監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

アルバイトとして勤務する場合、基本的に年末調整の対象となるため、確定申告は不要です。しかし、アルバイトを掛け持ちしていたり、勤め先が年末調整をしていなかったりする場合には、自分で確定申告をしなければなりません。
確定申告の義務があるにもかかわらず、申告をしなかったり期限に遅れたりすると、ペナルティとして罰金が科せられる可能性があります。
本記事では、アルバイトで確定申告が必要なケースや確定申告の流れについて解説します。
目次
アルバイトで確定申告が必要になるケース
アルバイトで働いている人は、年収が160万円を超える*と所得税がかかりますが、基本的にアルバイトとして働く人は年末調整の対象となるため、確定申告は不要です。
ただし、年収が160万円以下であっても、以下の条件に当てはまる場合は原則、個人で確定申告をしなければなりません。
アルバイトで確定申告が必要になるケース
それぞれ該当する条件が細かく定められているため、それぞれきちんと内容を理解しておきましょう。
*令和7年(2025年)度の税制改正により、基礎控除・給与所得控除の見直しが行われたことで、所得税の納税義務が発生する最低年収が引き上げられました。詳しくは記事下部で詳しく解説します。
アルバイト先で年末調整が行われていない人
アルバイト・パートや会社員などの給与所得者は、会社側が従業員に代わって所得税の計算・納税を行なってくれます(年末調整)。そのため、原則個人での確定申告は不要です。
しかし、会社側が年末調整を実施していない場合には、個人で確定申告を行わなければならない可能性があります。ただし、1年間の給与収入が160万円以下で、源泉徴収された金額がなければ確定申告の必要はありません。
掛け持ちをしていて2ヶ所以上でアルバイトをしている人
年末調整をできるのは1つの勤務先のみで、最も給与額が大きい会社で行うのが一般的です。
しかし2ヶ所以上でアルバイトを掛け持ちしている場合は、原則、すべての給与を合算して自分で確定申告する必要があります。
年内にアルバイト先を辞めている人
原則、年末調整は12月31日まで在籍している人が対象となります。そのため、年末までにアルバイトを辞めていて年収が160万円を超えている人は、確定申告が必要となる場合があります。
ただし、12月分の給与が支払われたあとであれば、年内に辞めたとしても年末調整の対象となるため、個人で確定申告をしなくても問題ありません。
ただし、年内に別の勤務先に在籍している場合は、辞めた勤務先の源泉徴収票を提出することで、前職分の金額を含めた新しい勤務先による年末調整が受けられます。
アルバイト先の給与以外に所得がある人
副業などをしていて、アルバイト先の給与以外に所得が95万円を超えている人は、確定申告が必要となる場合があります。
UberEats配達員の報酬やYouTube・アフィリエイトなどで得た収益など、少額の副業収入は「雑所得」に分類されます。雑所得は年末調整で処理できないため、個人で確定申告をしなければなりません。
ただし、給与所得以外の所得が年間20万円以下である場合は、確定申告は任意となります。
年末調整に必要な書類の提出を忘れた人
年末調整を行うアルバイト先には「扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。これの提出を忘れてしまうと年末調整を受けることができません。
年末調整を受けられなかった場合には、個人で確定申告をする必要があります。ただし、1年間の給与収入が160万円以下で、源泉徴収された金額がなければ確定申告の必要はありません。
提出期限は会社ごとに異なるので、事前に確認をして忘れないように注意しましょう。
アルバイトが確定申告する場合の必要書類
アルバイトとして働く人が確定申告を行うために必要な書類は以下のとおりです。
アルバイトが確定申告するときに必要な書類
- 確定申告書
- マイナンバーがわかる書類(本人確認書類)
- 控除を受けるために必要な各種控除証明書
- 前職の源泉徴収票など、その年の収入がわかる書類
- 口座番号がわかる通帳など(※ 税金の還付を受ける場合)
本人確認書類としてマイナンバーが記載されているものが必須となります。マイナンバーカードがあればそれのみで済みますが、ない場合には番号確認書類と身元確認書類の2つが必要になるので注意しましょう。
勤務先の源泉徴収票は確定申告書を作成する上で必要ですが、税務署に提出する必要はありません。
出典:国税庁「源泉徴収票等の添付が不要となりました」
アルバイトが確定申告する場合の流れ
確定申告の主な流れは以下のとおりです。

確定申告のやり方については、別記事「確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!」をあわせてご確認ください。
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アルバイトで確定申告をしなかったらどうなる?
確定申告の義務があるにもかかわらず、無申告の場合にはペナルティとして罰金が科せられる可能性があります。
また、確定申告は期間が設けられており、確定申告期間を過ぎてから申告をした場合にもペナルティの対象となる可能性があるため、対象者は必ず期間内に申告・納税をしましょう。
なお、確定申告期間は毎年2月16日から3月15日です。※開始日と最終日が土日だった場合は翌月曜日に繰り越し

