会計の基礎知識

資金繰り表の作り方を解説

最終更新日:2021/08/26

資金繰り表の作り方を解説

新型コロナウイルス感染症が拡大した影響を受け、多くの会社がキャッシュフローを適切に回す事ができず、経営難の危機に直面しています。会社を経営するうえで、最も気を使わなければならないのが「資金」です。いくら帳簿上で売上があったとしても、キャッシュフローがうまくいかず手元の現金が少なくなる、いわゆる「資金ショート」を起こすと、取引先への支払いが滞るなど、大きな問題が発生しかねません。

このような事態を避けるためにも、普段から自社の資金繰りを正確に把握しておく必要があります。今回ご紹介する「資金繰り表」を活用することで、現金収支が明確になり、このような事態を回避することができます。

資金繰り表は、よく「キャッシュフロー計算書」と混同されがちですが、過去のキャッシュ(資金)の入金・出金といった流れを一定期間でまとめて計算するキャッシュフロー計算書に対し、将来の収入と支出の流れを把握するために用いられるのが資金繰り表であるため別物であることを覚えておきましょう。

本記事では、資金繰り表を作成するメリットから資金繰り表の種類、作り方まで詳しく解説します。

目次

資金繰り表とは

資金繰り表とは、企業や個人が一定期間においての現金の収入や支出を表にしたもので、資金不足を防ぐための調達予定表でもあります。現金の収支予定を把握することで、資金ショートによる黒字倒産を避けることができます。

この記事の内容はyoutubeでも解説しています。文字だけでなく動画で資金繰り表を学びたい方は以下のリンクからお進みください。

黒字なのに現金がない!?何をすれば?資金繰り改善

資金繰り表が会計帳簿とは別に必要な理由は会計とキャッシュのズレにあります。

資金ショートの原因とは

そもそも、資金繰り表が会計帳簿とは別に必要な理由は、会計とキャッシュのズレにあります。

会計とキャッシュのズレとは、会計上、入金が発生しても必ずしも「売上」と見なされる事はなく、同様に出金が発生しても必ずそれが「費用」になるとは限りません。これにより利益が出ていたとしてもお金がないという状況が発生することがあるのです。

そのような会計とキャッシュのズレが起きる主な要因には、以下の4つがあります。

  • 掛取引
  • 借入金
  • 固定資産
  • 在庫

1つ目の掛取引とは、支払われることを前提として予め商品・サービスを提供することをいいます。

掛取引では売り手が売上を認識するタイミングは、「入金があった時」ではなく、「商品を届けた時」になり、買い手が費用を認識するタイミングは「振り込みを行った時」ではなく、「商品が届いた時」になります。

2つ目の借入金とは、企業が銀行などの金融機関から資金調達を行って、借り入れた資金のことです。つまり利息を上乗せして借入金の返済を行ったとしても「返済は費用にならない」という事です。

例として、A社が毎月200万円の返済を約束して1000万円の借り入れを行います。その後、毎月200万円を返済するので、200万円の出金がありますが、借りているものを返しているだけなので、費用には計上できません。一定期間の会社の損益を示す損益計算書を見て利益が出ていると思っていても、実際のキャッシュは返済分がさらに出ていくこととなります。

3つ目の固定資産ですが、「減価償却によりズレが生じる」という事です。減価償却とは、10万円以上の長く使う高額な資産を使用可能な期間にしたがって、分割して「費用」を計上する会計処理のことを指します。

長期間に渡って費用を計上することによって、資産の価値を徐々に減額させます。例えばA社がパソコンを32万円で購入しました。それにより32万円の出金が1度に発生しましたが、会計上では「減価償却」を行わなければなりません。パソコンは4年間使用(耐用年数)するので、4年間にわけて費用計上しなければならないという事です。耐用年数は国税庁が定める「耐用年数表」にしたがっています。

毎年の費用については以下の式で算出します。

【計算式】
パソコン代(32万円)÷ 使用年数(4年)= 毎年費用計上するお金(8万円)

上記の様に購入した年の実際の出費は32万円ですが、減価償却することによって会計上は8万円の費用として計上されます。

4つ目は在庫です。在庫はいずれ、売れると「利益」となります。つまり「消費されるもの」ではなく「換金できるもの」と捉えられ、売れるまでは費用計上はできずに「資産」の扱いになるという事です。

そのため、100万円分の在庫を仕入れただけでは、全額費用として計上できず、資産(売れなかった分)+経費(売れた分)=100万円になるという事です。

このように、会計とキャッシュのズレがあることから、たとえ会計帳簿を適切につけていたとしても、資金がショートする可能性は別で確認しておく必要があります。

自社のキャッシュの将来を予測し、現状をリアルタイムに把握する事が資金ショートを回避する上で最も重要なことですが、それを把握するために重要なのが「資金繰り表」です。

資金繰り表をつくるメリット

資金繰り表をつくることは、資金の収支予定を把握することに繋がります。どれだけ現金が流入し、流出したかを示す財務諸表である「キャッシュフロー計算書」は「貸借対照表」と「損益計算書」を作成した上で過去の現金の流れを追っていくものです。

