監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

出納帳とは、会社組織や個人事業でのお金の入出金を記録する帳簿のことです。出納帳は大きく分けて、現金の入出金を記録する「現金出納帳」と、銀行口座への入出金を記録する「預金出納帳」の2種類があります。
出納帳でお金の流れを記録することで、収支管理と資金の動きの把握が可能です。そのほか、資金の流用や着服などの不正を早期発見する役割もあります。
本記事では、現金出納帳・預金出納帳の特徴やサンプルを用いた具体的な記載方法に加え、得意先台帳・仕入先台帳の詳細も解説します。
出納帳をエクセルで作成したい方は、別記事「出納帳をエクセルで作成する方法(無料テンプレート付き)」をご覧ください。
目次
出納帳とは
出納帳(すいとうちょう)とは、会社組織や個人事業でのお金の入出金を記録した帳簿のことです。
「いつ・どこで・何のために」お金が動いたのかを明確に把握しながらお金の流れを管理することは、企業経営や個人事業で重要な基本業務です。出納帳を正確に記録することで、経営判断の材料となり、資金管理をスムーズに行うことができます。
さらに、出納帳の作成は社内の不正防止にも役立ちます。帳簿上の残高と実際の現金残高のズレが可視化されるため、たとえば社員による横領などの不正行為を早期に発見できる可能性があります。
出納帳の作成・保管義務はある?
帳簿には作成が義務付けられている主要簿と、主要簿の情報をより詳細に記載した補助簿があり、出納帳は補助簿に含まれます。補助簿は、主要簿と違い作成の記録や保管は義務付けられていません。しかし、多くの企業で、出納帳の作成は経理業務のひとつとなっています。

作成した出納帳は、法人であれば7年間(欠損金額などが生じた場合は10年間)の保存が義務付けられています。
出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
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出納帳の種類と書き方
出納帳には、大きく分けて現金の入出金を記録する「現金出納帳」と、銀行口座の入出金を記録する「預金出納帳」の2種類があります。以下ではそれぞれの特徴や書き方を解説します。
現金出納帳
現金出納帳とは、現金の入出金を記録し、実際の現金残高が帳簿と一致しているかどうかを確認するための帳簿です。現金出納帳の記録によって、正確な現金の入出金・現金残高をチェックできます。
項目 | 概要 |
---|---|
①日付 | 現金の入出金があった日付を記載 |
②勘定科目 | 現金の相手勘定科目を記載(例:雑費・光熱費など) |
③摘要 | 取引の内容を記載(取引の内容をわかりやすくするためのメモ欄) |
④入出金額 | 取引額を記載(記載時は税込金額で記載) |
⑤差引残高 | 取引直前の残高から取引による入出金額を足し引きした金額 |
差引残高は、日次・月次・年次で計算方法が異なります。
差引残高の日次・月次・年次別計算方法
- 日次:前日の差引残高 + 当日の収入金額 - 当日の支出金額
- 月次:前月の繰越金 + 月の収入合計 - 月の支出合計
- 年次:前年の繰越金 + 年度の収入合計 - 年度の支出合計
預金出納帳
預金出納帳とは、銀行口座の入出金を管理する帳簿で、振込や口座引き落としなどを記録します。記載項目は、現金出納帳と同様です。
銀行口座が複数ある場合、口座別に預金出納帳の管理を行うようにしましょう。銀行の取引明細との照合がしやすくなる、口座ごとの資金の流れを正確に把握できる、税務・経理処理がスムーズになるといったメリットがあります。
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出納帳の残高が合わない場合の対処法
実際の残高と出納帳の残高が合わないとき、原因を見つけ出して修正する必要があります。以下を確認し、残高が合わない原因を調べましょう。
残高が合わない場合に確認すべき項目
- 出納帳に記入した金額に誤りはないか
- 残高の計算に誤りはないか
- 出納帳に未記入の取引はないか
- 記入時に用いた領収書の内容に誤りはないか
出納帳ではなく、実際の現金の残高と帳簿上の残高が一致しないときは、「現金過不足」の勘定科目を用いて処理します。現金過不足の仕訳例を知りたい方は、別記事「現金過不足の勘定科目は? 具体的な仕訳例と発生の原因・防止対策も解説」をご覧ください。
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得意先台帳・仕入先台帳とは
出納帳と同じくお金の流れを管理できる帳簿に、「得意先台帳」や「仕入先台帳」があります。得意先台帳は得意先(商品やサービスの販売先)ごとの売掛金と入金を、仕入先台帳は仕入先ごとの買掛金と支払いを記録する帳簿を指します。
売掛金とは、商品の販売やサービスの提供など、得意先との通常の営業取引で生じた販売代金のうち、まだ入金されていない金額を計上するときに使う勘定科目です。一方、買掛金は仕入先から商品やサービスを仕入れたときに後から支払う金額のことです。
売掛金・買掛金の掛け取引は、基本的に継続的に取引を行っている企業間で行われ、1ヶ月分の売掛金を一括で請求書発行したり、請求書の支払いをしたりします。お金の入出金が企業間で行われた時点で取引終了とし、この時点までを一つの記録とします。
【関連記事】
売掛金とは?仕訳例や管理・回収する際の注意点をわかりやすく解説
得意先台帳・仕入先台帳の記載例
得意先台帳と仕入先台帳の記載例は以下の通りで、取引先ごとに作成します。
得意先台帳
日付 | 科目 | 明細 | 金額(円) | 備考 | 支払の有無 |
7月5日 | 売上 | 商品1 | 2,000 | 7月25日請求 | 有 |
7月10日 | 売上 | 商品2 | 3,000 | 7月25日請求 | 有 |
8月5日 | 入金 | 売掛金 | 5,000 | ー | ー |
仕入先台帳
日付 | 科目 | 明細 | 金額(円) | 備考 | 支払の有無 |
7月5日 | 仕入 | 商品3 | 4,000 | 7月25日請求 | 有 |
7月10日 | 仕入 | 商品4 | 5,000 | 7月25日請求 | 有 |
8月5日 | 出金 | 買掛金 | 9,000 | ー | ー |
どちらの台帳も取引が行われた日付順に記録していき、科目や明細に取引の内容を記入します。得意先や仕入先ごとに帳簿を分けて管理すると、取引先ごとの債権債務関係が明確になります。
得意先や仕入先との取引内容を正確に帳簿へ記録しておかないと、請求金額や支払い期日などでミスが生じる恐れがあります。こうしたトラブルが続くと、取引先からの信頼を損なうリスクもあるため、日頃から帳簿を丁寧に管理することが大切です。
はじめての経理でも、自動化で業務時間を1/2以下にする方法
経理業務は日々の入出金管理のほか、請求書や領収書の作成・保存、仕訳作成まで多岐にわたります。
シェアNo.1のクラウド会計ソフト*1「freee会計」は、面倒な入力作業や仕訳を自動化し、見積書や請求書も簡単に作成できるため、経理業務にかかる時間を半分以下*2に削減できます。
※1リードプラス「キーワードからひも解く業界分析シリーズ:クラウド会計ソフト編」(2022年8月)
※2 自社調べ。回答数1097法人。業務時間が1/2以上削減された法人数
また、一度の入力で複数の業務が完了するため、重複作業や転記作業はほぼ発生しません。
数ある会計ソフトの中でも、freee会計が選ばれる理由は大きく分けて以下の3つです。
- AI-OCR機能で自動入力・自動仕訳
- 全国ほぼすべての銀行・160以上の外部サービスと連携
- 充実のサポート体制
それぞれの特徴についてご紹介していきます。
AI-OCR機能で自動入力・自動仕訳

