監修 橋爪 祐典
減価償却とは、資産の取得価額を、その資産の使用期間にわたって分割して各年の費用として計上する会計処理の方法です。
企業の会計担当者にとって減価償却は、会計処理や財務諸表の作成を適切に行ううえで必須の知識です。処理を誤れば、利益や税金の額に大きなズレが生じてしまいます。そのため、対象となる資産や計算方法を理解しておくことが重要です。
本記事では、会計業務に不慣れな中小企業経営者や経理担当者に向けて、減価償却の目的や定率法・定額法などの計算方法、仕訳方法について解説します。
目次
- 減価償却とは
- 減価償却の目的
- 減価償却しないとどうなる?
- 減価償却の仕組み
- 資産と経費の考え方の違い
- 減価償却の耐用年数
- 減価償却できる資産・できない資産
- 減価償却できる資産
- 減価償却できない資産
- 減価償却の計算方法
- 定額法
- 定率法
- リース期間定額法
- 生産高比例法
- 減価償却費の仕訳方法
- 直接法による仕訳
- 間接法による仕訳
- 売却、廃棄、除却の仕訳
- 【ケース別】減価償却の注意点
- 資産を廃棄したとき
- 資産を有姿除却したとき
- 資産を売却したとき
- 中古資産を購入したとき
- 年度途中に減価償却資産を購入したとき
- 取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を取得したとき
- 中小企業・個人事業主が30万円未満の減価償却資産を取得したとき
- まとめ
- freee会計ひとつで固定資産の管理も実現
- よくある質問
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減価償却とは
減価償却とは、固定資産の取得価額を、その資産の使用期間にわたって分割して各年の費用として計上する会計処理の方法です。
機械装置や車両運搬具などの固定資産は、時間が経つにつれて価値が減少していくことから減価償却資産と呼ばれます。これらは、減価償却という会計手続きによって複数年にわたって費用計上しなければなりません。費用計上する期間は、減価償却資産の耐用年数に応じて決まります。
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
減価償却の目的
減価償却を行う目的は、費用と収益を正確に対応させて、経営状況を正しく把握することです。
減価償却資産は、取得した年だけでなくその年以降も使用され、収益に影響をおよぼします。費用計上も使用する期間にわたって行うことで、収益と費用の両方を適切に会計に反映できます。
企業会計原則では、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間にわたって正しく割り当てられるように処理しなければならない」とされています。費用収益対応の原則と呼ばれる会計原則で、減価償却もこの原則に基づいた処理です。
出典:企業会計基準委員会「企業会計原則の設定について」
減価償却しないとどうなる?
減価償却を行わなくても、法律上の問題はありません。
しかし、減価償却をしないと税金の負担が必要以上に重くなります。本来、減価償却資産の購入費用は耐用年数に応じて分割し、毎年の経費として計上できます。もし、それを行わないと、利益が過大に計上されることになり、その分法人税の負担が増えてしまうのです。
さらに、赤字の年でも減価償却費を計上すれば、翌年以降に欠損金として繰り越して、利益と相殺できる仕組みがあります。つまり、将来黒字になったときに、その分だけ税金を少なくできるのです。
逆に、赤字の年に減価償却費を計上しなければ、その損失を残せず、翌年以降に活かすことができません。結果として、後々余分に税金を払うことになってしまいます。
減価償却の仕組み
減価償却の仕組みを理解するためには、「資産」と「経費」の考え方の違いを知っておきましょう。
資産と経費の考え方の違い
事業に関わるお金の使い道は、大きく「資産」と「経費」に分けられます。どちらに該当するかは、時間が経っても価値が残るか、すぐに消費されてなくなるかという基準で判断されます。
| 資産 | 経費 | |
|---|---|---|
| 定義 | 長期間にわたり価値を発揮するもの | その年限りで消えるもの |
| 具体例 | ・建物 ・車両運搬具 ・機械装置 など | ・事務用品費 ・交通費 ・広告費 ・通信費 など |
| 税務上の取り扱い | 減価償却の対象 | 経費として損益計算書に反映 |
たとえば、一般用の自動車(2輪・3輪自動車を除く)で小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの) を購入した例を考えてみましょう。
小型車の耐用年数は4年です。この場合、小型車は資産となり、減価償却の対象となります。200万円の取得価格を4年間で配分することになるため、毎年50万円(200万円 ÷ 4年)を減価償却費として計上します。
