人事労務の基礎知識

年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までを解説

最終更新日:2021年06月25日

監修 河島 桃世 特定社会保険労務士

総務や経理担当者にとって、1年で最も慌ただしくなる「年末調整」。従業員の所得税額の過不足を正しく計算するために、源泉徴収票や申請書類の回収など、様々な作業が発生します。

本記事では総務・経理担当者に向けて、年末調整をスムーズに行うために、年末調整の仕組みや目的、そして具体的な手順について分かりやすく解説します。

【関連記事】
年末調整まとめ | 扶養控除・保険料控除、計算方法や源泉徴収票まで【保存版】

年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までを解説

目次

年末調整をカンタンにする方法

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年末調整の概要と目的

年末調整とは、給与所得者(会社員)の1年間の源泉徴収税額を正しく計算し、所得税を確定させるための制度です。

給与所得者は、毎月の給与や賞与・ボーナスから、税金が差し引かれています。これを源泉徴収と言いますが、しかしこれはあくまでも概算であり、正しい納税額とは言えません。

そこで、年末調整を行うことによって、その年の1月1日から12月31日までの給与所得に対する所得税を合計し、控除額などを確認して、所得税の過不足を計算します。

源泉徴収によって払い過ぎがあった場合は、還付が行われ、逆に不足があった場合は徴収が行われます。

年末調整の対象になる人

年末調整の対象になるのは、基本的には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している従業員です。

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の途中で就職(転職)し、年末まで勤務している人
  • 年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人
  • 年の途中で退職した人のうち次の4つのケースに当てはまる人
    • 1. 死亡により、退職した人
    • 2. 著しい心身障害により退職した人で、本年中に再就職できないと見込まれる人
    • 3. 12月中の給与を受けたあとに退職した人
    • 4. パート従業員などが退職した場合で、その年の給与総額が103万円以下の人(退職した後に再就職をし、給与を受け取る見込みのある人は除きます。)
従業員とは、事業主と雇用契約を結び、雇用契約に基づいて雇用されているすべての者(正社員、契約社員、アルバイト・パート含む)のことです。

年末調整の対象にならない人

給与所得者であっても、以下のようなケースでは、年末調整の対象になりません。

  • 1年の給与収入が2,000万円を超える場合
  • 災害被害を受け、災害減免法によってその年の給与に対する所得税の徴収猶予や還付をすでに受けている場合
  • 副業をしている、アルバイトをかけもちしているなど、2カ所以上の収入源がある場合
    (メインの勤務先で年末調整したあと、原則自分で確定申告することが必要になります)
  • 1年の途中で退職して再就職しなかった場合
    (所得税の精算作業である年末調整がされていないので、自分で確定申告が必要です。再就職、つまり転職した場合は新しい勤務先で年末調整をします。)
  • 2カ月以上継続して雇用がない、日雇い労働者などの場合
また、年末調整の対象とならない方は、原則として3月15日までに確定申告を行う必要があります。

年の途中で年末調整が必要な人

年の途中で死亡して退職した従業員や、12月に給与の支払いを受けて退職した従業員の方、海外勤務などで非居住者となった場合は、年の途中で年末調整が必要になります。

  • 海外勤務などで非居住者になった場合
  • 死亡によって退職する場合
  • 著しい心身障害のため退職し、再就職の見込みがない場合
  • 12月に支払われる給与などの支払いを受けたあとで退職した場合
  • パートとして働いている人が退職し、その年に受け取る給与の総額が103万円以下の場合
    (退職後、ほかの勤務先から給与の支払を受け取る見込みのない場合)
参考・引用元:国税庁「年末調整の対象となる人

【関連記事】
確定申告が必要なケースと不要なケースとは?確定申告の対象者について

年末調整のしかた

年末調整の作業は、通常11月から1月下旬にかけて行われます。具体的には、以下のような流れになります。

年末調整の作業スケジュール

11月上旬以前: 源泉徴収票の回収

会社内に転職者がいる場合は、転職者の前職の源泉徴収票を回収する必要があります。源泉徴収票はすぐには発行できない場合も多いので、早めに呼びかけておきましょう。

11月下旬〜12月: 従業員による申告書類

年末調整では、以下の3つの書類を従業員から回収します。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けて2年目以降の従業員がいる場合は、「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」もあわせて回収が必要です。

1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

画像引用元:国税庁「令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

家族内での扶養家族を申告するための書類です。

その年の最初の給与を受け取る前日までに提出することが義務付けられていますので、次の年の分を記入することになります。この用紙は、配偶者控除や扶養控除、障害者控除、寡婦控除、勤労学生控除などを確認するほか、住民税の控除にも使用されます。

また、平成28年からはマイナンバーを書くことが義務付けられています。ただし、給与支払者がすでにマイナンバーを記載した帳簿を備えている場合は、省略することができます。

令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は国税庁ホームページ「令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」からダウンロードできます。

2.給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除の申告書


給与所得者の保険料控除申告書は、その年の年末調整において、生命保険料や地震保険料などの保険料控除を申告するための書類です。

給与所得者の保険料控除の申告書は国税庁ホームページ「給与所得者の保険料控除の申告」からダウンロードできます。

3. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書


給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書は、その年の年末調整において、基礎控除、配偶者(特別)控除、所得調整控除を申告するための書類です。

