監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

年末調整は、年末に最終的な所得税額を算出し、源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。一方、確定申告は、年間の所得や控除額などに応じた所得税額を計算して申告する手続きです。
いずれも所得税額を決定して納税するための手続きですが、対象者や手続き方法に違いがあり、年末調整を受けた会社員でも確定申告が必要になるケースがあります。
本記事では、年末調整と確定申告の違いや、年末調整を受けた後でも確定申告が必要になるケースなどを解説します。
目次
- 年末調整と確定申告の違い
- 年末調整とは
- 確定申告とは
- 年末調整または確定申告で受けられる所得控除
- 年末調整済みの会社員で確定申告が必要なケース
- 1ヶ所から給与の支払いを受け、副業の所得が20万円を超える人
- 2ヶ所以上から給与の支払いを受け、本業以外からの所得が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、給与のほかに不動産の家賃収入などがある人
- 年末調整済みの会社員で確定申告をしたほうがよいケース
- 医療費控除・雑損控除・寄附金控除を受ける人
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を初めて受ける人
- ふるさと納税の納付先自治体が6ヶ所以上の人
- 転職・退職後に確定申告が必要なケースもある
- 退職後に年末まで再就職しなかった人
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人
- 【年末調整の有無別】確定申告のやり方
- 年末調整済みのときの確定申告のやり方
- 医療費控除の場合
- 住宅ローン控除の場合
- ふるさと納税に関する寄附金控除の場合
- 年末調整していないときの確定申告のやり方
- 年末調整と確定申告を両方行う際のポイント・注意点
- 年末調整後に確定申告をする際は全ての収入を申告する
- 年末調整と確定申告が重複しても税金が二重にかかる心配はない
- 年末調整後に交付される源泉徴収票を保管しておく
- 控除の申告を忘れた場合も確定申告(還付申告)は5年間行える
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
確定申告が超ラクちんに!
freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。freee会計で自分でできる確定申告を!
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告は名称が異なりますが、どちらも個人の1年間の所得税額を確定し、申告・納税するまでの手続きです。
ただし、年末調整と確定申告には、申告手続きの対象者や実施者、申告期間、受けられる控除の種類などに違いがあります。
年末調整は、従業員の代わりに勤務先が所得税の申告・納税を行います。1年間の給与総額が確定する年末に正しい所得税額を計算し、毎月の給与から概算で徴収された源泉徴収税額との差額を精算する仕組みです。
一方、確定申告は個人事業主やフリーランス、一部の要件に該当する会社員または会社の役員などが自ら行う手続きです。1年間の所得金額を税務署に申告し、所得税を確定・納税します。
年末調整と確定申告の違いは以下の通りです。
項目 | 年末調整 | 確定申告 |
---|---|---|
手続きをする人 | 勤務先 | 本人(納税者自身) |
対象者 | 給与所得者 (一定の条件に該当しない人) |
・個人事業主やフリーランス ・年間の収入が2,000万円超の給与所得者 ・副業などによる所得が20万円超の人 ・年金受給者(不要な場合もあり)など |
対象期間 | 1月1日~12月31日に支払を受けた給与および賞与 | 1月1日〜12月31日に発生した全ての所得 |
申告期限 (年末調整および確定申告) | 勤務先が定めた期間(通常は当年11月末〜12月に支払われる給与計算の締日) | 原則、翌年2月16日〜3月15日(開始日・最終日が土日の場合は翌営業日まで) |
出典:国税庁「No.2020 確定申告」
年末調整とは
年末調整とは、毎月概算で徴収した源泉徴収税額と年税額の差額を精算する手続きです。
会社員やアルバイト・パートなどの給与所得者は、毎月の給与やボーナスから概算で計算された所得税が差し引かれます。これを源泉徴収といいますが、「1年間の源泉徴収税額の合計」と「給与総額にもとづく正しい年税額」は一致しないのが通常のため、源泉徴収をした勤務先が年末に精算手続きを行います。