減価償却とは、資産に分類されるものを、その資産が事業に貢献する期間にわたって少しずつ経費として計上していく手続きです。この考え方によって、事業の収益と費用を正確に結びつけられ、適切に利益を算出できるようになります。
出典:国税庁 「主な減価償却資産の耐用年数表」
減価償却の耐用年数
減価償却の対象となる資産の取得価額の計上期間は、品目ごとに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。これが「(法定)耐用年数」です。
耐用年数の例
- 事務机や椅子、キャビネット(金属製)・・・15年
- 同上(それ以外)・・・8年
- パソコン(サーバー用以外)・・・4年
- 時計・・・10年
- 理容・美容機器・・・5年 など
また、耐用年数は資産の種類によって細かく定められており、たとえば鉄骨鉄筋コンクリート造の建物は用途やその他条件によって耐用年数が異なります。
耐用年数について詳しく知りたい方は、別記事「耐用年数とは?減価償却資産の種類と各耐用年数について解説」もあわせてご確認ください。
出典:国税庁 「主な減価償却資産の耐用年数表」
減価償却できる資産・できない資産
減価償却の対象になる資産とは、固定資産のうち「時間の経過によって価値が減少する資産」です。
減価償却できる資産
減価償却できる資産としては、以下のような資産が挙げられます。
| 資産名 | 主な例 |
|---|---|
| 有形減価償却資産 | ・建物(オフィスビルや工場など) ・建物附属設備(空調設備や照明設備など) ・構築物(駐車場や外構工事など) ・機械装置(生産ラインや工作機械など) ・車両運搬具(営業車やトラックなど) ・工具器具備品(オフィス家具やパソコンなど) など |
| 無形減価償却資産 | ・ソフトウェア(基幹システムや業務管理システムなど) ・営業権 ・漁業権 ・商標権 ・実用新案権 など |
| 生物等 | ・畜産業における家畜(乳牛や肉牛、種豚など) ・農園芸における果樹(みかんの木やりんごの木など) など |
出典:国税庁「第1款 減価償却資産」
原則として、「使用可能期間が1年以上」かつ「取得価額が10万円以上」に該当する固定資産が減価償却資産の対象となり、取得価額を耐用年数にわたって費用計上します。
不動産であれば、建物や建物附属設備は価値が時間とともに減少するため減価償却の対象ですが、土地は例外です。
また、税法上は生き物も固定資産として扱われ、減価償却が必要になる場合があります。
出典:国税庁「第4款 生物の償却」
減価償却できない資産
減価償却の対象にならない資産は、経年によって価値が減少しないと考えられるもので、以下のようなものがあります。
減価償却できない資産の例
- 土地
- 電話加入権
- 書画
- 骨董
- 稼働休止資産(遊休資産)
- 建設中の資産 など
このうち、「稼働休止資産(遊休資産)」は、会計と税務でルールが異なります。
稼働休止資産とは、事業で利用するために取得したにもかかわらず、何らかの理由で使用されていない、または稼働していない資産のことです。会計基準上は「合理的に償却継続すべき」とされますが、法人税法上は減価償却できません。
また、建設中の資産については、完成し「事業の用に供した日」から耐用年数に応じて減価償却を開始します。
出典:国税庁「〔減価償却資産(第19号関係)〕」
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は、以下の4つです。
減価償却の計算方法
- 定額法
- 定率法
- リース期間定額法
- 生産高比例法
どの方法で計算を行うかは事業者が任意に決定し、所轄の税務署長に届け出を行います。ただし、届け出を行わなかった場合も、以下の法定の償却方法で計算できます。
届け出を行わなかった場合の償却方法
- 法人:建物、建物附属設備、構築物や無形固定資産など一部は定額法、鉱業権では生産高比例法、それ以外は定率法
- 個人事業主:定額法
また、建物、建物附属設備、構築物以外の有形固定資産では定額法・定率法のいずれかを選択できますが、定率法を適用する場合は、税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要です。
出典:国税庁「(参考)【償却方法一覧】」
出典:国税庁「A1-19 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続」
定額法
定額法とは、固定資産の取得価額に、耐用年数に応じた定額法の償却率をかけ合わせる計算方法です。定額法の償却率は、国税庁による「減価償却資産の償却率等表」を参照してください。計算式は以下のとおりです。
- 定額法による減価償却費 = 固定資産の取得価額× 定額法の償却率
たとえば耐用年数5年の資産を100万円で購入した場合、100万円に定額法の償却率0.200をかけ合わせると減価償却費は20万円です。つまり、5年間にわたり毎年20万円ずつ費用として計上することになります。
定額法は、毎年の減価償却費が同じになるため、将来の経費を予測しやすく、事務処理がシンプルになるのが特徴です。
