会計の基礎知識

キャッシュ・フロー分析を行うメリットは?見るべきポイントや8パターンの特徴を解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

キャッシュ・フロー分析を行うメリットは?見るべきポイントや8パターンの特徴を解説

キャッシュ・フロー計算書とは、企業のお金の流れを把握する際に必要な書類です。貸借対照表や損益計算書と合わせて「財務三表」と呼ばれ、企業の所有するキャッシュ(現金)の出入り(フロー)をまとめたものです。キャッシュ・フローを分析することは、企業が置かれている立場を客観的に把握するのにも有用です。

本記事では、キャッシュ・フロー計算書を使って経営分析をするために必要となる知識やポイントについて解説します。

目次

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キャッシュ・フロー計算書とは

「キャッシュ・フロー計算書」とは、自社のキャッシュ・フローを明らかにするために、一定期間での企業の所有する現金などの出入りを記載した書類です。キャッシュ・フローとは、現金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことで、入ってくる現金を「キャッシュ・イン・フロー」、出ていく現金を「キャッシュ・アウト・フロー」と呼びます。

上場企業にはキャッシュ・フロー計算書の作成義務があります。ただし、非上場企業で作成義務がない場合でもキャッシュ・フロー計算書を作成すると、資金繰りの状況を確認しやすくなり事業経営に活かすことができます。

出典:e-Gov法令検索「金融商品取引法|第二十四条」

キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表・損益計算書の違い

キャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表や損益計算書と合わせて「財務三表」と呼ばれます。財務三表はいずれも経営者や投資家が企業の経営状態を判断するために重要な書類ですが、書類を作成する目的や記載されている内容はそれぞれ以下のように異なります。


貸借対照表損益計算書キャッシュ・フロー計算書
作成目的資産や負債の管理収益や費用の管理キャッシュ(現金)の出入りを管理
分かること財務状態経営成績お金の流れ
記載内容資産―負債=純資産収益―費用=利益期首のキャッシュ残高+期中のキャッシュ増減額=期末のキャッシュ残高

企業は事業活動をしていくうえでさまざまな取引をしますが、その取引の基本となるのはキャッシュです。仕入れや販売、家賃や従業員の給与の支払いなど、さまざまな形での現金取引があります。

損益計算書上では利益が上がっていても、キャッシュ・フロー計算書上では収入にはならない場合があります。損益計算書とキャッシュ・フロー計算書では、収入と判断するタイミングが異なるためです。

損益を表す書類である損益計算書では、売り上げた時点で収入とみなしますが、キャッシュ・フロー計算書では、売掛金や受取手形を決済してキャッシュインとなった時点で収入になったと判断します。そのため、利益が上がり黒字となっていても、キャッシュが足りなくなる状態になることがあります。

そのような状態に陥らないために、損益計算書で利益を把握するだけでなく、キャッシュ・フロー計算書でキャッシュの状況を把握しておきましょう。

【関連記事】
キャッシュ・フロー計算書とは? 見方や作り方のポイントを詳しく解説

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キャッシュ・フロー計算書の見方・読み方のポイント

キャッシュ・フロー計算書


キャッシュ・フロー計算書は、「営業キャッシュ・フロー」「投資キャッシュ・フロー」「財務キャッシュ・フロー」の大きく3つに分類されます。この3つのキャッシュ・フローを分析することで、企業のどの部分でお金を生み出しているのか、また、どの部分でお金を失っているのかが分かります。

このほか、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローを合わせた「フリーキャッシュ・フロー」も、企業が実際に自由に使える現金の流れを示す重要な指標です。

これらのキャッシュ・フローの見方や読み方を、以下で詳しく説明します。

営業キャッシュ・フローで見るべきポイント

営業キャッシュ・フローは、企業が一定期間の本業の営業活動で得たキャッシュの収入と支出を表すものです。営業キャッシュ・フローのプラスの値が大きいほど、本業での儲けでキャッシュが増えているといえます。

営業キャッシュ・フローはプラスとなることが基本ですが、マイナスとなってしまうと新規の投資はできないばかりか、借入金の返済も難しくなります。さらなる借入金で一時しのぎをすることになり、マイナスが続くと最悪の場合には企業は倒産してしまいます。

営業キャッシュ・フローがプラスとなっていれば、借入金の返済や配当金の支払いなどもでき、企業経営は安定します。

見るべきポイントは、経常利益の増加と取引条件の緩和です。経常利益を上げることは当然のことですが、売掛金の減少と買掛金の増加、また棚卸資産の減少も営業キャッシュ・フローを増やしていくために重要です。

