最終更新日:2021/05/31
結婚退職によって専業主婦となった場合、どのようなケースで確定申告が必要になるのでしょうか。この記事では、専業主婦が確定申告をする際に注意すべきポイントや、夫の扶養内で働く場合の所得制限について解説していきます。

※2022年3月16日追記※
e-Taxの接続障害の影響で期限である3月15日までに確定申告を完了できなかったケースについて、国税庁から延期申請に関する発表がありました。
- e-Tax障害による延期申請の旨を記載した上で、2022年4月15日までに書面またはe-Taxで提出すれば期限後申告の扱いにならない。
- 65万円の青色申告特別控除を受ける場合、e-Tax障害による延期申請の旨を記載した上で、2022年4月15日までにe-Taxで提出すれば65万円控除を受けられる。すでに書面で提出している場合も、同様の方法で再提出することで65万円控除を受けられる。
詳細は国税庁のホームページをご覧ください。
また、freee会計を利用してe-Taxを行う場合の対応については「令和4年3月14日 e-Tax接続障害 freeeでの対応」をご確認ください。
目次
専業主婦が気にするべき確定申告のポイント
収入のない専業主婦が確定申告をする際の注意点を解説します。
医療費控除は家族分まとめて収入の高い人で申告
医療費控除は、本人だけでなく、生計を同じくする家族の分も控除することができます。そのため、収入のない専業主婦の医療費は、夫の収入から控除することができます。
所得税は累進課税(所得が高ければ、税額が高くなる制度)なので、所得の高い方から医療費控除の申請をした方が節税に繋がります。
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記3参照)の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
医療費控除は、「実際に支払った医療費」から「保険金などで補てんされる金額」と「10万円」を引いた額が控除の対象となります。ただし、総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%が控除対象となります。
医療費は病院や調剤薬局で支払ったものだけではなく、市販されている医薬品の購入や医療機関を受診した際の交通費なども対象となります。
医療費控除の対象となる医療費
- 医師、歯科医師による診療、治療費用
- 治療、療養のために必要な医薬品の費用
- 病院、診療所、介護老人保健施設、助産所等への入院費用
- あん摩・マッサージ・指圧・鍼灸・柔道整復師による施術費用
- 保健師、看護師、准看護師等による療養上の費用
- 助産師による分娩介助費用
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引・経管栄養の費用
- 介護保険等制度で提供される一定の施設・居宅サービスの自己負担額
- 医師等による診療、治療、処置または分娩介助を受けるために直接必要なもの
- 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
- 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植の斡旋に係る患者負担金
- 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
参考:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
専業主婦はふるさと納税で控除される税金がない
「ふるさと納税」とは、自治体に寄付した金額から2,000円を差し引いた金額が、その年度の所得税の還付と翌年の住民税の控除を受けることができる制度です。
ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。
手続きをすると、寄付金のうち2,000円を超える部分については所得税の還付、住民税の控除が受けられます。
支払った所得税と翌年の住民税が減額される制度なので、控除対象となる所得税や住民税が発生しない専業主婦の名義ではこの制度の恩恵を受けることはできません。そのため、「ふるさと納税」は所得のある配偶者の名義で行う必要があります。
ただし、「ふるさと納税」の控除額の上限は、年収や家族構成、居住地などによって異なります。様々な自治体で、給与収入と家族構成、寄附金額を入力して、寄附金控除額を計算(シミュレーション)するエクセルのシートを用意していますので、こちらもご利用ください。
参考:
・総務省|ふるさと納税ポータルサイト「寄附金控除額の計算シミュレーションEXCEL」
・調布市「ふるさと納税額や住民税額の計算シミュレーション」
・中央区ホームページ「個人住民税額シミュレーション」
・船橋市公式ホームページ「個人住民税税額シミュレーションシステム(税額の試算・申告書作成)について」
・大阪市「ふるさと寄附金について(都道府県・市区町村に対する寄附金)」
2015年度税制改正により、税額控除のための確定申告が不要となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が導入されました。この特例制度の適用を受けるためには、ふるさと納税をする自治体の数が5団体以下で、各自治体に特例制度の申請書を提出する必要があります。
確定申告の不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組み「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されました。特例の申請にはふるさと納税先の自治体数が5団体以内で、ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出する必要があります。
また、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の適用を受けた人は、所得税からの控除は発生せず、ふるさと納税をした年の翌年6月以降に納める住民税の額が減額されるという形で控除を受けることができます。
確定申告をしたほうがよい場合
結婚して専業主婦となった場合、本人、あるいは配偶者である夫が確定申告をした方がよいケースがあります。それぞれのケースについて、みていきましょう。
専業主婦本人の確定申告が必要なケース
企業は、従業員に支払う給与から所得税や特別所得税を天引きしています。しかし、1年間に天引きした税金の合計額と、本来支払うべき税金の合計額が異なる場合があります。
この不一致を解消し、正しい金額の所得税を支払うための手続きが年末調整です。
会社など給与の支払者は、役員又は使用人に対して給与を支払う際に所得税及び復興特別所得税の源泉徴収を行っています。
しかし、その年1年間に給与から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額は、必ずしもその人が1年間に納めるべき税額とはなりません。
このため、1年間に源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額と1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税額を一致させる必要があります。
この手続を年末調整といいます。
年の途中で退職して専業主婦になった場合は年末調整の対象外となりますので、確定申告をすることで過払いとなっている所得税と復興特別所得税の還付を受けることができます。
専業主婦の夫が確定申告をするべきケース