精算の結果、その年の12月~翌年1月頃に税額の過不足分が従業員に還付または追加徴収されます。

会社員であれば基本的には年末調整の対象となりますが、一定の条件に該当する場合には対象外となります。年末調整の対象になる人と、対象にならない人の条件は以下の通りです。
年末調整の対象となる人の要件
年末調整までに給与支払者に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人のうち、以下のいずれかに該当する人
- 1年を通じて勤務している人
- 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
- 年の途中で退職した人のうち、次に該当する人(※1)
・死亡により退職した人
・著しい心身の障害のため退職し、本年中の再就職が見込めない人
・12月に給与の支払いを受けた後、退職した人
・パートタイマーとして働いている人が退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下の人(退職後、年末までにほかの勤務先から給与を受け取る見込みがある場合を除く) - 年の途中で、海外勤務により非居住者となった人(※2)
出典:国税庁「令和6年分 年末調整のしかた」
(※1)上記対象者は、年末ではなく退職時に年末調整を実施
(※2)上記対象者は非居住者となった際に年末調整を実施
年末調整の対象とならない人
- 給与収入が年間2,000万円を超える人
- 災害による被害を受け、本年分の給与に対する源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予、または還付を受けた人
- 2ヶ所以上から給与の支払いを受けており、ほかの給与の支払者に扶養控除等(異動)申告書を提出している人
- 年末調整を行うまでに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人
- 年の途中で退職した人のうち、次に該当しない人
・死亡により退職した人
・著しい心身の障害のため退職し、本年中の再就職が見込めない人
・12月に給与の支払いを受けた後、退職した人
・パートタイマーとして働いている人が退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下の人(退職後、年末までにほかの勤務先から給与を受け取る見込みがある場合を除く - 非居住者
- 継続して同一の雇用主に雇用されない、いわゆる日雇い労働者
出典:国税庁「令和6年分 年末調整のしかた」
年末調整に関連する税制改正
2022年度の税制改正により、2023年分の年末調整からは以下の3つのポイントに関して変更がありました。
年末調整・確定申告で注意したい制度改正ポイント
- 配偶者および扶養親族に退職所得が見込まれる場合は申告が必要
- 扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更
- 住宅ローン控除の適用期間および控除率が変更
なお、2025年度税制改正により、所得税の「基礎控除」や「給与所得控除」に関する見直し、「特定親族特別控除」の創設が⾏われました。これらの改正は原則として2025年12月1日に施行され、2025年分以後の所得税について適⽤されます。
このため、2025年12月に行う年末調整など、2025年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じます(2025年11月までの源泉徴収事務には変更は生じません)。
年末調整の際の詳しい事務の内容については、国税庁ホームページに随時掲載が予定されているため、確認しておきましょう。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
確定申告とは
確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間の所得を申告する手続きです。その所得に対する所得税を、原則翌年2月16日~3月15日までに確定して納付します。
源泉徴収や予定納税の額よりも本来納付すべき税額が少ない場合は、確定申告書の提出後1ヶ月~1ヶ月半程度でその差額が還付され、多い場合は不足分の所得税を納付します。
個人事業主やフリーランスを含む自営業の人など、給与所得以外の所得がある人は個人で確定申告をしなければなりません。
「年末調整済みの会社員で確定申告が必要なケース」で後述しますが、会社員などの給与所得者でも、条件に該当する場合は個人での確定申告が必要になります。
【関連記事】
確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!
