最終更新日:2023/03/03

企業で勤めている間は年末調整によって確定申告が不要だった人も、退職し公的年金(老齢年金)を受け取るようになったら、確定申告が必要かどうかを自身で判断しなければなりません。
年金受給者で公的年金(老齢年金)以外に、納税の対象となる所得が一定額以上ある場合は確定申告が必要です。
本記事では、年金受給者で確定申告が必要なケースと不要なケースについて解説します。
目次
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年金受給者とは
年金受給者とは、公的年金を受給している人を指します。
公的年金には、日本国内に在住する20歳から60歳のすべての人が加入を義務付けられている「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」があります。なお、厚生年金の加入者は自動的に国民年金にも加入することになります。
公的年金には3種類あり、それぞれの受給条件は以下のとおりです。
公的年金の種類と条件
- 老齢年金:65歳以上の被保険者(60歳からの繰り上げ受給または75歳までの繰り下げ受給を選択することができる)
- 障害年金(*):病気やけがにより障害認定を受けた被保険者
- 遺族年金(*):生計を維持していた被保険者が死亡した遺族
(*)障害年金と遺族年金は非課税であり、確定申告の対象ではありません。
年金受給者で確定申告が必要かどうかは、課税対象となる公的年金(老齢年金)の受給額と公的年金以外の所得金額で異なります。課税対象となる所得の種類や確定申告が必要になる基準については、このあと詳しく解説します。
年金受給者で確定申告が必要な人
公的年金以外に納税しなければならない所得があり、年末調整ができないときには個人で確定申告をしなくてはなりません。
年金受給者で確定申告が必要な人の要件は以下のとおりです。
年金受給者で確定申告が必要な人
- 公的年金以外の所得が年間20万円を超える人
- 公的年金等(*)を年間400万円以上受け取る人
(*)国民年金、厚生年金、企業年金、確定給付企業年金、外国の社会保険に基づき支給される年金
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
所得とは収入から必要経費を差し引いた金額です。公的年金以外の所得には具体的に、給与所得・個人年金・企業年金・配当所得・一時所得(満期払戻金ほか)・不動産(賃貸)などがあります。
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年金受給者で確定申告をしたほうがいい人
控除の対象となる支出があった場合は、確定申告をすることで還付金を受け取ることができます。これを還付申告といいます。
確定申告で適用される控除には以下のようなものがあります。
確定申告することで適用される控除
- 医療費控除
- セルフメディケーション税制による医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険控除
- 寄付金控除
- ふるさと納税
- 雑損控除
- 住宅ローン控除
- 政党等寄附金特別控除
出典:国税庁「No.2030 還付申告」
還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できるため、控除対象の支出があった場合はできるだけ早く申告しましょう。
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還付申告とは?対象となるケースや確定申告・年末調整との違いを解説
年金に係る雑所得とその控除額
公的年金(老齢年金)は課税対象となる雑所得に分類されます。そのため、受け取る公的年金額が控除額を上回り、さらに後述する「確定申告不要制度」の対象にならない場合は確定申告の対象となります。
年金受給者の収入に対する控除額は、以下の表をもとに計算できます。
公的年金等の雑所得以外の所得が1,000万円以下の場合
年齢 | 公的年金等の 収入金額 | 公的年金等控除額 | 公的年金等に係る 雑所得の計算方法 |
65歳 未満 | 60万円以下 | 600,000円 | 0円 |
60万円超 130万円未満 | 600,000円 | 収入金額 - 600,000円(マイナスの場合は0円) | |
130万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 275,000円 | 収入金額 × 0.75 - 275,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 685,000円 | 収入金額 × 0.85 - 685,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,455,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,455,000円 | |
1,000万円以上 | 1,955,000円 | 収入金額 - 1,955,000円 | |
65歳 以上 | 110万以下 | 1,100,000円 | 0円 |
110万超 330万円未満 | 1,100,000円 | 収入金額 - 1,100,000円 (マイナスの場合は0円) | |
330万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 275,000円 | 収入金額 × 0.75 - 275,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 685,000円 | 収入金額 × 0.85 - 685,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,455,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,455,000円 | |
1,000万円 | 1,955,000円 | 収入金額 - 1,955,000円 |
公的年金等の雑所得以外の所得が1,000万円超かつ2,000万円以下の場合
年齢 | 公的年金等の 収入金額 | 公的年金等控除額 | 公的年金等に係る 雑所得の計算方法 |
65歳 未満 | 50万円以下 | 500,000円 | 0円 |
50万円超 130万円未満 | 500,000円 | 収入金額 - 500,000円 (マイナスの場合は0円) | |
130万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 175,000円 | 収入金額 × 0.75 - 175,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 585,000円 | 収入金額 × 0.85 - 585,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,355,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,355,000円 | |
1,000万円以上 | 1,855,000円 | 収入金額 - 1,855,000円 | |
65歳 以上 | 100万以下 | 1,000,000円 | 0円 |
100万超 330万円未満 | 1,1000,000円 |
収入金額 - 1,000,000円
(マイナスの場合は0円) | |