出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
出典:国税庁「減価償却資産の償却率等表」
定率法
定率法とは、固定資産の未償却残高に、耐用年数に応じた定率法の償却率をかけ合わせる計算方法です。定率法の償却率は、国税庁による「減価償却資産の償却率等表」を参照してください。計算式は以下のとおりです。
- 定率法による減価償却費 = 固定資産の未償却残高 × 定率法の償却率
ただし、上記の金額が償却保証額(「資産の取得価額」×「その資産の耐用年数に応じた保証率」)に満たなくなった年分からは、次の方法で計算します。
- 定率法による減価償却費 = 改定取得価額 × 改定償却率
たとえば、取得価額600万円、耐用年数6年の車両運搬具を定率法で減価償却するケースを例として考えてみましょう。耐用年数6年の償却率は0.333(200%定率法に基づく)であるため、減価償却費を計算すると以下のようになります。
- 1年目
- 減価償却費 = 6,000,000円 × 0.333 = 1,998,000円
- 2年目
- 期首未償却残高 = 6,000,000円 − 1,998,000円 = 4,002,000円
- 減価償却費 = 4,002,000円 × 0.333 = 1,332,666円
初年度に比べて、2年目の減価償却費は少なくなります。
定率法は、資産の収益力が落ちてくる後年の費用負担を抑えられる点がメリットです。
しかし、初年度の償却額は大きくなるため、節税につながる一方で利益を圧迫することもあります。定額法と定率法を選択できる減価償却資産は、経営方針によってどちらの計算方法が有利か判断しましょう。
定率法について詳しく知りたい方は、別記事「減価償却の定率法とは?定額法との違いや償却率、計算方法などを解説」をご覧ください。
出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
リース期間定額法
リース期間定額法とは、取得価額をリース期間の月数に応じて配分し、減価償却費を計算する方法です。リース期間定額法による減価償却費の計算には、以下の式を用います。
- 減価償却費 =(リース資産の取得価額 − 残価保証額)÷ リース期間の月数 × 当期におけるリース期間の月数
たとえば、リース総額600万円、リース期間5年の機械をリース期間定額法で減価償却するケースを例として考えてみましょう。
- 年間減価償却費 = 6,000,000円 ÷ 60ヶ月 × 12ヶ月 = 1,200,000円
この場合、毎年120万円を減価償却費として計上します。
なお、リース期間定額法は、2008年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引により賃借人が取得したものとされる減価償却資産について適用されます。
出典:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
生産高比例法
生産高比例法とは、資産の使用割合・状況に応じて減価償却費を計算する方法です。生産高比例法による減価償却費の計算には、以下の式を用います。
- 減価償却費= 取得価額 ÷ 見積総生産高 × 当期の実際生産高
たとえば、総生産量100万トンの鉱山用機械(取得価額1,000万円)を生産高比例法で減価償却するケースを例として考えてみましょう。その年の生産量が10万トンだったとします。
- 減価償却費 = 10,000,000円 ÷ 1,000,000トン × 100,000トン = 1,000,000円
生産高比例法は、資産の使用量に応じて費用を配分するため、より実態に即した費用計上が可能です。ただし、生産高比例法は、償却資産の利用時間や生産高を確定できる場合に限り適用できます。
出典:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
減価償却費の仕訳方法
減価償却費を帳簿に記録する方法は、主に直接法と間接法の2種類があります。どちらの方法でも最終的な費用や資産の価値は同じになりますが、経理処理の考え方が異なります。
さらに、減価償却資産を売却・廃棄するときには、特別な仕訳が必要です。
いずれの方法を適用しても問題ありませんが、それぞれ会計上の処理が異なるため、自社の規定に基づいて適切な方法を選びましょう。
直接法による仕訳
直接法とは、減価償却費を固定資産から直接控除する仕訳方法です。
たとえば、取得価額が100万円、耐用年数5年の資産を定額法で計算すると、毎年の減価償却費は20万円です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200,000円 | 固定資産 | 200,000円 |
この方法では資産の残高が毎年減っていくため、資産価値をシンプルに把握できます。資産ごとの減少額が明確にわかる一方で、固定資産台帳を別で記録・管理しないと内訳がわかりにくくなります。
