会計の基礎知識

減価償却とは?耐用年数や定率法・定額法の計算方法をわかりやすく解説

監修 鶏冠井 悠二

減価償却とは?耐用年数や定率法・定額法の計算方法をわかりやすく解説

減価償却とは、資産の取得価額を、その資産の使用期間にわたって分割して各年の費用として計上する会計処理の方法です。減価償却資産は、取得した年に全額を費用化せず、耐用年数に応じて分割して計上します。

企業の会計担当者にとって減価償却は、会計処理や財務諸表の作成を適切に行ううえで必須の知識です。建物や機械・装置、工具、器具・備品、車両・運搬具など、減価償却の対象となる資産がある場合の会計処理方法を正しく理解しましょう。

本記事では、減価償却の目的や耐用年数、定率法・定額法などの計算方法や特例制度、減価償却費の仕訳方法などを解説します。

目次

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減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得価額を、その資産の使用期間にわたって分割して各年の費用として計上する会計処理の方法です。

機械・装置や車両・運搬具などの固定資産は、時間が経つにつれて価値が減少していくことから減価償却資産と呼ばれ、減価償却という会計手続きによって複数年にわたって費用計上しなければなりません。費用計上する期間は、減価償却資産の耐用年数に応じて決まります。


出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」

減価償却の目的

減価償却を行う目的は、費用と収益を正確に対応させて経営状況を正しく把握することです。

減価償却資産は、取得した年だけでなくその年以降も使用され、収益に影響をおよぼします。費用計上も使用する期間にわたって行うことで、収益と費用の両方を適切に会計に反映できます。

企業会計原則では、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」とされています。費用収益対応の原則と呼ばれる会計原則で、減価償却もこの原則に基づいた処理といえます。


出典:企業会計基準委員会「企業会計原則の設定について」

減価償却の耐用年数とは

減価償却の対象となる資産の取得価額の計上期間は、品目ごとに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。これが「(法定)耐用年数」です。

たとえば、自動車の法定耐用年数は普通自動車6年・軽自動車4年、パソコンの法定耐用年数は4年または5年です。

また、耐用年数は資産の種類によって細かく定められており、たとえば鉄骨鉄筋コンクリート造の建物は用途やその他条件によって耐用年数が異なります。

耐用年数について詳しく知りたい方は、別記事「耐用年数とは?減価償却資産の種類と各耐用年数について解説」もあわせてご確認ください。


出典:東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数」

減価償却できる資産・できない資産

減価償却の対象になる資産とは、固定資産のうち「時間の経過によって価値が減少する資産」です。


減価償却できる資産・できない資産

減価償却できる資産

減価償却できる資産としては、以下のような資産が挙げられます。


資産名主な例
有形減価償却資産建物・建物附属設備・機械・装置・車両・運搬具・工具・船舶など
無形減価償却資産ソフトウェア・営業権・漁業権・商標権・実用新案権など
生物等牛・馬・豚・りんご樹・なし樹など
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
出典:国税庁「第1款 減価償却資産」

原則として、「使用可能期間が1年以上」かつ「取得価額が10万円以上」に該当する固定資産が対象となり、取得価額を耐用年数にわたって費用計上します。

不動産であれば、建物や建物附属設備は価値が時間とともに減少するため減価償却の対象ですが、土地は例外です。

また、税法上は生き物も固定資産として扱われ、減価償却が必要になる場合があります。


出典:国税庁「第4款 生物の償却」

減価償却できない資産

減価償却の対象にならない資産には、以下のようなものがあります。

減価償却できない資産

  • 土地
  • 電話加入権
  • 書画
  • 骨董
  • 稼働休止資産(遊休資産)
  • 建設中の資産 など

特に「稼働休止資産(遊休資産)」は、会計と税務でルールが異なります。会計基準上は「合理的に償却継続すべき」とされますが、法人税務上は減価償却できません。

また、建設中の資産については、完成し「事業の用に供した日」から耐用年数に応じて減価償却を開始します。


出典:国税庁「〔減価償却資産(第19号関係)〕」

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は、以下の4つです。

減価償却の計算方法

  • 定額法
  • 定率法
  • リース期間定額法
  • 生産高比例法

個人事業主は基本的に、減価償却の計算に定額法を用います。

法人は、原則として定率法を用います。

ただし、税務署へ届出書を提出することで、個人事業主は定率法、法人は定額法を利用できるようになるケースもあります。

なお、選択できる減価償却の計算方法は資産の種類ごとに決まっています。

所得税の計算では、無形固定資産や建物は定額法、鉱業権では生産高比例法です。建物以外の有形固定資産では定額法・定率法のいずれかを選択できますが、定率法を適用する場合は、税務署に「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出する必要があります。


