監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

出張費とは、出張にかかる交通費や宿泊費、食事代などの総称です。旅費交通費と混同されやすいですが、出張費は出張にかかる費用の総称で、旅費交通費は出張費を経費処理するための勘定科目の名称です。
出張費として認められる費用の内容や金額、支給や精算の方法などは、企業の設ける規定によって異なります。
本記事では、出張費の概要・相場や旅費交通費との違い、仕訳する際に用いる勘定科目や精算の流れについて詳しく解説します。
目次
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出張費とは
出張費とは、出張で必要な交通費や宿泊費、食事代などの総称です。
一般的に出張の定義は、「通常の勤務地以外に出向いて業務を行うこと」とされています。この勤務地以外の場所での業務に伴い、出張先でホテルなどの宿泊施設に泊まるケースや取引先と会食をするケースなどもあることを踏まえ、交通費のみならず宿泊費や業務に関わる食事代も出張費に含まれます。
出張費と旅費交通費の違い
出張費と旅費交通費の違いは以下の通りです。
- 出張費:出張に伴う費用の総称
- 旅費交通費:出張に伴う費用を経費処理するための勘定科目の名称
どちらも出張で発生する費用を指す言葉ですが、会計処理上は「出張費」は使わず、「旅費交通費」を使用します。
出張費に該当する経費の種類
出張費として扱われるのは、以下のような費用です。
出張費に該当する経費の種類
- 出張交通費
- 宿泊費
- 交際費(食事代)
- 出張手当(日当)
それぞれの項目について詳しく解説します(ただし、出張費として扱われる費用の内容や金額、条件などは企業の規定によって異なります)。
出張交通費
出張交通費とは、出張に伴い交通機関を利用するための費用です。出張先に向かうときや出張先で移動する際にかかる、以下のような費用が該当します。
出張交通費の種類
- 電車代
- バス代
- タクシー代
- 新幹線代
- 飛行機代
ただし、出張時に利用できる交通機関の種類に制限を設ける企業もあり、上記のような支出があっても社内規定によって「出張費」と認められないこともあります。
宿泊費
出張先でホテルなどの宿泊施設を利用するための費用も、出張費として扱われます。出張規定などに上限金額が定められ、その金額内で経費として精算するケースが一般的です。
交際費(食事代)
打ち合わせを兼ねた食事や取引先との会食など、出張中に業務に関連する食事の場があった場合、その費用が出張費として認められるケースがあります。
出張手当(日当)
出張手当(日当)とは、出張に伴う従業員の負担を軽減するため、出張で発生する交通費・宿泊費など以外の諸費用の補てんを目的として支給される手当です。支給の有無は企業によって異なります。
出張手当(日当)の金額は、役職や出張先までの距離、宿泊の有無などに応じて定められるのが一般的です。
出張費の相場
出張費の相場について、宿泊費と出張手当(日当)に分けて解説します。出張費の社内規定においては、一般的な常識から考えて妥当性のある金額を設定しましょう。
宿泊費の場合
国内出張の場合の宿泊費の相場は下表の通りです。
役職 | 宿泊費の相場 |
部長クラス | 9,000~1万円 |
役職なし(一般社員) | 8,000~9,000円 |
※現在はインバウンド需要の拡大や物価高の影響により、相場を上回るケースもあります。宿泊先までの距離・周辺施設の相場などから金額の妥当性を確認するとともに、概算支給ではなく実費による精算も視野にいれる必要があります。
一般的なビジネスホテルに宿泊すると考えると、宿泊費は8,000~1万円程度が目安といえます。
出張手当(日当)の場合
国内出張の場合の出張手当(日当)の相場は下表の通りです。
役職 | 宿泊費の相場 |
部長クラス | 2,000~1万円 |
役職なし(一般社員) | 1,500~3,000円 |
出張手当(日当)は日帰りか宿泊かで多少の変動はあるものの、国内の場合は1,500~5,000円程度が相場です。
出張費は非課税?所得税はかかる?
