人事労務の基礎知識
年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までを解説
最終更新日:2019年6月25日
年末調整は会社の総務や経理担当者にとって、1年のうちで最も慌ただしくなるのは、年末の時期ではないでしょうか。年末には各従業員の年末調整を行わなければならないため、そのために多くの時間を割くことと思います。
そこで今回は、年末調整を少しでもスムーズにできるよう、年末調整の仕組みや目的、手順などについて解説します。
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年末調整まとめ | 扶養控除・保険料控除、計算方法や源泉徴収票まで【保存版】

目次
年末調整をカンタンにする方法
年末調整の概要と目的
年末調整とは、給与所得者のその年の源泉徴収を正しく計算し、所得税を確定させる仕組みです。
さらにわかりやすく言うと、所得税は毎月の給与や賞与から天引き=源泉徴収される際に、概算で計算されています。年末調整では、その年の1月1日から12月31日までの収入を対象に所得税を合計し、控除などを確認、所得税の過不足を計算します。
年末調整の対象
年末調整では、基本的には、給与を支払われているすべての従業員、正社員やアルバイト・パートが対象となります。しかし、給与所得者であっても下記の場合は対象とならないことがあります。
- 1年の給与収入が2,000万円以上の場合。
- 災害被害を受け、災害減免法によって、所得税の徴収猶予や還付をすでに受けている場合。
- 副業をしている、アルバイトをかけもちしているなど、2カ所以上の収入源がある場合(メインの勤務先で年末調整したあと、原則自分で確定申告することが必要になります)
- 1年の途中で退職して再就職しなかった場合(所得税の精算作業である年末調整がされていないので、自分で確定申告が必要です。再就職、つまり転職した場合は新しい勤務先で年末調整が受けられます)
- 2カ月以上連続して雇用がない、日雇いなどの場合。
なお、以下のような場合は年の途中で会社が年末調整を行います。
- 海外勤務などで非居住者になった場合
- 死亡によって退職してしまった場合
- 著しい心身障害のため退職し、再就職の見込みがない場合
- 12月に支払われる給与などの支払いを受けたあとで退職した場合
- パートとして働いている人が退職し、その年に受け取る給与の総額が103万円以下の場合(退職後、ほかの勤務先から給与の支払を受け取る見込みのない場合)
年末調整のしかた
年末調整の作業を行うのは、だいたい11月〜1月下旬です。具体的には、次のような流れになります。
11月上旬: 源泉徴収票の回収
転職者がいる場合は、前職の源泉徴収票を回収する必要があります。源泉徴収票はすぐには発行できない場合も多いので、早めに呼びかけましょう。
11月下旬〜12月: 従業員による申告書類
年末調整では、次の2つの書類を従業員から回収します。住宅ローンに加入している従業員からは「住宅借入金等特別控除申告書」もあわせて回収します。
- 1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
-
家族内での扶養家族の異動を申告する書類です。
その年の最初の給与を受け取る前日までに提出すると定められているため、来年分を記入する形になっています。配偶者控除や扶養控除、障害者控除、寡婦控除、勤労学生控除などを確認するほか、住民税の控除にも使用されます。
また、平成28年からマイナンバーを書くように定められています。ただし、給与支払者がすでにマイナンバーを記載した帳簿を備えている場合には、省略することができます。取り扱いが若干違いますので覚えておきましょう。
- 2.給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書
- 保険料に関する控除と、配偶者特別控除の申告書を兼ねている書類です。
ちなみに配偶者特別控除とは、配偶者に38万円を超える所得があって配偶者控除を受けられない場合に、一定の要件を満たす場合、配偶者の所得に応じて所得控除が受けられるという制度です。- 保険料控除申告書部分の注意点
各種保険料の計算は、保険会社から送付される控除証明書をもとに行います。控除証明書は年末調整の前までに被保険者の自宅へ郵送されますので、保険料控除申告書とあわせて回収するようにしましょう。
- 配偶者特別控除申告書部分の注意点
本年のおよその所得の見積額を記載します。年収ではなく、あくまで所得です。
また、配偶者の氏名と、概算の収入金額を記入します。配偶者特別控除の対象となるのは、103万円を超え141万円未満の収入の場合です。あとは早見表と照らし合わせて、配偶者特別控除額を記載します。