330万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 175,000円 | 収入金額 × 0.75 - 175,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 585,000円 | 収入金額 × 0.85 - 585,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,355,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,355,000円 | |
1,000万円 | 1,855,000円 | 収入金額 - 1,855,000円 |
公的年金等の雑所得以外の所得が2,000万円以下の場合
年齢 | 公的年金等の 収入金額 | 公的年金等控除額 | 公的年金等に係る 雑所得の計算方法 |
65歳 未満 | 40万円以下 | 400,000円 | 0円 |
40万円超 130万円未満 | 400,000円 |
収入金額 - 400,000円
(マイナスの場合は0円) | |
130万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 75,000円 | 収入金額 × 0.75 - 75,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 485,000円 | 収入金額 × 0.85 - 485,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,255,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,255,000円 | |
1,000万円以上 | 1,755,000円 | 収入金額 - 1,755,000円 | |
65歳 以上 | 90万以下 | 900,000円 | 0円 |
90万超 330万円未満 | 900,000円 | 収入金額 - 900,000円 (マイナスの場合は0円) | |
330万円以上 410万円未満 | 収入金額 × 0.25 + 75,000円 | 収入金額 × 0.75 - 75,000円 | |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額 × 0.15 + 485,000円 | 収入金額 × 0.85 - 485,000円 | |
770万円以上 1,000万円未満 | 収入金額 × 0.05 + 1,255,000円 | 収入金額 × 0.95 - 1,255,000円 | |
1,000万円 | 1,755,000円 | 収入金額 - 1,755,000円 |
たとえば、66歳で年金受給額が365万円で公的年金以外の収入額が500万円の場合、公的年金の雑所得は、3,650,000円 × 0.75 - 275,000円 = 2,460,500円となります。
確定申告をする際は、公的年金の受給額と公的年金以外の収入金額にあわせて上記のように計算することで、正しい納税額を求めます。
年金受給者で確定申告が不要なケース
年金受給者の確定申告の負担を軽減するために「確定申告扶養制度」が設けられています。
受け取る公的年金の所得額が確定申告の対象に含まれていても、以下の要件を満たせば確定申告する必要はありません。
公的年金の収入金額は、毎年1月頃に日本年金機構から送付される「公的年金等の源泉徴収票」で確認できます。国民年金や企業年金など複数の公的年金を受け取っている場合は、受け取っている全ての公的年金の合計金額を計算し、確定申告が必要かどうかを判断しましょう。
確定申告の方法と必要書類
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。青色申告は事前に開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。それらの書類を提出しなければ自動的に白色申告になります。
青色申告は事前に申告が必要だったり、複式簿記での記帳をしなければならなかったりと手続きが複雑ですが、さまざまな節税メリットがあります。一方、白色申告は事前の手続きなど必要なく、記帳も簡単ではあるものの、節税効果が低い申告方法です。
公的年金以外に事業所得や不動産所得、山林所得いずれかの所得がある人は青色申告のほうがおすすめです。収入が公的年金だけの場合は白色申告を利用するのが一般的です。
確定申告書の作成と提出方法
確定申告書の提出方法は、以下の方法から選択できます。
確定申告書の提出方法
所轄の税務署へ直接提出する 所轄の税務署へ郵便または信書便で送付する インターネットからe-Taxを利用して提出する
確定申告書の入手方法も提出方法と同様の3パターンになります。e-Taxや会計ソフトを利用すれば、確定申告書を自身で手書きする必要がなくなり、提出もインターネット上から可能なので税務署に行かなくても確定申告が完了できます。
初めての確定申告で不安な人や忙しい人は会計ソフトのご利用がおすすめです。
【関連記事】
e-taxでネットから確定申告する方法とメリットを解説
【初めての方向け】確定申告とは? 対象者、申告方法、必要書類まとめ
確定申告に必要な書類
年金受給者が確定申告する際に必要な書類は以下のとおりです。
確定申告に必要な書類
(1)確定申告書(*)
(2)公的年金や個人年金等の源泉徴収票
(3)マイナンバーカードまたは通知カードと身元確認書類
(4)給与所得者の源泉徴収票(確定申告書の作成時のみ必要)
(5)各種控除のための書類
・医療費控除明細書、医療費通知
・セルフメディケーション税制の明細書(領収書)と適用のための取り組みを示す書類(健康診断など)
・社会保険料控除証明書
・共済等の掛金額の証明書
・生命保険や火災保険等の支払証明書
・寄付金の受領書、政党等寄附金特別控除額の計算明細書等
・災害や盗難等によるやむを得ない支出の領収書
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書など住宅ローン控除の必要書類
(*)2023年1月から確定申告書Aが廃止され確定申告書Bに統合されます。
まとめ
会社員だった人などは、退職してはじめて確定申告が必要になる人も多いため、自身が確定申告をする必要があるかどうかの判断は簡単ではありません。
しかし、確定申告不要制度や各種控除などを正しく理解することで、確定申告の負担が軽減し、還付を受けることも可能になるので、事前にしっかりと準備をするようにしましょう。
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4.あとは確定申告書を税務署に提出するだけ
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【関連記事】
【2022年版】e-Taxでネットで確定申告:PC・スマホでのやり方とメリットまとめ
まとめ
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よくある質問
年金受給者で確定申告が必要な人は?
年金受給者で確定申告をしなければならないのは、年末調整ができず、なおかつ公的年金以外に納税しなければならない所得がある場合です。詳しくはこちらで解説しています。
確定申告不要制度とは?
年金受給者の確定申告の負担を軽減するための制度で、源泉徴収の対象となる公的老齢年金の収入金額が400万円以下であり、なおかつ公的年金以外の所得金額が20万円以下の場合は確定申告が不要となります。詳しくはこちらで解説しています。