年末調整または確定申告で受けられる所得控除
年末調整と確定申告では適用できる所得控除に違いがあり、一部の控除を受けるには、年末調整を受けた人でも確定申告が必要になります。
所得控除は、所得税を算出する際に一定の金額を所得から差し引ける制度です。所得控除は16種類あり、年末調整・確定申告での適用可否は以下の通りです。
控除の種類 | 控除の適用可否 | |
---|---|---|
年末調整 | 確定申告 | |
雑損控除 | × | ◯ |
医療費控除 | × | ◯ |
寄附金控除 | × | ◯ |
社会保険料控除 | ◯ | ◯ |
小規模企業共済等掛金控除 | ◯ | ◯ |
生命保険料控除 | ◯ | ◯ |
地震保険料控除 | ◯ | ◯ |
障害者控除 | ◯ | ◯ |
寡婦控除 | ◯ | ◯ |
ひとり親控除 | ◯ | ◯ |
勤労学生控除 | ◯ | ◯ |
配偶者控除 | ◯ | ◯ |
配偶者特別控除 | ◯ | ◯ |
扶養控除 | ◯ | ◯ |
基礎控除 | ◯ | ◯ |
特定親族特別控除 | ◯ | ◯ |
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
年末調整をしている会社員であっても、雑損控除・医療費控除・寄附金控除を受けるには、確定申告を行う必要があります。
【関連記事】
所得控除とは?種類や対象者、計算方法などを解説
年末調整済みの会社員で確定申告が必要なケース
通常、会社員などの給与所得者は年末調整によって所得税が精算されるため、個人で確定申告をする必要はありません。
しかし、以下の項目に該当する人は、年末調整とは別に個人で確定申告が必要です。なお、確定申告では年末調整後に発行される源泉徴収票の内容にもとづいて申告書を作成します。
会社員で確定申告が必要なケース
- 1ヶ所から給与の支払を受け、給与以外の所得が20万円を超える人
- 2ヶ所以上から給与の支払いを受け、本業以外からの所得が20万円を超える人(※)
- 同族会社の役員などで、給与のほかに不動産の貸付による家賃収入などがある人
※給与収入金額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告不要です。
出典:国税庁「確定申告が必要な方」
年末調整は雇用主の義務であるため、実施の有無を従業員が選択することはなく、確定申告を行う場合も原則として年末調整が実施されます。
会社員が確定申告しなくてはならない場合について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
会社員で確定申告が必要な人とは?ふるさと納税や副業など事例別にやり方を解説
会社員の副業はいくらから確定申告が必要?副業の開始前に知るべき手続きや注意点について解説
1ヶ所から給与の支払いを受け、副業の所得が20万円を超える人
本業として1ヶ所から給与を受け取りながら副業などをしていて、本業の給与以外の所得が20万円を超える人は、所得税の確定申告が必要です。
たとえば、本業とは別にクラウドソーシングや内職などで得た雑所得が20万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。
副業所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告は別途必要となります。
2ヶ所以上から給与の支払いを受け、本業以外からの所得が20万円を超える人
年末調整は1人につき1ヶ所でしか受けることができません。たとえば、本業が会社員で、副業としてアルバイトをしている人など、2つの会社に雇用されている場合でも、年末調整を受けられるのはどちらか一方に限られます。一般的には、収入の多いほうで年末調整が行われます。
2ヶ所以上から給与を受け取っている場合、年末調整を受けていないほうの収入とその他の所得の合計が20万円を超えると、確定申告が必要です。
同族会社の役員などで、給与のほかに不動産の家賃収入などがある人
自身が同族会社の役員であり、給与以外に不動産の賃料などを受け取っている場合は、たとえその所得が20万円以下であっても確定申告が必要です。
また、その同族会社の役員と特殊な関係にある人も、同様に確定申告を行います。
同族会社の役員とは、法人税法に規定された同族会社における役員のことです。役員と特殊な関係にある人とは、その役員の親族または親族関係にあった人などを指します。
出典:国税庁「同族会社の役員で確定申告の必要な人」
年末調整済みの会社員で確定申告をしたほうがよいケース
確定申告の義務がない会社員でも、以下の条件に該当する人は確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
会社員で確定申告をしたほうがよいケース
- 医療費控除・雑損控除・寄附金控除を受ける人
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を初めて受ける人
- ふるさと納税の納付先自治体が6ヶ所以上の人
会社員で確定申告の対象となる要件について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】
会社員で確定申告が必要な人とは?ふるさと納税や副業など事例別にやり方を解説
医療費控除・雑損控除・寄附金控除を受ける人
所得控除のうち、医療費控除・雑損控除・寄附金控除は年末調整で適用を受けることができません。そのため、これらの控除を受けたい場合は確定申告が必要です。