ペナルティのほかにも、税金の還付を受けられなかったり、ローンや賃貸契約に影響が出たりと日常生活に影響をもたらすおそれもあるため、注意が必要です。
【関連記事】
確定申告しないとどうなる? デメリットと対処法を解説
確定申告期間はいつからいつまで?期限を過ぎた場合のペナルティや対処法について解説
確定申告でしか受けられない控除もある
確定申告の義務がない人でも、以下の控除を適用するためには個人で確定申告をしなければなりません。
所得控除とは、所得税算出の際に一定の金額を所得から差し引ける制度です。適用条件に該当する場合には確定申告をすることで、納税額が還付される可能性があるので、必ず確定申告をするようにしましょう。
なお、控除適用のみであれば確定申告をしなくても罰則などはありません。
【関連記事】
税金の控除制度とは? 所得控除・税額控除の種類や違いを解説
令和7年(2025年)分から基礎控除・給与所得控除額が引き上げに!
令和7年度税制改正により、基礎控除や給与所得控除の見直しが行われました。改正は原則として、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されます。
基礎控除の見直し
基礎控除は1年間の所得が2,500万円以下の人であれば誰でも適用される所得控除です。令和6年(2024年)分までは控除の最高額が48万円でしたが、令和7年(2025年)分からは以下のようになります。
合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
132万円以下 | 95万円 |
132万円超336万円以下 | 88万円 (令和9年分以後は58万円) |
336万円超489万円以下 | 68万円 (令和9年分以後は58万円) |
489万円超655万円以下 | 63万円 (令和9年分以後は58万円) |
655万円超2,350万円以下 | 58万円 |
2,350万円超 | 0円 |
給与所得控除の見直し
給与所得控除は、1年間の給与額に応じて変動します。令和6年(2024年)分までは、控除の最低額が55万円でしたが、令和7年(2025年)分から65万円に引き上げられました。
給与所得控除額は以下のとおりです。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額 × 40% - 100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額 × 30% + 80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額 × 20% + 440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額 × 10%+ 1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
基礎控除・給与所得控除のほかにも、特定親族特別控除の創設や扶養親族等の所得要件の改正などが行われています。詳しくは、国税庁の「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」をご確認ください。
よくある質問
学生でもアルバイトをしていたら確定申告が必要?
学生の場合でも、アルバイトとしての年収が160万円を超えており、下記に該当する場合には自分で確定申告が必要な場合があります。
学生アルバイトで確定申告が必要になるケース
なお、アルバイトをしている学生で、その年の12月31日時点で以下の条件を満たす場合には勤労学生控除が適用されます。
【勤労学生控除の適用条件】
① 給与所得などの勤労による所得があること
② 合計所得金額が75万円以下かつ、①以外の所得が10万円以下であること
③ 特定の学校の学生・生徒であること
出典:国税庁「勤労学生控除」
勤労学生控除が適用される学生アルバイトは、年収が187万円を超えて【学生アルバイトで確定申告が必要になるケース】に該当すると、個人で確定申告が必要になる可能性があります。
また、親の扶養に入っている場合、アルバイトの年収が160万円を超えると扶養から外れます。扶養控除が受けられなくなると税金が上がってしまう可能性があるため注意が必要です。
【関連記事】
年末調整の勤労学生控除の書き方・申告方法を解説【令和6年(2024年)版】
アルバイトで確定申告が必要なのはいくらから?
アルバイトの給与が1月1日から12月31日までの1年間で160万円を超えている場合には、所得税が発生するため確定申告が必要となる場合があります。ただし、アルバイト先が年末調整を行なっている場合には、自分で確定申告をする必要はありません。
アルバイトの12月分の給与が1月支払いの場合の確定申告はどうすればいい?
確定申告の対象期間は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払うことが確定した給与です。この「支払うことが確定した給与」は、就業規則や雇用契約で定められた給与支給日を指しています。
そのため、12月分給与が翌月1月支払いの場合、12月分給与は来年の確定申告の対象となります。
出典:国税庁「No.2668 年末調整の対象となる給与」
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
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ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
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3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
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4.確定申告書を自動作成!
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まとめ
アルバイトで働いている人は年末調整の対象となるため、基本的に個人で確定申告をする必要はありません。しかし、会社が年末調整をしていなかったり、2ヶ所以上でアルバイトを掛け持ちしていたりする場合には確定申告が必要になる可能性があります。
アルバイトで稼いだ額が1月1日から12月31日までの1年間で160万円以下の場合は、所得税が発生しないため、そもそも確定申告の対象外です。
ただし、医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)、雑損控除は年末調整の対象外となるため、これらを適用したい場合には個人で確定申告をしなければなりません。
監修 好川寛(よしかわひろし)
元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。