出張費を従業員が立て替えた場合、実費で精算することが一般的です。この場合、従業員が立て替えていた金額分の現金を受け取ったとしても、給与のような「所得」にはあたらず、所得税はかかりません。
また、従業員に支給される手当は原則「給与所得」として課税対象になりますが、出張手当(日当)は「出張のための旅費のうち、通常必要と認められるもの」の範囲内であれば非課税として扱われます。
なお「通常必要と認められる」金額の具体的な基準はありません。しかし、あまりに高額だと、出張とは関係がない実質的な給与と見なされ、税務署から指摘を受けたり課税対象になったりする可能性があります。
出典:国税庁「No.2508 給与所得となるもの」
出張費を仕訳するときの勘定科目
一般的には、出張交通費や出張手当(日当)などを仕訳するときの勘定科目は「旅費交通費」です。また取引先との会食など業務に関する食事代は、実費精算で、勘定科目は「交際費」または「「会議費」を用います。
内容 | 勘定科目 |
・出張交通費 ・宿泊費 ・出張手当(日当) | 旅費交通費 |
・業務に関する食事代 | 交際費、または会議費 |
ただし、出張に関連する交通費や宿泊費を経理上どのように処理するかは、企業の方針や会計処理ルールによって異なります。たとえば、交通費や宿泊費をまとめて「旅費交通費」とせず、「交通費」「宿泊費」などと科目を分けて処理するケースもあります。
先払いと後払いの仕訳方法
企業から従業員へ出張費を支払う方法には、先払いと後払いの2種類があり、支払い方法によって仕訳方法が変わります。以下では、仕訳のやり方や仕訳例を紹介します。
なお、旅費精算のやり方と注意点に関しては、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
旅費精算のやり方をチェック!流れや精算時の注意点、効率化できる方法とは
出張費を先払いする場合の仕訳方法
出張費を現金で先払いする場合は、実費がまだ確定していないため、「仮払金」や「前払金」などの勘定科目を使って仕訳します。
以下は「出張前に従業員へ出張費として3万円の現金を支給し、実際に出張では2万円しかかからず、現金1万円が返金された」場合の仕訳例です。
<先払いするときの仕訳>
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
仮払金 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 | 旅費交通費仮払 |
<出張費の実費が確定して精算するときの仕訳>
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
旅費交通費 現金 | 20,000円 10,000円 | 仮払金 | 30,000円 | 旅費交通費精算 |
出張費を後払いする場合の仕訳方法
出張費を後払いする場合は、出張時に従業員が立て替えて支払い、後で実費を企業から支給します。
以下は「出張時に従業員が現金で立替払いした3万円を、出張後に精算する」場合の仕訳例です。
<出張費の実費確定後に精算するときの仕訳>
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
旅費交通費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 | 旅費交通費精算 |
なお、出張時に従業員が立替払いを行った時点では、企業のお金は動いていないため、仕訳をする必要はありません。
出張費精算の流れ
出張費の精算は、一般的に下記の流れで行います。
先払いする場合 | 後払いする場合 |
---|---|
1.従業員が出張費の概算額を申請する 2.経理担当者が内容を確認して仮払金を支払う 3.出張終了後に精算する |
1.従業員が出張を申請する 2.出張後、実際にかかった費用(立て替えた費用)を従業員が申請する 3.経理担当者が内容を確認して支払う |
出張前に先払いする場合は、出張でかかる交通費や宿泊費などの概算額を従業員が申請し、その内容を確認して経理担当者が仮払いを行います。
出張後の経費精算では、レシートや領収書など実際にかかった金額を確認できる書類を従業員が提出し、経理担当者が内容を確認したうえで問題がなければ支払いを行います。
なお、出張費の精算のやり方・流れ・提出書類の種類は、社内規定や経費精算ツールの種類などによって異なります。
出張費を精算するときの注意点
出張後に費用を精算する際、一般的に従業員にはレシートや領収書の提出が求められるため、出張中に費用が発生したらレシートや領収書を受け取って保管しておくよう周知しましょう。
企業の経理担当者は社内規定に基づき、「従業員から申請された費用が出張費として認められるのか」「カラ出張などの不正請求がないか」を確認することも重要です。
また、従業員の出張がなく出張旅費規定を設けていない企業でも、事業エリアの拡大などにより出張費がかかり始めることがあります。明確な基準がないまま出張費の立て替えを従業員に認めると、後々従業員との間で不正請求などのトラブルが発生する可能性があるため、規定を作成して見積もり額をチェックしたり上限額を設けたりしましょう。
まとめ
出張交通費や宿泊費、出張手当(日当)などの出張費には、企業が概算額を先払いする方法と、従業員が立て替えて、出張終了後に精算を行い後払いする方法の2種類があります。
会計処理をする際、出張費の仕訳で使う勘定科目は一般的に「旅費交通費」です。ただし、出張時の取引先との会食など業務に関する食事代は実費精算となり、勘定科目として「交際費」や「会議費」を使って仕訳します。
出張費は基本的には非課税として扱われますが、あまりに高額だと出張とは関係がない実質的な給与と見なされ、税務署から指摘を受けたり課税対象になったりする可能性があります。従業員も企業の経理担当者も、出張旅費規定などに基づいて適切に処理することが重要です。
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よくある質問
出張費の相場は?
出張費のうち、宿泊費は8,000~1万円程度、出張手当(日当)は1,500~5,000円程度が相場です。
詳しくは記事内「出張費の相場」をご覧ください。
出張手当(日当)の勘定科目は?
出張手当(日当)の仕訳に用いる勘定科目は、基本的には「旅費交通費」です。
詳しくは記事内「出張費を仕訳するときの勘定科目」をご覧ください。
出張時の食事代の勘定科目は?
出張先での取引先との会食代など、出張に際しての業務に関する食事代は、「交際費」や「会議費」などの勘定科目を使って仕訳します。
詳しくは記事内「出張費を仕訳するときの勘定科目」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