出典:国税庁「(参考)【償却方法一覧】」
出典:国税庁「A1-19 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続」

定額法

定額法とは、固定資産の取得価額に、耐用年数に応じた定額法の償却率をかけ合わせる計算方法です。定額法の償却率は、国税庁による「減価償却資産の償却率等表」を参照してください。

定額法の計算式

  • 定額法による減価償却費 = 固定資産の取得価額× 定額法の償却率

たとえば耐用年数5年の資産を100万円で購入した場合、100万円に定額法の償却率0.200をかけ合わせると減価償却費は20万円です。つまり、5年間にわたり毎年20万円ずつ費用として計上することになります。

定額法は、減価償却費を求めるにあたって比較的シンプルかつ計算しやすい方法です。


出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」

定率法

定率法とは、固定資産の未償却残高に、耐用年数に応じた定率法の償却率をかけ合わせる計算方法です。定率法の償却率は、国税庁による「減価償却資産の償却率等表」を参照してください。

定率法の計算式

  • 定率法による減価償却費 = 固定資産の未償却残高 × 定率法の償却率

ただし、上記の金額が償却保証額(「資産の取得価額」×「その資産の耐用年数に応じた保証率」)に満たなくなった年分からは、次の方法で計算します。

償却保証額未満の年度での計算式

  • 定率法による減価償却費 = 改定取得価額 × 改定償却率

定率法で減価償却の計算をすると年々償却額が小さくなるため、該当の資産からの収益力が低下する後年の負担を小さくできるのがメリットです。

しかし、初年度の償却額は大きくなるため、節税につながる一方で利益を圧迫することもあります。そのため、定額法と定率法を選択できる資産の減価償却では、経営方針によってどちらの計算方法が有利か判断しましょう。


出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」

リース期間定額法

リース期間定額法とは、取得価額をリース期間の月数に応じて配分し、減価償却費を計算する方法です。リース期間定額法による減価償却費の計算には、以下の式を用います。

リース期間定額法の計算式

  • 減価償却費 =(リース資産の取得価額 − 残価保証額)÷ リース期間の月数 × 当期におけるリース期間の月数

なお、リース期間定額法は、2008年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引により賃借人が取得したものとされる減価償却資産について適用されます。


出典:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」

生産高比例法

生産高比例法とは、資産の使用割合・状況に応じて減価償却費を計算する方法です。生産高比例法による減価償却費の計算には、以下の式を用います。

リース期間定額法の計算式

  • 減価償却費= 取得価額 ÷ 見積総生産高 × 当期の実際生産高

なお、生産高比例法で計算できるのは、償却資産の利用時間や生産高を確定できる場合です。


出典:国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」

減価償却の計算方法に関する特例制度

使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上の資産は、原則として減価償却によって費用計上しますが、特例制度を適用すると減価償却せずに費用を計上できます。減価償却の計算方法に関する特例制度は次の2つです。

減価償却の計算方法に関する特例制度

  • 一括償却資産
  • 中小企業の少額減価償却資産の特例

各特例制度について詳しく解説します。

一括償却資産

一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の固定資産を取得した際に、減価償却せず、3年にわたって取得価額の3分の1の額ずつ費用として計上できる特例制度です。法定耐用年数にかかわらず3年間で均等に費用化し、減価償却資産と異なり月割計算は不要です。

適用条件はなく、どの法人、個人事業主も適用を受けられます。


出典:国税庁「一括償却資産とは」

中小企業の少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した際に、減価償却ではなく、取得した年に全額をまとめて費用計上できる特例制度です。

特例制度は、取得価額の合計額が300万円に達するまで適用でき、以下の要件に該当する中小企業などが対象です。

少額減価償却資産の特例の要件

  • 青色申告をしている個人事業主または法人
  • 常時雇用する従業員数が500人以下(一定の場合は300人以下)
  • 資本金または出資金が1億円以下の法人

なお、適用可能な品目には、事業に使用するPC・機械・備品などのほか特許権やソフトウェアなどの無形固定資産も含まれ、中古品も対象です。


出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

減価償却費の仕訳方法

減価償却費の仕訳は、直接法と間接法のいずれかの方法を用いて行います。どちらの方法を適用しても問題ありませんが、直接法と間接法では会計上の処理が異なるため、自社にとって適切な方法を選びましょう。

