確定申告の基礎知識

年金受給者も確定申告が必要?確定申告をすべきケースとは

公開日:2017/09/10
最終更新日:2020/12/07

年金受給者も確定申告が必要?確定申告をすべきケースとは

会社に年末調整をしてもらう場合一定の条件を満たすまでは自分で確定申告をする必要はありませんが、老齢年金が支給され始めたらその実施の有無を自分で判断しなければなりません。

具体的には、公的年金など等の収入金額が400万円を超える場合や、雑所得以外の所得(公的年金を含む)が20万円を超える場合は、税務署に確定申告をしなければなりません。

年金受給者は老齢年金から源泉徴収されるため、一定額以上の医療費や保険料、寄付金の支払い、住宅ローンを組んだとき、災害にあったとき、「公的年金等の源泉徴収票」の人的控除に変更があったときなどは、確定申告をすることで税金の還付を受けることができます。

この記事では、年金受給者で確定申告が必要なケースや、確定申告が不要になる「確定申告不要制度」とその対象者、年金受給者の特例について解説しています。

目次

年金受給者で確定申告が必要なケース

最初に、年金受給者で確定申告が必要なケースをまとめました。

<年金受給者で確定申告が必要なケース>

  1. 公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円を超える場合
  2. 公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円を超える場合
  3. 一定額以上の医療費を支払った場合
  4. マイホームを住宅ローンなどで取得あるいはリフォームした場合
  5. 社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などを受ける場合
  6. ふるさと納税など寄附金控除を受ける場合
  7. 災害や盗難に遭った場合

確定申告が必要か不要かの詳しい解説は、こちらの『確定申告するべき?確定申告が必要なケースと不要なケースとは』をご覧ください。

年金受給者で確定申告が不要なケース

確定申告が不要なケースのは「確定申告不要制度」の対象者です

以下両方の条件を満たしている場合は、確定申告の要はありませんが、確定申告をすることで還付を受けることができます。

  • 公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円以下
  • 公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円以下

確定申告が必要かどうかは年金受給額によって違ってくる

老齢基礎年金や老齢厚生年金、企業年金などの公的な老齢年金は「雑所得」とみなされます。そのため、公的年金の収入金額が公的年金等控除と基礎控除の合計額を超えていて、確定申告不要制度」(後述)の制度を受けていない場合は、確定申告が必要になります。          
公的年金等控除とは、公的年金の金額に応じた控除です。給与所得の場合の、給与所得控除と似ています。

<公的年金など控除額と公的年金等に係る雑所得の計算方法>

公的年金など控除額と公的年金等に係る雑所得の計算方法

公的年金受給額の境界線

公的年金の場合、公的年金等控除の最少額に基礎控除の38万円を加えた額が課税対象と非課税の境界線であり、確定申告が必要か不要かの境界線でもあります。

この境界線は、給与所得控除と同じです。具体的には、65歳未満の方は公的年金の収入が108万円(70万円+38万円)、65歳以上の方は158万円(120万円+38万円)が確定申告が必要か不要かの境界線です。

例えば、60歳で年金収入が年150万円の場合の雑所得は37万円となり、確定申告が必要です。

・150万円×0.75-37万5,000円-38万円=37万円

一方、65歳で年金収入が年150万円の場合は、雑所得は0円(マイナスは0円とみなされる)となるため、確定申告は不要となります。

・150万円-120万円-38万円=△8万円

年金受給者のための「確定申告不要制度」とは?

高齢者にとって確定申告は、細かい計算が必要なことが大きな負担です。そこで、年金受給者の負担を軽減するために、「確定申告不要制度」が用意されています。

この制度では、多くの年金受給者が確定申告をしなくてもよいことになっています。確定申告不要制度の対象者は、以下の条件1と2の両方を満たしていれば、制度の対象となります。

条件1:源泉徴収された年金と他の収入合計が400万円以下

公的年金等(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金、恩給など)の収入金額の合計額が400万円以下、且つこれらの公的年金等のすべてが源泉徴収の対象になっていること

条件2:年金以外の所得の合計が20万円以下

公的年金等以外の所得金額(給与所得、一時所得、不動産所得、株式などの譲渡所得、公的年金等以外の雑所得など)の合計額が20万円以下であること

確定申告不要制度

引用元:内閣府大臣官房政府広報室

確定申告不要制度の条件1「公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下」については、現役時代にずばぬけて高額所得者だった人以外はクリアできます。

しかし、条件2の「公的年金等以外の所得金額の合計額が20万円以下」については注意が必要です。というのも、年金受給者の中には、年金を受給しながらアルバイトや株などの運用益(投資による収益)、家賃収入、生命保険の個人年金保険などの収入を得ている人もいるからです。

年金以外の所得に注意

アルバイト収入は給与所得や雑所得に、株式などの運用収入は譲渡所得や雑所得に、家賃収入は不動産所得に分類されます。個人年金保険の収入は、毎年受け取る年金タイプは雑所得、一時金として受け取る場合は一時所得に分類されます。            

公的年金以外の収入金額を所得の種類別に分け、給与所得控除や特別控除、必要経費などを引いた金額が種類ごとの所得金額になります。この、種類ごとの合計所得金額が20万円を超えると、条件2を満たすことができず、確定申告が必要になります。