所得控除 | 控除対象となるケース |
---|---|
医療費控除 | 1年間(1月1日~12月31日)にご自身または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超える場合 |
雑損控除 | 災害・盗難・横領によって一定の資産について損害を受けた場合 |
寄附金控除 | 国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して一定の寄附金を支払った場合 |
出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
なお、年末調整で適用可能な生命保険料控除や小規模企業共済等掛金控除などの所得控除を申告し忘れていた場合も、確定申告を行えば適用を受けられます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を初めて受ける人
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける最初の年分は、確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で手続きできます。
住宅ローン控除は、所得税額から一定額を差し引ける税額控除のひとつで、住宅ローンを利用してマイホーム(認定住宅)を新築した場合などに適用されます。
【関連記事】
住宅ローン控除を受けるための確定申告のやり方や必要書類を解説
ふるさと納税の納付先自治体が6ヶ所以上の人
寄附金のひとつである「ふるさと納税」の納付先自治体が6ヶ所以上の場合は、ワンストップ特例制度を利用できないため、確定申告が必要です。
ワンストップ特例制度とは、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる制度です。以下2つの条件を満たす人が利用できます。
ワンストップ特例制度を利用できる人
- 会社員などで、確定申告を行わない人
- 1年間のふるさと納税先の自治体が5ヶ所以内の人
また、ワンストップ特例制度を利用する場合、翌年1月10日までにワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)を提出しなければなりません。申請が間に合わなかった場合は、確定申告による手続きが必要です。
【関連記事】
確定申告でふるさと納税の控除を受けるには?やり方や必要書類についても解説
転職・退職後に確定申告が必要なケースもある
会社員が転職や退職をしたときに確定申告が必要になることもあります。
転職・退職後に確定申告が必要なケース
- 退職後に年末まで再就職しなかった人
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人
なお、退職後に雇用保険から失業給付を受ける場合、失業給付分を申告する必要はありません。失業給付は次の仕事が見つかるまでの生活の保障であり、課税所得には該当しないためです。
【関連記事】
転職した年は確定申告が必要?必要なケース・自分でする場合の注意点について解説
退職後に年末まで再就職しなかった人
年の途中で退職して年内に再就職した場合は、新しい勤務先で前職分も含めた年末調整を受けられます。
一方、年の途中で会社を退職し、その年の12月31日時点で会社に勤めていない場合は、個人で確定申告が必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人
退職金は長年の勤労に対する報償金の意味合いをもつことから、税負担が軽くなるように「退職所得控除」が設けられています。退職所得控除とは、勤続年数に応じて一定額が所得から控除される制度です。
退職時に退職金を受け取る際、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、退職金は退職所得控除を適用して正しく源泉徴収されるため、確定申告は不要です。
一方「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金から一律20.42%が源泉徴収されます。退職所得控除を適用した場合より多く税金が差し引かれる可能性があり、還付を受けるには確定申告が必要です。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 (上記計算で80万円に満たない場合は一律80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) |
出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

例:30年勤務した人が退職金2,500万円を受け取った場合の所得税額の違い
「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合
退職所得控除額:8,000,000円 + 700,000円 ×(30年 − 20年)= 15,000,000円
課税退職所得金額:(25,000,000円 − 15,000,000円) × 1/2 = 5,000,000円
所得税額:5,000,000円 × 20%(※1)− 427,500円(※2)= 572,500円
復興特別所得税:572,500円 × 2.1% = 12,022円
納税する所得税額:572,500円 + 12,022円 = 584,500円(100円未満端数切り捨て)