直接法による仕訳

直接法とは、減価償却費を固定資産から直接控除する仕訳方法です。

たとえば、取得価額が100万円、耐用年数5年の資産を定額法で計算すると、毎年の減価償却費は20万円です。


借方貸方
減価償却費200,000円固定資産200,000円

直接法では、貸借対照表上には固定資産の帳簿価格(取得価額から直接減少)として表示され、資産の取得価額を残しておくことはできません。

間接法による仕訳

間接法とは、減価償却費を減価償却累計額という勘定科目で記録する仕訳方法です。

直接法の例と同様に、取得価額が100万円で耐用年数5年の資産を定額法で計算し、間接法で仕訳する場合の仕訳例は以下の通りです。


借方貸方
減価償却費200,000円減価償却累計額200,000円

間接法で仕訳を行う場合、貸借対照表で資産の未償却残高だけでなく取得価額も残しておくことができ、読み取れる情報量が多くなります。

減価償却費の仕訳・計算で注意が必要なケース

減価償却費の計算では、固定資産の取得価額や未償却残高に償却率をかければその年に計上する金額を算出できますが、ケースによっては仕訳や計算で注意が必要な場合があります。注意すべきケースは次の5つです。

減価償却費の仕訳・計算で注意が必要なケース

  • 減価償却中の資産を廃棄したとき
  • 減価償却中の資産を有姿除却したとき
  • 減価償却中の資産を売却したとき
  • 中古で減価償却資産を購入したとき
  • 年度途中に減価償却資産を購入したとき

各ケースについて、それぞれ解説します。

減価償却中の資産を廃棄したとき

減価償却中の資産を途中で廃棄したときは、未償却分の残高を固定資産除却損として処理します。また、廃棄にあたって処理費用が発生した場合は、その分も固定資産除却損として計上可能です。

減価償却中の資産を有姿除却したとき

減価償却中の資産の使用を止めた場合は、廃棄していなくても、今後使用する可能性がなければ帳簿から除却します。これを有姿除却といいます。

そのうえで、資産の未償却残高を固定資産除却損として計上してください。ただし、資産価値がゼロであると確定することは難しいため、税務上は損金として認められないケースもあります。

減価償却中の資産を売却したとき

減価償却中の資産を途中で売却した場合は、売却金額が未償却金額より大きければ、固定資産売却益を計上します。一方で売却金額が未償却金額より低い場合は、差額を固定資産売却損で処理してください。

中古で減価償却資産を購入したとき

中古の固定資産を購入した場合、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく購入時点から見積った使用可能期間に応じて設定します。

使用可能期間の見積りが困難であれば、簡便法によって耐用年数を算定できます。

簡便法では、資産の経過年数に応じて耐用年数を次のように計算します。

簡便法による中古資産の耐用年数の計算方法

<法定耐用年数の全部を経過している場合>
・耐用年数 = その資産の法定耐用年数の20%に相当する年数

<法定耐用年数の一部のみ経過している場合>
・耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)

なお、算出した年数に1年未満の端数があるときは端数を切り捨て、切り捨てた結果、耐用年数が2年に満たない場合には2年として計算します。


出典:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」

年度途中に減価償却資産を購入したとき

年度途中に購入した資産は、月割での処理が必要です。会計処理は、資産を購入した月ではなく、資産を事業において使い始めた月から始めます。

まとめ

減価償却とは、高額な機械設備や内装設備など、長期間の使用により経年劣化が生じるような資産の取得価額を、耐用年数に応じて分割して費用計上することです。

減価償却の対象となる資産は、固定資産のうち時間経過によって価値が減少する資産であり、土地のように価値が減少しない資産は対象ではありません。

減価償却の計算方法には主に定額法・定率法の2種類があり、減価償却資産の種類によって適用できる計算方法が異なります。会計処理をする際は、減価償却の方法を正しく理解したうえで、減価償却費を財務諸表に適切に反映させてください。

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よくある質問

減価償却とは

減価償却とは、高額な機械設備や内装設備など、長期間の使用により経年劣化が生じるような資産の取得価額を、耐用年数に応じて分割して費用計上することです。

減価償却について、詳しくは記事内「減価償却とは」をご確認ください。

減価償却の計算方法は?

減価償却の計算方法は、一般的に定額法・定率法の2種類です。ただし、リース期間定額法や生産高比例法が用いられることもあります。

減価償却費の計算方法について、詳しくは記事内「減価償却の計算方法」をご覧ください。

監修 鶏冠井 悠二(かいで ゆうじ)

コンサルタント会社、生命保険会社を経験した後、ファイナンシャルプランナーとして独立。「資産形成を通じて便利で豊かな人生を送って頂く」ことを目指して相談・記事監修・執筆業務を手掛ける。担当分野は資産運用、保険、投資、NISAやiDeCo、仮想通貨、相続、クレジットカードやポイ活など幅広く対応。現在、WEB専門のファイナンシャルプランナーとして活動中。

監修者 鶏冠井 悠二

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