人工代(にんくだい)とは、建設業で使われる用語で、作業員1人が1日(8時間)働いた際に発生する費用を指します。
見積書や請求書の作成に欠かせない要素の1つであるため、人工代の正確な意味や相場、計算方法を理解することが大切です。
本記事では、人工代の計算方法や相場額、各書類への書き方までわかりやすく解説します。
目次
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人工代とは
人工代(にんくだい)とは、建設業で使われる用語で、作業員1人が1日(8時間)働いた際に発生する費用を指します。元々は職人の賃金を計算するために使われてきた言葉ですが、現在では建設業界全体で広く用いられています。
人工代には単純な日当だけでなく、技能料や経験に応じた技術料が含まれることもあり、見積書や請求書などに欠かせない要素です。
正確な人工代を把握することで、施工コストや予算管理の精度を高められます。
人工代と人件費の違い
上述したように、人工代は作業員1人が1日(8時間)の作業に対して支払われる費用のことです。
一方、人件費とは雇用主が従業員の労働に対して支払う費用の総額で、給与や賞与だけでなく、各種手当・社会保険料・福利厚生費など、従業員が働く上で発生するすべての費用を指します。
たとえば、人件費には事務員の給与や福利厚生費も含まれますが、人工代は現場で実際に作業を行う作業員のみが対象となります。
人工代の相場
人工代の一般的な相場は、1人工あたり15,000〜25,000円程度です。ただし、相場は一律ではなく、地域や職種によって異なります。
特に型枠大工や鉄筋工などの専門職では、25,000円前後に達することもあります。
一方、軽作業や交通誘導員など比較的単純な作業では、14,000〜16,000円ほどが一般的です。
また、国土交通省が公表する公共工事の設計労務単価では、全国平均で23,000〜24,000円台とされており、慢性的な人手不足の影響から近年は上昇傾向が続いています。
人工代の計算方法
人工代は以下の計算式で求めるのが基本です。
1人工とは、職人1人が1日(8時間)働いた際の労務量のことで、「1人×1日」と計算します。たとえば単価が20,000円で1人が3日作業すると60,000円(3人工)、3人なら180,000円(9人工)になります。
半日稼働の場合は0.5人工として計算するなど、現場の取り決めにより分数で調整するケースもあります。
ただし、実働が短くても1日拘束されると1人工分を請求するのが原則です。また、残業や休日出勤は人工代に含まれず、別途時間外手当として扱われます。
工種によっては「㎡あたり」「mあたり」で人工数を算出する方法もあり、実績データをもとに精度を高めることが重要です。
人工代の見積書・請求書の書き方
人工代は、建設業の見積書や請求書に欠かせない重要な項目です。
金額だけを記載すると誤解を招くことがあるため、人数・日数・単価などの根拠を明確に示すことが大切です。
また、インボイス制度への対応や税区分の記載も求められるようになっており、正確な書き方を理解しておくことが取引トラブルの防止につながります。
見積書の書き方
見積書の書き方は以下のとおりです。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 見積書の宛名 | 発注者の会社名や担当者名 |
| 発行者情報 | 自社または個人事業主の氏名・住所・連絡先 |
| 見積書の発行日と有効期限 | 見積日と有効期限(例:発行から30日) |
| 工事名や現場名 | どの工事に関する見積りなのか |
| 作業内容と人工代の明細 | 人数・日数・単価 |
| 小計・消費税・合計金額 | 税抜き金額に消費税を加えた合計額 |
| 備考欄 | 追加工事の可能性・短時間作業の扱いなど |
人工代を含む見積書を作成する際は、「誰に」「何の工事を」「どの条件で」提示するのかを明確にすることが重要です。
人数・日数・単価を具体的に記載することで、後の請求トラブルを防げます。
請求書の書き方
請求書の書き方は、以下のとおりです。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 請求先(宛名) | 発注者の会社名・部署・担当者名 |
| 発行者情報 | 自社または自分(個人事業主)の会社名・住所・連絡先 |
| 請求年月日と請求書番号 | 発行日または契約に基づいた請求日 |
| 作業内容と人工代の明細 | 作業人数・日数・単価・金額 |
| 消費税額および税率の区分 | 税抜金額・消費税額・小計・合計 |
| 振込先情報と支払い期日 | 銀行名・支店名・口座番号・口座名義・支払い期限 |
| 現場名や備考欄の活用 | 振込手数料負担・源泉徴収の有無・特記事項など |
人工代を含む請求書を作成する際は、金額だけでなく「誰に・何の作業を・どの条件で」請求するのかを明確に示すことが大切です。
人数・日数・単価を具体的に記載し、インボイス制度にも対応した形式で作成することで、取引の透明性と信頼性が高まります。
人工代に関する注意点
人工代の取り扱いを誤ると、トラブルにつながることがあります。