投資キャッシュ・フローで見るべきポイント

投資キャッシュ・フローは、主に固定資産の購入や売却によるキャッシュ・フローの増減を表すものです。一般的には土地建物などの不動産や車両、設備などの有形固定資産、システムなどの無形固定資産がここに含まれます。

固定資産を購入すると、投資キャッシュ・フローはマイナスとなります。一方、手持ちの固定資産を売却すると現金が入るため、投資キャッシュ・フローはプラスです。

成長している企業では、継続的に設備投資や資産運用を行っているため投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスになることがほとんどです。

見るべきポイントは、投資によるキャッシュ・フローの減少が、営業キャッシュ・フローの増加の範囲内に収まっているかです。収まっていれば無理のない範囲で投資を行えていることになりますが、そうでない場合は借入金などを利用して投資を行っていることになります。

ただし、企業の置かれている状況によっては、借入をして投資を行うことを一概に悪いとはいえません。上記は一般的な考え方として把握しておきながら、ケースバイケースで判断することが重要です。

財務キャッシュ・フローで見るべきポイント

財務キャッシュ・フローは、営業活動や投資活動を維持していくためにどの程度のキャッシュが調達され、また返済されたのかを表すものです。企業活動で資金不足になった際にどうやって資金を融通したのか、逆に資金に余裕があった場合にどこに資金を使ったのかを示します。

資金が不足した際に、借入金で賄ったのか社債発行で資金を集めたのかがわかります。また資金に余裕があった際に、どの程度の資金を借入金の返済に回したのか、どの程度の資金を配当金として支払ったのかがわかります。

見るべきポイントは、借入金の増減です。資金を借り入れることでキャッシュ・フローが回復しますが、あくまでも一時的なことです。借入金は返済しなければならないものであり、利息も支払うことになるため、中長期的にはキャッシュ・フローが悪化することになります。

借入金が減少していれば、支払利息を発生させる有利子負債が減少していることになり、企業として健全な経営ができているといえます。

フリーキャッシュ・フローで見るべきポイント

フリーキャッシュ・フローは、企業が実際に自由に使える現金の流れを示す指標です。フリーキャッシュ・フローがプラスで金額が多ければ、企業の経営状態が良好であることを示し、将来の投資や財務上の取引に余裕をもつことができます。

フリーキャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローから投資キャッシュ・フローを引いた額で計算できます。

フリーキャッシュ・フローがあることで借入金の返済をしたり、企業の貯金である内部留保を増やしたりすることができます。フリーキャッシュ・フローが多いほど企業の経営は安定するため、その増減はしっかりと把握しておかなければなりません。

フリーキャッシュ・フローは、企業の持続可能な成長と将来のキャッシュ・フロー能力を評価するための重要な指標のひとつとされています。

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キャッシュ・フロー分析を行うメリット

キャッシュ・フロー分析を行うことは、経営面で以下のようなメリットがあります。

キャッシュ・フロー分析を行うメリット

  • 資金ショートを防止できる
  • 円滑に資金調達を行える
  • 資金の流れを予測し適切な対策を講じることができる

いずれも事業を円滑に継続するためには必要不可欠な要素です。

資金ショートを防止できる

事業運営を行ううえでは、掛け払いなどの関係で、利益が上がっているのに手元の資金が乏しい状態が避けられないことがあります。ただし、現状をきちんと認識できないまま資金ショートに陥ってしまうことは避けるべきです。

キャッシュ・フロー分析を行うことで、手元にある資金を適切に把握できるので、資金ショートを防ぎやすくなります。

円滑に資金調達を行える

キャッシュ・フロー分析を行って資金繰りを改善することは、金融機関からの評価向上にもつながります。金融機関からの資金調達も円滑に行いやすくなり、資金調達の条件も有利になることも期待できます。

資金の流れを予測し適切な対策を講じることができる

キャッシュ・フロー分析で自社の状況を客観視することで、さらに状況が悪化するのを事前に防ぎやすくなります。適切な対策を講じることで経営が安定し、円滑な資金調達にもつながるでしょう。