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合
納税する所得税額:25,000,000円 × 20.42% = 5,105,000円
(※1)所得税率
(※2)所得額に応じた控除額
退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は確定申告を行い、払いすぎた所得税の還付を受けましょう。
【年末調整の有無別】確定申告のやり方
確定申告の基本的な手順を、年末調整の有無に分けて解説します。年末調整済みのケースと未実施のケースで必要な対応が異なるため、それぞれの流れを確認しておきましょう。
年末調整済みのときの確定申告のやり方
年末調整をした人で確定申告が必要になる主なケースとしては、医療費控除、住宅ローン控除、ふるさと納税に関する寄附金控除を受ける場合などが挙げられます。
それぞれの確定申告の手順を以下で解説します。
医療費控除の場合
1年間で支払った医療費が10万円(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額 × 5%)以上の場合、確定申告をすると医療費控除が受けられます。
確定申告の流れは、以下の通りです。
医療費控除の確定申告の流れ
- 通知書や領収書から1年間の医療費の支払総額を確認する
- 医療費控除額を計算する
- 確定申告書と医療費控除の明細を作成する
- 必要書類をそろえて税務署に提出する
申告の際には、医療費控除の明細書、確定申告書、マイナンバーが記載された本人確認書類を提出します。e-Taxでの電子申告の際には、マイナンバーカードなどに格納の電子証明書で本人確認を行います。医療費通知書や領収書は医療費の確認に必要となりますが、提出は不要です。
【関連記事】
医療費控除とは?確定申告の流れや対象費用についてわかりやすく解説
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
住宅ローン控除の場合
住宅ローン控除を受ける場合、2年目以降は年末調整で対応できますが、最初の年分は確定申告が必要です。確定申告の流れは以下の通りです。
住宅ローン控除を受けるための確定申告の流れ
- 不動産会社から不動産売買契約書と住宅の区分に応じた証明書類を受け取る
- 金融機関から住宅ローンの年末残高等証明書を受け取る
- 建物・土地の登記事項証明書を取得する
- 勤務先から源泉徴収票が発行される
- 確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書を作成する
- 必要書類をそろえて税務署に提出する
確定申告の際の必要な書類は、以下の通りです。
転職・退職後に確定申告が必要なケース
- 確定申告書
- 本人確認書類の写し
- 源泉徴収票
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの年末残高等証明書
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
- 住宅の区分に応じた証明書類
住宅ローン控除は必要書類が多いため、計画的に書類の準備を進めていきましょう。
【関連記事】
住宅ローン控除を受けるための確定申告のやり方や必要書類を解説
出典:国税庁「マイホームを持ったとき(住宅借入金等特別控除など)」
ふるさと納税に関する寄附金控除の場合
年末調整をした人も、ふるさと納税の納付先自治体が6ヶ所以上の場合やワンストップ特例申請書の提出が間に合わなかった場合は確定申告が必要です。
確定申告の流れは、以下の通りです。
ふるさと納税の確定申告の流れ
- 年間の寄附金額を計算する
- 確定申告書を作成する
- 必要書類をそろえて税務署に提出する
確定申告書 第二表には、以下の2つを記入します。
確定申告書 第二表の記入内容
- 「寄附金控除に関する事項」欄に寄附先の名称と合計寄附金額を記入
- 「住民税・事業税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特別控除対象)」欄に合計寄附金額を記入
確定申告書 第一表には、寄附金額から2,000円を差し引いた寄附金控除額を「寄附金控除」欄に記入します。
申告の際には、確定申告書、マイナンバーが記載された本人確認書類、収入がわかる書類(源泉徴収票など)、寄附金受領証明書を提出します。e-Taxで確定申告する場合は、マイナンバーカードなどに格納の電子証明書で本人確認を行い、寄附金受領証明書の提出は不要です。
【関連記事】
確定申告でふるさと納税の控除を受けるには?やり方や必要書類についても解説
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
年末調整していないときの確定申告のやり方
年間の給与収入が2,000万円を超えている人や、年の途中で退職して年末まで再就職していない人などは、確定申告が必要です。確定申告書を作成し、必要書類一式を税務署へ提出します。
確定申告書の提出期限は、毎年2月16日〜3月15日(開始日・最終日が土日祝日などの場合は翌営業日まで)です。
確定申告に必要な書類は、以下の通りです。
確定申告に必要な書類
- 確定申告書
- マイナンバーがわかる書類(書面で提出する場合)
- 各種控除証明書
- 収入がわかる書類(源泉徴収票など)
確定申告書は、税務署へ持参して提出する方法のほか、郵送やe-Taxによる提出も可能です。
【関連記事】
確定申告のやり方をわかりやすく解説!個人事業主や会社員が自分でやるには?