間接法による仕訳
間接法とは、減価償却費を減価償却累計額という勘定科目で記録する仕訳方法です。
取得価額が100万円で耐用年数5年の資産を定額法で計算し、間接法で仕訳する場合の仕訳例は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200,000円 | 減価償却累計額 | 200,000円 |
資産の取得価額と累計の償却額を並べて確認できるため、資産がどのくらい消費されたかを一目で把握できます。資産の原価と現時点での消費額を分けて示すことで、企業の財務状況をより詳しく説明できることから、金融機関や投資家に提出する決算書で使われます。
売却、廃棄、除却の仕訳
減価償却資産を事業からなくす(売却や廃棄、除却)際には、これまでの減価償却費をすべて精算する仕訳が必要です。
売却時の仕訳
帳簿価額24万円の機械を30万円で売却した場合の例です。期中の減価償却費は2万円とします。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 300,000円 | 機械装置 | 240,000円 |
| 減価償却費 | 20,000円 | 固定資産売却益 | 80,000円 |
売却損が出た場合の仕訳は、以下のとおりです。
帳簿価額50万円の機械を20万円で売却しました。減価償却累計額は10万円とします。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200,000円 | 機械装置 | 500,000円 |
| 減価償却累計額 | 100,000円 | ||
| 固定資産売却損 | 200,000円 | ||
廃棄・処分時の仕訳
減価償却期間が残っている資産を処分した場合、未償却部分は「固定資産除却損」として計上します。
以下は、帳簿価額50万円(期中の減価償却費5万円)の機械を処分費用5万円で廃棄した場合の例です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 50,000円 | 機械装置 | 500,000円 |
| 固定資産除却損 | 500,000円 | 現金 | 50,000円 |
特に、期末近くの処理は、翌期への影響も大きく慎重な判断が必要であるため、税理士に相談し適切な時期と処理方法を確認するのがおすすめです。
【ケース別】減価償却の注意点
減価償却費の計算では、固定資産の取得価額や未償却残高に償却率をかければその年に計上する金額を算出できます。
ただし、資産の種類や状況によっては、仕訳や計算で注意が必要な場合があります。「途中で資産を処分した」「中古で買った」などの特別な状況が発生した際には、通常の処理とは異なる対応が必要です。
減価償却費の仕訳・計算で注意が必要なケース
- 減価償却中の資産を廃棄したとき
- 減価償却中の資産を有姿除却したとき
- 減価償却中の資産を売却したとき
- 中古で減価償却資産を購入したとき
- 年度途中に減価償却資産を購入したとき
- 取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を取得したとき
- 中小企業・個人事業主が30万円未満の減価償却資産を取得したとき
処理を誤ると税金を余分に支払うことになったり、帳簿と実態が合わなくなったりするため、注意が必要なケースを事前に把握しておきましょう。
資産を廃棄したとき
減価償却中の資産を途中で廃棄したときは、未償却分の残高を固定資産除却損として処理します。
たとえば、パソコンを5年償却予定で3年目に廃棄した場合、まだ残っている帳簿価額を「除却損」として処理します。残りの価値をその年の損失にすることで、実態に合わせた会計が行えます。
また、廃棄にあたって処理費用が発生した場合は、その分も固定資産除却損として計上可能です。
資産を有姿除却したとき
有姿除却とは、まだ形は残っているものの、今後事業で使用する予定がなく、売却できる見込みもない資産を経費として処理することです。
たとえば、新しい機械の導入が決まり、古い機械は故障していなくても、使用予定がない場合が該当します。
この場合、資産の未償却残高を固定資産除却損として計上します。ただし、資産価値がゼロであると確定することは難しいため、税務上は損金として認められない可能性があることに注意が必要です。
資産を売却したとき
減価償却中の資産を途中で売却した場合は、売却金額が未償却金額より大きければ、固定資産売却益を計上します。一方で売却金額が未償却金額より低い場合は、差額を固定資産売却損で処理してください。
たとえば、10万円の備品を5万円で売った場合は「売却損5万円」、逆に15万円で売れた場合には「売却益5万円」となります。この処理を正しく行わないと、利益が過大または過少に計上されてしまい、納税額に影響します。
中古資産を購入したとき
中古の固定資産を購入した場合、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく購入時点から見積った使用可能期間に応じて設定します。