この書類は国税庁ホームページ「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告」からダウンロードできます。

※令和2年の改正により、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と統合様式になりました。

※令和2年の改正により、「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」の兼用様式になりました。

参考:
国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告
国税庁「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告

12月: 年末調整の計算

従業員より年末調整の申告書類が提出されると、いよいよ所得税の精算と納税の手続きに入ります。具体的な手順を解説します。

(1)1年間に支払った給与等の総額を計算します

(2)給与所得控除額を差し引きます

給与所得控除は年収によって計算式が決まっています。税務署から配布される「年末調整のしかた」や、国税庁のホームページ「給与所得控除」で確認できます。

例えば、令和3年分の給与収入が700万円であれば、以下に当てはめて計算すると、給与所得は700万円-(700万円×10%+110万円)=520万円となります。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円超
1,800,000円以下
収入金額×40%-100,000円
1,800,000円超
3,600,000円以下
収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超
6,600,000円以下
収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超
10,000,000円以下
収入金額×10%+1,100,000円
10,000,000円超 1,950,000円(上限)

参考・引用元:国税庁「給与所得控除

(3)所得控除額を差し引きます

提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の情報をもとに、控除の額を計算します。

例えば、配偶者控除(38万円)、扶養控除(38万円)、基礎控除(48万円)が適用の方の場合、合計で124万円が控除されます。

(4)(1)から(2)と(3)を差し引いた額が、所得税の課税対象額となります

額によって税率が変わりますので、「所得税の速算表」をもとに所得税を計算します。(※社会保険料があれば(3)に合計したもの)

今回の場合、給与所得520万円 - 124万円 = 396万円となります。

(5)所得税額が確定したら、住宅ローン控除を受ける従業員については、その分を差し引きます

(6)以上により計算された所得税額と、年間の源泉徴収税額を比較して過不足を求めます

源泉徴収税額の額が所得税の額より多い場合は、その差額が従業員に還付されます。少ないときは追加で徴収する必要があります。多くの会社の場合、12月分の給与に加算されるか、給与から差し引かれます。

以上で年末調整の計算は完了です。

提出書類の作成

年末調整の計算が終わったら、必要に応じて本来払うべき所得税の額を以下のような書類に記入して提出してください。これらの書類は、1月末までに税務署または市区町村に提出する必要があります。

源泉徴収票

給与所得の源泉徴収票

画像引用元:国税庁「給与所得の源泉徴収票

給与所得の源泉徴収票には、その年に従業員に支払った給与額と源泉徴収をした税額(控除額)などをまとめて記載し、各従業員に配布します。条件を満たした源泉徴収票も税務署に提出します。

税務署への源泉徴収票の提出条件

年末調整をしたもの

  1. 法人の役員(現に役員をしていなくても、その年中に役員であった者を含みます。その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。なお役員には、相談役、顧問その他これらに類する方が含まれます。
  2. 弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの
  3. 上記1.2以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの
なお、上記2の弁護士等に対する支払は、給与等として支払っている場合の提出範囲ですので、報酬として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出することとなります。

年末調整をしなかったもの
  1. 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中に退職した方や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた方については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの
    ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの
  2. 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの
  3. 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(給与所得の源泉徴収税額表の月額表又は日額表の乙欄又は丙欄の適用者)については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの
参考・引用元:国税庁『「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等』

【関連記事】
源泉徴収票の作成と計算方法

法定調書合計表

「令和元年以降分」給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)

画像引用元:国税庁「令和元年以降分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)

法定調書合計表は、各従業員の源泉徴収票の内容をまとめたものです。原則として、翌年の1月31日までに税務署へ提出します。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書とは、弁護士や税理士などの専門家やフリーランスの方に仕事を受託し、一定額以上の報酬を支払った場合に作成します。この書類は税務署が、支払われた側がその金額を正しく申告しているかどうかを確認するために使用します。

【関連記事】
年末調整の法定調書合計表・支払調書の書き方

給与支払報告書

給与支払報告書は、従業員の住民税を計算するために必要な書類ですので、その年の給与所得など必要事項を記入し、翌年の1月31日までに従業員の住んでいる市区町村に提出します。

給与支払報告書の様式は市区町村によって異なりますので、お住まいの市区町村のホームページからダウンロードしてください。

【関連記事】
給与支払報告書の書き方

まとめ

年末調整は、各従業員の1年間の状況に応じて税金を確定し精算する重要な手続きです。年末調整を行う際には、単に事務的に処理するのではなく、年末調整の全体像をしっかりと把握することが大切です。

年末調整後に扶養家族が増えたり(子どもが産まれた、結婚したなど)や、保険料の控除申告書の提出が遅れた場合などは、翌年の1月末までに年末調整をやり直します。

また、サラリーマンの場合は、医療控除やふるさと納税控除(ワンストップ特例制度の場合は除きます)、1年目の住宅ローン控除などは、会社の年末調整ではなく、自分で税務署に確定申告する必要があるので注意が必要です。

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監修 河島 桃世 特定社会保険労務士

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