「配偶者控除」や「配偶者特別控除」に該当し、結婚のタイミングなどで年末調整を受けていない場合は、夫が確定申告をすることで所得税の還付を受けることができます。
「配偶者控除」は、その年の合計所得金額が48万円以下(2019年分までは38万円以下)の場合に利用できる控除です。その年の所得が給与所得のみの場合は、給与所得控除額が55万円なので、給与所得が103万円以下であれば合計所得金額が48万円以下になるため配偶者控除を受けることができます。
また、給与所得以外に不動産所得、一時所得、譲渡所得などがある場合でも、年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分までは38万円以下)であれば、配偶者控除を受けることができます。
2 控除対象配偶者となる人の範囲
控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。
なお、平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
なお、控除額は下記の表のように、納税者の合計所得金額と配偶者の年齢によって異なります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※「老人控除対象配偶者」とは、その年の12月31日現在で70歳以上の控除対象配偶者です。
「配偶者特別控除」とは、配偶者の所得が48万円(2019年までは38万円)を超えているために配偶者控除の対象外となっている場合でも、配偶者の所得金額に応じて一定の所得控除を受けることができる制度です。
納税者の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円を超え133万円以下(2018年分から2019年分までは38万円を超え123万円以下、2017年分までは38万円を超え76万円未満)であれば、配偶者は特別控除を受けることができます。
2 配偶者特別控除を受けるための要件
(1) 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
(2) 配偶者が、次の要件全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)であること。
(3) 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
(4) 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)
(5) 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。
なお、控除額は以下の表のように、納税者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額によって異なります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
扶養範囲内で働くためにはどうすればよいか
サラリーマンや公務員の夫が配偶者控除の適用を受けるためには、妻のパートやアルバイトによる年収が基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計103万円以下である必要があります。年収が103万円以下であれば、所得税の負担はありません。
これが「税制上の扶養」で「103万円の壁」といわれるものです。
1 配偶者本人の所得税の問題
パートにより得る収入は、通常給与所得となります。給与所得の金額は、年収から給与所得控除額を差し引いた残額です。給与所得控除額は最低55万円ですから、パートの収入金額が103万円以下(55万円プラス所得税の基礎控除額48万円)で、ほかに所得がなければ所得税はかかりません。
(注) 令和元年分以前は、上記の「給与所得控除額」は「最低65万円」に、「基礎控除額」は「38万円」です。
次に、「社会保険上の扶養」に関係する「106万円の壁」について説明します。
これまでは、年収130万円以下であれば夫の扶養に入ることができ、保険料を支払う必要がありませんでした。しかし、2016年10月からは社会保険の加入資格が拡大されたため、従業員501人以上の会社に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上、月の賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)であれば、社会保険に加入する必要があります。
1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、次の5要件を全て満たす方は、被保険者になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)
扶養の範囲内で働きたいのであれば、所得税の負担がなく夫が配偶者控除を受けることができる年収103万円か、所得税は支払うことになるが社会保険の加入義務がない年収106万円が今後の基準となります。
あるいは、従業員数500人以下など社会保険の加入義務から外れる会社で年収130万円未満で働くというのも選択肢の一つです。
実際に確定申告をするには
結婚退職して専業主婦になった人が確定申告をするときには、前の勤務先の源泉徴収票が必要になります。源泉徴収票は退職時に会社から発行されます。源泉徴収票に結婚前の苗字が記載されている場合は、住民票を求められることがあります。
退職金の支払いを受けている場合、雇用主に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人については、事業主が退職金の支払時の退職所得金額に応じて所得税及び復興特別所得税を計算して源泉徴収するので、原則として確定申告の必要はありません。
一方、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人については、退職金の支払額の20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。確定申告をすることで過払い分の還付を受けることができます。
参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
生命保険料控除を受ける場合は、生命保険料控除証明書の作成も必要です。
また、退職してから入籍するまでに期間が開いた場合は、国民年金、国民健康保険に加入している場合があります。社会保険料控除を受けるためには、国民年金は国民年金控除証明書が必要ですが、国民健康保険は納付証明書は必要ありません。
確定申告にはA様式を使用し、管轄する税務署に提出しましょう。
なお、所得税の還付を受ける方で、結婚して名字が変わった場合は、新しい名字の銀行口座が必要になりますので注意してください。
確定申告時期になると無料相談会などを行っている市役所などもありますので、確定申告に不安がある方はお住まいの地域の市役所へ相談してみるとよいでしょう。
参考:
・西東京市Web「市民税・都民税申告および所得税申告について」
・流山市「確定申告会場の日程等と市・県民税申告について」
まとめ
結婚して退職した年は、確定申告によって所得税が還付されるケースが多いので計算してみましょう。
また、夫の扶養として働くことを考える場合は、社会保険加入のメリット・デメリットについても考えておきましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
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