使用可能期間の見積りが困難であれば、簡便法によって耐用年数を算定できます。
簡便法では、資産の経過年数に応じて耐用年数を次のように計算します。
<法定耐用年数のすべてを経過している場合>
- 耐用年数 = その資産の法定耐用年数の20%に相当する年数
<法定耐用年数の一部のみ経過している場合>
- 耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)
なお、算出した年数に1年未満の端数があるときは端数を切り捨て、切り捨てた結果、耐用年数が2年に満たない場合には2年として計算します。
出典:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
年度途中に減価償却資産を購入したとき
年度途中に購入した資産は、月割での処理が必要です。会計処理は、資産を購入した月ではなく、資産を事業で使い始めた月から始めます。
たとえば、4月にパソコンを買ったなら、4月から12月までの9ヶ月分だけを計上します。1年分をそのまま計上すると税務処理が誤りとなるため、購入月を必ず確認して処理しましょう。
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を取得したとき
取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、通常の減価償却とは別に「一括償却資産」として処理が可能です。この方法では、耐用年数に関係なく3年間で均等に費用として計上します。
たとえば15万円の備品を買った場合、毎年5万円ずつ3年間で費用化できます。
この処理は通常の耐用年数より短期間で処理できるため、中小企業や個人事業主にとって資金繰りを助けてくれるでしょう。
出典:国税庁「一括償却資産とは」
中小企業・個人事業主が30万円未満の減価償却資産を取得したとき
中小企業や個人事業主には、取得価額が30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる特例(少額減価償却資産の特例)が認められています。
以下の要件に該当する企業が対象です。
少額減価償却資産の特例が認められている企業
- 青色申告をしている個人事業主または法人
- 常時雇用する従業員数が500人以下(一定の場合は300人以下)
- 資本金または出資金が1億円以下の法人
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
この特例を利用すると、購入した年に全額を経費として計上できるため、大きな節税効果が期待できます。ただし、この特例は年間300万円までという上限が設定されています。
少額減価償却資産の特例について詳しく知りたい方は、別記事「少額減価償却資産の特例とは?対象の資産・法人、仕訳などについて解説」をご覧ください。
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
まとめ
減価償却とは、高額な機械設備や内装設備など、長期間の使用により経年劣化が生じるような資産の取得価額を、耐用年数に応じて分割して費用計上することです。
減価償却の対象となる資産は、固定資産のうち時間経過によって価値が減少する資産であり、土地のように価値が減少しない資産は対象ではありません。
減価償却の計算方法には主に定額法・定率法があり、減価償却資産の種類によって適用できる計算方法が異なります。また、売却や廃棄、中古資産の取得など、特定のケースでは特別なルールが適用されることもあります。
会計処理をする際は、減価償却の方法を正しく理解して処理することで、適切な税務申告が可能です。自身での処理が難しい場合は、税理士や公認会計士など専門家への相談や会計ソフトの使用も検討してみてください。
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しかし、減価償却を含む固定資産の会計処理には手間と労力がかかります。
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よくある質問
年度途中で減価償却資産を取得したらどのように処理する?
年度の途中で減価償却資産を購入したら、減価償却費は購入してから事業年度の終わりまでの期間分だけを計算します。
計算式は「年間の減価償却費 × (使用月数 ÷ 12)」です。
詳しくは記事内「年度途中に減価償却資産を購入したとき」をご覧ください。
中古物件を購入したらどのように処理する?
中古物件は、法定耐用年数ではなく、その資産の残存耐用年数を使って減価償却費を計算します。
残存耐用年数は、物件が新築されてからの経過年数と法定耐用年数をもとに算出されます。
詳しくは記事内「中古資産を購入したとき」をご覧ください。
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