キャッシュ・フロー分析による8つのパターン

営業、投資、財務の3つのキャッシュ・フローの数字がプラスかマイナスかによって、企業の経営状況を8つのパターンに分類できます。


パターン営業CF投資CF財務CF当てはまる企業に見られる主な特徴
安定型・キャッシュが豊富
・将来のために資金を貯めている
改善型・本業と資産売却で得た資金を借入金返済に回している
積極型・金融機関から積極的に資金調達をして設備投資をしている
健全型・本業の利益を設備投資や借入金返済に当てている
救済型・本業の赤字を資産売却や借入金で賄っている
リストラ型・本業での赤字を資産売却でしのいでいる
勝負型・借入金で設備投資を行っている
大幅見直し型・多額のキャッシュが流出している
出典:一般社団法人 中小企業診断士協会 城南支部「8パターン分類で読み解くキャッシュフロー計算書」

自社が8つの分類のどこに含まれるかを把握することは、今後の経営方針を適切に判断するために重要です。以下で詳しく説明していきます。

安定型

営業キャッシュ・フロー:+
投資キャッシュ・フロー:+
財務キャッシュ・フロー:+

本業で十分に利益が出ているが、資産を売却もしており、資金調達も実施していることからキャッシュが豊富な状態です。将来大型投資を行うために資金を貯めている企業などに見られるパターンです。

改善型

営業キャッシュ・フロー:+
投資キャッシュ・フロー:+
財務キャッシュ・フロー:-

本業と資産売却で得た資金を、借入金返済に回しています。不採算事業からの撤退やリストラを進めている企業で見られるパターンです。

積極型

営業キャッシュ・フロー:+
投資キャッシュ・フロー:-
財務キャッシュ・フロー:+

本業の稼ぎだけでは足りない分の資金を金融機関から調達し、積極的に設備投資をしていることが読み取れます。今後の成長企業として期待できる状態といえるでしょう。

健全型

営業キャッシュ・フロー:+
投資キャッシュ・フロー:-
財務キャッシュ・フロー:-

本業での十分な利益を設備投資や借入金返済に当てていることが読み取れます。堅実経営の優良企業だと考えられるでしょう。

救済型

営業キャッシュ・フロー:-
投資キャッシュ・フロー:+
財務キャッシュ・フロー:+

本業の赤字を資産売却や借入金で賄っている状態です。金融機関から借り入れできるうちはよいですが、金融機関の姿勢次第では資金繰りが悪化する可能性があります。

リストラ型

営業キャッシュ・フロー:-
投資キャッシュ・フロー:+
財務キャッシュ・フロー:-

本業での赤字を資産売却でしのいでいる状態です。売却できる資産があるうちに本業の状態を改善させないと、窮地に陥る可能性があります。

勝負型

営業キャッシュ・フロー:-
投資キャッシュ・フロー:-
財務キャッシュ・フロー:+

本業は赤字ですが、借入金によって設備投資を行っていることが読み取れます。事業再建中の企業に多く見られるパターンです。

大幅見直し型

営業キャッシュ・フロー:-
投資キャッシュ・フロー:-
財務キャッシュ・フロー:-

本業が赤字にも関わらず、設備投資を行い借入金返済も行っているため、多額のキャッシュが流出している状態です。過去の実績はあるものの、現在は低迷している企業に多く見られるパターンです。自己資金があるうちに本業の状態を改善できなければ、先細りが危惧されます。

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それぞれの特徴についてご紹介していきます。

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まとめ

キャッシュ・フロー計算書は、「企業の資金繰り」に着目し、自社がどのような経営状況にあるのかを知るための重要な財務諸表です。

キャッシュ・フローを把握することは、経営の安定化や資金調達の円滑化につながります。また、分析によって自社が置かれている現状を客観的に把握できるため、具体的な改善策や実行プランを練る際に役立ちます。

安全な経営のためにも、いつでも財務諸表を業務に役立てられる環境を整備し、自社に適した経営判断を行いましょう。

よくある質問

キャッシュ・フローの見るべきポイントは?

キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローの3種類あります。それぞれのキャッシュ・フローによって、営業活動、投資活動、借入・返済が順調かどうかある程度把握できます。プラスマイナスだけでなく、前会計期間からの増減にも着目しましょう。

詳しくは記事内「キャッシュ・フロー計算書の見方・読み方のポイント」をご覧ください。

なぜキャッシュ・フロー分析が必要?

キャッシュ・フロー分析を行うことで、自社が置かれている状況を客観的に判断することができます。そのため、適切な処置を講じやすく、資金繰りの改善や経営の安定化につながります。ひいては金融機関からの評価も高くなるので、キャッシュ・フロー分析が必要です。

詳しくは記事内「キャッシュ・フロー分析を行うメリット」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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