反対に「資金繰り表」は将来においての資金の収支予定であるため、過去ではなく将来を予想する表となります。将来の資金繰りを予想することで、帳簿上の利益がでていても黒字倒産する資金ショートの可能性を探ることができます。

資金ショートを予想できれば、売掛債権を買い取ってもらったり、売掛債権に保険をかける「ファクタリング」を使い現金化を急ぐことや、買掛金の支払いを先伸ばしにするといった対応を取ることができます。

とはいえ通常、資金繰りは手元の運転資金でまわすことが望ましく、短期借入金で一時的な資金不足の解消をすれば問題が解決するわけではありません。資金繰り表を作成した上で資金不足の原因を究明し、対応策を講じなければ、同じように近い将来また資金不足となってしまうことも考えられます。

資金繰り表を作成することは、資金の流れを把握するだけでなく、売掛金が回収できずに貸倒損失となっている場合や、売れ筋商品だったはずが予定通りに販売できずに過剰在庫や不良在庫となっている場合など、資金不足の原因を特定し、今度の経営戦略を考える上での判断材料としても活用されます。

【関連記事】
資金繰り改善の基礎知識

資金繰り表のタイプ

資金繰り表には、過去の営業実績から求める「実績資金繰り表」と、月次経営計画から求める「予定資金繰り表」の2つがあります。

もしいま資金繰り表を作成していないのであれば、過去の営業実績から求める実績資金繰り表から問題点を洗い出し、そこで出た問題点をクリアにしていくことが経営改善に繋がります。

資金繰り表の作成に必要なもの

実績資金繰り表を作成するためには、月次試算表、現金出納帳、預金出納帳または預金通帳、手形帳、借入金返済明細書を準備しておきます。

実績資金繰り表は、基本的には、月単位の仕分けデータから現金預金取引を抽出して作成しますが、現金出納帳と預金出納帳から作成することもできます。

月次試算表

月次試算表とは、企業が自社の経営状況を把握するために、会計期間を1ヵ月に区切り作成する月単位の試算書のことです。これにより、回収ができていない売掛金や不良在庫の状況など、抱えている課題や問題点を明確に数値として把握することができるようになります。

現金出納帳

現金出納帳とは、「お金の入出金を記録」し、「帳簿の残高と現金残高が一致しているかどうかを確認する」帳簿のことです。

詳しくは下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】
現金出納帳とは? 作成するメリットや記載項目を解説

預金出納帳

預金出納帳とは、「預金口座への入出金を記録し残高を管理する」帳簿のことです。詳しくは下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】
出納帳とは? 意外と知らない出納帳の種類や代表的な管理帳簿の基礎知識

資金繰り表は現金出納帳や預金出納帳から作成することも可能ですが、業務全体の資金の流れをしっかり把握するために必要な帳簿類は確認するようにしましょう。

資金繰り表をエクセルでつくる手順

資金繰り表はエクセルで簡単に作成することが可能です。作成手順を説明します。

1.Excelの新規作成で、下記のように各項目を入力します

Excelでの資金繰り表の作り方1

2.罫線を引いたり、フォントを太くして使いやすいようにレイアウトします

Excelでの資金繰り表の作り方2

3.計算式を入力します

Excelでの資金繰り表の作り方3

4.それぞれの金額を入力

Excelでの資金繰り表の作り方4

上記の資金繰り表は簡易的なものですが、必要に応じて勘定科目の追加をしていくようにします。一番上には前月繰越がはいります。その下に営業収支と財務収支の2つに分かれています。

営業収支では本業においてどれだけ現金を生み出しているのか、どれだけの経費がかかっているのかを示しています。営業収支はプラスになっていることが当然ですが、マイナスとなっている場合には早急な対策が必要となります。

プラスになっていたとしても、一時的なものなのか継続しているのか、利益につながっているのかなど様々な視点から検討する必要があるので注意が必要です。営業収支がマイナスであれば対策をしていきますが、プラスとなっていても油断はしないようにしましょう。

財務収支では主に借入金の収支となります。財務収支がプラスとなっていれば借入金が増加したことになります。

財務収支がマイナスとなっていれば借入金を返済していることになり、営業収支のプラスで財務収支のマイナス、つまり借入金を返済していくのが理想となります。財務収支での借入金に頼った営業をしていくと、返済金がどんどん増加してしまい、本業の営業収支で返済が不可能となってしまいます。そうなる前には対策をしなければなりません。

まとめ

資金繰り表をつくることで、過去の実績から資金不足となっている原因がわかります。原因がわかれば対策もたてることができますし、今後の予定資金繰り表をつくることで将来の資金不足を予想することもできます。

売上もあり、利益がでているはずなのに、お金が残らない。もしくは不足するような事態になっているのであれば早急に資金繰り表を作成し原因がどこにあるのかを確認しましょう。資金繰り表をつくることで資金の流れ、営業収支や財務収支の状況などがわかり、経営を立て直す指標となるはずです。

資金繰り表を無料ダウンロード

この記事に出てきた資金繰り表(Excel版)をこちらからダウンロードできます。日々の資金繰り管理にお役立てください。

freee会計

freee会計

freee会計なら会計帳簿作成はもちろん、日々の経理業務から経営状況の把握まで効率的に行なえます。ぜひお試しください!