、繰延資産の計上といった、期間をまたぐ会計処理の正当化に必須の前提です。
貨幣的評価の公準は、企業の取引や財政状態をすべて金額で測定し、表示する前提です。性質の異なる資産や取引を共通の尺度で集計し、比較できるようになります。
まとめ
企業会計原則は、企業の財政状態や経営成績を正しく伝えるうえで必要な共通ルールです。一般原則・損益計算書原則・貸借対照表原則の、3つの原則を軸に構成されています。なかでも、一般原則は7つの基本原則と、実務上重視される重要性の原則によって、会計判断の指針を示すものです。
また、企業会計基準や会計公準と併せて理解することで、会計ルールの階層構造が明確になります。企業会計原則を正しく理解し遵守することで、監査対応や資金調達、企業の信頼性確保で好印象を与えられるでしょう。
企業会計原則を正しく理解しても、日々の仕訳や決算業務で、迷うことは少なくありません。会計処理の判断を安定させるには、原則や基準に沿った実務フローを無理なく運用できる環境が重要です。
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よくある質問
企業会計原則に関する、よくある質問を紹介します。
企業会計原則の7つの原則とは?
企業会計原則の第一部「一般原則」には、下記7つの原則が定められています。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
実務では、個々の会計処理がどのような原則に基づくか、説明できることが重要です。
詳しくは記事内「一般原則は7つの原則で構成される」をご覧ください。
企業会計原則の覚え方は?
代表的な覚え方は、7つの原則の頭文字を並べた語呂合わせ「し・せ・し・め・け・ほ・た」「しんせいしめいけいほたん」です。
実務では、原則名だけでなく、業務プロセスと結び付けて理解する必要があります。日々の仕訳では正規の簿記、決算時は保守主義や継続性のように、使われる場面を意識すると覚えられます。
詳しくは記事内「企業会計原則の覚え方」をご覧ください。
企業会計原則は7つ?8つ?
公式には、一般原則は7つです。しかし、実務では「重要性の原則」を加えた8つとして扱うケースもあります。制度上は7つ、運用上は8つという整理を理解しておくと、監査対応や実務判断で混乱しません。
詳しくは記事内「【8つ目】重要性の原則とは」をご覧ください。
参考文献
▶ 総務省「【総論】総論関係」に係る検討」
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