そのため、取り扱う前に以下で解説する注意点を理解しておきましょう。
見積り段階で取り決めを明確にしておく
人工代に関するトラブルの多くは、見積り時点での認識のズレから発生します。契約を結ぶ際には、「何人工で、いくらの工事なのか」を明確にし、見積書や契約書に人数・日数・単価を具体的に記載しておくことが大切です。
特に、追加工事や設計変更が発生する可能性がある場合には、「当初の人工数を超えた分は追加精算する」といった取り決めを事前に盛り込んでおくと安心です。
また、短時間作業であっても1人工分を請求するケースがあります。「最低〇人工から計上」などの条件をあらかじめ説明しておくことで、後々の不信感や支払いトラブルを防げます。
半人工や端数処理のルールを事前に決めておく
人工代を算出する際は、半人工や端数の扱いを明確にしておくことが重要です。半日作業を0.5人工として計上するのか、短時間でも1人工分を請求するのかは、発注者と受注者の間で認識が異なるとトラブルにつながります。
現場によっては0.1単位まで細かく区切るケースもありますが、あまり細分化すると管理が煩雑になるため、0.5人工刻みを基本とするのが一般的です。
また、短時間作業でも移動や準備などで1日拘束される場合は、最低1人工とする取り決めも多く見られます。こうしたルールは見積書や契約書にあらかじめ明記し、後々の追加請求や誤解を防ぐことが大切です。
契約形態に応じて「外注費」と「給与」の区分を正しく理解する
人工代を経理処理する際は、支払い相手との契約形態を踏まえて「外注費」か「給与」かを正しく区分することが重要です。
一般的に、一人親方や常用の大工など請負契約を結んでいる場合は「外注費」として扱われます。しかし、雇用契約を結び、自社の指揮監督下で働く人材への支払いは「給与」として処理しなければなりません。
誤って外注費として計上すると、税務調査で指摘を受け、追徴課税のリスクが生じる可能性があります。契約書の有無だけでなく、実際の業務実態を踏まえて総合的に判断し、迷った場合は国税庁の通達や税理士など専門家へ確認しましょう。
支払条件を明確にし誠実に管理する
人工代の支払いは、契約時点で期日や支払い方法を明確に取り決めておくのが基本です。
契約で定めた支払い期日を守るのはもちろん、可能であれば前倒しの支払いや柔軟な対応を行うことで、取引先との信頼関係を築けます。
やむを得ず支払いが遅れる場合には、黙って滞らせるのではなく、事前に理由を説明し相談する姿勢が誠実な対応につながるでしょう。
また、下請法では不当な減額や支払い遅延が禁止されており、違反すると行政指導の対象になる可能性もあります。健全な取引関係を維持するために、適切な支払い管理と誠実な対応を徹底しましょう。
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よくある質問
人工費とは何ですか?
人工費とは、建設業などで作業員1人が1日(通常8時間)働いた際に発生する人件費のことです。
基準となる「人工(にんく)」は、1人が1日働く労務量を表す単位で、人工費はこの単位をもとに算出されます。
具体的には、1人工あたりの金額に作業日数や人数を掛けて計算し、工事の見積りや原価管理に活用されます。
詳しくは「人工代とは」をご覧ください
1人工の相場はいくらですか?
1人工の相場は、地域や職種によって異なりますが、一般的な目安は1日あたり15,000〜25,000円前後です。
高度な技術が必要な型枠大工・鉄筋工・とび職などは、25,000円以上になる場合もあります。
一方で、軽作業員や交通誘導員など比較的シンプルな作業では、14,000〜16,000円程度に設定されることが多いです。
詳しい相場は「人工代の相場」をご覧ください
1人工30,000円はいくらですか?
「1人工30,000円」とは、作業員1人が1日(8時間)働いた場合に30,000円の人件費が発生するという意味です。
たとえば、2人が3日間作業した場合は「6人工」となり、30,000円×6=180,000円が人工代の合計になります。
人工代の正しい求め方は「人工代の計算方法」をご覧ください
インボイスに人工代と書いて通用しますか?
インボイス(適格請求書)に「人工代」と記載すること自体は問題ありません。
ただし、金額だけでなく、作業内容・人数・日数・単価を具体的に明示するのが望ましいです。単に「人工代」とだけ書くと、取引先や税務署から内容が不明確と判断されるおそれがあります。
「工事名」「作業内容」と紐づけた形で記載し、取引の実態がわかる請求書を作成するようにしましょう。
まとめ
人工代は、建設業における職人1人の1日分の人件費を示す概念で、見積書や請求書の作成に欠かせない要素です。
相場は地域や職種によって異なりますが、一般的には1人工あたり15,000〜25,000円程度で、熟練した技能職ではさらに高くなる傾向があります。
請求書や見積書を作成する際は、人数・日数・単価を明確に記載し、インボイス制度にも対応しておくことで取引先からの信頼を得られます。
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