年末調整と確定申告を両方行う際のポイント・注意点
年末調整後に確定申告を行う人に向けて、両方行う際のポイント・注意点を解説します。
年末調整と確定申告を両方行う際のポイント・注意点
- 年末調整後に確定申告をする際は全ての収入を申告する
- 年末調整と確定申告が重複しても税金が二重にかかる心配はない
- 年末調整後に交付される源泉徴収票を保管しておく
- 控除の申告を忘れた場合も確定申告(還付申告)は5年間行える
年末調整後に確定申告をする際は全ての収入を申告する
確定申告をする場合は、原則として全ての収入を申告しなければなりません。
たとえば、1ヶ所から給与の支払いを受けていて副業の所得が20万円を超えている人は、副業だけでなく本業の給与収入も含めて確定申告する必要があります。
申告に漏れがあると、本来の所得税とは別に延滞税や加算税が課される可能性もあるため、事前に十分な確認が必要です。
年末調整と確定申告が重複しても税金が二重にかかる心配はない
確定申告を行う場合、年末調整の内容も含めて最終的な納税額を再計算し、すでに源泉徴収された税額や年末調整で精算済みの額を差し引いて過不足を調整します。
そのため、年末調整と確定申告を両方行っても税金が二重にかかったり、所得控除を二重に申請してしまったりする心配はありません。
なお、確定申告が必要であるのに忘れていると、延滞税や加算税が課される可能性があります。
年末調整後に交付される源泉徴収票を保管しておく
給与所得者が確定申告を行う場合は、年末調整後に交付される源泉徴収票をもとに確定申告を行います。源泉徴収票の添付や提示は不要ですが、申告書の作成に必要となるため、確定申告まで大切に保管しましょう。
控除の申告を忘れた場合も確定申告(還付申告)は5年間行える
確定申告の義務がない人が確定申告期間内に医療費控除や寄附金控除などを申告するのを忘れてしまった場合も、還付申告は5年間行えます。
還付申告とは、源泉徴収された所得税額などが納めるべき所得税額よりも多い場合に、確定申告をすることで所得税の還付を受けられる制度です。
還付申告は、確定申告の申告期間にかかわらず、その年の翌年1月1日から5年間行えます。
【関連記事】
還付申告とは?対象となるケースや確定申告・年末調整との違いを解説
まとめ
年末調整は、従業員の代わりに勤務先が源泉徴収済みの所得税額と、年間の所得にもとづいて算出された正確な所得税額を照合し、過不足を精算する手続きです。一方、確定申告は1年間の所得金額や納税額を自分で計算し、申告・納税する手続きを指します。
会社員などの給与所得者は、勤務先で年末調整を行うため、原則として確定申告の必要はありません。
ただし、医療費控除など年末調整の対象外となる控除を受けたい場合や、副業収入が20万円を超える場合などは、年末調整を受けていても自身での確定申告が必要です。
年末調整や確定申告の仕組みを正しく理解し、適切に申告しましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告に関する作業を効率化したいとお考えの方には、確定申告ソフト「freee会計」の活用がおすすめです。
freee会計には、以下のような機能があります。
- 銀行口座やクレジットカードを同期して出入金を自動入力
- 家計簿感覚でできる帳簿付け
- 確定申告時、税額控除の金額を自動算出
- e-tax(電子申告)対応でオンライン申告も可能
日々の経費管理から確定申告の対応まで、さまざまな作業を自動化して時間や手間を大幅に削減できます。
勘定科目も予測して入力できるため、慣れない人でも安心して使用いただけます。
また、確定申告の際には質問に回答すると税額控除の金額を自動算出できます。ご自身で面倒な計算をする必要がなく、スムーズな書類作成が可能です。
さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。
freee会計を使うとどれくらいお得?
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
忙しい年度末の負担を減らすためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
年末調整と確定申告の違いは?
年末調整と確定申告はどちらも1年間の所得に対する所得税を確定・申告し、還付を受ける、または不足分を納税する手続きを指します。
確定申告が個人で行う手続きであるのに対し、年末調整は勤務先が行う手続きです。
詳しくは、記事内「年末調整と確定申告の違い」をご覧ください。
年末調整と確定申告の両方が必要なケースは?
基本的には、年末調整を受けていれば確定申告は不要ですが、副業による一定額以上の所得がある場合や退職金を受給した人で特定の条件に当てはまる場合などは、確定申告が必要です。
詳しくは、記事内「年末調整済みの会社員で確定申告が必要なケース」と「転職・退職後に確定申告が必要なケースもある」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