領収書・受取請求書などをスマホのカメラで撮影しfreee会計に取り込めば、読み取り機能(OCR機能)が取引先名や金額などをAI解析し、仕訳に必要な情報を自動で入力。そのまま支払管理・仕訳まで自動で作成できます。
全国ほぼすべての銀行・160以上の外部サービスと連携

freee会計は全国ほぼすべての銀行やクレジットカード、決済サービスなどと連携可能。同期していれば自動で利用明細を取り込むので、勘定科目の登録はもちろん、売掛金や買掛金の消し込み、入金仕訳などの記帳が、freee会計の画面だけで行えます。
さらに、地代家賃や役員報酬など定期的に入金・支払金が発生する取引は、登録さえしておけばfreee会計が自動で記帳まで完了します。
充実のサポート体制

freee会計には、経理をするうえでの不安を解消できる充実したサポートコンテンツを用意しています。
それでも解決できないお悩みはfreeeの専任スタッフにご相談いただける体制も整っているため、はじめて経理される方でも安心して始めることができます。
まとめ
出納帳には現金出納帳と預金出納帳の2種類があります。現金出納帳は現金の入出金、預金出納帳は預金の入出金を管理するものです。
出納帳を作成することでお金の流れを把握でき、資金管理が円滑になります。
ミスや不正の発見にも役立つため、それぞれの出納帳の違いを理解し正確に作成しましょう。
よくある質問
現金出納帳とは?
現金出納帳とは、現金の収入や支出、残高を記録する帳簿のことです。現金出納帳によって経営者や経理担当者が現金の状況を把握し、経営戦略を立てるための参考にできます。
詳しくは「現金出納帳」をご覧ください。
現金出納帳の書き方・手順とは?
現金出納帳の書き方・手順は次の通りです。
現金出納帳の書き方・手順
- お金の出入りがあった日付を記載する
- 勘定科目の区分ごとに内容を記載する
- 取引の内容や取引先名を摘要に記載する
- 入出金額を記載する
- 入金があった場合は前の残高にその分の金額を足し、出金があれば前の残高から差し引く
詳しくは記事内、「現金出納帳」をご覧ください。
現金出納帳と預金出納帳の違いは?
現金出納帳は、現金の収入・支出や現金の残高を記録した帳簿です。現金出納帳は現金管理に重要な役割を担い、現金の流れを把握し、経営戦略を立てるための参考資料として使用します。
一方、預金出納帳は、銀行口座の収入・支出や預金額を記録した帳簿です。預金出納帳は銀行口座の管理に重要な役割を担い、預金の流れを把握し、経営戦略を立てるための参考資料として使用します。
詳しくは記事内、「出納帳の種類と書き方」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