- 保険料控除申告書部分の注意点
12月: 年末調整の計算
年末調整の申告書類が提出されると、会社側ではいよいよ所得税の計算と納付の手続きが始まります。手順を追って説明していきましょう。
- 1年間に支払った給与等の総額を計算します。
- 給与所得控除額を差し引きます。
給与所得控除は年収によって計算式が決まっています。
税務署から配布される「年末調整のしかた」や、国税庁のホームページで確認できます。
例えば、平成29年分の給与収入が700万円であれば、以下に当てはめて計算すると、給与所得は700万円-190万円=510万円です。給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)給与所得控除額 1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円1,800,000円超
3,600,000円以下収入金額×30%+180,000円 3,600,000円超
6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円 6,600,000円超
10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円 10,000,000円超 2,200,000円(上限) - 所得控除額を差し引きます。
提出された「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の情報をもとに、控除の額を計算します。
例えば、配偶者控除、扶養控除、基礎控除が適用の方の場合、それぞれ38万円が控除されるため、合計で114万円が控除されます。 - (1)から(2)と(3)を差し引いた額が、所得税の課税対象額となります。
額によって税率が変わりますので、「所得税の速算表」をもとに所得税を計算します。 給与所得510万円-114万円=396万円です。
- 所得税額が確定したら、住宅ローン控除を受ける従業員については、その分を差し引きます。
- 以上により計算された所得税額と、年間の源泉徴収税額を比較して過不足を求めます。
源泉徴収税額が所得税額よりも多いときは差額を従業員に還付しますし、少ないときは追加で徴収する必要があります。多くの会社の場合、12月の給与に上乗せ、もしくは給与から引かれます。
以上で年末調整に係る計算が完了します。
提出書類の作成
年末調整の計算が終わったら、本来払うべきだった所得税の金額を以下のような提出書類に記入します。これらの書類は、1月末までに税務署や市区町村に提出する必要があります。
源泉徴収票
年間の給与額や控除額をまとめて記載し、各従業員に配布します。また条件に当てはまる源泉徴収票については税務署にも提出します。
詳しくは 「源泉徴収票の作成と計算方法」をご覧ください。
法定調書会計表
従業員それぞれの源泉徴収票の内容をひとつにまとめたものです。原則として翌年の1月31日までに税務署へ提出します。
詳しくは 「年末調整の法定調書合計表・支払調書の書き方」をご覧ください。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
弁護士や税理士などの専門家やフリーランスの方に外注して一定の金額以上の報酬を支払った場合に作成します。支払われた側が正しく申告しているかどうかを税務署が照らし合わせるための書類です。
詳しくは 「年末調整の法定調書合計表・支払調書の書き方」をご覧ください。
給与支払報告書
従業員の住民税を算出するために必要な書類ですので、1年の給与所得など必要事項を記入して、従業員の住む市区町村に翌年の1月31日までに提出します。
詳しくは 「給与支払報告書の書き方」をご覧ください。
まとめ
年末調整は、従業員それぞれの1年間の状況に合わせて税金を調整する、とても重要な手続きです。年末調整を行う際には、ただ事務的に処理をするのではなく、これら年末調整の全体像を良く把握しておくことが大切です。
なお、たとえば扶養家族が年末調整後に増えたり(子どもが産まれた、結婚したなど)、保険料の控除申告書をあとから提出されたりした場合は、年末調整のやり直しを翌年の1月末までに行います。
また医療控除、ふるさと納税控除、1年目の住宅ローン控除などは会社の年末調整ではなく、給与所得者が自分で税務署に確定申告することが必要ですので、覚えておきましょう。
▼参考:国税庁 平成30年分 年末調整のしかた▼
平成30年分 年末調整のしかた
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