所得の種類の分け方や所得の種類ごとの所得金額の計算方法などについては、国税庁の所得税(確定申告書等作成コーナー)|申告・納税手続をご覧ください。

「確定申告不要制度」に該当しているかを源泉徴収票で確認

自分が「確定申告不要制度」の対象者になるかどうかを確認する方法は、まずは自分の「公的年金等の源泉徴収票」をチェックすることです

毎年1~2月になると、日本年金機構や企業年金の管理者などから「令和〇〇年分 公的年金等の源泉徴収票」という確定申告向けの書類が年金受給者宛に送られてきます。

確認するポイントは公的年金等の源泉徴収票の「支払金額欄」(サンプルの(1)、(2))の金額が400万円以下かどうかです。企業年金などをもらっていて公的年金等の源泉徴収票を複数持っている場合は、各源泉徴収票の支払金額欄の金額を合計して400万円以下かどうかを確認する必要があります。400万円以下であれば確定申告不要制度の条件1を満たしています。

<公的年金等の源泉徴収票の記載例>

 

年金所得者に係る確定申告不要制度の対象となる方が還付申告をする場合の記載例

引用元:国税庁『申告書の記載例1(収入が公的年金のみの場合)』

次に、公的年金以外の収入を把握し、所得の種類ごとに所得金額を計算し合計する必要があります。所得金額の合計額が20万円以下であれば、条件2も満たすことができ、確定申告の必要はありません。

年金受給者でも確認が必要な控除の説明

公的年金等の源泉徴収票のサンプルをよく見ると、「源泉徴収税額」の欄(サンプルの(3)、(4))があります。この欄に数字が入力されている場合は、年金を受け取る前に所得税が差し引かれていることを意味します。所得税を納め過ぎていて確定申告不要制度の対象者で確定申告の必要がない場合でも、確定申告をすることで源泉徴収した所得税が還付される可能性があります。確定申告によって所得税が還付される代表的なケースをご紹介します。

①医療費が10万円以上なら対象となる医療費控除

医療費控除」は、確定申告をしないと受けられない控除です。一般的に医療費控除を受けることができるのは、年間の自己負担額が10万円以上の人です。                
しかし、比較的所得金額が少ない年金受給者は、医療費の自己負担額が「(所得金額+申告分離課税の所得)×0.05」以上であれば、10万円以下でも医療費控除を受けることができます。

②社会保険や生命保険など保険料の控除

会社勤めをしていると、年末調整で社会保険料控除や生命保険料控除などの控除を受けることができます。しかし、年金受給者は年末調整を受けることができないので、確定申告をして控除分の税金を還付を受ける必要があります。                

また、生計をひとつにしている親族の国民年金保険料を納めている場合などでも、確定申告をるすことで社会保険料控除を追加控除することが可能です。

③住宅ローンを組んだ場合に対象となる住宅借入金等特別控除、特定増改築等住宅借入金等特別控除

住宅の購入やリフォームのために住宅ローンを組んだ合、一定の条件を満たせば「住宅ローン控除」を受けることができます。

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」で、バリアフリー改修工事や省エネ改修工事などの特定のリフォームのために住宅ローンを組んだ場合は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」となります。

控除額は年末の住宅ローン残高の1%(特定増改築等の場合は2%)、控除期間は10年間(特定増改築等の場合は5年間)です。給与所得者は2年目から年末調整をするがけですが、年末調整がない年金受給者の人は毎年確定申告が必要です。

④寄付をした場合に受けられる寄附金控除

国への寄附金、都道府県・市区町村への寄附金(いわゆる「ふるさと納税」)、公益社団法人・公益財団法人・認定NPO法人などへの寄附金、特定の政治献金などを支払った場合は、確定申告をすることで「寄付金控除」を受けることができます。

なお、2015年4月1日以降に行われたふるさと納税については、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をしなくても寄附金控除を受けることができます。

⑤災害や盗難にあった場合の控除

災害や盗難などで自宅や家財道具に被害を受けたり、災害関連支出をした場合、あなたや扶養家族が「雑損控除」を受けることができます。雑損控除は、確定申告をしないと受けられない控除でもあります。雑損控除を受ける合は、「罹災証明」や「盗難届」といった書類の用意が必要です。

⑥人的控除に追加や変更がある場合

前掲の「公的年金等の源泉徴収票の記載例」をよく見てください。ここの「本人」欄や「控除対象配偶者の有無等」「控除対象扶養親族の数」「本人以外の障害者の数」欄に、追加や変更はありませんか?

源泉徴収税額は、これらの欄に記載されている人的控除が反映されています。そのため、これらの欄の人的控除の追加や変更があった場合は、確定申告を行う必要があります。

確定申告が不要の場合でも、「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている人的控除の追加や訂正がある場合などは、住民税の申告が必要になることがあります。確定申告をしている場合は、住民税の申告は必要ありません。

確定申告を簡単に終わらせる方法

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに書類を作成し納税をすることが重要です。
青色申告と白色申告の違いを知りたい!という方は、こちらもご参照ください。「青色申告と開業届の基礎知識!青色申告のメリットと白色申告との違い
書類の作成には、手書きのほか、国税庁の「確定申告等作成コーナー」や会計ソフトで作成する方法がありますが、「確定申告書の作成は難しいのでは?」と苦手意識をお持ちの方も多いでしょう。
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e-Taxでネットで確定申告:PC・スマホでのやり方とメリットまとめ【2019年(令和元年)10月最新情報】
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まとめ

年金受給者の場合、確定申告が不要になる「確定申告不要制度」や、確定申告をすれば所得税の還付が受けられるケースを理解すれば、確定申告をすべきかどうかの判断できるでしょう。

何より、確定申告は「納税額を確定する」ために行うものであり、納税がすべての国民の義務であることはいうまでもありません。年金収入だけの自分には関係ないと思われている方も、1年間の収支を改めて確認することはとても大切です。これまで確定申告を行ったことのない方も、ぜひ一度、ご自身の所得を見直すようにしてください。

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